性的モノ化とセクシー化 (2) 心理学分野での「性的モノ化」と「自己モノ化」

心理学分野での「性的モノ化」と「自己モノ化」

80年代か90年代にかけて、アメリカでは(日本でも)思春期から若い成人女性の摂食障害がものすごい増えて、社会問題になり、その原因はなんじゃいな、ということが議論された。現在、精神科医たちは、摂食障害は、おそらく心理学的な要因に加え、生物学的な要因の問題もあるようだ、って考えてるようですが、この時期はやはりテレビや雑誌などのメディアで、痩せた女性が登場してその体を自慢し、それを見た少女たちがファッションモデルや芸能人のようなボディーシェイプを目指してダイエットするために摂食障害を発症するのだろう、と考えられたわけです。まあそういうのはいまだに問題になっていますね。実際に、そうしたメディアの影響がなにもない、というのは考えにくいし。

90年代の心理学業界では、こうしたメディアの影響についてやはり「モノ化」という観点でとらえていて、とくにここらへんの論文が非常に有名ですね。発表されたのはマッキノンやヌスバウムたちよりちょっと遅れて1997。まあ心理学でもああいうタイプのフェミニスト問題意識が十分蓄積したということだろうと思います。

  • Fredrickson, Barbara L., and Tomi-Ann Roberts. “Objectification Theory: Toward Understanding Women’s Lived Experiences and Mental Health Risks.” Psychology of Women Quarterly, vol. 21, no. 2, SAGE Publications Inc, June 1997, pp. 173–206.

1997年のこれがエポックメイキングだったらしい。ここでのモノ化は女性を人柄から切りはなしてセクシーなボディに還元して、それを商品化したり、女性の典型としたりする、みたいな。まあマッキノン〜ヌスバウムのラインそのままですね。

性的モノ化を許容する文化 → 女性のモノ化の内面化(オブジェクトとしての自分の身体を監視する) → 女性の身体羞恥、恥意識、interoceptive deficits1など → メンヘルリスク(摂食障害、鬱病、性的機能障害など)

上のようなモデルが組まれたわけです。まあメディアとかでセクシーな女性を見たり、あるいは社会生活のなかでセクシーボディの女性が規範とされることで、女性が自分をセクシーなモノであるべき存在として見るようになり、その基準に到達してない人はもちろん、到達している人々でさえずっと自分のボディに注意し監視することになる、と。

ここで重要なのが、心理学者にとって、女性の問題は、他人から直接にモノ化されるという経験(性暴力とか盗撮とか面と向かっての性的評価)もまあ重大ではあるんですが、自分をモノと見る自己モノ化も重大な経験であるっていうのに気づかれたところなわけです。(それゆえフレドリクソン先生たちのは時々「モノ化理論」というよりは「自己モノ化理論」として参照されることがある)。

こっちも特に有名なやつで、「水着を着て鏡の前でテスト受けると女子学生は数学の成績が落ちる」みたいな実験して、自分を女性だと意識したり、モノとして見ることが女性にさまざまな心理的負荷をかけていることを実証した、とされるやつです。読んでみたけどちょっと微妙なところありそうですが、フレドリクソン先生はこういうので偉くなります2

脚注:

1

まだどういうのかよくわかってないです。

2

フレドリクソン先生は2000年代以降はポジティブ心理学の方で業績残すことになって、私はそれで意識しました。先生がモノ化に反対してたとなると、私も考えなおさねば。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。