学会司会学が必要だ

秋から年末は学会シーズンで、あんまりそういうの出席せずさぼってる私も行かざるをえないのですが、司会、特にシンポジウムなど大人数が参加するディスカッションの司会は難しいですね。私経験が浅いので、いまだにどうしたらいいのかわからない。

まあ学会シンポジウムでおもしろいのはめったに見たことないし、むしろストレスを感じる方が多いというかほとんどで、けっこうダメージ受けたりしますし、終了後にどっかに不満を書かざるをえない感じなったりもします。

私はディスカッションというのは短い問いと答えの一発勝負、あるいはその連続によるソクラテス的対話であると思っているので、「質問が二つあります、一つは〜長々〜。え、二つ目は、なんだったかな、そうそう、〜長々長々、長〜〜〜〜〜〜」とかやられるとそれだけでイライラする。答えるほうも「えーと、なんでしたっけ?」みたいになって馬鹿みたいだ。

今年つらかった1件目は、パネラーの一人の年長の先生が長々しゃべる方で、要点もつかめずすごいストレスになったやつ。質問にも長々答えるのでもうなにがなにやらわからなくてつらい。あれを黙って聞いてる人々もえらい!

もう一件も近いもので、パネラーの発表がおわったあとの質疑の時間の半分を5人いるパネラーの1人が一人で、休憩時間に集めた質問紙を読んで答える、っていうので使ってしまった。このケースでは、パネラーどうしのディスカッションもなく、けっきょく発表者と質問紙しかなく、ライブな刺激がまるでないもので、相当こたえました。

「マンスプレイニング」とかそういうので男性がわかりきったことを説明したりしてとにかく長々しゃべる、っていうのが問題視されたりされなかったりしているようですが、本当に一人で長々しゃべる人はいますね。シンポジウムだけでなく個別の学会発表とかでも延々時間をつかう特定の人々がいて、もっと若い人々、勢いのある人々に時間ゆずってあげたらいいのに、とか思うのに、やはり年嵩の人は優先権がある感じでそうもならんですね。司会者っていうのはそういう長々話す人を抑えこむ義務があると思います。後者の学会は特にジェンダーとか家父長制的権力とかに敏感なはずの学会だったので、けっこうショックでした。

シンポジウムでときどき使われる質問紙っていうのもあんまりよくないように思います。あれ使って成功しているシンポ聞いたことがない。たいてい、休憩時間に会場から質問紙があつめられ、それが発表者に渡され、それを発表者が読みあげてだらだら答える、だけどこれはやっぱりよくない。せめて司会の人がライブな感じで読みあげて、ライブ感を出してほしい。

まあ司会はほんとうにむずかしい。どれくらい質問でるか、議論がもりあがるか事前にはわからんですからね。私が考えるよい司会のために気をつけるべきことは

  1. えらい先生に(不必要に)長話させない
  2. 問いと答は短くなるように促す
  3. なるべく多くの人にわりふる
  4. 若い人々に積極的に時間をわりふって支援する
  5. 対立を恐れない

とかでしょうか。とにかく長話は避けてほしい。まあ話の進行の上で、司会や会場がその人の長話を聞く必要がある、むしろぜひ聞きたい、みたいな判断したときにはそのかぎりではないですが。でも基本的には問いと答はどちらも短い方がいいですよね。その方がわかりやすい。ソクラテス先生がわれわれに教えてくれた一番大事なことはそれなわけだし。あとまあ多様性は大事なのでいろんな人に発言をうながしたいし、特に若い人々に名をあげるチャンスはまわしてあげてほしい。

対立を恐れないというのは、やはりシンポジウムというのは対立をもとめて聴衆があつまるわけでね。だいたい企画の段階で対立している問題をあつかうわけだし、聴衆は血に飢えている。昔の日記見てたら、「シンポはサーカスにしなきゃならん。学会は年に一度の祝祭であり、シンポはサーカスである。そして時に血が流れなければサーカスではない」とか書いてて、まあこのころの私は血に飢えてたような。でもシンポに人呼ぶってそういうことよね。下手すりゃ学問的に殺されるぐらいでやってほしい。質問紙を発表者が読む、とかだと面倒な質問、答えにくい質問、答えたくない質問をを軽くあつかったりできてだめだと思う。そもそも選択を発表者にまかせるみたいなのも当然だめ。司会が選ぶべきだ。

時に乱入とか、具合の悪い質問とかコメントとか、あるいは怒り出す人とかもあるんだけど、まあこれは司会者の判断かなと思う。プラトンの『饗宴』がシンポジウムの起源だとすれば、あれにならって、ディスカッサントは前の人の話をあるていど引き継いで話すのがよかろうし、ディスカッサントどうしの問答はどうしても必要だし、最後にアルキビアデスが乱入してきて語ったことによってディスカッサントとテーマについて理解が深まる、というのもありだと思う。これはまあ司会と会場の腕よね。まあそんなこと考えたりしちゃいますね。

「司会上手だな」とおもった時もまああって、その人は「それではこれからディスカッションします、質問は手短かに一つずつおねがいします、まずどれらいご質問があるか確認したいと思います、この段階でご質問があるかたは挙手おねがいします」みたいなので挙手させて、「それでは〜人ぐらいですので手短に、そこの方」みたいな感じ。あとでまた「さらに質問されたい方は何人おられますか?〜人ぐらいですか、〜分ぐらいありますのでまた手短かに」とかでこの先生はうまかったですね。

質問紙ももし使うのであれば、そのまま読まれるように書いてもらうのもたいへんだし、発表者にまわすのもあれなので、質問用紙には「なにをご質問されたいですか」ぐらいのおおざっぱなことを書いてもらって、それで名前確認しておいて、「それじゃまず〜についてご質問がありますが、同じような質問が多いようですので、代表して〜所属の〜さんおねがいします」ぐらいでやるのがいいんじゃないですかね。

これはやってみたい。わりとさばきやすくなるんじゃないだろうかという期待があって、実は来年小さな学会のシンポ司会しなきゃならんみたいなので試してみたい。

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