一月初九。晴。暖。午下省線にて浅草駅に至り三ノ輪行電車にて菊屋橋より公園に入る。羅災後三年今日初めて東京の地を踏むなり。菊屋橋角宗円寺門前の石の布袋恙(つつがな)くして在り。仲店両側とも焼けず。伝法院無事。公園池の茶屋半焼。池の藤恙し。露天の大半古着屋なり。木馬館旧の如し。其傍に小屋掛にてエロス祭といふ看板を出し女の裸を見せる。木戸銭拾円。ロツク座はもとのオペラ館に似たるレヴューと劇を見せるらしく木戸銭六拾円の札を出したり。公園の内外遊歩の人絡繹(らくえき=続く)たるありさま戦争前の如し。来路を省線にてかえる。亀戸平井あたりの町々バラツク散在す。*

一月十日。晴。暖。来訪者を避けむとて午下市川駅前より発する上野行のバスに乗り浅草雷門に至る。歩みて言問橋をわたり白鬚に至る。白鬚神社蓮華寺共に焼けず。外祖父毅堂先生の碑無事に立てるを見る。地蔵坂下より秋葉神社前に出る横町にもと玉の井の娼家移転せり。この辺も焼けざりしが如し。向島は災を免れし処随分あるやうなり。言問橋際電車通の片側また吾妻橋東詰にも瓦屋根の二階ところどころに残れるを見る。罹災の如何は一々実地について調査するに非らざれば知り難し。秋葉社前にて金町行バスの来るに逢ひ之に乗る。途中乗客雑沓して下ること能はず金町に至り京成電車に乗りかへ四時頃家にかへる。岡山三門町大能氏干柿を郵送せらる。*


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Last-modified: 2015-01-10 (土) 18:33:16 (895d)