二月三日。 快晴の天気立春の近きを知らしむ。午後銀座に徃き食料品を購ひて帰る。霊南阪を登るに坂上の空地より晩霞の間に富士の山影を望む。余麻布に卜居してより二十年未曾て富士を望み得ることを知らざりき。家に至るに名塩君来りカメラ撮影の方法を教へらる。夜八時W生其情婦を携来る。奇事百出。筆にすること能はざるを惜しむ。此日より当分自炊をなす事とす。一昨日下女去りて後新しきものを雇入るゝには新聞の募集の広告をなすなど煩累に堪へざるを以てなり。W生帰りて後台処の女中部屋を掃除し、夜具敷きのべて臥す。畳の上に寐るも久振りなれば何ともなく旅に出でたるが如き心地なり。*


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Last-modified: 2015-01-10 (土) 14:26:58 (806d)