昭和十八年十二月卅一日。今秋国民兵召集以来▼軍人▲専制政治の害毒いよいよ社会の各方面に波及するに至れり。親は四十四才にて祖先伝来の職業を失ひて職工となり、其子は十六七才より学業をすて職工より兵卒となりて戦地に死し、母は食物なく幼児の養育に苦しむ。国を挙げて各人皆重税の負担に堪えざらむとす。今は勝敗を問はず唯一日も早く戦争の終結をまつのみなり。然れども余窃に思ふに戦争終結を告ぐるに至る時は政治は今より猶甚しく横暴残忍となるべし。今日の軍人政府の為すところは秦の始皇の政治に似たり。国内の文学芸術の撲滅をなしたる後は必ず劇場閉鎖を断行し債券を焼き私有財産の取上げをなさでは止まざるべし。▼斯くして日本の国家は滅亡するなるべし。▲

〔欄外朱書〕疎開ト云フ新語流行ス民家取払ノコトナリ

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Last-modified: 2015-01-10 (土) 16:45:03 (865d)