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女性には男性の性欲がわかりにくいのだろう

前エントリの続き

スティーブン・ピンカー先生の『暴力の人類史』は非常におもしろいので、あらゆる人が読むに値すると思います。暴力の歴史と心理学が延々書いてあってとても楽しい(暴力が楽しいのではなく、各分野の最新の知見が得られる)。最初の方の拷問の話は読むと冷や汗をかくので苦手な人は飛ばしてもいいと思う。そこ飛ばせばあとはそんなひどいのはない。

当然殺人だけじゃなく人種差別、児童虐待、ゲイバッシング、動物虐待とかって話にまじって、女性に対する暴力である性暴力の問題も扱われてます。

『人間の本性を考える』とかではフェミニズム(特にブラウンミラー先生のタイプのやつ)に対してなんか批判的・揶揄的な態度をとってるところもあったんですが、この本ではかなり高く評価してますね。フェミニストたちの運動のおかげで、20世紀後半に性暴力に対して社会は厳しい態度で臨むようになり、数も減ってる、ってのが基本的な立場。

レイプは決して男性性の正常な一部というわけではないが、男性の欲望が基本的に性的パートナーの選り好みに頓着せず、パートナーの内面にも無関心であるという事実によって可能となっているところはある。もっといえば、男性にとっては「パートナー」という言葉より「対象物」(object)という言葉の方が適切なくらいなのである。(下巻 p.58)

こういう男女の性的欲求のあり方の違いはけっこう重要で、性暴力の被害がちゃんと扱われないのには、「求めてもいない突然のセックスを見知らぬ他人とすることになるのは魅力的どころか不快なことであるという心理を、想像することができない男性の視野の狭さ」があるだろうとか。(objectは対象物でもいいけど「モノ」の方がピンとくるかもしれない。)

もっとも、「レイプはセックスではなく暴力」っていう有名なフェミニスト的主張は認めない。ブラウンミラー先生の「先史時代から現代にいたるまで、レイプにはある決定的な機能が担わされてきたと思う。レイプとは意識的な威嚇プロセスにほかならず、このプロセスによって全男性は全女性につねに恐怖をもたせつづけるのだ」っていう有名なフレーズは今回も強烈に否定されちゃう。

このあとが重要で、

もしここで「アド・フェミナム」な〔女性に対する偏見に訴えた〕提言を許されるなら、その気のない他人と人間的感情のないセックス(impersonal sex)をしたがる欲望というのが奇妙すぎて考えるにも及ばない性別にとっては、レイプはセックスとは何の関係もないという説のほうが、もっともらしく感じられるのかもしれない。(下巻 p.59)

てなことを書いてる。(ad feminamは偏見に訴えたというよりは「女性だから論法」の方がよいと思う。impersonal sexは「人間的感情のないセックス」でもOKだけど、「誰か特定できない、お互いを個別の人格とみてないセックス」の意味)

これはワシも昔からそうだと思ってたのじゃ。ワシもワシも。前のエントリで紹介した牧野雅子先生の『刑事司法とジェンダー』で、先生はレイプ犯人の動機が性欲だってされることに非常に抵抗があるみたいで、もっと「加害性を追求」しろということを主張しているわけだけど、レイプ犯の動機を性欲だとすることに対する抵抗の一つは女性にはそんなものが性欲だとは思えないからだろう、みたいな。

牧野先生自身はレイプの動機にあるのは性欲というよりは、「自分には力があることを確認」「自信を回復」「「内なる父」を越える」(牧野 p.190)とかだっていうフェミニスト的解釈やフロイト的解釈に共感しているようだ。

研究対象の犯人はこういってるらしいです。

最近考えているのですが、「強姦」という手段に出たのは、私の中では意味を理解していない絶対悪なので、これをクリアすれば力が手に入る、強者になれる。そして、自分のカラを壊るのに性的興奮のいきおいが必要だったのではないか、そして女性を征服できる喜び、達成感があったのではないかと思っているのです。私が考えているこの三つはかなり私にはしっくりくるものであり、今書いている事自体苦しく、つらく、恐いものです。(牧野 p.190)

これはまあ事後的に「自分はあのときなぜそうしたのかな」っていう問いに対する犯罪者なりの答ですわね。どの程度正直なのかはよくわからない。これを牧野先生はこう解釈する。

Yの強姦行為には、異なる水準の力が関わっている。一つは、被害女性に対する強姦行為に見る力であり、女性を強姦することで、自分には力があることを確認し、職場や家庭で喪失している自信を回復させるものである。もう一つは、「内なる父」を超える力としての強姦である。強姦を行うことで、耐えることを強要する「内なる父」、目標だった父を超えて、強者になったと実感し、父の縛りから解放されるのである。(牧野 p.190)

「レイプはセックスには関係なく、関係するのは力(パワー)だけ」っていうピンカー先生が批判するフェミニスト的解釈にのっかってますね。

Yは、家庭や職場で感じていた自信のなさやままならなさを、「内なる父」の足枷をはずしたり、自分の弱さをさらけ出すなどして、現実の世界で自分を変えるのではなく、自分が自由に振る舞える世界を創り出し、そこで別の自分になることで、自分を解放した。その手段として強姦が選ばれた。Yは、性欲によって行われたということは、最初に発信した手紙で「この犯罪は性的欲求だけでは絶対起こりえない犯罪だと思います」と否定してた。捜査・裁判を通じて、Yの強姦はY生来の強い性欲によって起きたと結論づけられていたが、そのことは終始否定していたのである。(牧野 p.190)

犯人は「性欲だけでは起こりえない」と(おそらく)正しく書いているのに、牧野先生は「否定している」と解釈してしまっている。たしかに犯罪とかっていうのは、強い欲望だけでは実行されずに、他にもいろんな条件が必要で、環境や状況の条件もあれば、弱い自制力、弱い道徳心、低い共感力とかそういう個人の条件も必要だろう。私の好きなJ. S. ミル先生はこういうことを言っている。

人々が誤った行動をとるのは、欲望(desire)が強いからではない。良心が弱いからである。強い衝動と弱い良心とのあいだにはなんの自然的つながりもない。自然的つながりはその逆である。ある人の欲望と感情が他の人のそれらより強く変化に富んでいる、ということは、その人のほうが人間性の素材をより多くもっており、したがってより多くの悪もなしうるかもしれぬが、確実により多くの善をもなすことができる、ということにほかならない。強い衝動とは精力(エネルギー)の別名なのだ。(ミル『自由論』第3章、早坂忠先生の訳を一部変更。)

英雄色を好む、とかそういう感じすかね(ミル先生の性欲がどうだったのかというのは伝記的な謎)。こういうの読むと、たしかに「生来の強い欲望によって起きた」みたいな解釈がどの程度正しいかってのは再考してみる価値はある。けっきょくその人の弱い自制心や道徳心その他の心的能力に較べて性欲がそこそこ強い、道徳や自尊心や合理性より性欲を優先しちゃう奴ってだけで、それは他の人々と同じかそれ以下のものかもしれんしね。「性欲なら、あんな犯罪者よりオレ方がずっと強いぞ」みたいな人は少なくないのではないか。ははは。

まあ「自信の回復」とか「内なる父の超克」とかそういうのも部分的にはあるんかもしれないけど、私は原因として一番強いのはやっぱり性欲だろうな、と思いますね。(もちろんレイプ犯のすべてが同じ動機に同じようにもとづいているわけではない。)ふつうに考えてしまえば、「自分が自由に振る舞える世界」で凶器とかちらつかせて女性を脅していったいなんの自信がつくのかわからんし、どういう内なる父を超えてるのかもわからんし。そもそも犯罪犯して自信がつくってだけの話なら、若い女性を狙う必要もない。どうせ凶器使うなら、偉そうな男性大学教員にでもからんで財布カツアゲしたり土下座させたりした方ががずっと自信がつくのではないか。警察官なんだから体鍛えてるだろうし、大学教員を背負い投げするくらい簡単だろう。一般に「ストレスから」とか「自信をつけるため」とかっていう加害者自身の言い分ってのはどのていど信用していいのかよくわからんです。

→続き「男性も女性の不快さを理解していないだろう」

 

暴力の人類史 下

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スティーブン・ピンカー
青土社
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刑事司法とジェンダー

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牧野 雅子
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レイプ・踏みにじられた意思
スーザン ブラウンミラー
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牧野雅子先生の『刑事司法とジェンダー』

刑事司法とジェンダー

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牧野 雅子
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昼間ちょっと某氏と性犯罪対策みたいなのについて話をする機会があり、牧野雅子先生の『刑事司法とジェンダー』読みなおしたり。この本は非常に興味深い本で、元警察官で、警察学校の同期が連続強姦で逮捕されたという経験をもつ方が書いてる。警察内部の取調べマニュアルとか、その連続強姦魔の書簡や聞き取りなんかから構成されていて非常に読みごたえがある。性犯罪とか刑事司法とかそういうのに関心ある人は必読だと思いますね。

読んだときに書評もどきというかamazonレビューみたいなものを書こうとしたんですが、そのままになってしまってた。ネタは非常におもしろいのに、全体に微妙に理解しにくいところがあるんよね。

性犯罪と性欲

一つ目。牧野先生によれば、性犯罪では操作から立件、裁判に至るまで、加害者の犯罪行為がとにかく「性欲」という動機にもとづいた犯行であったことを立証しようとしていて、その際に「性欲」や「情欲」が「本能」とされていて内実が問われないままになってる、ということらしい。「男の本能だからしょうがない」みたいな感じですかね。まあたしかに「本能」だから「しょうがない」なんて本気で言われちゃったら困っちゃいます。性欲はわれわれが動物と共通にもっている欲望の一つだろうけど、それをコントロールするから人間であってね。

でも「本能」はともかくとして、犯行の動機が性欲であることを立証しようとするのは、刑事司法としてはある程度やむをえないことな気がする。刑法とかぜんぜん知らんのであれなんですが、素人考えからすれば、もしある強姦に該当する行為が、性欲にもとづいたものでなければそれが性犯罪なのかどうかわからないってことにもなるかもしれない。たとえば、加害者はまったく性的な欲求をもっておらず、女性の性器に男性器を挿入することによって来世で蘇えることができるとかそういうことを信じていてそういう行為を行った場合、それって性犯罪なのかどうか。セックスっていうのがなんだか知らないわからないけど男性器を挿入してしまった、みたいなのもどういうタイプの犯罪なのかよくわからない。やっぱり性犯罪が性犯罪であるためには、犯行の主要な動機の一つが性欲である、セックスである、っていうのが必要なんちゃうかな。

まあもちろん、加害者がなにを考えていようが、被害者にとって性的な行為であれば性犯罪である強姦である、っていうのでもOKなのだろうとは思います。でも「なぜその犯罪を犯したのか」っていう問いに対して、いくつかの動機と、その動機にもとづいた犯罪行為を防がなかった理由がないと我々はそれが犯罪だと理解しにくい。それが犯罪だと思ってなかったとか(強姦の場合はありえないと思うけど)、他人の利益や尊厳なんか知ったことはないという邪悪な性格であったとか、捕まらないだろうと思ってたとか、そういうのも理解した上で、そいつの行為が犯罪と呼ばれるものだったのかとか、どの程度の罰を与えねばならないかとか考えるんだと思う。

牧野先生が懸念しているのは、「強姦が性欲にもとづくものだ」ということよりは、「性欲は本能であり自然なものだ」とか「本能だからしょうがない」とかって考え方の方なんだけど、これってそんなに司法の場で認められていることなんすかね。たしかに邪悪な犯罪者たちはそういう自己弁護をするだろうけど、われわれがそれを認める必要はまったくないように思える。「他人のものを取りあげて自分のものにしてしまいたい」「腹が立つ奴は殴りたい」みたいなのも我々の自然的な傾向であって、もし「本能」っていう言い方をすれば本能。でもそういう欲求を野放しにしたら困るから法や罰があるわけで、自然なもの、本能的なものだからって主張されたってつっぱねることはできるわね。

難しいのは「その時私は自分をまったくコントロールすることができなかった」と主張された場合で、これ心神喪失とか心神耗弱とかそういう面倒な問題になりますわね。もしこの手の話をするのであれば、性欲によってわれわれがそうした自分のコントロールをまったく失うことがありえるかっていうおもしろい話になる。牧野先生は本当はこれがしたかったのかしら。刑法学とかの分野でこの問題がどうなってるか私は知らないんですが、衝動的な行動についていくらか情状酌量の予知はあるのかもしれないけど、たいていの性犯罪はそういう衝動的なものではないだろうから関係なさそうな気もする。この点は後半の事例研究でもはっきり出ていると思う。痴漢やセクハラぐらいのことを考えても、たとえば道を歩いていて、白昼人目のあるところで突然衝動的に女性に襲いかかる奴なんてのはいないわけで、おそらく皆捕まらないだろう、セクハラで訴えられないだろうぐらいの計算をしてからやってる気がしますね。少なくとも頭のなかで何回も予行演習していると思う。

 加害性の追求

二つ目。この本の後半では研究対象となった警察学校動機の強姦魔の悪質さが強調されていて、これはなんともすばらしい研究だと思う。理解しにくいのは、第3章「加害性の追求」での議論でなにを目指しているかっていうことなんよね。牧野先生が考えているのは単なる厳罰化じゃないみたいで、んじゃいったいなにか。研究対象になっている強姦魔はまったく悪質凶悪なやつで、これほど悪質な犯罪者は厳罰に処すべきだと思わされるんだけど、逆に読者にはその悪質さがかえってそうした犯罪者の特異性みたいなのを感じさせてしまう。よくいわれるサイコパス的な感じ(よく知らんけど)。こんなに異常なやつを追求するってのはどういうことなのか。もちろん異常人物として研究対象としては興味深いだろうけど、刑事司法の場で他になにをしようというのかがわからない。

「追求」ってのがわからんのんよね。「加害者は取調べにおいてその加害性を十分に追及されることがない」(p.130)っていう文章なんかが典型なんだけど、警察や検察の取調べは建前としては道徳的・法的非難の場ではなく、事実確認の場だろうと思う。「どんな悪い奴かはっきりさせる」ってことかなあ。「あの事件はなぜ起こったのか」(p.198)という問いの答を追求するのかもしれないけど、加害者の性格や生い立ちや考え方をはっきりさせるのだろうか。あるいは性犯罪をとりまく社会的ななにかをはっきりさせるのだろうか。そこらが見えなくて最後まで不満のままだった感じ。

性欲による行動は不可避なの?

あと最後の方はけっっこうあやういことも書いていて、たとえばp.201では若年者の犯罪は構成可能性があるから量刑軽くなることが多いわけだけど、性犯罪だと再犯可能性が高いから若年であることは軽減ファクターではなく、「むしろ加重ファクターであり、裁判所の判断に誤りがある可能性を示している」とかっていうんだけど、こういうの大丈夫なんだろうか。もうちょっと慎重な議論してほしい感じがある。

まあでも一番気になるのは、やっぱり何度もくりかえされる「操作・裁判は、性犯罪は「性欲」によって行われる、男性の生理に基づく不可避の犯罪であるという前提で進められている」(p.202、下線は江口)っていう主張かな。これほんとうにそう考えられているんだろうか。ほんとうに不可避なんだろうか。牧野先生が勝手にそう読みこんでいるという可能性はないだろうか。なんらかの意味で本当に不可避なんだったら罪を問うことさえ不可能に思える。また逆に、本当に不可避なんだったらそんなもんはどっかに閉じ込めておかなきゃならんってことでもある。刑事罰ではなく保安処分の対象ではないのか。

また牧野先生自身は性犯罪の背景に性欲の他にどういう動機を見つけたいのか、どういう筋書なら納得のいく「加害性の追求」になると考えているのか。たとえば性犯罪は性欲ではなく支配欲に基づくものであるとか、女性を家にとじこめておくための男性集団の共謀によるものだとか、そういうやつなんかなあ。

→続き「女性には男性の性欲がわかりにくいのだろう」


田村和紀夫先生の本を読もう!

これ、昔書いてそのまま「下書き」になってた。その後、さらにいくつか読んだんですが、とにかくこの先生はすばらしいので読みましょう。

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図書館で音楽の本をパラパラ見てたら、田村和紀夫先生という方がいらっしゃることを知りました。このひとすごいわ。

このブログでは調性がどうのこうのリズムがどうのこうのって話をしていましたが、この先生は音楽史とかのなかでそういうのがどういうふうになっているかわかりやすく説明してくれてます。こんなブログ読んでるより先生の本読んだほうがいいです。

とりあえず2冊読んでみました。

名曲に何を聴くか―音楽理解のための分析的アプローチ 新音楽鑑賞法
田村 和紀夫
音楽之友社
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どっちもモーツァルトやベートーヴェンの苦悩がどうのこうの、って話じゃなくて純粋に音楽としてどういう部分を聞くと楽しいのか、理解が深まるのかってのを説明してくれてます。

ただし楽譜読めないとちょっとつらいかもしれません。でも雰囲気だけはわかるんじゃないかな。この方がDVDとかネットとかで音楽解説してくれたらいいのにね。きぼん。

——–

このあとも『ビートルズ音楽論』読んだんですが、これはすばらしいビートルズの音楽論です。ポップ音楽好きな人や作ってる人は絶対に読みましょう。特にコード進行と歌詞の関係とかの分析がすばらしい。

ビートルズ音楽論―音楽学的視点から
田村 和紀夫
東京書籍
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2013年に読んだ本ベスト10

風雲児たち 幕末編 21 (SPコミックス)
みなもと 太郎
リイド社 (2012-11-29)

昨年末から1月にかけて読みました。おもしろいねえ。やっぱり大志は大事だ。それぞれ自分の役目があります。


非常にすっきりしていて頭よくなった気がする。歴史は大事です。


ずる―嘘とごまかしの行動経済学
ダン アリエリー
早川書房
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実験倫理学というか。我々がどんな悪いやつであるか。いろいろ味が悪いんだけど必読。


ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?
ダニエル・カーネマン
早川書房
売り上げランキング: 1,222

カーネマン先生直々の解説。必読。


あなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのか
レイチェル・ハーツ
原書房
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嫌悪感というのは大事です。


WILLPOWER 意志力の科学

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ロイ・バウマイスター ジョン・ティアニー
インターシフト
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最近出たやる気本ではこれがベスト。


失踪日記2 アル中病棟

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吾妻ひでお
イースト・プレス
アル中怖いです。

ユーモア心理学ハンドブック
ロッド・A. マーティン
北大路書房
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笑いというのの心理学的分析。ハーレー先生たちの『インサイドジョーク』の出版が待たれる。


ビートルズ音楽論―音楽学的視点から
田村 和紀夫
東京書籍
売り上げランキング: 473,718

今年一番関心した著作家は田村先生。なんというか音楽を本当によく理解している感じがする。


The Oxford Handbook of Happiness (Oxford Library of Psychology)
Oxford University Press, USA
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勉強になったのはこれかな。心理学、哲学、宗教学と多方面からアプローチ。対立する立場もいろいろ紹介されていて見通しがいい。ペーパーバックとKindleも出てるはず。でも高いよね。


ブックガイド:倫理学入門の読書順

サンデル先生がテレビで放映されたり児玉聡先生の『功利主義入門』が出たりして(英米系の)倫理学が人気なようです。入門書を読んでいくおすすめの順番を考えたり。

功利主義入門―はじめての倫理学 (ちくま新書)
児玉 聡
筑摩書房
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まあやっぱりここらへんから。非常にクリアなのでどんな人でも読めるはずです。

プレップ倫理学 (プレップシリーズ)
柘植 尚則
弘文堂
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これは超初歩。クセがなくていいけど、ちょっと教科書っぽすぎるかもしれない。

2015年に出た品川哲彦先生の『倫理学の話』もここらへんで読みたい。大陸系の考え方も検討しているのがポイントです。

倫理学の話

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品川 哲彦
ナカニシヤ出版
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まあでもやっぱり英語圏のやつをちゃんと読みたい。

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
マイケル サンデル
早川書房
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最初の方だけ読んでわかったつもりにならないで、最後まで読みましょう。ネットで「トロリー問題で議論するサンデルは〜」って言ってるひとたちは最初の方しか読んでないみたいです。サンデル先生自身の立場はうしろの方に出てくる。

現実をみつめる道徳哲学―安楽死からフェミニズムまで
ジェームズ レイチェルズ
晃洋書房
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いま国内で出ているなかで、一番標準的な倫理学の教科書として使えるのはこれです。

 

法哲学

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瀧川 裕英 宇佐美 誠 大屋 雄裕
有斐閣
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『法哲学』ってことになってるけど、倫理学と共通の部分も多いし、権利や自由などの面倒な概念についてわかりやすい説明があるのでおすすめ。

動物からの倫理学入門

動物からの倫理学入門

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伊勢田哲治
名古屋大学出版会
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伊勢田先生のこの本も入門書としてとてもよい。肉食とか菜食主義とかそういうのからはじまって具体的な問題を通して進んでいくので実感しやすいはず。

 

新版 現代政治理論

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W. キムリッカ
日本経済評論社
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これはほぼ専門書というか、この本読みおえたら倫理学入門はおしまいです。「倫理学」の授業のテストでは必ずAをもらえるでしょう。

私個人としては、本当は倫理学ってのは、上にあげたような「正しさ」「正義」「権利」なんかだけじゃなく、もっと個人的な幸福、よい生き方、それにさまざまな道徳的・非道徳的感情を扱うもんだと思うけど(そこに政治哲学や法哲学との考察対象の違いがある)、そっち方面でよい入門書は今のところあんまりおもいつかない。


文章本

まあレポートとか卒論とか、文章は簡単には書けないです。私もこの歳になってもいろいろ反省したり。大学生ともなれば、はやいうちに「文章の書き方」関係のハウツーは何冊か読んでおく必要があります。

論理的に書く方法―説得力ある文章表現が身につく

論理的に書く方法―説得力ある文章表現が身につく

この本よい本だと思うので、amazonで安かったらどうでしょうか。「よい文章を書く」といよりは「よくない文章を見わける」「どこがよくないのかを具体的に指摘できるように」「よりよい文章に書き換えられるように」を目標としているのがなかなかよいです。

学生さんはお金がないのもあってこういう本にお金を使わない傾向があるみたいですが、最低限の自己投資はしなきゃならんです。買いましょう。けっきょく企業で働くとかってのも、企画書や報告書、マニュアルといった書類を作るのが主な仕事になるんでね。

文章のよしあしに敏感になると、好ましい副作用として、おかしな文章やおかしな意見やおかしな人を見わけることができるようになるかもしれません。

あれ、文庫になってるのね。

論理的に書く方法 (PHP文庫)

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同じ著者の

論理的な作文・小論文を書く方法―ナルホドと読み手を納得させる

論理的な作文・小論文を書く方法―ナルホドと読み手を納得させる

もいいかも。注文してみた。

あと大学生としてはamazonやbk1といったオンライン書店のアカウントを一つもっておくべきだと思いますね。本屋で探せない本もオンラインなら買えるし早い。ただしクレジットカードの使いすぎには注意してください。

お金がないひとは図書館を有効利用すること。大学図書館には購入希望を出す。京都市立図書館はかなりの品揃えで、オンラインで一番近い図書館に配送してくれます。便利。CDも借りられるよ。


面接行く前に読みましょう

就活のバカヤロー (光文社新書)

就活のバカヤロー (光文社新書)

 

タイトルで敬遠して読んでなかったんですが(光文社新書はそういうの多い)、よく調査が行き届いていると思います。おすすめ。


3回生のうちに絶対読みましょう

労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書)

労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書)

今ごろ読んだんだけど、非常に重要。いろいろ出ている「格差本」のなかで一番まともなじゃないかしら。非正規雇用(派遣やパート)の労働状況の現状(2、3年前だけど)を描いている第1章だけでも読みましょう。状況はもっと悪くなってます。

中堅私学だと歯応えがあるかもしれないけど、じっくり読めば読めます。これ読めるようになるのが2回生までの目標。就職ほぼ決まった4回生も読みましょう。決まってない人はもっと読みましょう。

正直なところ、大学教員というのは学生が就職したあとのことはほとんど考えてないので(私も。こういうのでロンブン書こうとしている先生たちは別だけど)、この手の情報は自分で勉強しておかないとアレです。正直、大学教員というのは自分の労働条件さえあんまり考えてないの。

あ、
これもね。

ワーキング・プア―アメリカの下層社会

ワーキング・プア―アメリカの下層社会

 

この手のはいろいろ出てるけど、この2冊でいいんじゃないかしら。詳しくはそういう先生に。


ミル自伝

ミル自伝 (大人の本棚)

ミル自伝 (大人の本棚)

みすず書房から出た村井章子訳の『ミル自伝』(「大人の本棚」とかってシリーズ)。解説のたぐいがまったくない。訳注もないみたい。人名ぐらい注つけてもいいのに。 『自伝』原稿出版の経緯*1や実際に訳出した版や原題*2すらもわからんのだが、みすず大丈夫か?光文社の例のシリーズの対抗なんだろうけど、ミルが誰かもわからず、人名も誰が誰やらわからんという状態でだいじょうぶなんだろうか。学生に勧めたいような勧めたくないような。微妙。

訳文は読みやすくていいんだけど、ちょっと文学臭が薄くなってしまっているような気がする。まあしょうがないかな。

たとえば

At first I hoped that the cloud would pass away of itself; but it did not. A night’s sleep, the sovereign remedy for the smaller vexations of life, had no effect on it. I awoke to a renewed consciousness of the woful fact. I carried it with me into all companies, into all occupations. Hardly anything had power to cause me even a few minutes oblivion of it. For some months the cloud seemed to grow thicker and thicker.

有名なこの「危機」*3の箇所は次のようになってる。

はじめのうち私は、すぐに抜け出せると思っていた。だがそうはならなかった。日々の小さな悩みを忘れさせてくれる一夜の眠りも、このときばかりは効き目がなく、朝になればたちどころに自分の惨めな状態を思い出す。友といるときも、仕事をしているときも、逃れられない。ほんの数分でいいから忘れさせてくれるものがあればよいのに、それもなかった。数か月の間、私はますます深みにはまるように感じられた。

岩波文庫の西本正美先生の訳だとこんな感じ。(戦後の版のやつが見つからないので戦前のやつの表記を変更して引用。みつかったら入れかえる)

最初私は、こうした心の雲はひとりでに消えるだろうとたかをくくっていた。ところが中々そうはいかなかった。人生の些細な煩悶を医するにはこの上もない薬である一夜の安眠も、私の悩みには何の効き目もなかったのである。私は目を覚ますと、新たにこの痛ましい現実に対する意識が更生するのを覚えた。いかなる友と交わるにも、如何なる仕事をするにも、この意識は私に常につきまとっていた。せめて数分間でもそれを私に忘れさすだけの力をもったものはまずなかったのである。数カ月間は、この雲はますます濃くなって行くのみであるように思われた。

この暗い雲*4 っていうイメージは(陳腐だけど*5)大事だと思うんだけどね。文学作品だとやっぱり残さないわけにはいかないだろう。でも村井先生の訳し方もありだな。装丁とか悪くない。このシリーズはけっこう楽しみだ。けど、2000円以内に収めたかった。無理か。

*1:生前は出版されなかったし、養女のヘレン・テイラーがいろいろ手を加えた部分がある。ミルが自分の性生活について書いてるのが残っていればおもしろかったのにね。ハリエットテイラーとはずっとプラトニックでした、とか。

*2:そりゃAutobiographyに決まってるけど。

*3:どうでもいいけど、ミルの「危機」の時代にインターネットがあったらどうだったろうとか考えちゃう。やっぱり2ちゃんねるメンヘル板や半角板に出入りしたかな。

*4:リストに”Nuages gris”っていう曲があるね。あら、International Music Score Library Projectって閉鎖したのか。

*5:陳腐さはミルの魅力の一部。


読書『女が男を厳しく選ぶ理由』

だいたい同じような話だろうと思っていると、ちょっとづつ進んでるのね。この手の学問やってる人はたいへんだろうけどやりがいもあるだろうなあ。ただ、たしかにこの本はかなり誤解されやすような気がする。
的確な書評は http://d.hatena.ne.jp/shorebird/20080116#1200490717 。もう私は shorebird さんが紹介してくれたものを順に読んで生きていくわけだ。

個人的におもしろかったのは、この人たちが金髪碧眼嗜好をわりと普遍的なものと考えている様子なところ。私自身の内観ではそういう嗜好をさっぱり見つけられないのでなんか愉快。さすがにバイキングたちの息子は違う。風に飛ばされてきた髪の毛一本から、「金髪のメリザンドよ」とやっちゃうに違いない。きっとわたしのご先祖にはそういう淘汰がかからなかったのだろう。南方系? カナザワ先生もブロンド好きなのかなあ。あ、ブロンドの女は馬鹿偏見の説明 1)それは若いから。 もよかった。 でもニキビ面馬鹿 2)若いから 仮説とか背の低いのは馬鹿 3)若いから 仮説が成立しなかったのはなぜか?他のところも、この人々独自の説明はなんかちょっと甘いんだよな。


References   [ + ]

1. それは若いから。
2, 3. 若いから