十月朔。雨後の空晴渡りて雲なし。庭上落葉狼籍たり。掃うて日暮に至る。夜執筆。 十月四日。蒸暑くして復豪雨あり。夜三十間堀の春日に徃き田口桜村井上唖々の二子と飲む。 十月十一日。岡鬼太郎君新作狂言今様薩摩歌の批評を草して雑誌新演藝に寄す。 十月十三日。偏奇館漫録の草稾を春陽堂に郵送す。 十月十四日。木曜会運座。帰途唖々子と春日に一酌す。妓を自働車に載せ唖々子を本郷の家に送りて帰る。 十月十五日。庭の落葉を掃ふ。 十月十六日。菊を植ゆ。 十月十八日。新着の仏蘭西小説を閲読す。 十月廿一日。大雨。夜に至りて益甚し。 十月廿二日。天候定まらず。新寒肌に沁む。 十月廿三日。隂。 十月廿四日。晴。午後湖山紫草の二子来り訪はる。此夜十三夜の月よし。虫猶鳴く。 十月廿六日。研究座見物。近来この種の演劇殆数るに遑あらず。 十月三十日。午後神田青年会館に徃き、外国語学校語学練習演劇を看る。帰途銀座風月堂にて松莚子に逢ふ。 十月晦。歯痛甚しく悪寒を感ず。 |