六月九日。晴又陰。Maurice Magreの小説L'Appel de la bêteを再読す。巴里街娼のことをかきたるもの、十年前新刊の際一読したるものなり。晩間近藤?を訪ふ。銀座にて酒泉万本の二子に逢ひ酒館太訝に一茶す。女給駒子絹代?を拉して柴口の安兵衛に飲む。壁間に久保田万太郎氏の発句あるを見る。雨降り来りしかば駒子と共に車に乗る。駒子我が家に従ひ来り扇子二本を持ち帰る。雨忽霽れて明月雲間に現はる。十七夜の月なるべし。

六月廿九〔「八」抹消〕日。くもりてむしあつし。晡下土州橋なる大石医院に往く。食事には猶早ければ歩みて濱町河岸に至り講演のベンチに憩ふ。鉛色したる薄霧立迷ひて河上の眺望甚醜汚なり。公園の小径には狼の如き軍用犬を曳きて歩むもの四五人もあり。通行の人歩を停めて皆之を稱美す。人心の殺伐察するに餘りあり。燈火點ずる比銀座に至り食事して後キユペル茶店に憩ふ。神代酒泉万本の諸氏相會す。相携へて三十間堀地蔵尊の縁日を歩む。


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Last-modified: 2015-01-28 (水) 17:14:58 (788d)