九月初七。午前驟雨雷鳴あり。無花果熟して甘し。近鄰の南瓜早くも裏枯れしたり。鳳仙花白粉花秋海棠皆満開。木芙蓉の花また満開となれり。町会事務所にて鮭の缶詰の配給をなす。噂によれば此等の缶詰は初軍部にて強制的に買上げをなせしもの。貯蔵に年月を経過し遠からず腐敗のおそれありと見るや町会に払下げをなし時価にて人民に売つけ相当の鞘を得るなり。軍部及当局の官吏の利得これだけにても莫大なりと云。日米戦争は畢竟軍人の腹を肥すに過ぎず。その敗北に帰するや自業自得と謂ふ可しと。これも世の噂なり。××(ママ)氏に送る返書の末に、

世の中は遂に柳の一葉かな  残柳
秋高くもんぺの尻の大なり  〃
スカートのいよゝ短し秋のかぜ  〃
スカートの内またねらふ薮蚊哉  〃
虫きゝに銀座を歩む月夜哉  〃
亡国の調せはしき秋の蝉  〃
秋蝉のあしたを知らぬ調べかな  〃

昭和19年10月?

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Last-modified: 2015-02-15 (日) 08:45:34 (833d)