タグ別アーカイブ:

キャリン・スタンバーグ先生の心理学的恋愛相談

Karin Sternberg先生のPsychology of Love 101ってのをざっと見てたんですが、最後の恋愛相談室みたいなのが面白かったのでメモ。翻訳ではなく要約というか、まあ勝手なアレ。質問も答もそれぞれよくある話だけど、それぞれ恋愛心理学の有名論文が参照されるのがよい。キャリン先生は、認知心理学と恋愛心理学で有名なロバート・スタンバーグ先生の奥様らしい。ロバート先生の物語理論にけっこう言及しているのが目につきました。このPsych 101シリーズってのよさそうですね。

Q1. ボーイフレンドが2回も浮気しました。彼は結婚したら浮気はやめる、その前に遊んどく必要があるのだと言うのですが、信頼できるでしょうか。

A1: 心理学の原則として、ある人物の未来の行動を予測する一番の目印は、過去の同種の行動です。彼が今浮気するのをやめられないなら将来もやめられないでしょう。

Q2: 僕と彼女はずいぶん情熱的な関係だったけど最近冷めてきたような気がします。

A2: スタンバーグのトライアングル理論によれば、恋愛の三つのなかで情熱は一番熱しやすく冷めやすいものです。

Q3: 彼と4年つきあっています。よい関係なのですが、結婚の話になると彼はだまってしまいます。

A3: 第一に、将来をコミットするのを嫌う人びとがいるので、期限を切ってコミットするのかどうかたずねて、ダメなら別のを探しましょう。第二に、スタンバーグの物語理論によれば相性の悪いストーリーをもってる人びとはうまくいかない傾向があります。自分と相手のストーリーがマッチするものなのかどうか、自問してみましょう。

Q4: あたらしくできた彼氏が、昔の彼女とうまくいかなくなった話ばかりしてやめません。大丈夫でしょうか?

A4: なにかに依存してた人がそれをやめると禁断症状が出るものです。他に注意すべき点として、第一に、いったん別れたカップルままたくっつくというのはよくあることです。第二に、真面目につきあってるカップルは何度か危機的な状況を迎えるものです。彼と彼女の関係もいまそうなのかもしれません。第三に、ある人が恋愛関係を終わらせようとする時に、他の相手と表面的な関係を結んだりすることもよくあることです。あなたとの関係もそうかもしれません。

Q5: 彼女がとても嫉妬深いのですが、どうすれば彼女を変えられるでしょうか。

A5: 第一に、他人を変えることはできません。マニアタイプの恋愛する女性なのでしょう。また、Shaver, Hazan & Bradshow (1998)の「アンビバレンス的愛着スタイル」をもつ人かもしれません。第二、そういうひとはコミットメントのレベルがあがるとなおさら嫉妬深くなる傾向があります。第三に、彼女のの嫉妬は彼女の問題なのでしょうか?あなたの方に問題はないですか?

Q6: 以前は私と彼氏の間でいろんな深い話をしていたのですが、最近はなにか表面的な話ばかりです。

A6: これもスタンバーグのトライアングルを使うと、親密さと関係があります。つきあいはじめはお互いのことを知りたいのでたくさんおしゃべりしますが、だいたいわかってくるとあきてきます。おもしろいのは、過去の関係の悪いことは話しやすいわけですが、現在のパートナーとのことは当人には話せないということです。また関係の最初ではそれが人生の一番重要なことですが、関係が安定してくると他のことを始めます。Vaughn (1990)が別れの分析をしていて、それはだいたい秘密をもつことからはじまるようです。

Q7. ガールフレンドが、僕自身を好きなのか、僕のイメージを好きなのかわかりません。

A7. スタンバーグの物語理論によれば、われわれは恋愛相手をフィルターを通してみてます。ゴフマンの『日常生活における自己提示』1956によれば、「本当の自己」なんてものはは存在しません。。Sternberg & Barnes 1985では、パートナーが感じているだろうとわれわれが思っていることと、パートナーが実際に感じていることの間には弱い関連しかないことが指摘されてます。


恋愛の類型学 (4) おまけ:愛の類型学

よく昔の恋愛論や哲学的恋愛論みたいなの見てると、恋愛とその他の愛、特にキリスト教的・利他的アガペーみたいなのが混同されてるような感じがあるんですわ。 loveとかamourとかLiebeとか っていう西洋語は、すごくいろんな人間的な感情や人間関係につかわれるので、そこらへんでいろいろ言葉の意味のすりかえをするひとたちがいるんですね。

んじゃ、「恋愛」じゃなくて、「愛」を分類するとどうなるんだろう?

恋愛心理学とかだとエレンバーシェイドの分類が有名みたいですね。西洋語の愛loveには四天王がいる。それは別の語で表すと、(1) 愛着、(2) 同情愛、(3) 友愛、(4) 恋愛。

(1)の愛着、アタッチメント attachment loveていうのは、子供が親にくっつくような感じの愛ですね。大人、大きいもの、強いもの、経験をつんだひとにくっついていると安心・安全、離れると危険で不安。くっつき愛。

(2) 同情愛 compassionate loveってのは、同情・共感・共苦、パッションをともにする愛です。他人、それも複数の幸せを願うような愛、親切心。困ってるひとをみると助けたい愛。利他的愛、慈善愛、共同愛communal love、アガペ、B-Love、他者愛とかいろいろいわれる。

(3) 友愛 companionate love。コンパニオン愛。友人愛。上の同情愛が不特定複数・多数に向かう。compassionate loveが見返りを求めないっていうか、まあへんな言い方だけど上から下、なのに対して、友愛っていうのはお互いがお互いのことを考えてる互恵的な愛情なのがポイント。早い話、お互い組んでると利益になる。逆に言うと、利益にならなかったりすると友愛を維持するのはむずかしい。

(4) 恋愛 romantic love。この「ロマンチック」ラブの「ロマンチック」ってのは論者によってどう定義するか微妙だけど、バーシェイド先生の場合はエロスとかと関係のあるやつ。

こういうふうに「愛」って言葉にだまされないで、とりあずそれはどのタイプなのか、そしてそのタイプどうしの関係はどうなってるのか、みたいなふうにかんがえてかないと、変なお説教好きな哲学者にだまされちゃいます。

あと最近の心理学の傾向として、上の4つの「愛」のタイプがどれも進化的な背景もってるだろうってことが協調される傾向にありますね。愛着、友愛、恋愛の三つが進化的に有利、つまり生存と繁殖のために重要なのははっきりしているから、問題は(2)の利他的愛、同情愛がどう進化してきたのか、っていうのがけっこうたいへんな課題ではあるけど、まあ見通しはあります、ぐらい。

よく(女子)学生様は「友人と彼氏、友情と恋愛のちがいはなんだろう」「男女間では友情はなりたたないのでしょうか」みたいな授業後感想を書いてくれることがあるんですが、それは上のバーシェイド先生の(3)と(4)の違いを考えているわけですわね。

んで、先生たちは心理学者なので調査する。この方法がちょっとおもしろいんですわ。彼女たちが「社会カテゴリー法」と名付けた方法を紹介すると、まず被験者に身近な人物のリストを作ってもらう。んでそれを、社会的カテゴリーに分けてもらう。この社会的カテゴリーってのは、「家族」とか「友人」とか「同僚」とか「好きな人達」(people I love)、そういうやつね。当然複数のカテゴリに入る人々もいる。「好きな同僚」は「同僚」と「好きな人々」の両方に現れる。

んで、(A)「私が恋しているひと」people with whom I am in loveにリストアップされるひとは、(B)「性欲を感じるひと」people for whom I feel sexual attraction/desireにも現れるけど、(C)「私が愛してる/好きなひとびと」people I loveの人々は、(B)「性欲を感じるひと」にはあらわれないことがある。一方、(B)「性欲を感じるひと」は(A)「恋しているひと」には現れないことがある。さらに、(C)「恋しているひと」は(D)「友人 」friendにも現れることが多い。

これがなにを意味するかっていうと、バーシェイド先生たちの解釈では、(A)「私が恋しているひと」は、だいたいのところ、(B)性欲を感じる(D)友人だ、ってな感じ。

まああたりまえといえばあたりまえなんだけど、友人と恋人の違いは、相手に性欲を感じるかどうかです、ってな話になる。まあ非常に単純であたりまえの結論ではあるんだけど、こういうのもあるていど実証的な根拠があれば「なるほどね」とかってなりますね。大学の授業とかで追試やってみると面白いと思うんですけど、私自身はこういう調査の手法を勉強したことがないのでできなくて残念です。

あと、それじゃセックスフレンド(friend with benefit)はどうなるのかとかはまた。

バーシェイド先生の論文「「愛」の意味をもとめて」は下のに入ってます。

愛の心理学

愛の心理学

posted with amazlet at 17.10.03
北大路書房
売り上げランキング: 259,853

恋愛の類型学 (3) スタンバーグ先生の恋愛物語理論

恋愛の類型学、つまりタイプ分けに関しては、ジョン・アラン・リー先生の恋愛の色彩理論ロバート・スタンバーグ先生の恋愛三角形理論が有名で、ネットにもけっこう転がっていますね。私もちょっと紹介しました。

スタンバーグ先生の三角形理論は1980年代のものですが、90年代に今度は「恋愛は物語だ理論」みたいなのを提唱して、三角形理論といっしょにして「恋愛の二重理論」という形にしてます。この「恋愛物語」理論はネットでは紹介されてないし、注目もされてないみたい。ちょっとだけ紹介。

スタンバーグ先生自身の本が翻訳されてるし、それ以降にも『愛の心理学』にもスタンバーグ先生自身が論文書いてるのでそっち見てもらえばいいのですが、講義のためにリストつくったので、まあ紹介。

愛とは物語である―愛を理解するための26の物語
R.J. スターンバーグ
新曜社
売り上げランキング: 1,307,203

この理論は、その名の通り、恋愛は、それぞれのひとにとってそのバックグランドやプロトタイプみたいなのになる物語・ストーリーがあるのだ、ってな理論。人によってどういうストーリーをもってるかは違っていて、それが似てたり近かったりすると関係はうまく行きやすいだろう、と。また個人としても、成功しやすいストーリー持ってるひとは成功した恋愛生活送りやすいかもしれないし、まずいのをもってるひとはまあ苦労するかもね、とか。

スタンバーグ先生が挙げてるのは25個とか26個とか、文献によってちょっと違うし、それですべてのタイプのストーリーが尽くされてるとも主張してない。まあ非常に大雑把な話で、理論と言えるのかどうかもよくわからん。ただあらかじめこういうストーリーを挙げていって、それに対応する質問紙を作っていろいろやってみるとおもしろい結果ができるかもしれないね、程度です。

ストーリは大雑把に下のように、そのストーリーが主に何に注目するかってのに対応して「協調的」「原作つき」「ジャンルもの」「パートナー」「関係」「非対称な関係」とかに分けられてるけど、これもまあいいかげんな分類に見えるけどまあ。

    • 協調的関係
      • 【旅】 人生は旅であり、恋人は旅の道連れである物語。目的へ到達するために二人が協力する。魔王デスピサロを倒したり、海賊王になったりするなかで仲良くなる。
      • 【編みもの】 いっしょに縫ったり編んだりしながら関係が作られる。おだやかでいいですね。少女漫画はそうあってほしいです。
      • 【庭仕事】 草木の手入れのように関係を大事に育てる。土を耕したり水や肥料をやったり害虫駆除したりたいへんです。ときどき剪定もせなならんね。
      • 【ビジネス】 パートナー関係はビジネス。金は力。クールでドライにいきましょう。パパ活?パートナーはそれぞれ役割(仕事)をもつ。二人で連帯して外敵やライバルと戦ったりもするかも。
      • 【中毒】 アディクション。一方が相手に強く依存し、相手の存在が人生にとって不可欠であると感じられる。強く、不安定な愛着。パートナーにしがみつくような行動。パートナーを失うことを考えて不安になったり。メンヘラ的。
    • 原作つき物語
      • 【ファンタジー】 王子と王女、騎士とお姫様。騎士が自分を助けてくれたり、可憐なプリンセスと結婚するなどといったことを日頃から期待する。授業で「あなたたちの大半には、白馬に乗った王子様は、来ません!」とか言うと大反発を受けるので注意。「でもカエル王子はプロポーズしてくるよ」とか言っても喜ばないし。
      • 【歴史】 二人の間に起こった出来事が消すことのできない記録となる関係。精神的にも物理的にも多くの記録をつけてゆく。「あのときのあれがこれの原因なのよね、記録も残ってます」。
      • 【科学】 科学的な原理や公式に従って関係が同分析されるかという観点で物語が構成される。生物学者や進化心理学者はそういう恋愛するのでしょうか。
      • 【料理本】正しいレシピを使えば関係はうまくいく。料理人とパトロンの関係。「うまくいく」方法をみつけたいという欲求。『ルールズ』や『草食系男子の恋愛術』の世界ね。ハウツー本は大事です。
    • ジャンルもの物語
      • 【戦争】 戦闘や交戦状態が重視される。恋は戦争。おそらくパートナーとの。でも相対性理論に「恋は百年戦争」っていう名曲もあるからそっちだろうか。
      • 【演劇】 恋愛には筋書きがあり、いかにもありがちな演技や場面や台詞がかわされるものだ。双方が何かの役を演じる。
      • 【ユーモア】 愛とは奇妙で滑稽なものである。明るく屈託のない関係を保ち深刻になりすぎないことが重要とされる。ウディ・アレン的?
      • 【ミステリー】 愛は謎。恋人たちは相手が自分のことを知りすぎないようにすべきである。一方が相手の情報を明らかにしていく過程。
    • パートナーに注目する物語
      • 【SF】 恋愛は理解しがたい奇妙な存在との遭遇。パートナーの奇妙さや不思議さが大事。『うる星やつら』は違いますね。
      • 【コレクション】 パートナーが大きなコレクションの一部として尊重される。パートナーとは愛着のない距離を取った関係。ドン・ジョヴァンニの「カタログの歌」の世界。
      • 【アート】 パートナーをその身体的魅力について愛する。パートナーの概念がうるわしく見えることが重要。身体的な美を愛する。。美の鑑賞者と美術作品の関係。パートナーの健康に気をつける。容姿が衰えると……。
    • 関係に注目する物語
      • 【マイホーム】 家庭を中心にする物語。恋愛関係が安定した家と家庭の環境を達成するための手段。
      • 【回復】 サバイバー的心象。恋愛関係は、トラウマから回復するための手段。救われたいですか。ひどい目に合ったけどあなたが癒やしてくれましたか。
      • 【宗教】 パートナーが神に近づくための手段、あるいは関係そのものが宗教。これも誰かが救われるんでしょうな。
      • 【ゲーム】 恋愛はゲーム。「勝つためにプレーするのさ」。勝者と敗者。興奮、面白み、人生をまじめに考えるべきではない。「こーいーはげーぇーむじゃじゃなく〜いきるこーとねー」
    • 非対称な関係の物語。このタイプのはだいたいやばい。
      • 【師弟】 愛とは、導くものと導かれる者のあいだに生まれるものである。一方が情報を提供し、他方がそれを受け取る。セクハラの原因。
      • 【犠牲】 一方が自ら譲歩し、他方がその利益を受取る。愛することは自分を犠牲にすることであるという物語。たとえばワーグナーの『さまよえるオランダ人』とか、いみなくけがれなき処女が犠牲になるけどあれなんですかね。
      • 【政府】 一方が他方に対する支配権を持ち管理する。管理管理。
      • 【警察】 一方が他方を監視し、ある枠組みの中に押し込む。パートナーが規則をまもっているかしっかり監視していなければならないと考える物語。または自分が監視される必要があると考える物語。ウォッチングユー。
      • 【ポルノ】 愛は不潔であり、愛することは相手を貶めたり、相手から貶められたりする関係であるという物語。サド公爵とか、『O嬢の物語とか』。谷崎潤一郎先生の『痴人の愛』も近いか。
      • 【ホラー】 一方が相手を怖がらせ、相手が怯えるような関係であるときに両者の関係が興味深いものになる。『羊たちの沈黙』もまあ恋愛物語といえるのかもしれんですね。

まあそんなおもしろいものでもないけど、このスタンバーグ先生の「物語」ていうのは、まさにわれわれが「恋愛観」と呼ぶようなものだろうな、って思います。学生様たちには、「あなたは自分はどの物語を望みますか」とか「これまではどれですか」とか聞いてみるとおもしろいかもしれない。

私たちはどういう物語を生きたいのか、そして実際にはどういう物語を生きてるとおもっているか、っていうのは、恋愛にかぎらず人生についてもちょっとおもしろいところがありますね。それはそのうち。

下のは堅い心理学の本で、学問としての心理学に興味がないとなにをやってるのかわからないと思う。

愛の心理学

愛の心理学

posted with amazlet at 17.10.02
北大路書房
売り上げランキング: 213,282

シュラミス・ファイアストーン先生がお怒りのようです

ラッセル先生の革命的な著作以降、まあ避妊手段の開発とか映画の普及とか車の普及とか禁酒法の廃止とかロックとかいろいろあって、セックス革命は完成する。まあとにかくばんばんセックスセックス。

ビートルズのPlease Please Meの歌詞は知ってますね? 君はトライさえしようとしないじゃないか。君がやらせてくれないから僕の心には雨が降ってる。僕をよろこばせてくれよ。プリーズプリーズ。

 

 

そのなかで出てきたのが第二派フェミニズム、特に「ラジカル」=急進的、根本的フェミニズムね。これは、第一波が女性の社会参加(参政権や労働市場への参加、財産権etc)を求めるものだったのに対して、男女の関係、恋愛やセックスとかっていう人間生活の私的な領域と思われてたところまで批判の目を向けて、社会を根本から考えなおそうっていう思想の流れだと私は理解している。

FIRESTONE-obit-popup私は特に1970年に出版された 1)同じ年にケイト・ミレット先生の『性の政治学』も出ていてこれも重要な著作とされてるんだけど、私はあんまり評価してない。 シュラミス・ファイアストーン先生の『性の弁証法』がすごいおもしろいと思ってんのよね。ファイアストーン先生25才。早熟すぎる。

「ラジフカルフェミニズムの本が恋愛の問題を扱わないならばそれは政治的に落第である。なぜなら、恋愛は、おそらく出産よりももっと女性を抑圧する中心点となっているからである。……私たちは恋愛を捨ててしまいたいのだろうか?」p.157

フェミニストとして、この視点っていうのは、まあ正直でいいと思うんよね。差別や男女格差とかいろんな問題があるけど、それに深くかかわっている恋愛の問題は避けられない、みたいな。まあネット上のアンチフェミな人々が延々してきているのはこれだもんね。アンチの人は特に女性の上昇婚指向や性的なより好みを問題にしているわけだけど。いわゆる「ただしイケメンに限る」問題。

ファイアストーン先生はラジフェミなので、パーソナルイズポリティカル。恋愛ってパーソナルなもんだしプライベートなものだとされてたけど、そりゃポリティカルでっせ、と。まあこの「ポリティカル」の意味私よくわかってないところがあるんだけど。

恋愛は、十分に体験され、その体験もよく知られているにもかかわらず、いまだかつて理解(understand)されたことがない。……恋愛がなぜ分析されないのかについては理由がある。女と恋愛は、社会を支えている土台なのである。この二つを吟味してみれば、文化の構造そのものをおびやかすことになるからだ。

ファイアストーン先生の結論は「現在の(男性的)文化は、寄生的であって、女性の感情的な強さを餌にしているのだ」ってな感じになる。愛は所有欲や独占欲を含む利己的なものではあるけど、他人に自分を開き他者に屈することでもあり、他者と合一し自我を交換するすばらしいものである、みたいな感じ。それ自体はとてもグッドなもの。恋愛における相手の理想化(スタンダールの「結晶作用」)みたいなのもそんな悪いもんでもない。悪いのは、「愛の政治的、言い換えれば不平等な力関係である」(p.165)。現代社会では、恋愛っていうのは女性にとってのホロコーストになってて、そこで女性は犠牲にされ搾取されちゃってる、みたいな感じ。言いたいのは、女性がたとえば一流の芸術作品作ることができないとかってのは男のために家事したり子供育てたりしているからで、それって「愛」とかの名のもとに搾取されてんのよね、自発的奴隷だわ、ってな感じ。

まあラジフェミらしいわね。っていうか一番ラジフェミらしい。ドゥオーキン先生なんかおそらく彼女自身が直接に性暴力の被害者になっちゃって、男性憎悪みたいなのにまみれているのに対して、ファイアストーン先生はいちおう「恋愛はいい!」みたいなところがある。まあルックス的にもファイアストーン先生はけっこうモテたんではないかという気がする。ていうか少なくともモテを意識したことはあるだろう。

精神分析のテオドール・ライク先生が患者の恋愛に関する悩みとかをつづってるのがあるらしく、それ参照してるんよね。
女性はいろいろ男性と自分の関係のことに悩んでいる。

「男は、女が男を愛するようには、女を愛することができない」「長い間セックスなしで済ませることができるが、愛情なしではやっていけない」「私は、体以外にこの男に与えるものをもたないのかしら?」
「私は服を脱ぎ、ブラジャーをはずして彼のベッドの上に体をのばしてまった。一瞬、私は、自分が祭壇の上のいけにえの動物のような気がした。」

まあラッセル先生とかの影響で、若者はばんばんセックスするようになって、そこらへんで問題がいろいろ出てきているわけです。

「私には、男の気持ちがわからない。彼には私がいる。だのに、なぜほかの女を必要とするの? ほかの女には、私にはないものがあるの?」

これはラッセル先生の奥さんかもしれない。

「私は、何人かに、男も泣きながら寝ることがあるのかたずねたことがある。私は男はそんなことしないと思う。」

ラッセル先生、苦しめてますよ。まあ女泣かしている男はけっこういるようだ。んで男性はどうかっていうとこう。

「女性の外面的な見掛けだけが重要だなんてことはないよ。下着も大事だ。」「女の子とやるのは難しくない。難しいのは縁を切ることだ」「その子は私に、彼女の心(mind)のことを気にしているかと聞いてきた。うっかり、ケツ(behind)の方を気にしていると答えそうになったね」

これは「キモチを大事にしているか/オチチの方が大事だ」ぐらいに訳していいかな。まあとにかくアメリカ人いやですねえ。

「たぶん女を騙して、女を愛しているふりをするのは必要なことなんだろう。しかしなんで自分まで騙さなきゃらんのだ?」「うちの嫁は、話すのをずっと聞いてるだけでは満足しない。何を話しているのか内容まで聞けというんだ。」

それにしてもファイアストーン先生なんでこんなのばっかり拾ってくるんすかね。ライク先生の原文でこういうの不平等で男優位なのばっかり掲載されているのかどうかは不明。まあ60年代とか男性は経済的に優位だったから、ほんとにどんなことでもやれたしできたんすかね。でも、男女関係・夫婦関係の悩みっていうと、こういう感じになりますか。すでに関係ができてるなかでの悩みだから、「モテない」男女の悩みは入ってこない。

しかしまあ私自身は、女性にはこういうモテ男性しか目に入らないんじゃないか、それは60年代も2010年代もかわらんのではないか、みたいな印象をもってますね。女性の悩みのタネになる男はみんなジャーク。でもジャークはモテる。むしろジャークだからもてる。当時のアメリカも非モテも、ナードも、自信ない男もいたろうに。ファイアストーン先生、そういう人あなたの目に入ってましたか?

「シモーヌ・ド・ボーヴォワールは「愛という言葉は、男と女では、その意味するところが違う。このことが、男と女を隔てる深刻な誤解の一因となっている」と言っている」p.168

まあこれがファイアストーン先生の中心的なテーゼになる。この本自体ボーヴォワール先生に捧げられてんのよね。このボーヴォワール先生の指摘はほんとに大事ですね。実際、ラッセル先生やサルトル先生が語るloveなりamourなりって、女性から見たらただの性欲とセックス、あるいはせいぜいそれに女性からの親密サービスがくっついた程度のものじゃないんすかね。

男と女のあいだの愛に関する伝統的な違いのいくつかを説明した。この違いが、一般に認められている「ダブルスタンダード」であり、しばしば客間の話題になる。つまり、女は一夫一婦的で、独占的で、執着的(clinging)で、セックスそのものよりも、(非常に密な)「関係」に関心がある。そして性欲と愛情を混同している。他方、男は、やる(screw)以外には関心がない。そうでなければこっけいなほど女をロマンチックに祭り上げる。男はひとたび女を手にいれると、今度は、悪名高い女たらしとなり、けっして満足しない。男はセックスを感情ととりちがえている。(pp.168-169)

screwには「Wham, bam, thank you Ma’am!」ってのがついていて、「ドカン、パンパン、どもありがとう」、ぐらいか。訳書では「感情のないす早い性交」とかって訳してる。「出会ってやってんじゃバイバイ」ぐらいか。まあファイアストーン先生自身が60年代にどのていどwhamしてbamしてたのかはわからない。

ラッセル先生なんかは、親密になってセックスして、気が合わなくなったら別れちゃえばいい、とか言うわけだけど、そんな簡単に別れてくれないっしょ。

「セックスを感情ととりちがえてる」、はmistake sex for emotion。これは、女性が求めているのはやさしい感情・コミットメントなのに、女がなんか言ってきたらセックスしてやりゃいい、みたいに考えてるってことだと思う。まあモテる男は釣った魚に餌はやらない。まあというわけで、ファイアストーン先生の結論はこうだ。

「(1) 男は愛することができない。(男性ホルモン? 女性は伝統的に、相手が女性だったら許せないような感情的個人主義を男性に期待し受けいれている)。(2) 女が執着行動は、客観的社会状況によって余儀なくされているからである。(3) こうした状況は(セックス革命以前の)過去とたいして変わっていない。

(1)の「感情的個人主義」は、女どうしだったら「冷たい」とか「自分勝手」とかって言って嫌うような性格特性を、男性には期待するってことね。ジェームズボンドとか怖いわよね。でもすてきー。

まあこの「男は恋愛できない」っていうのを、フロイド的なエディプスコンプレックスや幼児期のしつけみたいなんで説明しちゃう。ここらへん、生物学というよりは文化的な問題と見るのがまあこっからしばらくのフェミニズムね。

「あらゆる正常な男性に残されている問題は、見返りとして彼女が愛しているのと同じように彼も彼女を愛してほしいなどという要求を出さないで彼を愛してくれる人をどうやって得るか、ということである。」p.171

まあ男は(いい女と)やりたいだけだ、というかそういう理解ね。それもなるべく紐付きじゃないのがいい。最高は毎日カジュアルセックスっすかね。ナンパ指南本とかまさにそれだしね。

「女性が「男性に執着する」のは、客観的な社会状況によって必要とされるのである。おたがいの愛情に関して、男性がヒステリーをおこすことに対する女性の反応は、男性から求められるのと同じ愛情を男性に求めるために、巧妙な操作技術の開発であった。この作戦は、何世紀にもわたって工夫され、実験され、内緒話とか茶飲み話のなかで母から娘へと受けつがれてきた。最近では、電話でこれがおこなわれている。これらのおしゃべりは、つまらない井戸端会議ではない。むしろ、女性がその生存をかけた必死の戦略とでもいうべきである。男女共学の四年制大学での勉強よりも、一時間ほど電話で男について語り合うほうが、もっと本当の知識が得られる。」

この「大学より電話の方が勉強になる」の箇所好きなんですよね。実際、女子は酒とか飲むと男とのつきあいかたの相談話ばっかりしてるわけだけど、それって彼女たちにとって非常に重要なのだなということがわかる。そしてそこでの洞察とか非常に鋭い。まあ男とのつきあいは、へたすると人生かかってるわけだしねえ。慎重になるのもわかるし、そもそも男とかなに考えてるのかわからない、みたいな話をしているっぽい。

さて、ここまで恋愛の話だったわけですが、先生セックスはどうなんすか。

「では、どうすれば、女性は、男性からこの反対給付を引き出すことができるのだろうか」p.174。

まあ、もし男を愛することに決めたら、どうやって男を尻にしいて感情的にも経済的にも安定した生活を営むか。その答はセックスだ。

女性のもつもっとも強力な武器はセックスである。女性はさまざまな策略を使って、男性を肉体的な苦痛状態にまで追いやることができる。彼の欲望を拒んだり、からかったり、与えるふりをしてやめたり、嫉妬させたりする。……「どうやって男をじらせようか?」とときおり考えたことない女性は、ほとんどいないだろう。」(pp.174-175)

ファイアストーン先生正直でいいすね。わたしはそういうのやめた方がいいと思うんですけどね。最悪トラブルになる。でもそういうことする女性はいるみたいですね。もう本能といっていいかもしれない。

ところがっすね、ラッセル先生の思想に影響されて生じたかもしれない60年代のセックス革命は、その点で女性に不利になったんですわ。これがこの本の核心部分の一つなんすよ。

「過去50年の間、女性に愛について二重に束縛されてきた。すなわち、すでに起こったとされる「セックス革命」を口実に、彼女たちは、男性に対する武装を解くようにと言われている(「ベイビー、やめてくれよ、いったい今までなにしてたんだい?セックス革命のこと聞いてないの?」)。現代の女性は、彼女たちのおばあさんの時代には、そうなるのが極めて当然のことと思われていた「いじわる女」(bitch) 2)日本語だとビッチは性的にゆるい人を指すけど、英語はいじわるってだけよ。 になるのを非常におそれている。おばあさんの時代には、男性もまた、自尊心の強い女性は男を待たせるものだし、恥ずかしがらずに正々堂々と男とかけ引きするものだということが当然だと思われていた。この方法で、自分の利益を守らない女は尊敬に値しなかった。それは公然の事実だった。だが、セックス革命という言葉は、女性には何も良いものをもたらさなかったとしても、男性にはおおいに役立つことがわかった。男たちは、女性に、彼女たちが普通用いる策略や要求は、卑劣で、不公平で、とりすました、時代遅れで、ピューリタン的で自分自身を殺してしまうものだと言い聞かせ、女性が苦しんで獲得したきたわずかな武装さえも解かせてしまった。その結果、男性の言いなりになる女性集団を創り上げ、伝統的な性的搾取に利用できる商品の不足を補うのに成功した。今日の女性は、この目的のために創り出された新しい言葉を投げつけられるのを恐れて、昔からの要求を言い出せなくなっている。「お固い女」「じらし屋」「退屈な女」等々。要するに男たちにとっては「物わかりのいい娘」が理想なのだ。」pp.171-172

この本が出たのは1970年、50年前ってのは1920年。ラッセル先生は1929年ね。まさにラッセル先生のことを考えてると思う。

「伝統的な性的搾取に利用できる商品」はもちろん売春婦。買春するのはお金かかるけど、ガールフレンドならタダだしね。20世紀に男性たちはロマンチックな口説き文句なんかを開発して、女性にただでセックスさせてもらうことを覚えた、実はそれは12世紀の宮廷風恋愛、18・19世紀のロマンチックラブもそうだ、っていうのが私の仮説。さらにラッセル流の自由恋愛は、性的に堅い女性は古い禁欲的教育の被害者であり、自由でないかっこ悪い存在してしまうことによって、女性のセックスを「解放」し、搾取した(搾取という言い方が適切かどうかは別にして)。堅い女性を形容する単語を大量につくりだす。

けなし言葉は“fucked up”, “ballbreaker”、”cockteaser”、”a real drag”、”a bad trip”

fucked up“はだめ女、頭おかしい、ぐらい? “ballbreaker“は「男性の自信を打ち砕く、過酷な要求をする女性」。でも「玉つぶし」なんちゃうかな。いやちがうか。cockteaserは誘惑はするものの、男を性的に興奮させながら性的な解放を味あわせない人、まあ「ちんちんいじめ」。a real dragは「面倒な女」ぐらい? a bad tripも「ひでー女」ぐらいか。「物わかりのいい娘」はa groovy chick 「ノリのいいカワイコちゃん」ぐらいか。いまでも「あの子ノリよくて」っていうのは性的にゆるいことをほのめかしている場合があるんちゃうかな。

これほんとに難しくて、女性がとりあえず男の「愛情」なりなんなりを確認したらセックスさせる、ってことになってしまえば、他の女性も相手をつかまえておくためにはセックスさせざるをえない。でないと他の女にとられちゃうし。「男を待たせておく」っていうのが無理になったんよね。でも相手選びに失敗して、いろんな男性とつきあう/セックスしたことになってしまうと、市場での値段がものすごく下がってしまう。

今でも、多くの女性は、何が起こりつつあるか知っており、罠を避けようとしている。彼女たちが男性から期待できるわずかなもののためにだまされるよりも、むしろ侮辱されたほうがましだと思っている(もっとも前衛的な男性でさえ、今日、あまり問題にされなくなた「古典的レディー」を望んでいるのは真実なのだ)。しかし、彼女たちは、罠にはまればはまるほど、伝統的な女性の策略は間違っていなかったことに痛烈に気づくが、既に遅すぎる。彼女たちは「男は皆オオカミよ」とか「男はケダモノよ!」とかいう古い表現と酷似した言葉で、こぼしながら、自分がすでに30歳になっているのに気づいてショックを受ける。「彼女たちは、昔の妻が正しかったのだということを認めざるをえなくなる。公平で寛大な女は(せいぜい)尊敬されるが、ほとんど愛されることはないのだということである。p.178」

いいねえ。いい。すばらしいよシュラミス。「男はみんなやりたいだけなんだわ」ですわね。「公平で寛大な女」はすぐにやらせてあげる女ね。

まあこういうのが70年フェミニズムの問題意識。ラッセル先生的な「性の解放」とかってのの男性中心的な偽善みたいなのに対する反抗とか、男性に対する絶望感とか。こっからフェミニズムは女性分離主義みたいなんに行く人々もでてきたり。ファイアストーン先生自身も、けっきょく性と生殖が一番の問題なんであって、将来人工子宮とかできたらいいな、みたいな結論になってるっぽい。

翻訳は偉いけどいまいちよくない。上の引用は勝手に語句訂正させてもらった。

性の弁証法―女性解放革命の場合 (1972年)
S. ファイアストーン
評論社
売り上げランキング: 180,729

References   [ + ]

1. 同じ年にケイト・ミレット先生の『性の政治学』も出ていてこれも重要な著作とされてるんだけど、私はあんまり評価してない。
2. 日本語だとビッチは性的にゆるい人を指すけど、英語はいじわるってだけよ。

プラトン先生の『パイドロス』からオヤジらしい口説き方を学ぼう

最近「倍以上男子」という言葉を流行らせようとしている雰囲気があるようですね 1)2017年だと「パパ活」か。 。私はこういうのはなんかバブル時期のことを思いだしてあれなんですが、まあそういうのもあるでしょうなあ。 http://howcollect.jp/article/7240 まあ流行らないと思いますが、こういう記事を書いている人がなにかソースをもっているってことは十分にありそうだとは思います。

しかしまあこういうので言われている女子とか年少者にとって有利な恋愛の形というのは当然昔からあって、あの偉大なるプラトン先生も検討しておられます。プラトン先生は恋愛とセックスの哲学の元祖でもあるのです。おそらくソクラテス先生もね。

プラトン先生が考えている恋愛っていうのは、『饗宴』でもそうですが、男同士、年長の男(30代とか 2)40才ぐらいになったらそろそろ少年愛やめて結婚して子供つくるのが正しいと考えられてたようです。 )と年少(10代)とかの関係ですわね。少年愛。パイデラステア。どうも当時のアテネの一部の階層ではそういうのが一般的だったんですね。美少年が勢いのある中年に性的な奉仕をして、中年男の方は金銭面とか人脈とか各種の知識や技術を教えたりする関係。まさに倍以上男子です。

プラトンが恋愛について書いたものというと、例の「人間はもともと2人で一つの球体だった、それがゼウスに怒られて二つに分けられちゃった、それ以来人間は自分の半身を求めて恋をするのだ」というアリストファネスの演説が入っている『饗宴』が有名ですが、『パイドロス』も同じくらいおもしろくて重要な本ですわね。その最初に、「君は自分に恋していない人とつきあうべきだ」っていうリュシアスという人の演説が紹介されているのです。話はそこから始まる。

まず、「ぼくに関する事柄については、君は承知しているし、また、このことが実現したならば、それはぼくたちの身のためになることだという、ぼくの考えも君に話した」って感じで話をはじめます。まあ自己紹介みたいなのして、自分がどれくらいお金もってるかとか、どれくらい地位が高いかとか仕事ができるかとかまずは説明するわけですね。んで「このこと」っていうのはまあお付き合いですわ。それは両方のためになるよ、ともちかかけるわけです。

口説きは、「ぼくは君を恋している者ではないが、しかし、ぼくの願いがそのためにしりぞけられるということはあってはならぬとぼくは思う」と意外な展開を見せます。君のことを愛しているわけじゃないけどお付き合いしよう、まあセクロスセクロス。

若い人は、自分を愛している人より愛してない人とつきあうべきなのです。なぜか。リュシアス先生は理路整然と説明します。おたがいそうする理由がたくさんある。

(1) 恋愛というのはアツくなっているときはいいけど、それが冷めると親切にしたことを後悔したり腹たてたりする。恋人がストーカーになっちゃった、とかっていうのは今でもよく聞きますよね。でも恋してない人はそういう欲望によって動かされれてるわけじゃなくて冷静な判断から相手に得なことをするから後悔したりあとでトラブルになったりしない。

(2) 恋しているからおつきあいをする、っていうことだったら、新しい恋人候補があらわれたらさっさとそっちに行ってします。「誰より君を大事にするよ」とかいってたって、他に新しい恋人ができたらそっちの恋人を「誰より大事」にするだろうから、古い恋人はひどいめにあうってこともしょっちゅうだ。実際「恋」とかってのは熱病みたいなもので自分ではコントロールすることができないものなのだから、そんなものに人生かけるのは危険だ。

(3)  おつきあいをする相手を自分に恋している人から選ぼうとすると数が少ない。ふつうの人はそんな何十人も候補があるわけじゃないっすからね。でも冷静におつきあいを望んでいるオヤジは多い。よりどりみどりになる。

(4) 恋している男というのは、有頂天になって自慢話におつきあいのことをペラペラと周りにしゃべるものだが、冷静な愛人はそういうことはちゃんと秘密にしてくれる。

(5) 恋している男は嫉妬ぶかい。今どこにいるだの誰とメールしているかとかいちいち詮索してうざい。

(6) 別れるときも恋している男はいろいろうざい。恋してない奴はさっさと納得して別れてくれる。

(7) 恋している男は、相手がどういう人かを知るまえにセックスしようとするが、恋をしてない理性的な人はちゃんと相手を見てからおつきあいする。

(8) 恋をしている人は相手の機嫌をそこねないようにってことばっかり考えて、本当にタメになることは教えてくれない。それに対して恋してない奴はいろいろ有益なアドバイスをくれる。今の快楽だけでなく、長い目で見たら将来のためにこうするべきだ、みたいなことを教えてくれるだろう。

とかまあ面倒になったからやめるけど、こういう感じ。これは今でもオヤジの口説きに使えそうな部分もあるわけですな。まあいつの時代も人は同じようなことを考えるものです。このリュシアスさんの演説に対して、ソクラテス先生が「おれはもっとうまい話ができるぞ」とか言いつついろいろ検討くわえて「恋愛やおつきあいというものはそういうものではないぞ、もっとええもんなんや」とやっつけていきつつ、その実、実は美少年パイドロス君をナンパしてたらしこんでいく、というのが筋です。そういうのが好きな人は読んでみてください。名作です。

『パイドロス』は岩波文庫のでいいと思います。『饗宴』はいろいろあるけど、光文社の新しいやつ読みやすかった。『パイドロス』訳している藤沢先生は授業受けたことありますが、モテそうな先生でした。

 

→ プラトン先生の『パイドロス』でのよいエロスと悪いエロス、または見ていたい女の子と彼女にしたい女の子に続く。

パイドロス (岩波文庫)

パイドロス (岩波文庫)

posted with amazlet at 14.07.03
プラトン
岩波書店
売り上げランキング: 11,453

 

饗宴 (光文社古典新訳文庫)
プラトン
光文社 (2013-09-10)
売り上げランキング: 56,410

アテネとかの同性愛がどういう感じだったかというのは、まあまずはドーヴァー先生の本を読みましょう。まちがってもいきなりフーコー先生の『性の歴史』とか読んじゃだめです。

古代ギリシアの同性愛

古代ギリシアの同性愛

posted with amazlet at 14.07.03
K.J. ドーヴァー
青土社
売り上げランキング: 750,418

ハルプリン先生のはゲイ・スタディーズとかの成果をふまえたものでもっとドーヴァー先生のより現代的なものだけど、ちょっと難しいし評価もそれほど定まってない。

 

同性愛の百年間―ギリシア的愛について (りぶらりあ選書)
デイヴィッド・M. ハルプリン
法政大学出版局
売り上げランキング: 809,485

アテネで女性がどういう暮しをしていたかっていうのは、これかな。

古代ギリシアの女たち―アテナイの現実と夢 (中公文庫)
桜井 万里子
中央公論新社 (2010-12-18)
売り上げランキング: 178,188

 


References   [ + ]

1. 2017年だと「パパ活」か。
2. 40才ぐらいになったらそろそろ少年愛やめて結婚して子供つくるのが正しいと考えられてたようです。

ブックガイド: 恋愛心理学のおすすめ本

ひさしぶりに学生様用お説教ネタ。

卒論を恋愛関係で書きたいっていう学生様はけっこういるわけですが、最低限おさえておく心理学系の本。ゴミみたいな本が多いので、まともな学問的な心理学の本を読むのがコツです。

スーザン・ヘンドリック先生はとりあえず権威なので2冊読む。どっちか1冊なら『恋愛学』の方。

恋愛・性・結婚の人間関係学―親密関係の社会臨床心理学ハンドブック
スーザン ヘンドリック クライド ヘンドリック
乃木坂出版
売り上げランキング: 798,622

 

「恋愛学」講義
「恋愛学」講義

posted with amazlet at 13.07.03
スーザン・S. ヘンドリック クライド ヘンドリック
金子書房
売り上げランキング: 422,185

下の本は実際現在国内最強なので必ず読む。一番最初に読んだ方がいいかも。

史上最強図解 よくわかる恋愛心理学
金政 祐司 相馬 敏彦 谷口 淳一
ナツメ社
売り上げランキング: 41,997

生物学、進化論、進化心理学から攻めるのが今風のやりかたです。

ちょっと古いけど悪くはない。

男と女の対人心理学
男と女の対人心理学

posted with amazlet at 13.07.03
和田 実
北大路書房
売り上げランキング: 471,712

下のはいま一番新しい感じ。翻訳にちょっと難があるかもしれないけど最新。これ読めれば中級。けっこうむずかしくて、心理学一般ついてそれなりの知識がないと読めない。

愛の心理学
愛の心理学

posted with amazlet at 13.07.03
北大路書房
売り上げランキング: 665,928

古いけどこれも悪くない。基本書。

恋ごころの科学 (セレクション社会心理学 (12))
松井 豊
サイエンス社
売り上げランキング: 26,637

フィッシャー先生も権威。

人はなぜ恋に落ちるのか?―恋と愛情と性欲の脳科学

ヘレン フィッシャー
ソニーマガジンズ
売り上げランキング: 448,119

恋愛っていうより性欲とか浮気とかセックスとかそういう暗い方になっちゃうけどバス先生は読んでおかないとならない。

女と男のだましあい―ヒトの性行動の進化
デヴィッド・M. バス
草思社
売り上げランキング: 319,595

<

一度なら許してしまう女 一度でも許せない男―嫉妬と性行動の進化論
デヴィッド・M. バス
PHP研究所
売り上げランキング: 420,679

 


恋愛の類型学 (2) スタンバーグの三角形理論

スタンバーグ先生は恋愛心理学の一発屋ではなく、認知心理学とかのほうでけっこう大事な仕事した人なんじゃないですかね。

リー先生の恋愛の色彩理論は、恋愛を六つなり八つなりのタイプに分けるって考え方(類型論)なわけですが、まあそんなすっきりタイプに分かれるもんでもないだろう、みたいに思った人も多いと思います。スタンバーグ先生の理論は、恋愛ってのには三つの要素があって、それの強弱でいろんなタイプの恋愛があると考えます(特性論)。

これはパーソナリティー心理学なんかが20世紀前半の類型論から20世紀後半の特性論にシフトしていったのと平行関係にあるんでしょうね。この分野では昔(クレッチマーなんか)は几帳面な「がっちり型」、社交的な「肥満型」、非社交的な「細長型」みたいな三つのタイプがある、とかって言ってたわけですが人間そんなタイプにすっぽりおさまるもんじゃない。アイゼンクって偉い先生が「性格には大きく二つの要素があるのじゃ、外向的か内向的か、神経症傾向が高いか低いかの二つじゃ」とか言いはじめた。これだとそれだけで2×2で4種類いるわけだし、外向/内向も程度を考えることができるから無数のタイプが存在しうる。今主流になってるビッグ5パーソナリティー特性とかだと外向性、神経症傾向、調和性、良心性、経験への開放性の五つぐらいの独立の要素があってこれの強弱の組み合せでいろんなパーソナリティーがある、みたいになってるんだと思うです。知らんけど。

スタンバーグがやったこともこのラインなんだと思う。知らんけど。恋愛には、

  • 情熱
  • 親密さ
  • コミットメント

の三つの要素がある、と。情熱はまあわかるあのカッとなる感じ。親密さはおたがいをよく知りあったり共感したり。コミットメントは訳せないんだけど、約束したりずっといっしょにいるとかそういう決意とか意志とか。感情的に要因(情熱)、認知的要因(親密さ)、意志的要因(コミットメント)という説明も見たことあるような気がする。

 

親密単なる「好き」。いいひとなんだけど、ドキドキしないのよね。
情熱のぼせ。もう好きで好きで。どういうひとだか知らないけど。
コミットメント空虚な愛。もう完全に冷めてますけど別れません。
情熱親密ロマンチック。この一時を二人だけでいっしょに過ごせればいいの。でも将来のこととか考えらんない。卒業したら遠距離だし。
親密コミットメント共感的愛。ドキドキしないけど、二人でいるとポカポカするからずっとポカポカしていくわ。
情熱コミットメント愚かな愛。あの人どういう人かわかんないけど、結婚するわ!もう決めたの。
情熱親密コミットメント至上の愛。

 

 

ちょっと表がうまく作れないけどこんな感じか。

まあ情熱と親密さとコミットメントの三つがそろった「至上の愛」みたいなんの典型はベルサイユのばらのラストの方だわねえ。革命期に情熱はもえあがり、将校と従僕という長い関係のなかでおたがいを深く知りあい、そして「わたしだけを愛すると誓うかーっ」ってんでコミットメントもそろって鼻血が出そうです。

論文は R. J. Sternberg, “A Triangle Theory of Love”, Psychological Review, 1986 ってやつ。ネットにPDFが転がってるかもしれません。


恋愛の類型学(1) リーの色彩理論

セックスの哲学史とかいって哲学史におけるセックスの問題を扱おうとすると、どうしたって「セックス」というよりは「愛」とか「エロース」とかそういう問題としてとりあつかことになります。まあ私はそもそも西洋人は性欲と愛との区別あんまりついてないんじゃないかと疑ってるんですが。

とりあえず哲学史として見てみると、愛っていってもloveとかamourとかerosとかいろいろ出てきて混乱しちゃいます。

こういうのどう扱ったものなのかいろいろ考えていたんですが、哲学史を見る前にあらかじめ20世紀の心理学における性愛の類型とか使って整理しとくのがいいんじゃないと思い至りました。

社会心理学と呼ばれる心理学の分野では対人関係なんかを研究していて、恋愛とかの親密な関係はもちろん主要ターゲットの一つです。でも以外に「恋愛」がすっきり整理されたのは最近なんですよね。そしてここ最近でえらく進歩している。

恋愛心理学とか一般向けのゴミみたいなのは山ほどありますが、ちゃんとアカデミックな裏付けがあってまともに読めるものは少ない。入門は金政先生たちの『史上最強図解 よくわかる恋愛心理学』ですね。とりあえずこれ読んどけばだいたいOK。この本が出る前は松井豊先生の『恋ごころの科学』が国内最強だったんじゃないかな。いまだによい本なはずです。読みましょう。中級はスタンバーグ先生が編集した『愛の心理学』ですか。でもこっちはふつうの人が読んでもなにやってるかわからないと思いますね。あとハットフィールド先生たちやヘンドリック夫妻のものなんかが有名です。

恋愛の色彩理論

愛のタイプみたいなのについては、リー先生(Alan Lee)って人が、1970年ごろに提唱した「恋愛の色彩理論」The Colors of Loveってのが有名ですね(1973年に出した本は入手困難なので、私にメールしてくれたらアレします)。恋愛にはいろんなタイプがあって、人によってずいぶん違う。古来からの文学作品とか哲学とか調べてみて、どういうのが「愛 love」と呼ばれているかを集めてみる、って研究してみたんですね。その研究の結果、リー先生は恋愛にはだいたい六つぐらいのタイプがあって、それらが興味深い形で関係してるんじゃないか、みたいな仮説を立てたわけです。まあ人々を観察していると、それぞれ同じような恋愛をくりかえしている気がしますね。それぞれの人にはそういう「恋愛のスタイル love style」がある、と。

先生はまず、色と同じように恋愛には三つの基本的なタイプ、原色があるんじゃないかと考えた。それは

  • エロス:情熱的な恋愛、身体的な美や興奮を重視する。ビジン、イケメン、ナイスバディ。とりあえずその時は一人を強く求めて、一生この人とか思いつめちゃう。
  • ルダス:遊びの恋愛。恋の駆け引きを楽しむ。わくわくするのが大好き、みたいな。享楽、多様性、変化を求める。
  • ストルゲ:友情のような恋愛、長続きする親密さを重視する。ほんかわ。碇君といるとぽかぽかするから、碇君にもぽかぽかしてほしい。

の三つ。

さらに、これらの原色の混合としていくつかのタイプがある、と。

  • マニア:強迫的な恋愛。相手に執着し、モメる。粘着。強い束縛。目が逆三角形になってます。
  • プラグマ:実用的な恋愛。計算づく。頭のなかにあらかじめ「チェックリスト」みたいなの用意しておいて、基準をクリアしていたらおつきあいする、みたいなの。お金もちだから好き、とか。親医者でお金あるし、背が高いから並んで歩いても大丈夫だし、京大生だから一流企業入れそうだし、レポートも書いてもらえるしー、とか。
  • アガペー:無償の愛。相手のために尽して尽して見返りを求めません、みたいな。あの人のために私は身を引きます、とか。フィクションには登場するけど現実には見つけられない。

この六つを並べると、あたかもゲーテの色彩環(文学者のゲーテ先生は色彩の研究でも有名でした)みたいになる、と。エロスとアガペー、ルダスとプラグマ、ストルゲとマニアがそれぞれ補色のように対照的に並ぶよ、というわけです。

その後リー先生は理論を発展させて、あと二つのタイプを加えました。

  • ルダス的エロス:とりあえず美人・イケメンなら誰でもいいから行くってやつですね。ちゃんとしたエロスに比べると真剣さが足らん!
  • ストルゲ的ルダス:友達みたいな感じでいろいろ楽しくデートしたりする感じですね。別に美人イケメンじゃなくても楽しくいられればいいです。

ふむ。こうなると、自分がどのタイプの恋愛するのかっての気になりますよね。http://gallebasra.sakura.ne.jp/lets2.php でテストできます。どういう人が作ってるか知りませんが、他のページもしっかりしているので大丈夫でしょう。やってみましょう。

あとスタンバーグ先生の「恋愛の三角形理論」ってのが有名なんですが、これは別エントリで。

史上最強図解 よくわかる恋愛心理学
金政 祐司 相馬 敏彦 谷口 淳一
ナツメ社
売り上げランキング: 85908
恋ごころの科学 (セレクション社会心理学 (12))
松井 豊
サイエンス社
売り上げランキング: 190051
愛の心理学
愛の心理学

posted with amazlet at 12.12.17
北大路書房
売り上げランキング: 498035
恋愛心理学
恋愛心理学

posted with amazlet at 12.12.17
エレイン ハットフィールド G.ウィリアム ウォルター
乃木坂出版
売り上げランキング: 933427
「恋愛学」講義
「恋愛学」講義

posted with amazlet at 12.12.17
スーザン・S. ヘンドリック クライド ヘンドリック
金子書房
売り上げランキング: 611097
恋愛・性・結婚の人間関係学―親密関係の社会臨床心理学ハンドブック
スーザン ヘンドリック クライド ヘンドリック
乃木坂出版
売り上げランキング: 1003612

セックス哲学史:サッポー先生に恋を学ぼう

古代ギリシアの恋愛詩というと女流詩人のサッポー先生が有名です。レスボス島に住んでて女性どうしてあれしていたのでレズビアンの言葉のもとになったとか。名前は聞くわりには作品を読むことめったにないですよね。断片しか残ってないからのようです。

下のは一番有名な断片31と呼ばれているやつ。呉先生が典雅に訳しちゃっててふつうの人は読めないので、もっと簡単な訳の方とそのうち入れかえます。

この詩がなんで有名なのか、ってのはセックス哲学史的にけっこうおもしろい課題です。まあギリシア語ですごく響きがよいんでしょうが、それはギリシア語知らない私にはわかない。そもそも私文学も文学史もよく知らんからたいしたことを語れるわけでなはない。でもこの前読んでみて思ったことを少しだけメモ。

男女が語らっていて、それを遠巻きに見ている女性がいて、その女性はさわやかに笑っている女性の方に目を惹かれ、男に対して嫉妬を感じている、っていう状況なんでしょうね。どうしてもレズビアンとしての側面に目が行ってしまいますが、私が注目したいのは、身体的な感覚の描写なんですわ。この詩は「草よりも蒼ざめて」って表現で有名なんよね。他にも胸はドキドキ、体の皮膚は真っ赤、へんな汗出てるし、みたいな。私はあの人に恋をしているのだわ、今気づいたわ!なんてこと!みたいな。こういう表現が新しかったんじゃないですかね。実際、そうした生理的な反応を感じるのが一番「恋」ってのと近いんじゃないかと思ったり思わなかったり。そういうのがなんにもないのはなんか恋じゃない感じするっしょ? たんなるほんわか「この人といると楽〜、ご飯も作ってくれるし」なんてのが「恋」と呼べるものなのかどうか。やっぱり身体的になにかを感じないと恋ではないのではないか。まあ私はよく知らんですが。嫉妬という感情によって恋を自覚するでってのもおもしろいですよね。

いまじゃどんなマンガだって「ドキ!」「胸キュン!」とか表現されるわけだけど、そういうのっていうのは実はすごく子どものころは気づかない。「ドキドキした?」って聞かれてはじめて、「あ、私ドキドキしてる」とか自覚するもんでね。まあドキドキより下半身への刺激を先に感じる人もいるかもしれんですがね。『なにわ友あれ』って名作ヤンキーマンガで主人公の友人が、「XXがXXしてるのを見たら、それまでXXだったXXがXXしたんやー!」とかやってて、恋にはそういう側面がある。まあヤンキーはヤンキーなりに純情だ。

よく知らないんですが、おそらくホメロスとか読んでても、こういう表現は出てこないんですよ。アキレウスは軍神アレースのごとくうんにゃら、とか三人称の観点から外面的な行動だけが描写されるんよね。でもこの詩では、一人称の人が自分の身体内部の感覚を語っている。この時点で人類は自己意識みたいなのを手に入れたんですね。

実はこの人類はごく最近(ここ2、3000年)になって自己意識を手に入れたのだ、みたいな話はけっこうおもしろいんですよ。ジュリアン・ジェインズの『神々の沈黙』てのがトンデモも入っているけどけっこうおもしろい。

万葉集なんか見ても「君が好きさ」「いっしょに寝たい」「一人で寂しい」とか多いけど、こういうタイプのはあんまりなくて、今古〜新今古ぐらいになってでてくるんじゃないっすかね。知らんけど。

サッポー先生は伝統的にバイセクってことになってるらしく、この絵では若い歌手をうっとり見てます。盛んな人だ。もう少し詳しい解説は画像をクリック。

 

  その方は、神々たちにも異らぬ者とも
見える、
その男の方が、あらうことか、
あなたの正面に
座を占めて、近々と
あなたが爽かに物をいふのに
聴き入っておいでの様は、
また、あなたの惚れ惚れとする笑ひぶりにも。
それはいかさま
私へとなら 胸の内にある心臓を
宙にも飛ばしてしまはうものを。
まったくあなたを寸時(ちょっと)の間でも
見ようものなら、忽ち
声もはや 出やうもなくなり、
唖のやうに舌は萎えしびれる間もなく、
小さな
火焔(ほむら)が膚(はだえ)のうえを
ちろちろと爬(は)つていくやう、
眼はあつても 何一つ見えず、
耳はといへば
ぶんぶんと鳴りとどろき
冷たい汗が手肢(てあし)にびつしより、
全身にはまた
震へがとりつき、
草よりもなほ色蒼ざめた
様子こそ、死に果てた人と
ほとんど違はぬ
ありさまなのを。…………
(呉茂一訳『ギリシア・ローマ抒情詩選』岩波文庫)

サッポー先生の詩はこれに入ってます。

ギリシア・ローマ抒情詩選―花冠 (岩波文庫)
岩波書店
売り上げランキング: 351883

 

解説はこれがものすごい名著。どうもサッポー先生は女子向け音楽学校みたいなのの先生だったのではないか、とかって話。宝塚っすね。

サッフォー 詩と生涯

サッフォー 詩と生涯

posted with amazlet at 16.09.24
沓掛 良彦
水声社
売り上げランキング: 1,326,824

 

 

神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡
ジュリアン ジェインズ
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 189510