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ビバップの和声的側面(4) コードの装飾の不如意実例

http://yonosuke1965.blogspot.jp/2012/12/3_1000.html

でジャズミュージシャンは勝手にコードを変えて演奏するのだ、そしてそれは打ち合わせないのでぶつかったりするけどかまわん、という話をしましたが、やっぱり実例がないとわからんと思うので、不肖私が不如意ながらも実例を見せたいと思います。

たとえばまあ、
| C | Dm7 / G7 | C | Dm7 | G7 |という譜面があったとします。

全員そのまんま演奏するとこういう感じになります。

バップ以降のプレイヤーは、これだとなんかたるいというかつまんないと思うわけです。もっと変化させたい。
そこで、ピアニストは | C / A7 | Dm7 / G7 | と弾きたいと考えてこんな感じになります。

ちょっとだけカラフルになりました。ベースにもソロにもなにも相談してないですけど特に違和感はないです。実はぶつかってんですけど。

ベースはそれを聞いて、んじゃ俺もA7弾くわー、っていって弾きます。A7かAm7かわからないけど。
ベースの人はそれにも飽きて、| C A7 | Dm7 Db7 |と弾くことにする。いわゆる「裏コード」とか「裏に行く」とか言われます。

こんでも別に問題はない、と。適当なんすよ。気分によって弾きわけたりするんちゃうかな。
ピアニストはもうちょっとカラフルにしたいので、前に紹介した「上から来る」って技を使います。これ私できないんですがなんとか練習しました。

んで、ソリストもベースやピアノの様子を聞いてちょっと考えて、 うしろは| C / A7 | Dm7 G7 G7alt | と弾くことにした、と。

まあこんな感じなわけです。実際にのプレイヤーたちはこういうのを相手がなにをやっているのかをその場で耳で判断してそれに合うようにするわけです。ピアノからしかけるときもあればソリストにピアニストがあわせることもあるし、まあそういうんでジャズは会話だと言われるわけです。耳と頭がよくないとできないので私にはできませんが、そういう微妙なやりときを楽しめるようになるとジャズがどんどんおもしろくなってくるわけす。「あ、当たってる」とか「おーぴったり」とか。
実際、ライブハウスのジャムセッションとかに行くと、音が当ったときは顔を見合わせたりしますね。特にピアニストの人は、解釈が分かれやすい分では「このひとどうするんだろう?」みたいな顔してソリストを見てます。そういうのもジャズのおもしろさの一つです。


ビバップの和声的側面(3) コードの修飾

んじゃ具体的にどういうことをしているのか。実はもうなにやってもかまわんのですが、いくつかよく使われる手段がある。

実は前に「コード進行を複雑にする」とかってのがそのまんまなんすよ。

置き換え

G7とかを勝手にDm7 – G7 にしてよい。
| C | C | G7 | G7 | と指定されているのを、| C | C |Dm7 | G7 |とかにしてかまわんし、Dm7の前にA7とか置いて | C | A7 | Dm7 | G7 |と考えてよい。最初のと最後のは機能的に同じなんす。逆に言うと | C | A7 | Dm7 | G7 |と書いてあるのを面倒だから| C |  C | G7 | G7 |だ、と考えてもよい。まあビバップの人々は細かくするのが好きなのであんまりやりませんが、テンポ速くなってくると面倒なのでおまえらまとめてぜんぶG7とみなします、とかってのもありらしい。

隣に行って帰る

| C | C | G7 | G7 |ってのを | C | C | G7 Ab7 | G7 |と考えてよい。半音お隣にいついってもかまいません。よく使われる。

いったん上に寄ってから来てもよい

 | C | A7 | Dm7 | G7 |というのを | C | A7 | Dm7 | Ab7 G7 |と考えてよい。

5度でつないだら前にいろいろ置いてよい

まあ条件はちょっとあるんですが、
| C | C | Dm7 | G7 |ってあるのの前に5度上からせまってきて、| C B7 | Em7  A7 | Dm7 | G7 |とやってもよい。

通りすがりにいろいろやってよい

スケールの上にあるもんだったら適当に拾って弾いてよい。
| C | C | Dm7 | G7|とあるのを、Cメジャースケールの上で | C Dm7 | Em7 A7 | Dm7 | G7 |とやってよい。半音階でもよくて、| C | Dm7 | Em7 | Dm7| とあるのを | C C#dim7 | Dm7 D#dim7 | Em7 Ebm7 | Dm7 | とかやってよい。

7thコードを3全音(増4度、フラッテッド5th)離れた7thにしてもよい

| C | Dm7 G7 | ってのを | C | Dm7 Db7 | ってやっていい。
まあこんなふうにいろいろあって、これをピアノもベースもホーンも勝手にやってよい。ぶつかったらぶつかったで考える、そうな。その場で合うように調整したり。まあ演奏しているうちにだんだん「どうすんですか」「俺はこうしたい」「そうですか、んじゃそうしますわ」みたいな折り合いがついていくという話。あんまりぶつかりつづけると喧嘩になるらしいですけどね。
んー、やっぱり実例がないとあれかな。でもうまく弾けないからな。ゆっくりだったらいけるか。


ビバップの和声的側面(2) 勝手にいじる

まあ今日はお休みにしたので、1日かけてやってみましょう。

まず重要なことは、ビバップ以降のジャズというのは多層的な音楽だということです。

先に書いたエントリで「ビバップはポリリズムだ」って書いたんですが、これは複数のリズムが重なりあってるって意味で多層的なんですね。しかし実はリズムだけでなく、和声も多層的になっているのです。たとえばサックスとピアノとベースの3人がいる場合、この3人が同じコードを演奏しているとは限らないんですわ。

まあもちろん楽譜というかリードシート(メロディーとコード進行だけ書いてるのを使う)には「この部分は | C | Dm7 G7 | 」とか書いてあるわけですが、これをピアノの人は |  C A7 | Dm7 Ebm7 Dm7 G7 G7(b13)|と考え、ベースの人は | C  A7 | Dm7  Db7 |と考え、サックスの人は同じ場所を1回目 は| C  | G7 | と考え、2回目は| G7| Db7|と叶えている、ということがありえるということです。当然音がぶつかって不協和な響きがしますが、それがジャズの響きなんす。

それにそもそも | C | Dm7 G7 | というのが原曲だとしても、「これは | C | Dm7 Db7|」とすることにしよう、みたいに相談して、かつ、上のような事態になる場合もあるし、
事前に相談するんじゃなく、その場でおこなわれる場合もある。非常にいいかげんな音楽でもあるわけです。

私自身本を読んでもこういうことの意味がわからなかったのです。ジャズ教則本には「コード進行の修飾の仕方」みたいな項目があるのですが、「なんでコード進行をいじる必要があるの?」とか。なぜそういう項目があるかというと、ミュージシャンはその場でコード進行をいじって(というか頭のなかで置き換えて考えて)弾くんですね。

前のエントリでConfirmationを聞いたときに、ピアノが「パッパー、パ」とか間の手を入れてるのはあれは頭のなかでコード進行を適当にいじって、それを弾いているのです。驚きましたか。私は驚きました。

おそらくこういうことを書いている本はそれほどないのではないか。


ビバップの和声的側面(1) 前置き

ビバップはリズムも非常に特徴があるのですが、和声的にもいろいろなことをしていて、これ解説するのは猛烈にたいへん。うまく解説するとお金が発生するくらいたいへんなのではないかと思うです。でもネットでうまい解説を見たことないので、ちと書いてみたい気はある。

でも実際には私は弾けないので頭でっかちな話になってしまう。音楽を鑑賞する上でもしあれば豊かになるような解説が書けるかどうか。

ミュージシャンは知ってるけどミュージシャンしか知らないこと、ってのが世の中にはあるんですよね。ジャズ批評家たちはなにもわからずに勝手に印象を書いているだけなわけで。菊地成孔先生はさすがにミュージシャンなだけあってすばらしい解説をしてくれているです。でもまあ素人向けにしたもんだわね。もうちょっとつっこめないか、という話。

(ビバップ)ジャズの和声理論はその後のポピュラー音楽の理論でもあって、それを開発したのが40年代のジャズミュージシャンたちってことになるんだと思います。偉大すぎる。彼らはたんに「思うように吹いてる」わけじゃなくて、いろいろ楽譜書いたり実際に演奏してみたりして理論を作りだしていった。それが60年代ぐらいにバークリーとかの教育メソッドになってミュージシャンの間で広まっていって、いまのポップ音楽があるわけです。そういうので非常に重要。

たとえば40年代後半〜50年代には日本のジャズミュージシャンたちはアメリカで何がおこなわれているかわからなくて、日本に来た米兵ミュージシャン(ハンプトン・ホーズとか)に教えてもらったり、レコードいっしょうけんめいコピーして「こう考えてるんちゃうか」ってやったり、それでもわかんなくてなんとかして海外留学したり(穐吉敏子先生は偉大だ)。渡辺貞夫先生がメソッドもちかえって帰国してからやっとわかった、みたいな感じなんちゃうかね。

まあとにかく複雑精緻。逆に、ビバップの和声の理論を理解すると、たいていのポップ音楽の作りを理解することになる。そういうポップ音楽の核の部分。私のような素人が書いてもあんまり意味ないんちゃうか、と思うんだけど、素人しか書けないこともあるんではないか、とも思ったりして。そういやこれはポピュラー音楽学会に入会するための業績づくりの一環なのです。あるていど「音楽知ってますよ」ってアピールしておかないと入りづらいじゃん。ははは。


簡単なコード進行理論(2) ちょっと複雑にして、大きな構造を作る

ポピュラー音楽や西洋音楽はケーデンス(カデンツ)を組み立てたものだ、って話の続きです。

ケーデンスには有名なのがいくつかあって、

  • IV – V7 – I
  • IIm7 – V7 – I (いわゆるツーファイブ・ワン、ポピュラー音楽の基本)
  • IV – IVm – I

とかまあいろいろサブドミナント、ドミナント、トニックのいろんな組合せに分類されます。まあ別におぼえる必要はなくて、無理して勉強しなくてもだんだん蓄積される。

んでそれをさらに複雑にする方法ですが、たとえばIIm7 – V7 – Iっていう進行(Dm7 – G7 – C)を複雑にするにはいくつかの方法がある。

まず、和音に音を足して(エクステンション)、ぶあつくて色彩感あるのにする。
C△7 – Dm7(9) – G7(13) – C6とか。こんな感じ。


ポピュラー音楽では5度進行ってのが好まれて、どんな和音の前にもその直前に5度上の和音を置いていい。なので、Dm7 – G7 – Cっての前にAm7を置くとこんな感じ。


Am7じゃつまんないからもっと色彩あるようにするにはA7にする。C- A7 – Dm7 – G7 -C。

7thコードの前にはその5度上のマイナー7thを置いていいとかって規則もあるので
C – Em7 – A7 – Dm7 – G7 – C


IIm7- V7 (Dm7 – G7)の次にIいっちゃうと終っちゃうから、C△7と似た音のEm7に起きかえてぐるぐる同じこと繰り返したりもできる。Em7 – A7 – Dm7 – G7 – Em7 – A7 〜 いわゆる「ジュンカン」(循環)進行。Dm7からはじめると「ギャクジュン」

こんな風にカデンツを延長して複雑にしてくと、たとえばこんな進行ができたりする。つきなみ。

C | Bm7-5 / E7 | Am7 | F | Dm7 / G7 |

これを2回くりかえしたらもうだいたいポップな感じになる。部品を組み立てて成長させる感じ。

くりかえしはポピュラー音楽の基本ですが、2回くりかえすと飽きちゃう。そこでもっと大きい構造を作る。

C | Bm7-5 / E7 | Am7 | F | Dm7 / G7 |
C | Bm7-5 / E7 | Am7 | F | Dm7 / G7 |
F | Fm | C / G7 | Am7 G7 |
F | Fm | C  | Dm7 / G7 |

いわゆるAABB’形式。で、適当なメロディーをつけると楽曲もどきが完成するわけです。

これも卒業パーティーのために作った曲で、うどんちゃんとややという二人に協力してもらいました。っていうか演奏は彼らで私はあれしただけ。でもいまだに気にいってます。
歌詞はその後微調整しました。

まあこんなのは音楽理論とも言えない初歩の初歩で、とりあえず楽器なんかできる人は1ヶ月〜3ヶ月ぐらいで中級になれるので、怖がらずに勉強してみてはどうでしょうか。

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まあもっとも、音楽を自分で作るようになるひとは理論勉強する前に実際に作りはじめてしまうもんですけどね。


簡単なコード進行理論 (1) ケーデンス

私が思うに、ポピュラー音楽を構成するものは (1) 規則的なリズム/ビート、(2) 基本的に西洋古典音楽に依拠した和声理論、(3) 歌いやすい/わかりやすいメロディー (4) 歌詞 (5) くりかえし (6)ある程度の即興性、アドリブみたいなのに分けることができます。

和声(コード)理論についてもちょっとレクチャーしてみたい。

以前のエントリで、JBのSex Machineは2個しかコードがない、スライのThank Youは1個しかない、とか書いてみましたが、まあふつうのポピュラー音楽は2個では音楽にするのがむずかしい。

基本的に西洋音楽の枠組で大事なのはいわゆる三和音「ドミソ」だ、主和音ってことになってます。でも実はドミソよりだいじなものがあって、それはドミナントとか属和音ソシレファです。

まあちょっとこれをどうぞ。


起立!礼!着席!のやつですね I -V – I、C-G-Cです。最初のIがドミソのトニック(主和音)で、2個めのソシレがドミナント(属和音)、そしてトニックにもどります。まあトニックが大事だっていえば大事なんですが、どうだいじかっていうとドミナントを鳴らされると次にトニックを聞きたくなる、って性質がある。まあ音楽の重力というか。これが西洋古典音楽の核の部分にあるものです。

この二つだけだとほとんどなにもできないので、ふつうはサブドミナンド(副属和音)、IV を使って I – IV -V – Iのようにします。まあこんな感じ。

こういう「終った感」があるのをケーデンス(カデンツ)と言いまして、音楽のブロックであって基本的なのが何種類かある。これは一番単純なやつの一つ。こういうのを複雑にしたり組合せたりして音楽というのは構築されるわけです。
まあとりあえずトニック、ドミナント、サブドミナントの三つがそろうとだいたいなんとか西洋音楽を作る最低限の材料みたいになります。実際、単純な民謡みたいなのとかフォークソングとかはこれだけでできてるのも多い。

私も1個作ったことがあるので聞いてください。昔学生様の卒業パーティー用に作った一発芸。

コード進行を書くと、
C | F / G | C | F / G | C | F / G | F /G | F / G | C
これだけです。ミソは、同じことを2回くりかえして3回目はほんのちょっとだけ変えることですわね。それが意外性が出る。 C – F – Gって2回くりかえしたので次もCを期待しているところにF -Gをくりかえしているのでジレて最後のCになったときに落ちつく感じ。

まあ腕も声も悪いし、これけじゃとても音楽とは言いがたいけど、人をニコリとさせるぐらいはできるかもしれない。私の思うところによれば、こうしたブロックみたいな単細胞音楽みたいなのを積みかさねて音楽というものは構成されていきます。