十二月十三日。 快晴。温暖春の如し。午下小林氏と共に八幡の登記所に至り売主代理人と会見し家屋の登記をなす。小林氏いふは和洋衣類の売買をなすもの。余とは深き交あるに非らず、今春余は唯二三着洋服を買ひしことあるのみ。然るに余が年末に至り突然家主より追立てられ途法に暮れ居るを見て気の毒に思ひ其老母と共に周旋すること頗懇切なり。今の世にも親切かくの如き人あるは意想外といふべし。小林氏の老母は猶心あたりをさがして女中になるべきものを求めて後引越の世話をすべしと言ふ。万事を頼み家に帰り疲労を休めて後燈刻浅草に行きて夕餉を喫す。今宵も狭霧街を籠め月影あかるし。

 ▼菅野一、一二四番地平家建瓦葺家屋十八坪金参拾弐万円。登記印紙代二千四百円。登記証記載金高五万円。*


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Last-modified: 2015-01-10 (土) 17:16:58 (866d)