十二月十一日。晴。夜木曜会に行く。忘年句会にて句相撲の催しあり。

十二月十二日。晴。

十二月十三日。午後風なければ落葉を焚く。夜母上の安否を問ふ。母上の許には威三郎の幼児二人あり。行儀悪しく育てたると見え、母と予と対坐する傍に走り来り、椅子に攀ぢ、茶をくつがえし、菓子を奪ひ、予に向つて早く帰れなどと面罵す。世に悪童は多しといへども大久保の子供の如きはいまだかつて見ざる所なり。威三郎夫婦は野猿の如き悪児二人を年老いたる母上に託して、朝鮮の某処に居住せるなり。これ人の親たる務を尽さず、また子たるものの道にも反けるものといふべし。威三郎はかつて余の妓を納れて妻となせしを憎み、爾来十余年義絶して今日に及べり。この夜悪童の暴行喧騒に堪えず、母上とは長く語ること能はず、初更辤して帰る。わが家の戸を推して内に入れば闃として音なく、机上に孤燈の熒熒たるを見るのみ。余は妻子なき身の幸なるを喜ばずんばあらず。枕上『柳湾漁唱』第三集を読んで眠る。


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2015-01-12 (月) 16:47:32 (893d)