SNSでの刑法による性犯罪対策の話題はまだ続いいて、こんどは「従来の法制度は男性によって云々」とかっていう話が話題になってますが、まあこのタイプの主張は実はそれはそれなりに聞くべきところがあるんですよね。
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SNSでの刑法による性犯罪対策の話題はまだ続いいて、こんどは「従来の法制度は男性によって云々」とかっていう話が話題になってますが、まあこのタイプの主張は実はそれはそれなりに聞くべきところがあるんですよね。
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性犯罪関連法の改正とかを巡る議論で、セックス同意年齢と並んで重要なのが、日本の法律にある暴行・強迫要件というやつで、まあ現状では暴行や強迫によって抵抗を(いちじるしく)困難した、というのが「強制性交」とされるの必要になってるわけです。でも犯罪者に対して抵抗するというのはたいへんなことなので、そういう要件はもっと緩めるべきではないか、という議論があるっぽいです。むしろ同意があった(と少なくとも思った)ことの立証を容疑者の側に求めるべきではないか、というわけです。これはけっこう一理ある。イエスミーンズイエスってやつですね1。
バス先生の新しい本は、第8章でこの件に関してかなり重要な情報を提供していると思います。
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男性のセックスや恋愛に関する「認知の歪み」みたいなのがネットの一部で話題になっていたのですが、バス先生は最終第9章の「ギャップに気をつける」で、認知や欲求の男女差をちゃんと意識することが、セクハラやレイプなどの不幸な性的なできごと(その多くは男性が加害者)を防止するために有効だっていってます。
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私はフェミニズム思想みたいなのに魅力も感じれば反発も感じていて、まあだらだら読んだり駄文書いたりしているわけですが、今回みたいに「性欲では支配欲」みたいなフェミニスト的スローガンが「定説です」という形でネットや論文で出回るのを見るとき、いつもミル先生のことが思い浮かぶのです。まあいつもミル先生の話になっちゃうわね。いつも書いてることです。 続きを読む
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もうあんまり資料めくる気がなくなっているのですが、まあレイプの「動機」(原因というよりは動機)は性欲って考えるのが実証的ではあるようです。でもここで思弁的に、「レイプの主な動機性欲」って考えるのと、「支配欲だ」って考えるのと、どっちが性犯罪・性暴力を対策するのに役に立つかって考えてみたいですね。これは私の単なる思弁なので、全然アカデミックじゃないし(いつもアカデミックじゃないけど)、ほとんど根拠がないです。
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んでまあ、もうちょっとコメントしておくと、実際のところは「レイプとセックスは無関係」みたいな言い方をする人はあんまりいないんですよね。レイプとセックスは関係があるのはまあ主流派フェミニストの人も認めるはずですわ。我々のなかの一部の人は社会のルールとか、他人の苦しみ悲しみ迷惑なんかをあんまり考えない。そういう人々は、この相手とセックスしてみたいとなれば、相手の同意とか社会のルールとかを無視してそうしようとするわけです。そういう人は、欲しいものは万引するだろうし、お金がほしければ強盗するだろうし、お金払えば、そして払えればその相手にお金払うだろう。暴力はいやだ女が泣いてるところは見たくないっていう大多数の人間の一部が、お金払うのもいやだとなればらうまく誘惑しようとするだろうし、まあまじめにおつきあいしてプロポーズしてセックスしてもらう人もいるでしょう。まあそんなもん。 続きを読む
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ともあれ、マッケラー先生の『強姦』はアミル先生の研究を参照して議論が進められていて、内容的には穏健っていうか今読んでもそんな違和感はないです [1]実は、アミル先生のもマッケラー先生のも、白人と黒人で文化を論じて分けていて、それはものすごく違和感があるんだけど。 。くりかえしますがマッケラー先生の主張は「レイプは性欲が原因ではない」とは主張しておらず、性欲はもちろんかかわっているけれども他にも様々な原因がある、ぐらいです。 続きを読む
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References
↑1 | 実は、アミル先生のもマッケラー先生のも、白人と黒人で文化を論じて分けていて、それはものすごく違和感があるんだけど。 |
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まあ今回こんなん書いてるときにちょうど報道が大きめの事件がったので、マッケラー(マックウェラー)先生読みなおしたんですが、彼女の本では、「レイプの原因は性欲ではない」とは主張されてないんですね。 続きを読む
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重大な性犯罪が起きると、きまってSNSには「レイプが性欲によるものだというのは神話」「レイプ神話はいまだに社会にはびこっている」「レイプは性欲が原因ではない、支配欲が原因」みたいな書き込みがなされて広まるっていう傾向があるように思いますが、これはちょっとどうかという感じです。 続きを読む
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昼間ちょっと某氏と性犯罪対策みたいなのについて話をする機会があり、牧野雅子先生の『刑事司法とジェンダー』読みなおしたり。この本は非常に興味深い本で、元警察官で、警察学校の同期が連続強姦で逮捕されたという経験をもつ方が書いてる。警察内部の取調べマニュアルとか、その連続強姦魔の書簡や聞き取りなんかから構成されていて非常に読みごたえがある。性犯罪とか刑事司法とかそういうのに関心ある人は必読だと思いますね。 続きを読む
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ルソーには「先生」つけたくない、みたいなこと書いてしまいましたが、いけませんね。ルソー先生の言うこともちゃんと聞かねば。しかしこの人やばい。やばすぎる。まあ実生活でもかなり危険な人でしたが、書くものもやばい。私はこの先生の書くもの、なにを読んでもあたまグラグラしますね。理屈通ってないわりにはなんか情動に訴えかけるところがあって、健康に悪い。肖像画とか見てもなんか自信満々の怪しいイケメンで、なんか恐いものを感じる。 続きを読む
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セックスにおける同意が問題になるのは恋愛とかセックスとかそういうのには医療行為とか商売上の契約とかとはまったく違う面があるからですね。
お医者が患者を手術したくてしょうがない、みたいなことはないわけです。「手術させろー、シリツシリツ」みたいなのは困るっしょ。それに患者さんに、本人に病気とかがなくても切られたいと思ってほしいとも思わない。まあ「手術受けるならこの先生」ぐらに信頼しててほしいことはあるかもしれませんが、「あの先生に切ってほしいから盲腸になりたい」と思ってほしいとは思ってないだろう。ははは。 続きを読む
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医療におけるインフォームドコンセントだと、おおまかに(1) 同意能力、(2) 十分な情報、(3) 自発性・自律、の三つのポイントが有効な同意のために重要だってされてます。(1)同意能力はちゃんと判断して責任を負う能力があるってことですね。まともな判断できない人は(有効な)同意ができない。(2)の十分な情報ってのは、病気やその予想予後、薬の作用や副作用とか手術の危険性とかそういうのは患者は知らないことが多いので、情報を与えてもらわないとまともな判断できないし、それゆえ有効な同意もできない。(3)強制されてたり他からの圧力がかかってたりすると本人の意にそった同意ができないので同意が有効でなくなってしまう、というわけです。
この医療のインフォームドコンセントというモデルがセックスに適用できるかっていうのは、実は私自身はちょっと疑っていますが、それで考えてみる。
(1)の同意能力がセックスでも必要なのはふつう考えればその通りですわね。子供は自分の利益とかちゃんと判断できないから同意できない。だから日本の法律だと13歳未満の女子とセックスすると問答無用で強姦です。これはおそらく13歳未満の女子は同意する能力がないと考えられているからですね。しかし男子はOKっていうのはへんな気がしますね。まあ根拠はあるんでしょうが。こうした法定レイプを定めている国は多いです。一般には男女共通の場合が多いみたい。ただ「法定レイプ」statutory rapeの年齢を何才にするかっていうのは国によってまちまち。米国とかだと州によって違うと思う。
(3)はまあ当然。強迫してセックスというのはこれは強姦に他ならないわけです。っていうか(3)の自発性こそが性暴力とそうでないものを分けると考えられる。
これに対して、(2)の十分な情報っていうのが私が気になっている点で、セックスにおける十分な情報っていったいなんなんだ、みたいなことは思います。「私とセックスするとこういう感覚を味わいます」みたいな情報を提示する必要があるかとか。結婚してるかどうかとか性体験の数とかを秘密にしたりするのは許されるかとか。まあこれはまたあとで議論したい。
酒飲みセックスが問題になるのは、とりあえずお酒の影響で(1)の同意能力が損なわれている可能性があるからですね。まあちゃんと考えられなくなりますからね。前の記事でのアンチオク大学やブラウン大学は、アルコールがそうした能力を損うためにそういうセックスはいかん、と言いたいようです。
あと実は(3)の自発性もあやしい。お酒を飲んだのが完全に自発的だとしても、そのあとのセックスに対する同意みたいなのが本当に自発的といえるものなのかどうか。「お酒が私をそうさせたのだ」みたいな表現がありますが、酒を飲んでやった行動が自発的なものなのかっていうのはかなり疑問の余地がある。
まあこういうわけでインフォームドコンセントのモデルを使って酒飲みセックスを考えると、その条件を満してない場合がたくさんありそうで、ここらへんが倫理学者や法学者の関心をひくわけです。
そういやツイッタでは紹介しておいたけどこのビデオおかしい。私は何言ってるかまではちゃんと聞きとれないのでトランスクライブほしいな。途中でライトで酔っぱらってるかどうか確認してますね。用心深い弁護士だ。私も万が一のため、この女性弁護士雇ってみたいです。
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酒飲みセックス問題がおもしろいのは、あれですわ。フェミニストの皆さんの正しい活動のおかげで、女性のノーがノーを意味する、いやだっていったらいやだし、それを無視してセックスしたりするのは不道徳なのはもちろん犯罪だってことがまあ一般的になってよかったよかった。実際には日本の刑法では強姦はいまだに暴行や強迫をもって姦淫しないと強姦罪にならないわけですが、同意がなければ実質的に強姦だろうという意見が強くなっているようです。一方、女性が寝てたりアルコールその他で心身喪失や抵抗ができない状態になっているのに姦淫したら準強姦で、刑罰の重さは同じです。酔っ払って寝てたら同意できませんからね。
まあここらへんは一応問題がない。女の子のノーはノーです。これ読んでる男の子、いいですね。みんなでいっしょに大声で「ノーはノーを意味する」と唱えておきましょう。ワートハイマー先生が挙げてるシナリオだと次のようなやつ。(ワートハイマー先生はこういうシナリオを数かぎりなく作ってます。一部は実際に裁判になってたケースとかもある)
【ロヒプノール】AはBの飲み物に睡眠薬のロヒプノールを入れた。Bは気を失った。
【意識喪失】Bはコンパに出席し、大量のビールを飲んだ。Bは気を失った。
【朦朧】AとBは何度かデートしていたが、BはAが迫ってくるのを拒絶していた。今回、Bはかなり酔っ払ったが、気を失うほどではなかった。AがBの服を脱がせて迫ってききても、Bはなにも言わなかったが、弱って抵抗することができないのはあきらかだった。
【麻酔薬】歯医者のAは、Bが麻酔で意識を失なっているあいだに性交した。
ここらへんはもちろん不道徳だし、全部犯罪ですね。【朦朧】は日本の裁判でけっこう微妙な判断されちゃうことがあるかもしれないけど、裁判所の意識も変わっているでしょう。
しかし、時代は進んでいます。フェミニスト的精神が一般的になった今、「ノーはノー」ぐらいじゃヌルい。んじゃイエスだったら問題はないのか? イエスでも実はあんまり有効な同意じゃない場合があるんちゃうのか、というのが問題です。つまり意識失なわない程度に酔っ払っている相手とセックスするのはどうなのか、って話です。なんかいやな匂いがしますね。ギクっていう人はいませんか。
どうしてこういう話になるかというと、セックスは勝手にやると犯罪ですよね。相手の同意があってはじめて道徳的にも法的にも許容されるものになる。デフォルトではダメな行為。医療行為なんかと同じわけです。お医者がメスで人の体を切ったりすることが許されるのは、基本的には患者がそれに同意しているから。実際にお医者は患者さんを無理矢理治療することできません。ちゃんと「これこれこういう目的のためにこういう処置をしますよ」って説明して同意してもらう。インフォームドコンセント。
でもこのときお医者がとりつける同意は、有効な同意じゃなきゃだめなわけです。1歳児に「虫歯ペンチで抜くよ」「ばぶー(イエス)」とかやってもだめですわね。赤ちゃんには同意能力がない。なぜなら赤ちゃんは理性的に自分の利益とかを判断することができないから。入れ墨(タトゥー)なんかも酔っ払ってやってきたお客に「んじゃさっさとやりましょう」とか入れちゃったら罰されちゃうんじゃないすかね。知らんですけど。少なくとも道徳的には許されんだろう。お酒飲んだときっていうのは、いろいろ判断がおかしくなっちゃう人っているじゃないですか。私はわりと飲んでもそんな変わらない方だと思いますが、それでも説教くさくなったりします。そして世の中にはお酒飲んで酔っ払ってセックスしちゃう人びともいる。しかし(特に女性にとって)危険なことだと考えられています。まあ性病や(女性は特に)妊娠の可能性とかありますしね。
酒や各種の薬物の影響下で「イエス」っていっても、それは赤ちゃんが「ばぶー(イエス)」って言ってるのと同じようなものなんではないか。
数年前、「京都の大学生がコンパで集団強姦」みたいなネタがネットや新聞をさわがせたことがありました。なんかどうも卒業コンパかなんかで飲み屋で宴会して、そのまんま空き部屋で集団セックスしてとか(集団じゃなくて順番だったかもしれません)。その事件が実際にどうだったのかというのはさておいて、「下級生の女の子に酒飲ませてみんなでセックスするとは破廉恥!犯罪だ!少なくともすぐに退学にしろ!退学にしない大学は許せない!」みたいな論調が支配的だったことがあります。まあこの件は私もハレンチであると思うわけですが、酔っ払ってセックスするってことはそんな悪いことなのかどうか。そして悪いことだとしたら、それを法律とかで規制するべきなのかどうか。前回の記事に載せたブラウン大学なんかは学則でそういうの禁じているわけだけど、そういうのを各大学ももつようにするべきだとか、法で定めるべきだとかそういうことになるのかどうか。前に書いたアンチオク大学なんかもそういう学則をもってたわけです(12番「すべての参加者の判断力が損なわれていてはならない。(アルコール、ドラッグ、心理的健康状態、身体的健康状態などが判断力を損なう例であるが、これに限られるものではない)」)
刑法はよく知らんけど、酔っ払っている相手とセックスしたら性暴力だと言われると困るひとがたくさんいるんじゃないでしょうか。だいたい、デートしたりすると(飲める人どうしの場合は)お酒飲んだりするみたいですしね。サークルのコンパや合コンとかして「お持ち帰り」とかってのをする人びととかもいるとかって話を聞いたことがあります。都市伝説かと思ってたらそうでもないんですかね。昔高校生のころに村上春樹の『1973年のピンボール』っての読んで、バー(「ジェイズバー」だったかな)のトイレに女の子が落ちてたのでそれ拾って帰る、みたいな話があって、都会というのはそういうところなのか、すごいなあ、大学入ったら都会でバーに通っているとそういう経験をするのかしらと思ってたけどそういうのは見たことないですね。(ちなみに『ピンボール』の筋については斉藤美奈子先生の『妊娠小説』読んでおいた方がいいです)
あとお酒以外にも、彼氏と別れたとか、彼氏が浮気したとか、飼っていた犬が死んだとかで不安定になっている状態の人とセックスするのなんかもなんか少なくとも道徳的にはやばい感じがしますね。
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なんか(女子)大学生が酒飲んで街中で大量に倒れたりして話題になってますね。アルコール濫用はやめましょう。
まあ一部のサークルとかではほんとにお酒を使ってやばいことをしているようで、なんというか命の心配もあるし各種の性的暴行なんかも行なわれたりするだろうしいやな感じです。
そういや昔某学会で「性的同意」の問題をとりあげて、論文にしないでそのまんまになってたことを思いだしました。どういう同意が有効かっていうのはセックス倫理学のおもしろいネタで、特に酔っ払いセックスは実際の性犯罪やセクハラなんかと関係していて関心があります。
米国のブラウン大学で90年代なかばに有名な事件があったんですね。新入生のサラ(仮名)が土曜日に自分の寮の部屋でウォッカ10杯ぐらいのんで酔っ払って(私だったら死んでます)、そのあと近所でやってるフラタニティパーティー(まあ飲みサーのパーティーですな)にボーイフレンドに会いに行った。アダムという別の男が、サラが友達の部屋でリバースして横になってるのを見つけて水が欲しいか聞くとサラはイエスと答えた。アダムは水もってきて飲ませて、しばらく話をした。アダムがサラに、彼の部屋に行きたいかと聞くとサラはイエスって答えたので部屋に行った。サラは自分の足で歩けた。サラはアダムにキスして、服を脱がせはじめた。さらにアダムにコンドーム持ってるかとたずねた。アダムはイエスと答えて、セックスしたわけです。事後に二人は煙草吸って寝たそうな。起きてからアダムがサラに電話番号を聞くと、サラは教えたそうな。しかしサラさんはしばらくしてからやっとやばいことに気づいて、あわてたと。んで3週間後に寮のカウンセラーに相談してアダム君を訴えることにしたわけです。ブラウン大学は厳しいところらしくて、在学生規程みたいなのに「違反学生が気づいた、あるいは気づくべきであった心神喪失あるいは心神耗弱」の状態にあった相手とセックスしたら学則違反だというのがあるんですね。
まあこういう状態の女性(あるいは男性)とセックスするのは許されるかどうか。まあ正しい人びとは「そんなんもんちろんダメダメ」って言うかもしれなけど、ほんとうにそんなに簡単な話かな? 某学会ではこういう問題にとりくもうとおもってまあちょっとだけやりました。ネタ本はAlan Wertheimer先生のConsent to Sexual Relationsってので、これはおもしろい。
まあワートハイマー先生の議論はそのうち詳しく議論することにしましょう。今日 http://sexandethics.org っていうサイトを見つけて、こういうありがちなセックスにまつわる倫理問題みたいなのを議論する性教育カリキュラムを提示していておもしろいです。ここらへんのネタはやっぱりワートハイマー先生の枠組みでやってる(ただし全体の雰囲気はワートハイマー先生より女性に有利な感じなフェミニスト風味)。
たとえば次のような問題について議論してみよう、ってわけです。上のブラウン大学の学則は、飲んでセックスするのを禁止しているわけじゃなくて、意識なくなったりすごく酔っ払ってまともな判断が下せなくなっている場合にはだめだっていってるわけです。では、
上のブラウン大学の実際の事例とか考えながら答えてちょうだい、と。
さらには、ワートハイマー先生はあれな人なので、もっと奇妙なケースも考えてて、上のsexandethics.comの人も紹介してます。
【パーティー】 AとBはデートはしていたがセックスはしていなかった。Aが「今夜どうかな」とたずねると、Bは「うん、でもまずお酒飲みましょう」と答えた。お酒を飲んでBはハイになり、Aの誘いにこたえた。
【抑制】 AとBはデートする関係だった。Bはまだセックスするには早いと言っていた。Bの経験と他の情報から、Bはお酒を飲むと判断がおかしくなることを知っていた。しかしそれについてあまりよく考えず、Bはパーティーで何杯か飲んだ。AがBにセックスしようかと言うと、Bはいつもよりもずっと抑制を感じずに、「なんでも初めてのときはあるよね」と生返事をした。
【コンパ(フラタニティーパーティー)】Bは大学新入生だった。Bはそんなにたくさん飲んだことがなかった。Bははじめてコンパに参加して、酎ハイ(パンチ)をもらった。Bが「お酒入っているの?」と聞くと、Aは「もちろん」と答えた。Bは何杯か飲んで、人生ではじめてとてもハイになった。Aが自分の部屋に行くかと聞くと、Bは合意した。
【アルコール混入】 Bははじめてコンパに参加した。部屋には、ビールの樽と、「ノンアルコール」と書いてはいるが実はウォッカで「スパイク(混入)」されているパンチ飲料が置かれていた。Bはパンチを数杯飲んで、とてもハイになった。Aが自分の部屋に行くかと聞くと、Bは合意した。
【空勇気】AとBはデートする仲だった。Bはまだセックスの経験がなく、セックスについて恐れや罪悪感を抱いていた。シラフではいつまでも同意できないと思ったBは、1時間に4杯飲んだ。キスとペッティングしてからAが「ほんとうにOK?」と聞くと、Bはグラスを掲げてにっこり笑って「今なら!」と答えた。
【媚薬】媚薬が開発されたとする(現在のところ存在していない)。AはBの飲み物に薬を入れた。それまでセックスに関心を示さなかったBは興奮して、セックスしようと提案した。
【ラクトエイド】Bは、お腹が痛いという理由でAとのセックスを拒んでいた。乳糖不耐症が原因であることが判明したので、Bは乳糖不耐症用錠剤を飲んだ。この「薬」のおかげでBは気分よくなり、セックスに合意した。
ここらへんのそれぞれについて、同意が有効なのかどうか考えましょう、と。おかしなこと考えますね。みんなで考えましょう。
Consent to Sexual Relations (Cambridge Studies in Philosophy and Law)
2018年追記。上のブラウン大の事件は下の本でも扱われてます。良書なので読みましょう。
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Making Sense Of Sexual Consent
Sexual Harassment & Sexual Consent (Sexuality and Culture)
Consent to Sexual Relations (Cambridge Studies in Philosophy and Law)
The Ethics of Consent: Theory and Practice
Coercion (Studies in Moral, Political, and Legal Philosophy)
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