十月初三。日曜日。陰また雨。左団次?未亡人より書信。夜小説の草稿をつくる事二、三葉なり。雨歇まず。 十月初四。陰。夕刻浅草。飯田屋?食事。 十月初五。晴。正午酒井晴次来話。共に有楽町に往きプリュニエーに昼餐を食す。余独り丸ビル中央公論社に高梨氏を訪ふ。島中社長の馳走にて新丸ビル地下室の洋食屋に晩餐をなす。帰途高梨氏同道。上野よりタキシにて帰る。 十月初六。小雨。創元社来話。セキセイインコ二羽の中一羽死す。夜に入り雨霏々。小説四、五枚執筆。 十月初七。雨。午後に歇む。晡下有楽町フジアイス食事。浅草を過ぎて早くかへる。 十月初八。陰。午後凌霜子来話。雨夜に入るも歇まず。火鉢に火を置く。 十月初九。陰。夕刻浅草飯田屋?に飰す。短篇小説『心がはり』脱稿。暦を見るに十三夜なれど空くもる。 十月十日。日曜日。晴。午前酒井氏来り去昭和十二年九月病歿せられし余が母堂?の墓石を建つるとて石工の見積書を持来る。金五万五千円かかるといふ。半金弐万五千円を渡す。夜雨。 十月十一日。陰。後に雨。河出書房来話。終夜雨。 |