&aname(d19440411){昭和十九年四月十一日。};毎朝七八時頃飛行機の音春眠を妨ぐ。その音は鍋の底の焦げつきたるをがりがりと引掻くやうにていかにも機械の安物たるを思はしむ。そは兎も角毎朝東京の空を飛行して何の為すところあるや。東京を妨がんとするには其周囲数里の外に備ふる所なからざるべからず。徒に騒音を市民の頭上にあびせかけて得意満々たる軍人の愚劣是亦大に笑ふべきなり。この日陰。午後土州橋病院に至り健康診断を請ふ。銀座街頭の柳花開かざる前に早くも青くなれり。電車雑沓せず。街上行人漸く稀なり。

  食物闇値左の如し~
 一 白米一升  金拾円也     一 するめ一枚 一円也~
 一 酢一合   金壱円也     一 沢庵一本  五円也~
 一 食麵麭一斤 金弐円四拾銭也~
 一 雞肉一羽  金弐拾五円也  一 醤油一升  金拾円也~
 一 雞卵一個  金七拾銭也   一 バタ一斤  金弐拾円也~
 一 砂糖一貫目 金百弐拾円也~[[*>摘々録断腸亭日乗から]]
 一 砂糖一貫目 金百弐拾円也[[*>摘々録断腸亭日乗から]]

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