卒論生のための文献・情報関係ウェブサービス案内

卒論を書くためにはとにかく大量に本や文献を集めて読み整理しメモをとらねばなりません。(無料の)ウェブサービスを使って効率的にやりましょう。

具体的に私が書籍等あつめるときにどうしているのかというと、基本的に書籍の情報はMediaMarkerに集積してます。Amazonで「この本よまないとならんかな」と思ったら、すぐに登録して「ウィッシュ」もしておく。登録はブラウザからブックマークレットからバインダー登録一発。MediaMarkerの他に、ブクログ読書メーターといったサービスがあるので、自分の好みで。

本を買うとお金がかかってしまうので、なるべく図書館ですませたい。カーリルにアカウントをとって、自分の利用する図書館を登録しておくとよい。私は大学と市立図書館、府立図書館の3箇所を登録してる。さらに、ブラウザにChromeなどをつかっている場合は、Calilayという機能拡張を使うと、AmazonやMediaMarkerのページでその本が図書館にあるかどうかすぐわかる。FirefoxやSafari用の機能拡張もあるはず。

Webの情報は「クリップ」(保存)する。Evernoteというメモソフトの場合はEvernote Web Clipperを使うと一発でクリップできる。Google KeepOneNoteでもおなじことができるはず。これらのメモサービスは非常に便利なものなので、卒論生はどれか使いたい。とにかくWebの保存、メモ、思いつき、読書ノート、なんでもメモサービスにあずける。歩いてる時、電車のなかで思いついたこともスマホからとりあえずメモっておく。(もちろん紙でもいい)

私はPDFはMendeleyってので整理してますが、学部生でここまでやる必要あるかどうかは知りません。もっとよいサービスもありそう。Evernoteに突っ込んでおくだけでも十分かもしれない。

図書館で借りた本などは大事なところ、あとで使いそうなところはコピーするなり写メ取るなりしておく。まあ普通コピーだと思うけど。私は実際には論文などはコピーして、それをスキャナで読んでPDFにして保存することがおおいかな。


関係ありそうな古い記事。書き直さないとならんね。

現代社会学部生のための文献調査ガイド

文献を集めよう

卒論レベルでも、研究の基本は文献を読むことです。どういう先行研究があるのか知っていなければなにを研究するかの方針さえ立てられません。

まずまずこれを読んでください。 http://www.kyoto-wu.ac.jp/library/j_guide/index.htm

図書

図書館にある本は OPACで調べます。

http://www.amazon.co.jp/ も役に立ちます。自分では買えない本は、図書館に「購入希望」を出しましょう

新書、ムック

新書は最新の知識をコンパクトに紹介してくれているので、大学生の友です。積極的にどんどん読むこと。ただし、一部質の低いものもまじっていますので注意。

私見では、中公新書と昔の岩波新書がもっとも権威があり、講談社学術新書やちくま新書がそれにつぎます。

入門書・概説書

どういう問題を扱うにせよ、とりあえず自分なりの分析のツールを手に入れておかねばなりません。現代社会学部の卒論の場合、多くの人は社会学的な分析を行なうことになるでしょう。最低限社会学の概説書(ギデンズの『社会学』など)には目を通しておきたい。

百科事典のたぐい

現代社会学部学生の場合は現代社会に特有な現象をテーマにすることが多いでしょうから、とりあえずどんなことが議論されているのかを知る必要があります。『現代用語の基礎知識』『知恵蔵』『イミダス』のたぐいは一回ひいておきましょう。図書館にあります。

最近では WikiPedia も非常によい記事を含んでいます。日本語のを引いたら左の方から “English” を選んで英語のも見る癖をつけておくととてもよいです。分野によっては質の高さが段違いだったりします。

専門事典

社会学事典、心理学事典など学問分野に特化した事典が図書館にあるので見ます。そこで参照されている文献をメモしておくこと。

単行本

人気のあるテーマの場合は一般向けの書籍も手に入ります。 OPACで調べてみて、図書館の開架でその近くにある本にも目を通してみること。

編集された本の一章が役に立つ場合も多いので、幅広く本を見ること。

専門書・研究書

単なる読みものとの違いは巻末の文献リストを見ればわかります。文献リストが4、5ページになるような本が読めるようになればあなたも大学生らしい「研究」ができるようになりつつあります。

雑誌論文

実は図書より重要なのが雑誌論文です。

たとえば哲学だと岩波の『思想』とかが一番偉い、ってことになってるようです。あと『現代思想』とか(私は難しくて読めないことが多い)、いろいろあります。

でも卒論レベルで参考になるのは、各大学が出している紀要に載っている論文です。http://www.kyoto-wu.ac.jp/library/news/library_news.htm#shiryoあたりから調べます。特に CiNii が重要。図書館にない雑誌は、ILL (図書館間相互利用)から注文します。(お金がかかります。コピー1枚30円くらい。図書館地下の雑誌室のカウンターに問いあわせてください。)江口が関心を持つような論文なら一部研究費から援助します。

書籍・論文の参考文献

まともな論文には参考文献リストがついています。もちろんそれに全部当たるわけにはいかないのですが、

文献リストを作る

すでに読んだ本、これから読むべき本はリストにしておきます。この文献リストが増えていくのが研究者の喜びの一つです。

いろんな方法がありますが、江口はhttp://yonosuke.net/eguchi/memo/bibtex-exsample.txt のようなものを使っています。これはLaTeXのbibファイルというものです。学部生のときは「メモ帳」かWORDかなんかに書いておけばよいでしょう。

卒論テーマの見つけかた

現代社会学部学生にとっての問題

現代社会学部はいわゆる「学際的」な学部を目指しているので、卒論のテーマをどうやって見つけるかってのが他の学部より難しいようです。

まあ「学際的」ってのは「なんでもあり」で、よく言えばなんでもできるけど悪く言えば選択の幅が広すぎて焦点定めるのが難しいってことでもあります。

たとえば文学部国文科なら源氏だの古今だの歎異抄だの、まあそういう古典作品を研究するぞとか、国史だったらとりあえず中世の政治史やるとか近世の農村史やるとかまあある程度はっきりしているわけです。

でも現代社会学部では、(おそらく一応)現代社会の現象ならなんでも OKということになっているし、2回生までの蓄積も若干ばらばらの断片的知識の寄せ集めという感じになってしまっているのでかなり困難。基本となる学問的基盤があやふやなところがあるので、さらに問題は深い。

これは現代社会学部の教育方針の問題です。よいところもあれば悪いところもあるのはしょうがない。逆に悪いところもあるけどよいところもある。

江口自身あんまり専門性がはっきりしていない人間なので、学生に積極的にテーマを与えるという気にもなれず困ってしまいます。

基本は自分の興味関心から

まあやっぱり、「自分の興味関心にしたがってテーマを探してください。」ということになってしまうわけですが、そりゃ誰でもいろいろ興味関心はありますが、それをどうやって「研究」とかってものに結びつけるかがよくわからんですよね。わたしもよくわかりません。

まあいろいろ相談ですな。

まったくなにをすりゃいいのかわからん

  • 困りますね。
  • とりあえず文芸春秋社の『日本の論点』を読んで興味あるところを読んでみればどうでしょう。とりあえずテレビとかで討論しているテーマがわかります。
  • 図書館の新書の棚でタイトルを見てピンを来たのを読んでみるとか。
  • とにかく基本は図書館だな。大学生になって図書館に行ったことないなんてことはないですね?
  • 一冊もってくればそこから話を進めることができます。

対象を狭める

「恋愛について興味がある」とか言われても広すぎて研究できないので、もっと詳しくしていかなきゃならん。

恋愛のなにに興味があるのか。

  • デートのときに男女はどうふるまっているのか→なんか仮説立てて質的調査?
  • どっちがどれくらいお金をつかっているのか→なんか仮説立てて量的調査?
  • 気のある男の子とデートするときとそうじゃない男の子とデートするとき、女の子の態度はどう違うか。→ 調査してみる?
  • デート前に女の子はどういう準備をするか→これも調査
  • 何回目のデートで手をにぎったりキスしたりセックスするのか、→アンケートがよさそう。
  • 人気のデートコースはどこか→アンケートだな。現地調査もあるか。
  • デートレイプはどの程度起こっているのか→いろいろ難しい
  • 二股かけている人間はどれくらいいるのか。二股はなぜいかんと言われるのか。→一部倫理学だな。
  • なぜ人間は異性に魅かれるのか。男女のあいだに差があるか。→心理学?生物学?

とかいろいろ考えていくと方向が決まってきます。でもそのためにはいろいろ本を読んでみないと。

とにかく、書くべき焦点をどの程度狭くすることができるか、ってので出来不出来が決まります。

研究手法

現代社会学部の教員は非常に多彩なので、研究の手法もさまざまになってしまっ
ています。

私の専門は哲学なので、やっぱり文献調査と概念的分析、倫理学的関心からの
規範の記述とその批判のようなものしかできないわけですが、まあ卒論では好
きにやってください。

おそらく現代社会学部の標準的な学生が手にしている手法は、

  • 量的社会調査(アンケートと統計)
  • 質的社会調査(インタビューとその傾向分析)
  • 文化の歴史的研究(歴史的(主として近現代の文献調査)
  • テキスト分析、たとえばジェンダー批評。
  • テキスト読解。著名な理論家・思想家の著作を読み、その一部を正確に理解する。
  • いくつかの理論社会学的概念を使った社会関係理解。

ぐらいだと思います。まあ3回生から勉強してもまだまだいろいろ手に入れることはできます。

ゴールはどこにある?

どこまでできればゴールにすればよいのかってのも難しい。これはどういう研
究手法をとるのかと密接に関係しています。

  • アンケートと統計ならば、まあある仮説にしたがって、あるグループが他のグループとどういう点で違いがあるか言えればいいかな。社会の構造のようなものをかいま見ることができればよい。
  • 質的調査をするのであれば、生身の人間がどう生きているのかの一部をかいま見れば。
  • 史的研究をするのであれば、ある概念や現象がどう発展しているのかを理解できれば。
  • テキスト分析ならば、うーん、こういう切り方をするとこういうテキストはこう分析されるだろう、とか、かなあ。
  • その他いろいろあるな。でも卒論ではそんなに斬新な結論を得ることを目的とするよりは、どこに問題があるのか、なにが問題なのかが理解できれば十分であるとも思います。

実例

しょうがないので、これまで私が指導した学生さんたちがどういうふうにしてテーマを決めていったのかを思いだしてみます。

ニーチェな人

  1. 高校の倫理で名前を聞いた「ニーチェ」とか「キルケゴール」とか、せっかく大学入ったんだから一回は勉強したい。
  2. んじゃとりあえず読んでみないとね。でもニーチェは難しいです。
  3. 「狂気」に興味あるんですが。
  4. ニーチェはたしかに狂人になってしまったけど、とくに狂気について考え
    たひとではないです。伝記的な研究はおすすめしないです。
  5. どうしましょう。
  6. とりあえず入門書読んでみたらどうですか?
  7. 「ルサンチマン」ってのがおもしろそうでした。
  8. んじゃ『道徳の系譜学』とか。
  9. 読んでみたけど、難しくて読みきれません。
    10. とりあえず「ルサンチマン」のところだけでも理解したらどうですか。道徳なんてのは弱い奴が強い奴に対する反感から捏造したものだ、とかそういう話。
    11. ひとりじゃ読めません。
    12. んじゃしょうがないのでつきあうから、ちょっとづつ読みなさい。

仮面ライダーなひと

  1. 「仮面ライダー龍騎」が好きだ。なぜおもしろいのか考えたい。
  2. 魅力はどこにあるの?
  3. それぞれの登場人物がそれぞれの正しさを主張しているんですよね。その対立が萌え。
  4. んじゃ、キャラクター分析からはじめたら?
  5. ごちゃごちゃ
  6. ごちゃごちゃしていてダメですね。どのキャラが一番好きなんですか?
  7. 仮面ライダー王蛇!
  8. んじゃ、そのひとのどこが魅力なのか考えてみたら?
  9. んー、悪だから。
    10. んじゃそこらへんを中心にしてまとめていきましょう。

アスペルガーな人

  1. アスペルガー症候群が気になる。
  2. ふむふむ。でも精神医学とかちゃんと勉強しているわけじゃないからその障害だけでは扱えないよね。
  3. 学校教育の現場とからめれば。最近いろいろ対策しようということになってるんですよ。
  4. それはいいねえ。それでいきましょう。アスペについての知識と、学校制度についての知識の両方が必要ですね。

文学における唯美主義のひと

  1. 小説書くのが好きなので。
  2. 小説を卒業制作にしちゃう?
  3. それはちょっと。
  4. どういう傾向のものが好きなの?
  5. 美しいもの。
  6. うーん、具体的には?
  7. 鏡花とか谷崎とか。
  8. んじゃ、そこらへん分析してみよや。好きなのは?
  9. 「刺青」。
    10. んじゃがんばりましょう。どこに美を感じるかぐらいで。内容なの?文体とかなの?文体の特徴はどこにあるの?

FGMのひと

  1. 昔の授業でFGMのこと聞いたんで。
  2. どうぞ。文献集めましょう。「なくそう」って人が多いけど、「文化を尊重しよう」て人たちにも気をつけ
    て。

代理母のひと

  • 生殖技術について
  • 広すぎ。いろいろあるから。なんにする?
  • んじゃ代理母で。
  • それはずいぶん議論されて文献も多いので勉強しやすいです。

道徳教育指導要領のひと

  1. 子どもをどう育てるかとか。
  2. 話が大きすぎるよ。
  3. 教育実習とかともからめて。
  4. んじゃ学校での道徳教育がどうおこなわれているか、どう行なわれているかの話にしたら?
  5. 文科省の指導がどう変遷しているかでいいですか。
  6. ふむ、いいんじゃないの?

セックスワークのひと

  1. 売春の話とか。
  2. 売春はなぜ悪かとか、売春の歴史とか、現代社会での売春の実態とかいろいろあるけど。
  3. 一番最初ので。
  4. 道徳と法の話とかかなあ。10年ぐらい前の「性の自己決定」の話とかだね。
  5. はあ。
  6. あとJ. S. ミルの『自由論』は絶対に読んでおくこと。他にもいろいろ読む本はあるなあ。
  7. はあ。売春している人を応援する話はないですか?
  8. 「セックスワーク論」とか。
  9. そこらへんで。

やおいの人

  1. やおいはなぜおもいろいのかとか。
  2. まあんじゃやおいの紹介しないとね。
  3. それからどうしましょう。
  4. なぜ婦女子はやおいが好きかっていう分析はけっこうあるから、そこの本を集めて並べて検討してみたら?

2013年に読んだ本ベスト10

風雲児たち 幕末編 21 (SPコミックス)
みなもと 太郎
リイド社 (2012-11-29)

昨年末から1月にかけて読みました。おもしろいねえ。やっぱり大志は大事だ。それぞれ自分の役目があります。


非常にすっきりしていて頭よくなった気がする。歴史は大事です。


ずる―嘘とごまかしの行動経済学
ダン アリエリー
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実験倫理学というか。我々がどんな悪いやつであるか。いろいろ味が悪いんだけど必読。


ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?
ダニエル・カーネマン
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カーネマン先生直々の解説。必読。


あなたはなぜ「嫌悪感」をいだくのか
レイチェル・ハーツ
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嫌悪感というのは大事です。


WILLPOWER 意志力の科学

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最近出たやる気本ではこれがベスト。


失踪日記2 アル中病棟

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イースト・プレス
アル中怖いです。

ユーモア心理学ハンドブック
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笑いというのの心理学的分析。ハーレー先生たちの『インサイドジョーク』の出版が待たれる。


ビートルズ音楽論―音楽学的視点から
田村 和紀夫
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今年一番関心した著作家は田村先生。なんというか音楽を本当によく理解している感じがする。


The Oxford Handbook of Happiness (Oxford Library of Psychology)
Oxford University Press, USA
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勉強になったのはこれかな。心理学、哲学、宗教学と多方面からアプローチ。対立する立場もいろいろ紹介されていて見通しがいい。ペーパーバックとKindleも出てるはず。でも高いよね。