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無調音楽入門(6) バルトークはかっこいいよ

まあシェーンベルクがいろいろやってるときに有力だったのはドビュッシーのライン、ラヴェルやストラヴィンスキーのライン(ドビュッシーとラヴェルはぜんぜん違う派閥なのではないかと思います)、そしてバルトークのラインですか。

バルトークは好きなんすよね。なんていうか、ちょっとインテリのふりしたかったらiPodにバルトークの弦楽四重奏入れておいて通勤に聞くといい、みたいなそういうウケ。まあそういうかっこつけはおいといてもよい曲をたくさん書いてます。

今「中国の不思議な役人」とかいくつかの演奏バージョンで聞いてるけど、かっこいい。

まあこういうのはパソコンのスピーカーじゃうまくなならないので図書館とかでCD借りてみてください。金管楽器がブウブウ言うし弦楽器も暴れまわるし。

おそらくYoutubeにはバレエの動画もあると思う。

バルトークがなんぼ偉かったか、というのは、これ書いているときのお手本の一つにしている小倉朗先生の名著『現代音楽を語る』を読むとわかります。この本はすばらしい一冊なのでぜひ入手してください。1970年の本で、日本の作曲家たちがどういうふうに無調音楽とかを理解していたのかもわかる。

現代音楽を語る (1970年) (岩波新書)
小倉 朗
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無調音楽入門(5) 別に道もたくさんあったんだけど

しかしまあシェーンベルク先生みたいな方向しかなかったのか、というとそういうわけではないですよね。1890年ごろにはサティ先生とかワグナーっぽいものとはぜんぜん無縁な世界を作りだしてるし。

この曲は、ワーグナーのあのしつこいセックス、じゃなかった不協和音や調性を感じさせるためのドミナントや転調みたいなのとは無縁の新しい世界を作ってる。楽譜見るともう小節線さえなくてキレてる感じ。

シェーンベルク先生が作品11作った翌年ぐらいにはドビュッシー先生が「前奏曲集」出してるけど、そのなかにはいろいろ調性的におもしろい曲も多い。

この「ヴェール」っていう曲なんかは実は(真ん中の部分を除いて)はっきりした調性がない。全音音階ってやつをつかってる。

第1曲の「デルフォイの〜」なんかも新鮮な響きで、初めて聞いたときはすごい印象的だった。

もっと前にもどって、「牧神の午後への前奏曲」なんかロマンチックでワグナー的なところもあるけど新鮮な音がしますよね。

まあ他にもいろんな道もあったのをシェーンベルク先生は知ってたけど、なんか「ドイツ-オーストリア的」じゃないから却下だってことらしい。よくわからんけど。


無調音楽入門(4) 名曲誕生

んでシェーンベルク先生、「清められた夜」とか巨大オーケストラ使った「グレの歌」みたいなおおげさなものを捨てて、いろいろやるわけです。最初はピアノ曲みたいなものではじめて、2〜3年ぐらいすると大傑作ができる。

ヒントになったのはキャバレー音楽。

まあこれは1970年ごろのミュージカルだけど、雰囲気はこういうのがあったわけでしょうね。ケバい女性が数本の楽器をバックに歌っていやらしい、みたいな。映画『愛の嵐』はナチス期で時代が違うけどまあ似たようなのがあったんでしょう。

で、これを思いっきり歪ませるとこういうのができる。「月に憑かれたピエロ」(1912)。上の動画みたいな退廃した雰囲気を思いうかべながら聞いてみてください。

 

なんか悪夢見てるみたいですごいっす。こう、ワーグナーとか「清められた夜」みたいな美しいことは美しいけど大袈裟で鬱陶しくてなんか嘘くさいものからなんか脱皮してぜんぜん違う世界が広がっている。ああいうのは中世の神話だと、愛だの恋だのなんか女子どもの世界みたいだけど、こっちは汚い世界、狂った世界を歌います、みたいな。かまあこれはこれで嘘くさいんですが。20世紀最初の20年ぐらいのウィーンってのはもう虚飾の街みたいなところだし、こういうのがそれはそれで説得力あったわけですわね。フロイト先生とかそういう人々がセックスのことばっかり考えた時代でもある。キャバレーあたりに題材をとって、現実のあんまりきれいじゃない世界がデフォルメされてるわけです。

Youtube動画は楽譜もついているので見てみると、作品11のときはそれなりにまだ昔の音楽と同じような譜面の見た目になってますが、この作品なんかは拍子は変わるわメロディーが小節をまたいでるわごちゃごちゃしていて違う世界に入っているのがわかりますね。もうシェーンベルク先生は本気で19世紀的な音楽を壊しに行ってる。

シェーンベルク先生はここらへんで自分を確立している。誰の物真似でもないし、美しい。


無調音楽入門(3) 調性を拡張して美しい曲を作ろう

まあ「清められた夜」みたいなのをいくつ書いても同じようなもんですわね。芸術家というのはもっと新鮮なことがしたい、と思うんだと思います。

んで、んじゃカデンツとかキメたりして調性とかでつれまわすのやめて、もっと自由にやってみたら別の美しい音楽ができるんではないか、と。

「三つのピアノ曲」作品11っていう記念碑的作品の1番目の曲がこんなんできましたー、みたいな。1909年ぐらいっすか。うっすらリストのロ短調ソナタを短縮して密度高くしてみませした、みたいな雰囲気もある。

まあ「無調音楽」とかって言われるけど、こういうのは調性がないわけじゃなくて、調性を極端に拡張しているというか、ワーグナーの方向をおもいっきり進めるとこうなりました、ってことだと思うんですわ。

実はこの曲を書く1、2年前にシェーンベルク先生の弟子のベルクがピアノソナタ作品1ってのを書いてるんですよね。これは名曲なんよ。かなりギリギリだけどいちおう調性はある。すごいロマンチックな曲ですよね。シェーンベルクの作品11とどっちが先に書かれたか知らんけど、お互いに影響してるんでしょうなあ。ベルク先生はなんか天才で、シェーンベルク先生よりもメロディーとか作る才能があると思う。内田光子先生のがおすすめだけどYoutubeにないし、グールド先生のもよいのでそっちで。

 

名曲。こうロマンチックで内省的で。


無調音楽入門(2) どんづまっております

音楽にかぎらず、なにか新しいことをするのはたいへんだけど、一回だれかがやったことを分析して自分のものにするのは能力ある人にはそんな難しくない。
ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」(1865年初演)にはみんなびっくりしたけど、一回ああいうものができてしまえば、みんなそのライン上でいろいろ発展させることができる。
シェーンベルク先生は1874年生まれで、25才の1899年にはこんなすごい曲を書いている。「清められた夜」とか「浄夜」とかって呼ばれてる曲。作品4。もうなんというかよく鳴ってて熟練してる感じっすよね。すごい職人芸。マーラーの交響曲1番とかなんか楽器鳴らなくてたるいんですが、シェーンベルク先生は最初っから完成された作曲家なわけです。もうなんでも書けたんじゃないですかね。この程度の曲だったらいくらでもできます、でも簡単すぎますからつまんないです、みたいなもんだったんではないか。シェーンベルク先生は作曲も猛烈に早くて、作曲を教える授業なんかでは黒板でその場でばんばん書けてけたとかって話です。この曲は弦楽六重奏(あるいは弦楽オーケストラ)だけど、その次の作品5の「ペレアスとメリザンデ」はすごい大きなオーケストラを使ってみてます。まあそれもそんな苦労なく書けたんでしょうなあ。

でもまあ、この曲おおげさで私は正直あんまり好きじゃないです。あと、これ聞いて「新鮮〜」っていう人はあんまりいないんじゃないですかね。あと私自身は初めて聞いたとき、「どっかで聞いたことあるんではないか」とか思いました。美しい曲だけど、なんか完成されすぎていて、最初っから手垢がついている感じがあるんですね。

なんかこれはプログラムというかストーリーのある曲で、最初はロマンチックに恋人どうしが夜に語りあってると、女が泣き出しちゃって、なんで泣いてんのって聞いたら、妊娠してるんだけどあんたの子供じゃありません、みたいな。んで男の方が「まあそれでもいいですよ、生んでください」みたいなことを言う、という話らしい。わけわからんですね。最後の方が能天気な感じになっててもうなんか宗教にでもかぶれたみたいにハッピーなってて怖い。

こういう音楽のもつストーリー性ってのも興味があるところで、モーツァルトやベートーヴェン先生のころはストーリーなんかいらなくて「交響曲第7番」「ピアノソナタ30番」とかでいいわけですよね。ベートーベン先生のはタイトルついてたりするけど、あれは後の時代の人が勝手につけたもんだから本人はあんなタイトルとか要らなかった。別になんかのストーリをからめているわけじゃない。音楽だけで自分で立てることができるわけです。でも19世紀にロマンチックな表現を追求していくと、なんか音楽だけでは自立することができなくなるんすね。交響詩とかってのはそういうもんで、なんか物語を描写する形になっちゃう。

標題を抜いちゃうとどうなるかというと、たとえばリストのピアノソナタロ短調(1853年)ってのがあるんですが、これなんかも実は物語を描写してるんだろうけどなにが起こったのかはわからない、みたいになっちゃう。ちゃらららーん、ちゃちゃちゃちゃ、とかってなんでしょうね。なんか運命的ななんかなんだろうけど。

モーツァルトあたりはかっちりとした形式があったから、その形式が曲を守ってくれてた。でもロマン派の人はみんなでよってたかって自由を追求して形式を壊していったら、曲そのものが成り立たなくなりそうになっちゃう。オペラとかはまあ筋があるからいいけど、純音楽はあんまり自由だとなにやってるのかわからなくなっちゃう。19世紀後半にストーリーとかに頼らずがんばってたのはブラームス先生ぐらいではないのか。

まあそういうわけで、調性をあやつって聴衆の頭をぐらぐらさせるのは誰でもできるようになっちゃって簡単すぎて退屈してたし、音楽の独立性みたいなのもあやうくなってた、それが19世紀から20世紀のはざまだったわけです。


無調音楽入門(1) いきなり調性とは何かについて語る

無調音楽の話をするためには調性音楽がどんなものかっていう説明をする必要があるわけですが、まあふつうの音楽ですわね。

たとえばモーツァルトのピアノソナタ10番の第1楽章を聞いてみましょう。

この曲はハ長調(Cメジャー)のあかるい曲っすね。曲の構造はソナタですが、とりあえずくりかえしが入ってAABBという形になってます。
Aの部分は最初はハ長調で後半はト長調(Gメジャー)になって、ハ長調に対してドミナントでちょっと緊張感があるのね。Bの部分はト長調からはいってハ長調にかわる。(まあソナタ形式についてはいろいろ語りたいことがあるんですが、それはずっと先のことになります。)AとBをそれぞれくりかえしているので、
A弛緩-A緊張-A弛緩-A緊張-B緊張-B弛緩-B緊張-B弛緩、
っていうふうに曲が進んでいます。まあ「弛緩」とか「緊張」のなかでも和音があっちいったりこっちいったりはおこなわれているのであれなんですけど、まあそういうのは無視して見るとだいたいこんな感じ。この調性による緊張と弛緩の組合せこそが西洋音楽であり、ジャズやロックまで続いている調性音楽の核なわけです。

もう1曲、ベートーベン先生のピアノソナタ23番、いわゆる「熱情」の1楽章とか聞いてみましょう。

これはぜんぜん雰囲気違いますね。ヘ短調(F Minor)のはず。最初がびっくりしますよね。
Fマイナーでどーんどどーん、ってやってC-Fdim-Cってやって落ちつく、わけじゃない。落ちつかない。不安になったところで半音上のGbでデーンデデーン、って同じ音型だけど、すごく遠い調に連れていかれてるのでもう目がまわる感じがする。ここらへんでもう最初っから不安定な感じをあおりくるのです。あっちこっちにディミニッシュコードがつかわれていて不安不安。ワシ、この性欲をどうしたらいいんやろか、目がくらむようだ、犯罪者なるんちゃうやろか?みたいな。

まあモーツアルトのころは社会もまずまず安定しておりますが、ベートーヴェンの頃は革命とか起こったりみんな決闘したりでもうたいへんで。不安定だけど情熱的なのが求められたわけですわなあ。これを調性で表現している。

こういうのがロマン派の音楽で、これ以降シューマン先生やリスト先生とかがいろいろ和音で複雑なことをするわけですが、それが最高に逹したと言われてるのがワーグナー先生ね。ピアノ曲はないからまあトリスタン聞きましょう。

これはもう落ちつくことがないのね。不安定な調性がつみかさなってどこまでも登ってくみたいな。ずっと残尿感があるような。不協和でどうにもこうにも。私はどこへ行くのですか?みたいな。西洋人のセックスはあざといなあ、みたいな感じですよね。すごい。

あとこの曲、最初にちゃーらー……ちゃーらー……とかやったあとの「ドコっ!」って音がすごいですよね。エロいこと考えたときの心臓ってのはこういうふうに鳴りますわねえ。恋に落ちるってこういうことなのかしら。

この曲はおかしな曲で全体はBメジャーだと思うけどこの主音がちゃんと鳴らされるのは3時間にもなるオペラの最後だけで、それまでそのBメジャーをめざして延々宙吊りにされてきもちわるい。この序曲も最後落ちついた感じ、なにか解決したって感じじゃなくて「これからなんか起こるなあ」って感じでおわってるんじゃないかな。

まあ調性の魔術というかそういうのが西洋音楽なわけです。


無調音楽入門(0) 予告

わりとこのブログ気にいっているので、好きなものをどんどん書いていきますか。

無調音楽とかけっこう聞いてた時代もあるのです。いまでもやっぱり好き。

やはりウェーベルン先生の変奏曲から。これの2番好きなんすわ。

あれ、これはあんまりよくなかった。誰のだろう?ポリーニじゃない気がする。グールドかな?おすすめは内田光子先生のやつなんだけど見つからない。

1番を4人のピアニストが弾いたやつ。

おお、これすごい。内田先生弾いてるじゃん。そしてまちがいなく一等賞っすよ。びっくりした。グールド先生は録音ちゃんとしているの使えばよかったのにね。とりあえず内田先生はすばらしいです。まあ時代が下るにつれてウェーベルンの音楽に対する理解が深まったということでもあるんでしょうが、すばらしすぎます。
まあ全体をポリーニ先生の動画で見ておきましょう。

シェーンベルク:ピアノ協奏曲
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Stravinsky, Prokofiev, Webern, etc / Maurizio Pollini
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