性差の科学編集委員会 (2011) 『性差の科学の最前線』、京都大学大学院文学研究科社会学教室、っていう報告集があるみたいなんです。google bookにひっかかってきて発見しました。
まだ入手できてなくてよくわからないのですが、そのなかの伊藤公雄先生の文章がとてもひっかかりました。こんな感じです。
まあミードの『サモアの思春期』はデレク・フリーマンの『マーガレット・ミードとサモア』でかなり厳しく批判されて、それがフェミニズム/ジェンダー論に対するバックラッシュに利用されたよ、でもミードのサモアの話と、(前のエントリで紹介した)伊藤公雄先生たちが使ってるSex and Temperamentのニューギニアの話は違うよ、ってな話ですね……。そうか……。……。
デレク・フリーマン先生の『マーガレット・ミードのサモア』は有名なのですが、パプアニューギニアの方の研究についてもデボラ・ゲワーツ先生が再調査してます。それらをもとにして、ドナルド・ブラウン先生が『ヒューマン・ユニバーサル』(1991、翻訳は2002)でミードの研究の問題についてかなり詳しく論じています。
サモア
- デレク・フリーマンが再調査。
- ミードはサモアの思春期にはストレスが少ないといってるが、彼女のデータでも25人の女性中4人が非行行動をとっている。最近(80年代?)のデータでも他の文化とかわらない
- サモアにはかなり極端な性的行動のダブルスタンダードがある。
- レイプも頻繁にある。暴力も頻繁。
パプア・ニューギニアのチャンブリ族
- ゲワーツが70年代に再調査。
- チャンブリの伝統的概念では男性は攻撃で女性は服従的。
- 生産は女性がおこなうが、その産物をコントロールするのは男性。
- 男性から女性に対する暴力も頻繁。
- ミードが調査したとき、チャンブリ族は他の部族との戦争に負けた直後で危機的状況だった。つまり、一時的に男性の活動や男性どうしの競争がよわまった時期だったにすぎない。
- 民族誌において、女性が公的な場で男性よりも優位にたつ社会はいまだに発見されていない。
ここらへんはものすごく有名な話なのに、2011年で伊藤先生みたいなことを書いていて平気っていうのは、いったいどういうことなのですか。もちろん、アカデミックにはまだまだ論争は続くと思う。我々素人には、偉い学者先生たちがちゃんとした研究をすすめるのを応援するしかない。がんばれー。お金まわしてあげてほしい。
でも、いかにも「バックラッシュ」勢力が、ジェンダー論を攻撃するためにフリーマン先生の適当な研究を使ってバッシングしている、みたいな表現をして、恥ずかしくないのですか。そしてそれを見ていた社会学者の先生たちはいったいなにをしていたのですか。
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