昭和十二年十月四日。 陰又晴。写真燒附。昏黒浅草に飯す。

或人のはなしに、去る頃熱海の或旅館に共産党々員数名宿泊し居たるを、刑事等大勢捕縛に向ひたり。{八月中の由新聞には記載せられず}党人はピストルを放ちしが弾丸尽きて遂に捕へられたり。一人の刑事党人の一人に縄をかけむとする時、拳にて其顔を打ちしに、党人冷かに笑ひ、君は生命がけにて我等を捕へたり。されど政府より賞与を受くるものは君には非らず、賞与を得るものは我ピストルにて打たれ傷つきしものなり。政府の行賞はいかなる時にも公平なりし例なし。君は他日必ず我の言の当れるを知るべしと言ひしが、果して其言の如く、賞与は無事なる刑事には下賜せられざりき。是に於て其刑事は深く感ずる所あり、刑事の職を辞し、松竹キネマ会社?の雇人となりしと云ふ。又或人のはなしに、戦地に於て出征の兵卒中には精神錯乱し戦争とは何ぞやなど譫語を発するもの尠からず。其等の者は秘密に銃殺し表向は急病にかゝり死亡せしものとなすなり。〔以下二字下ゲニテ六行弱抹消〕*


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Last-modified: 2015-01-10 (土) 15:28:47 (834d)