タグ別アーカイブ: 恋愛

牟田和恵先生のフェミニスト的恋愛/結婚論には問題があると思う

伊藤公雄先生と牟田和恵先生の編集の『ジェンダーで学ぶ社会学』が2015年に改定新板になってたのきづかなかったので読んでみました。この本の初版は1998年で、ジェンダー社会学とかの超基本書、ロングセラー、ジェンダー論ベストセラーですわね。

ジェンダーで学ぶ社会学〔全訂新版〕
世界思想社
売り上げランキング: 261,440

実はずっとフェミニストやジェンダー論論者によるアカデミックな恋愛論みたいなの探していたので 1)どういうわけかフェミニスト/ジェンダー論者は恋愛を語らない傾向があると思う。、牟田和恵先生の「愛する」は非常に貴重だと思います。えらい。それにしてもこれはものすごく問題が多い。

第1節の見出しは「リスク化する恋愛」で、ストーカーやらリベンジポルノやら、「非モテ」を苦にして(?)の大量無差別殺人事件とかあげて、恋愛はリスク化しているっていうわけです。

恋愛は人にとって、とくに若者にとっては、幸福感を与えてくれるもの、刺激的で楽しいものであるはずなのに、命の危険さえともなうもの、深刻な悩みと葛藤の因になってしまうようなリスクのあるものになってしまったのだろうか。(p.67)

私おどろきました。そら最近ストーカーやらなんやらそういうの問題になってるのはわかるけど、それって最近の現象なんですか。最近警察が対応するようになってきたから数が増えてるように見えるだけなんちゃうんですか。「リスクのあるものになった」って、むかしからそうじゃないんですか。いつリスクがなかったんですか。データで示せますか?

そういや、牟田先生とは違う先生だけど、10年ぐらい前に、「児童虐待が急増している」とかって主張しているこれまた家族社会学の先生がいて、その根拠が警察かどっかの統計だったんですが、それって認知件数とかっしょって腰をぬかしたことがありました 2)http://amzn.to/2zPGKA3 。当局が把握する数がふえているんであって、1年や2年で犯罪や暴力の数が増えたら、実際の件数が増えたんじゃなくて認知の数が増えただけだろうって考えるのがふつうなんじゃないですか。社会学者いったいなにしているんですか。

それに「恋愛は人にとって、とくに若者にとっては、幸福感を与えてくれるもの、刺激的で楽しいものであるはず」ってのはなんですか。いつからそんなことになってるんですか。そりゃうまくいけば幸福感を与えてくれる楽しいものかもしれないけど、うまくいかなきゃいろいろたいへんで、時に暴力ざたになるってのはもうホメロスの大昔からそうじゃないっすか。恋愛が「刺激的」なのも、なかなかかうまくいかないし、時に危険だからでしょ。いったい社会学者はいったいなにをかんがえてるんですか。この「恋愛は〜はずだ」っていうのは「そうだといいなあ」っていう牟田先生の願望をあらわしているにすぎないと思いますね。

第2節は「恋愛離れ」。これはまあ最近よく指摘されることですね。でもこれもそんな意外なことだろうか。小谷野敦先生が『モテない男』で鋭く指摘してているように、モテない男女は少なくないし、なんか恋愛とか興味ない男女、興味はあるけど結局恋愛ってどういうふうにするのかわからない男女も少なくないものだと思います。

第3節は「恋愛の歴史」。ネタ本はギデンス先生の『親密性の変容』。原書の出版は1992年なので25年も前の本で、ちょっと古いんじゃないですかね。でもまあいいです。

恋愛の起源は、ヨーロッパ中世の騎士の既婚の貴婦人にたいする、崇拝的な騎士道的愛に発するといわれるが、その画期的意味のひとつは、ロマンティックな情熱が、それまでの魂の病気、一種の発狂であるとみなされていたことから一転して、美しい生活にいたるものとしてポジティブな価値を獲得したことにある。(p.69)

まあいいんですが3)ほんとはよくないけど、まあこう解釈するのが通説。、これ、恋愛の起源じゃなくて、「ロマンティックな」恋愛をよしとする恋愛「観」の起源ですね4)そしてこの通説もあんまりよくないけど、今回はOK。。人間どうしの間で排他的で情熱的で性的な関係を結ぶってのはみんながみんなそういうことをするわけではないけど、通文化的・普遍的現象のはずです。

ヨーロッパ中世まで恋愛は存在しなかった、みたいに考えるのは、近代までネクタイも背広もなかったから、服を着たいっていう欲求や身を飾るをいう営みもなかった、みたいに考えるのとあんまり変わらない。社会学者なにしてるんですか。

第4節は「純粋な関係性」。ギデンス先生のキーワードですね。近代から現代社会にかけて、パートナー関係や結婚についての考え方が変わってきて、生殖や経済的な便宜のための結びつきってのから、そういうのとっぱらった、恋愛のための恋愛、みたいな「純粋な関係」がもとめられるようになりました、ってお話。それ自体はそれでいいんですが、そのあとのいろんなポピュラー文化を見たら、それだけじゃないってのも明らかだと思いますね。そら頭がお花畑な時期には純粋な恋愛のための恋愛、みたいなの素敵に思えるわけですが、実際には生活とかなんやらあるじゃないですか。「恋愛と結婚は別」みたいなのはわれわれが若い時代もよく聞いたし、いまの学生様だってそういいますわよね。ギデンス先生は1970年代のセックス革命みたいなのから1990年ぐらいまでを見てまあいろいろ好きなことを言ってるわけだけど、それってあなたたちの生活と照らし合わせたときにどうなのですか。

あと「関係性」はrelationshipの訳語なんだけど、訳語としては「人間関係/恋愛関係」の方がよいと思う。「関係性」じゃなくて「親密な関係」ね。relationshipsと可算名詞として使われる場合は、「関係性」という訳語から感じられる「「性」質」というよりは、The relationship between two people or groups is the way in which they feel and behave towards each other. とかA relationship is a close friendship between two people, especially one involving romantic or sexual feelings. とか、「人間の関係」そのものを指す。

第5節は「ロマンティックラブとジェンダー・アンバランス」。ロマンティックラブってのがジェンダーのバランスを欠いたものだっていうギデンス先生の洞察は正しいと思います。ただし、牟田先生の説明ではロマンティック・ラブがどういうものか、どういう点でジェンダー平等じゃないかっていう説明がされてないから読者にはわからんと思う。これは驚きました。もちろん、われわれ人文学系大学教員にはロマンチックラブっていうのはあるイメージがあるのでさらっと読んじゃうけど、学生様とかは読めないはず。ていうか、人文学系大学教員の間でも、ロマンティックラブってのでどういうのを想定するかはさまざまだから、牟田先生はそれを明示しないとならんと思う。どうジェンダーアンバランスなんすか。

騎士道的恋愛に見られるアンバランスははっきりしている。男性は騎士で地位が高そうだけど、女性は女主人であって、実は女性の方が地位が高い。一対一の情熱的恋愛。女性は高貴であり、粗野な男性騎士を精神的に導き高めることが期待される。一応直接に性的な関係はもたず、精神的な繋がりを重視する。男性は女性に命をかけて尽くす。そういうやつ。

ロマンティックラブってのはそっから派生してきているやつで、一対一(あなただけです!そして私だけを見てください!)、情熱的(あなたを思うと夜も寝られない!)、美(あなたは美しい!)と精神性(しかしあなたは外面より内面の方がさらに美しい!尊敬してるぅ!)の両方を含み、さらに生涯にわたるコミットメント(生涯あなた一人を愛し続けると誓います!愛し続けるというのは物理的に防衛したり経済的に保護するということを含みます!)とお互いの人格の理解という親密さ(あなたのことをもっと知りたい、語り合いたい!)も含む、そしてなんか障害(既婚者だとか事件や革命が起こるとか)があった方が燃える、っていう最高級の恋愛形式で、まあ私が思うには、まさに女性を喜ばすためのお話ね。そういうの考えただけで鼻血出そうな女子もいると思う。映画「タイタニック」では主人公男、海につかって死んじゃいますからね。

これはたしかにジェンダーアンバランスなんだけど、女性の方が上で、プロポーズとかも必ず男の方からひざまづいてやるわけよね。それはっきり言わないでどこがジェンダー論なんすか。社会学者なにしてるんですか。

牟田先生とギデンス先生は、女性がこうしたロマンティックラブが好きなのは、女性が男性によっかかって自立や自己実現を達成しようとしなければならないからだ、みたいに考えます。これはまあいいと思う。ただ、私は女性も自立した方がいいと思うけど、自分でがんばるより伸びそうなやつとコンビ組んで分業して戦うっていうのが有利になることも多いだろうから女性の選択肢の一つとしてありだろう。そうしたくてそうできるひとはそうしたらいい。選択肢は多い方が有利ではないのだろうか。牟田先生も恋愛と結婚は、女性にとって「理にかなった投資」だってことを認めてますね。

第6節は「男性にとっての恋愛の理不尽」。でもそんなよっかかられるは男にとってはたいへんで理不尽です、って話。これは正しいと思う。

恋愛の中核であるロマンティックラブが、ジェンダーのアンバランスの上で、男性は女性より社会的経済的に優位に立たなければならないという「常識」や、男性が女性を養うのがあたりまえであるかのような意識をともなっていることそのものが問題なのである。(p.75)

これもフェミニズム/ジェンダー論標準なのでさらっと読んじゃうんだけど、これって結局、女性が金や地位持ってないとくっついてこない、ってことを指しているわけですよね。繰り返すけど言うけどロマンチックラブというのは男が女に奉仕する(と一応約束する)恋愛だ。金や地位もってないのは相手にならん。おそらく男性の方は尽くしたくなんかないわけだからこんな「常識」なんかどうでもいいわけだけど、セックスしたりケアしてもらったりはしたいだろうからどうしたって金や地位をゲットしにいかないわけにはいかんでしょうな。これって反フェミツイッタラーが言ってることそのまんまですけど、牟田先生の言うことにも一理あるのと同じくらいツイッタラーがいうことにも一理あるかもしれない。

第7節は「女性の地位の変化と男性の暴力」。女が恋愛上だったり、男が経済的に上だったりするロマンティックラブに比較して、ギデンス先生の「純粋な関係」はあくまで対等で、恋愛感情以外のヒモがついてない関係をめざす恋愛。

純粋な関係性の重要な特徴は、……ロマンティックラブが結婚や家庭を媒介としての女性の男性への従属や同一化を前提としていたのとは大きく異なって、女性側からの男性との対等な関係の要求をもとなっていることだ。純粋な関係性は性的にも感情的にも対等な関係が実現できてはじめて実現される。(p.75)

ここの問題は、ロマンティックラブ理想をもとにした男女関係が、「女性の男性への従属」と見ることができるかどうかね。「男性の女性への奉仕(の約束)」を基本だと見るなら、家庭内で分業して男性が死にそうになりながらお金稼いで帰ってくる、ってのは女性が男性を家畜のように使役し搾取しているようにも見える。たとえばロマンチックラブで結びつているカップルや家庭内での発言力がどうなっているのかとか見たら、「女性の男性への従属」とかそういうふうにはなってないんじゃないかと思いますが、どうっすか。まあ私自身は、実際にはカップル内・家庭内ではけっこうバランスが取れていて、利得のバランスが崩れたら関係はこわれてしまうんじゃないかと思ってますけど、これはまさに家族社会学とかの調査課題であって、所与の前提ではない。もっと現実をみてみましょう。

しかし、女性との対等な関係性を心から欲しているような男性はさほど多くはない。「妻には働いてほしい」と経済的貢献を求める男性も、「家事や育児はしっかりやって」と注文をつけ、女性が男性のケアをし、情緒的な支えになることを相変わらず期待する。そこに、男女間の葛藤がまた生じる。(p. 76)

ここで対等っていうときに、いろんな魅力や貢献をぜんぶ合算しての対等(グローバル対等)なのか、個々の領域(ドメイン)に分けての対等(ドメイン対等)なのか。ドメインを指しているんだったら、同様に、男性との対等な関係を心から欲しているような女性もどれくらいいるんかな、って思いますね。そしてそんなものにどれくらい価値があるのか。牟田先生が考えている対等ってのはどっちですかね。

私の理解では、ギデンス先生が「対等」な純粋な関係ってので考えてるときは、経済・家事・生殖・育児とかぜんぶとっぱらった恋愛とセックスと親密さだけの「対等」なんすわ。この意味では、別々に暮らして、ときどき合って割り勘で飯食ってラブホに行って愚痴を言い合うセフレとか不倫関係とかまさに対等で、これが90年代ぐらいにもとめられた関係だったってわけです。それが純粋な関係ね。それわかってますか?そして、そうした恋愛と性欲以外にヒモ付きでない関係っていうのは、多くの女性が求めたいものでもないと思う。

んでさらに悪い事に、こっから牟田先生は非常にあぶない方向に行く。

ここに、ジェンダー平等が進展するほど、男性による権力や支配が起こりやすくなるという、大いなるアイロニーがみられる。つまり、女性の権利や意識の向上によって、男性が女性を制度的に支配することができなくなり、女性に対する優位性に揺らぎが生じているがために、男性は私的な関係のなかで一対一の暴力によって女性を支配しようとするのだ。(p.76)

なにを言ってるんですか。なぜいきなり暴力が出てくるんですか。なにか論拠があるんですか?ギデンス先生がそう言ってるから?でもギデンス先生が言ってるのは、「今日、男性の性暴力の多くは、家父長制支配構造の連綿とした存続よりも、むしろ男性の抱く不安や無力感に起因している」だけっすよ。これは、ギデンス先生が「性暴力は家父長制が原因、とかっていうのはうたがわしい、むしろ性暴力振るう人々はそういうのと関係なくやってるんちゃうか」ぐらいのところっしょ。そして、そういう性暴力が増えてるとかそういうのも言ってない(と思う)。まあこのギデンス先生の「不安や無力感」が原因だっていう推測自体もフェミニスト風味のあれからの憶測よね。

もちろん、実際に性暴力が増えてるとかそういうのを示してもらえれば、牟田先生のような推測も一つの仮説としてありえるだろうと思う。でもそれはまずそうしたデータしめしてもらってからね。さらに、百歩ゆずって、性暴力が実際に増えているとしても、もっといろんな仮説を立てることが可能なはずで、そうした他の仮説を検討して自説の有利さを論じる必要があると思う。そういうのがない社会学とかいったいなんなのですか。これで「ジェンダーで学ぶ社会学」になるのですか。社会学ではないのではないか。

最後の節は「恋愛を〈救う〉には」。「恋愛が危ういものになってしまったのは、近代以降の社会が恋愛に価値をおきすぎたからではないか」(p. 77)がまた出てくる。これ本気でそう思ってるんですね。危うくなかった時代があるのかなあ。そもそもいつと比べてるのだろうか。戦国時代とくらべて危うくなってるのだろうか。江戸時代ぐらい?

私たちは今も、性的絆を含む一対一の男女の関係や、そこから生まれる親子の関係こそがもっとも深い人間と人間の関係であるとみなしがちだが、しかしそれは、*ヘテロセクシズム*が生み出した思い込みである。(p.78)

この一文、まあOKなんですが、ちょっとあれで、分解すると、

(1) 恋愛関係や親子関係がもっとも深い人間関係だと思いこんでいる。
(2) 性的絆を含む「男女」関係がもっとも深い人間関係だと思いこんでる。

の二つに分けられると思う。(2)はたしかに「ヘテロ」「セクシズム」と呼んでよい。でも(1)はどうかな。

人と人との親密でかけがえのない結びつきは、多様にありうる。友情の絆、血縁にかかわらない親子や家族・親族のつながり、生業や活動をともにする仲間たちとの共有の感情。……恋愛がそうした多様な人と人のつながりのひとつのかたちにすぎなくなれば、さらには若い時代に限られたものでもなくセックスを必ずともなうものでもなく一対一の排他的なものに限るのでもないというように、恋愛自体がもっと多様になれば{\――}逆説的だが、恋愛がそれほど大したものでなくなれば{\――}私たちは恋愛の成就や破綻にさほどエネルギーを使ったり葛藤を抱えることもなくなるだろう。

まあこれは共感しますね。よい。でも、恋愛というのはすでにいまでもある種の人々にはたいしたものではないし、いろんな形があるだろうと思うし、そして、それにもかかわらず、ある種の(ふつうの能力のふつうの生活をする)人々にとっては、恋愛や生殖、子育てなどは、やっぱり親密な関係の最大のものでありつづけるだろうって思います5)あと、恋愛と若者や「若い時代」をむすびつけて考えるってのはなぜなんだ。ははは。

全体に「性暴力や支配が*増えてる*」っていう根拠のない思い込みが支配していて(増えてるとしてもいつから増えてるの?)、社会学としてはとてもよくないと思います。ロマンチックな恋愛っていうのがどんなものかとか、そういうのについてももうちょっと検討してほしい。結婚と恋愛については、なんでも適当なことを言う古いギデンス先生とかよりもっといいタネ本はたくさんあると思う。ヘレン・フィッシャー先生あたりでもいいし、家族社会学プロパーならStephanie Coontz先生のMarriage, a History: How Love Conquered Marriageあたりを参照にしてほしいです6)あと「ロマンチック」恋愛だけがれないじゃないので、ストルゲとか友愛とか友情結婚とか言われてる恋愛パターンがあるってこととか、もっといろいろ語って欲しいことはある。

この概説というか論文は、結局のところ、「最近は私的な性暴力が増えている」というスパンも根拠もあやしい話を、他にもよいテキストがあるにもかかわらず25年前の社会学の偉い先生のお話の怪しい読解をもとに解釈している、というよくない形になっていると判断します。私は、ジェンダー論となるとこういうレベルのでOKにしているジェンダー社会学界隈を疑っています。

伊藤公雄先生については昔にも書いてます。 http://yonosuke.net/eguchi/archives/832当時は自信なかったからひかえめだけど、アカデミックな作法の話ね。

 

親密性の変容

親密性の変容

posted with amazlet at 17.11.30
アンソニー・ギデンズ
而立書房
売り上げランキング: 418,484
Marriage, a History: How Love Conquered Marriage
Stephanie Coontz
Penguin Books
売り上げランキング: 61,733
愛はなぜ終わるのか―結婚・不倫・離婚の自然史
ヘレン・E・フィッシャー 吉田 利子
草思社
売り上げランキング: 26,854
セックスと恋愛の経済学: 超名門ブリティッシュ・コロンビア大学講師の人気授業
マリナ アドシェイド
東洋経済新報社
売り上げランキング: 149,644
結婚観の歴史人類学

結婚観の歴史人類学

posted with amazlet at 17.11.30
ジョン・R・ギリス
勁草書房
売り上げランキング: 517,732

References   [ + ]

1. どういうわけかフェミニスト/ジェンダー論者は恋愛を語らない傾向があると思う。
2. http://amzn.to/2zPGKA3
3. ほんとはよくないけど、まあこう解釈するのが通説。
4. そしてこの通説もあんまりよくないけど、今回はOK。
5. あと、恋愛と若者や「若い時代」をむすびつけて考えるってのはなぜなんだ。ははは。
6. あと「ロマンチック」恋愛だけがれないじゃないので、ストルゲとか友愛とか友情結婚とか言われてる恋愛パターンがあるってこととか、もっといろいろ語って欲しいことはある。

キャリン・スタンバーグ先生の心理学的恋愛相談

Karin Sternberg先生のPsychology of Love 101ってのをざっと見てたんですが、最後の恋愛相談室みたいなのが面白かったのでメモ。翻訳ではなく要約というか、まあ勝手なアレ。質問も答もそれぞれよくある話だけど、それぞれ恋愛心理学の有名論文が参照されるのがよい。キャリン先生は、認知心理学と恋愛心理学で有名なロバート・スタンバーグ先生の奥様らしい。ロバート先生の物語理論にけっこう言及しているのが目につきました。このPsych 101シリーズってのよさそうですね。

Q1. ボーイフレンドが2回も浮気しました。彼は結婚したら浮気はやめる、その前に遊んどく必要があるのだと言うのですが、信頼できるでしょうか。

A1: 心理学の原則として、ある人物の未来の行動を予測する一番の目印は、過去の同種の行動です。彼が今浮気するのをやめられないなら将来もやめられないでしょう。

Q2: 僕と彼女はずいぶん情熱的な関係だったけど最近冷めてきたような気がします。

A2: スタンバーグのトライアングル理論によれば、恋愛の三つのなかで情熱は一番熱しやすく冷めやすいものです。

Q3: 彼と4年つきあっています。よい関係なのですが、結婚の話になると彼はだまってしまいます。

A3: 第一に、将来をコミットするのを嫌う人びとがいるので、期限を切ってコミットするのかどうかたずねて、ダメなら別のを探しましょう。第二に、スタンバーグの物語理論によれば相性の悪いストーリーをもってる人びとはうまくいかない傾向があります。自分と相手のストーリーがマッチするものなのかどうか、自問してみましょう。

Q4: あたらしくできた彼氏が、昔の彼女とうまくいかなくなった話ばかりしてやめません。大丈夫でしょうか?

A4: なにかに依存してた人がそれをやめると禁断症状が出るものです。他に注意すべき点として、第一に、いったん別れたカップルままたくっつくというのはよくあることです。第二に、真面目につきあってるカップルは何度か危機的な状況を迎えるものです。彼と彼女の関係もいまそうなのかもしれません。第三に、ある人が恋愛関係を終わらせようとする時に、他の相手と表面的な関係を結んだりすることもよくあることです。あなたとの関係もそうかもしれません。

Q5: 彼女がとても嫉妬深いのですが、どうすれば彼女を変えられるでしょうか。

A5: 第一に、他人を変えることはできません。マニアタイプの恋愛する女性なのでしょう。また、Shaver, Hazan & Bradshow (1998)の「アンビバレンス的愛着スタイル」をもつ人かもしれません。第二、そういうひとはコミットメントのレベルがあがるとなおさら嫉妬深くなる傾向があります。第三に、彼女のの嫉妬は彼女の問題なのでしょうか?あなたの方に問題はないですか?

Q6: 以前は私と彼氏の間でいろんな深い話をしていたのですが、最近はなにか表面的な話ばかりです。

A6: これもスタンバーグのトライアングルを使うと、親密さと関係があります。つきあいはじめはお互いのことを知りたいのでたくさんおしゃべりしますが、だいたいわかってくるとあきてきます。おもしろいのは、過去の関係の悪いことは話しやすいわけですが、現在のパートナーとのことは当人には話せないということです。また関係の最初ではそれが人生の一番重要なことですが、関係が安定してくると他のことを始めます。Vaughn (1990)が別れの分析をしていて、それはだいたい秘密をもつことからはじまるようです。

Q7. ガールフレンドが、僕自身を好きなのか、僕のイメージを好きなのかわかりません。

A7. スタンバーグの物語理論によれば、われわれは恋愛相手をフィルターを通してみてます。ゴフマンの『日常生活における自己提示』1956によれば、「本当の自己」なんてものはは存在しません。。Sternberg & Barnes 1985では、パートナーが感じているだろうとわれわれが思っていることと、パートナーが実際に感じていることの間には弱い関連しかないことが指摘されてます。


恋愛の類型学 (4) おまけ:愛の類型学

よく昔の恋愛論や哲学的恋愛論みたいなの見てると、恋愛とその他の愛、特にキリスト教的・利他的アガペーみたいなのが混同されてるような感じがあるんですわ。 loveとかamourとかLiebeとか っていう西洋語は、すごくいろんな人間的な感情や人間関係につかわれるので、そこらへんでいろいろ言葉の意味のすりかえをするひとたちがいるんですね。

んじゃ、「恋愛」じゃなくて、「愛」を分類するとどうなるんだろう?

恋愛心理学とかだとエレンバーシェイドの分類が有名みたいですね。西洋語の愛loveには四天王がいる。それは別の語で表すと、(1) 愛着、(2) 同情愛、(3) 友愛、(4) 恋愛。

(1)の愛着、アタッチメント attachment loveていうのは、子供が親にくっつくような感じの愛ですね。大人、大きいもの、強いもの、経験をつんだひとにくっついていると安心・安全、離れると危険で不安。くっつき愛。

(2) 同情愛 compassionate loveってのは、同情・共感・共苦、パッションをともにする愛です。他人、それも複数の幸せを願うような愛、親切心。困ってるひとをみると助けたい愛。利他的愛、慈善愛、共同愛communal love、アガペ、B-Love、他者愛とかいろいろいわれる。

(3) 友愛 companionate love。コンパニオン愛。友人愛。上の同情愛が不特定複数・多数に向かう。compassionate loveが見返りを求めないっていうか、まあへんな言い方だけど上から下、なのに対して、友愛っていうのはお互いがお互いのことを考えてる互恵的な愛情なのがポイント。早い話、お互い組んでると利益になる。逆に言うと、利益にならなかったりすると友愛を維持するのはむずかしい。

(4) 恋愛 romantic love。この「ロマンチック」ラブの「ロマンチック」ってのは論者によってどう定義するか微妙だけど、バーシェイド先生の場合はエロスとかと関係のあるやつ。

こういうふうに「愛」って言葉にだまされないで、とりあずそれはどのタイプなのか、そしてそのタイプどうしの関係はどうなってるのか、みたいなふうにかんがえてかないと、変なお説教好きな哲学者にだまされちゃいます。

あと最近の心理学の傾向として、上の4つの「愛」のタイプがどれも進化的な背景もってるだろうってことが協調される傾向にありますね。愛着、友愛、恋愛の三つが進化的に有利、つまり生存と繁殖のために重要なのははっきりしているから、問題は(2)の利他的愛、同情愛がどう進化してきたのか、っていうのがけっこうたいへんな課題ではあるけど、まあ見通しはあります、ぐらい。

よく(女子)学生様は「友人と彼氏、友情と恋愛のちがいはなんだろう」「男女間では友情はなりたたないのでしょうか」みたいな授業後感想を書いてくれることがあるんですが、それは上のバーシェイド先生の(3)と(4)の違いを考えているわけですわね。

んで、先生たちは心理学者なので調査する。この方法がちょっとおもしろいんですわ。彼女たちが「社会カテゴリー法」と名付けた方法を紹介すると、まず被験者に身近な人物のリストを作ってもらう。んでそれを、社会的カテゴリーに分けてもらう。この社会的カテゴリーってのは、「家族」とか「友人」とか「同僚」とか「好きな人達」(people I love)、そういうやつね。当然複数のカテゴリに入る人々もいる。「好きな同僚」は「同僚」と「好きな人々」の両方に現れる。

んで、(A)「私が恋しているひと」people with whom I am in loveにリストアップされるひとは、(B)「性欲を感じるひと」people for whom I feel sexual attraction/desireにも現れるけど、(C)「私が愛してる/好きなひとびと」people I loveの人々は、(B)「性欲を感じるひと」にはあらわれないことがある。一方、(B)「性欲を感じるひと」は(A)「恋しているひと」には現れないことがある。さらに、(C)「恋しているひと」は(D)「友人 」friendにも現れることが多い。

これがなにを意味するかっていうと、バーシェイド先生たちの解釈では、(A)「私が恋しているひと」は、だいたいのところ、(B)性欲を感じる(D)友人だ、ってな感じ。

まああたりまえといえばあたりまえなんだけど、友人と恋人の違いは、相手に性欲を感じるかどうかです、ってな話になる。まあ非常に単純であたりまえの結論ではあるんだけど、こういうのもあるていど実証的な根拠があれば「なるほどね」とかってなりますね。大学の授業とかで追試やってみると面白いと思うんですけど、私自身はこういう調査の手法を勉強したことがないのでできなくて残念です。

あと、それじゃセックスフレンド(friend with benefit)はどうなるのかとかはまた。

バーシェイド先生の論文「「愛」の意味をもとめて」は下のに入ってます。

愛の心理学

愛の心理学

posted with amazlet at 17.10.03
北大路書房
売り上げランキング: 259,853

恋愛の類型学 (3) スタンバーグ先生の恋愛物語理論

恋愛の類型学、つまりタイプ分けに関しては、ジョン・アラン・リー先生の恋愛の色彩理論ロバート・スタンバーグ先生の恋愛三角形理論が有名で、ネットにもけっこう転がっていますね。私もちょっと紹介しました。

スタンバーグ先生の三角形理論は1980年代のものですが、90年代に今度は「恋愛は物語だ理論」みたいなのを提唱して、三角形理論といっしょにして「恋愛の二重理論」という形にしてます。この「恋愛物語」理論はネットでは紹介されてないし、注目もされてないみたい。ちょっとだけ紹介。

スタンバーグ先生自身の本が翻訳されてるし、それ以降にも『愛の心理学』にもスタンバーグ先生自身が論文書いてるのでそっち見てもらえばいいのですが、講義のためにリストつくったので、まあ紹介。

愛とは物語である―愛を理解するための26の物語
R.J. スターンバーグ
新曜社
売り上げランキング: 1,307,203

この理論は、その名の通り、恋愛は、それぞれのひとにとってそのバックグランドやプロトタイプみたいなのになる物語・ストーリーがあるのだ、ってな理論。人によってどういうストーリーをもってるかは違っていて、それが似てたり近かったりすると関係はうまく行きやすいだろう、と。また個人としても、成功しやすいストーリー持ってるひとは成功した恋愛生活送りやすいかもしれないし、まずいのをもってるひとはまあ苦労するかもね、とか。

スタンバーグ先生が挙げてるのは25個とか26個とか、文献によってちょっと違うし、それですべてのタイプのストーリーが尽くされてるとも主張してない。まあ非常に大雑把な話で、理論と言えるのかどうかもよくわからん。ただあらかじめこういうストーリーを挙げていって、それに対応する質問紙を作っていろいろやってみるとおもしろい結果ができるかもしれないね、程度です。

ストーリは大雑把に下のように、そのストーリーが主に何に注目するかってのに対応して「協調的」「原作つき」「ジャンルもの」「パートナー」「関係」「非対称な関係」とかに分けられてるけど、これもまあいいかげんな分類に見えるけどまあ。

    • 協調的関係
      • 【旅】 人生は旅であり、恋人は旅の道連れである物語。目的へ到達するために二人が協力する。魔王デスピサロを倒したり、海賊王になったりするなかで仲良くなる。
      • 【編みもの】 いっしょに縫ったり編んだりしながら関係が作られる。おだやかでいいですね。少女漫画はそうあってほしいです。
      • 【庭仕事】 草木の手入れのように関係を大事に育てる。土を耕したり水や肥料をやったり害虫駆除したりたいへんです。ときどき剪定もせなならんね。
      • 【ビジネス】 パートナー関係はビジネス。金は力。クールでドライにいきましょう。パパ活?パートナーはそれぞれ役割(仕事)をもつ。二人で連帯して外敵やライバルと戦ったりもするかも。
      • 【中毒】 アディクション。一方が相手に強く依存し、相手の存在が人生にとって不可欠であると感じられる。強く、不安定な愛着。パートナーにしがみつくような行動。パートナーを失うことを考えて不安になったり。メンヘラ的。
    • 原作つき物語
      • 【ファンタジー】 王子と王女、騎士とお姫様。騎士が自分を助けてくれたり、可憐なプリンセスと結婚するなどといったことを日頃から期待する。授業で「あなたたちの大半には、白馬に乗った王子様は、来ません!」とか言うと大反発を受けるので注意。「でもカエル王子はプロポーズしてくるよ」とか言っても喜ばないし。
      • 【歴史】 二人の間に起こった出来事が消すことのできない記録となる関係。精神的にも物理的にも多くの記録をつけてゆく。「あのときのあれがこれの原因なのよね、記録も残ってます」。
      • 【科学】 科学的な原理や公式に従って関係が同分析されるかという観点で物語が構成される。生物学者や進化心理学者はそういう恋愛するのでしょうか。
      • 【料理本】正しいレシピを使えば関係はうまくいく。料理人とパトロンの関係。「うまくいく」方法をみつけたいという欲求。『ルールズ』や『草食系男子の恋愛術』の世界ね。ハウツー本は大事です。
    • ジャンルもの物語
      • 【戦争】 戦闘や交戦状態が重視される。恋は戦争。おそらくパートナーとの。でも相対性理論に「恋は百年戦争」っていう名曲もあるからそっちだろうか。
      • 【演劇】 恋愛には筋書きがあり、いかにもありがちな演技や場面や台詞がかわされるものだ。双方が何かの役を演じる。
      • 【ユーモア】 愛とは奇妙で滑稽なものである。明るく屈託のない関係を保ち深刻になりすぎないことが重要とされる。ウディ・アレン的?
      • 【ミステリー】 愛は謎。恋人たちは相手が自分のことを知りすぎないようにすべきである。一方が相手の情報を明らかにしていく過程。
    • パートナーに注目する物語
      • 【SF】 恋愛は理解しがたい奇妙な存在との遭遇。パートナーの奇妙さや不思議さが大事。『うる星やつら』は違いますね。
      • 【コレクション】 パートナーが大きなコレクションの一部として尊重される。パートナーとは愛着のない距離を取った関係。ドン・ジョヴァンニの「カタログの歌」の世界。
      • 【アート】 パートナーをその身体的魅力について愛する。パートナーの概念がうるわしく見えることが重要。身体的な美を愛する。。美の鑑賞者と美術作品の関係。パートナーの健康に気をつける。容姿が衰えると……。
    • 関係に注目する物語
      • 【マイホーム】 家庭を中心にする物語。恋愛関係が安定した家と家庭の環境を達成するための手段。
      • 【回復】 サバイバー的心象。恋愛関係は、トラウマから回復するための手段。救われたいですか。ひどい目に合ったけどあなたが癒やしてくれましたか。
      • 【宗教】 パートナーが神に近づくための手段、あるいは関係そのものが宗教。これも誰かが救われるんでしょうな。
      • 【ゲーム】 恋愛はゲーム。「勝つためにプレーするのさ」。勝者と敗者。興奮、面白み、人生をまじめに考えるべきではない。「こーいーはげーぇーむじゃじゃなく〜いきるこーとねー」
    • 非対称な関係の物語。このタイプのはだいたいやばい。
      • 【師弟】 愛とは、導くものと導かれる者のあいだに生まれるものである。一方が情報を提供し、他方がそれを受け取る。セクハラの原因。
      • 【犠牲】 一方が自ら譲歩し、他方がその利益を受取る。愛することは自分を犠牲にすることであるという物語。たとえばワーグナーの『さまよえるオランダ人』とか、いみなくけがれなき処女が犠牲になるけどあれなんですかね。
      • 【政府】 一方が他方に対する支配権を持ち管理する。管理管理。
      • 【警察】 一方が他方を監視し、ある枠組みの中に押し込む。パートナーが規則をまもっているかしっかり監視していなければならないと考える物語。または自分が監視される必要があると考える物語。ウォッチングユー。
      • 【ポルノ】 愛は不潔であり、愛することは相手を貶めたり、相手から貶められたりする関係であるという物語。サド公爵とか、『O嬢の物語とか』。谷崎潤一郎先生の『痴人の愛』も近いか。
      • 【ホラー】 一方が相手を怖がらせ、相手が怯えるような関係であるときに両者の関係が興味深いものになる。『羊たちの沈黙』もまあ恋愛物語といえるのかもしれんですね。

まあそんなおもしろいものでもないけど、このスタンバーグ先生の「物語」ていうのは、まさにわれわれが「恋愛観」と呼ぶようなものだろうな、って思います。学生様たちには、「あなたは自分はどの物語を望みますか」とか「これまではどれですか」とか聞いてみるとおもしろいかもしれない。

私たちはどういう物語を生きたいのか、そして実際にはどういう物語を生きてるとおもっているか、っていうのは、恋愛にかぎらず人生についてもちょっとおもしろいところがありますね。それはそのうち。

下のは堅い心理学の本で、学問としての心理学に興味がないとなにをやってるのかわからないと思う。

愛の心理学

愛の心理学

posted with amazlet at 17.10.02
北大路書房
売り上げランキング: 213,282