昭和四年二月十一日 晴れて風寒し、午前中洲に徃く、脚気及梅毒の注射をなす、途次車にて丸の内を過るに青年団の行列内幸町辺より馬塲先門までつゞきたり、先達らしき男或は日本魂或は忠君愛国など書きたる布片を襷がけになしたり、是日紀元節なれば二重橋外に練り出して宮城を排するものなるべし、近年此の種類の示威運動大に流行す、外見は国家主義旺盛を極るが如くに思はるゝなれど実は卻て邦家の基礎日に日に日に危くなれることを示すものなるべし、何事に限らず外見を飾りて殊更気勢を張るやうになりては事は既に末なり、然れども今の世に身を処するには何事に限らず忠君愛国を唱へ置くに如かず、梅毒治療剤の広告にも愛国の文字は大書せられたり、帰途銀座に飯し牛込を過ぎて帰る、*


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Last-modified: 2015-01-10 (土) 13:10:45 (806d)