ジャズ入門(4) ビバップのリズム的側面について語るよ

んで、40年代前半〜なかばは戦争もあったし、ミュージシャン組合とレコード会社がなんかあったとかであんまり録音が残されてないんですが、このころにジャズに革命が起こるわけです。

チャーリー・パーカーとかディジー・ガレスピーとかケニー・クラークとかセロニアス・モンクとかって天才たちが夜中にジャムセッションとかして腕比べしているうちに、スイングよりもっと自由で過激な芸術様式が生まれた。もう踊るための音楽ではなく、ミュージシャンがその場で適当な素材で腕競べし、客はそれを聞くというアートです。ビバップ。

50年代の演奏ですが、まあとりあえずパーカーのConfirmation。この曲好きでねえ。(ちなみにこの画像は左右逆だよね。おかしすぎる)

もうスイングとはぜんぜん違う音楽で、どこがどう違うかリストアップしていくだけでたいへんなんですが、まずはやはりリズム的側面からいきますか。

スイングはドラムがバスドラをドンドンドンドン4つ踏んでたんですが、それだと重くてダサいのでかわりにシンバルで4つ叩きます。チーチキチーチキ。バスドラはときどき裏でドンとアクセントに使われる。左手のスネアも右手でチーチキやりながらタタスタ、タ、タタッとか適当にあいの手やってる。これはとても難しいです。左足は2拍4拍でハイハット踏んでるし、両手両足バラバラに動かせないとできない。

ベースはスイングのときは同じ音を4つブンブンやることが多かったのですが、どんどん動く。音階を上下動いていくのでウォーキングベース。もちろん決まったことをやってるんじゃなくてその場でコード進行とスケール考えて、うまく合うようにそれを弾いてる。

ピアノは拍の頭で弾くことがなくなって、拍子のちょっと前で弾く。これもまあその場で適当にやってる。イントロとかピアノで出してますが、ああいうのもその場で考えられないとかっこ悪い。同じことを2回目やるときは1回目と違うことやらないとバカにされてしまう。これから何度も言うことになると思いますが、ジャズというのは競争的な音楽で、自分が優れていることを他の奴にアピールするのが主な目的です。自分が弾く部分を楽譜とか書いていくとバカにされてしまう。

それから、上の楽器(パーカーのアルトサックス)はあんまりハネない。スイングのを聞きなおしてもらうとわかるのですが、スイング時代にはドンドンドンドンチッチチッチチッチチッチと4拍子が8分三連でハネてる感じなんです。一応ジャズはこういうハネた3連符の感じ基本で、まあこの時期もいちおうベースとかはちょっとハネた感じに弾いてる。

ところがこの演奏のアルトはそのベースやドラムのリズムのハネに気をつかわず、平たく8分音符中心で演奏してます。だから演奏は12/8と8/8が重なってるポリリズムになっている。これがスイングとの決定的な差です。

どの程度ハネて演奏するかはそのプレイヤーの自由ですし、ハネたりハネなかったりしてもいいが、とりあえずドラムやベースと同じビートになることはあえて避ける!

実はこれがロックミュージシャンとかがジャズのまねとかしてもジャズにならない理由なんですわ。どうしても「バックに合わせる」ていう意識があるからドラムがハネてたらそれに合わせてハネちゃうんだけど、合わせないのがジャズだ、みたいな。これはすごい発想ですよ。

自分のソロのなかでも同じことが続くのを嫌って、8分音符と3連音符を交互につかったりしているのがわかると思います。そうすることでイーブン(8分)とハネ(3連)のポリリズムを強調するのです。

あとフレーズが小節の頭からはじまらなかったり、へんなところにアクセントがあったり、メロディックだなと思うといきなりピロピロはじめたり。こういう意外性を追求しまくったのがビバップです。

ちなみにパーカーのこのピロピロ速いよねえ。現代のギタリストもこんな速く弾けるひとはめったにいない。サックスの方がキーとか可動部分あって物理的に難しいと思うんですけどね。音もすごいでかかったらしく、この録音ではそういうもわかりますね。ピロピロもまあまえもって練習はしてるんだけど、いつそれを使うかってのは完全にその場のアドリブだし。天才。

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