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ジャズ入門(9) ハードバップ誕生

んで、53年にパーカー先生死んで、ああいう腕くらべはもうやめましょう、下手は下手なりに音楽すればいいではないですか、というのがハードバップ。

ここでもマイルス先生が重要な働きをします。
その前しばらくヘロイン中毒とかで苦しんでいたことになってるんですが、たんにパーカーが恐かっただけではないのか。死んだらいきなり活躍します。1954年、記念碑的なアルバムを録音する。
パーカーのああいうのと比べたらとにかく遅いし、タルいっすよね。いっしょうけんめいパラパラ吹いてもパーカーの半分の遅さ。でもこれでいいのである、メロディックだ、と。他のミュージシャンもこれなら俺にもできる、あの白い薬をキメなくてもできる、と、このスタイルに飛びつくわけです。同じアルバムに悲しい歌も入れて、バップをもっと一般にウケるようにするのである。

音楽的には、ホーンのピアノとのからみがしっかりしてきましたよね。お互いを聞く余裕がある。パーカーはトロンボーンとか遅くて嫌いだったらしいけど、マイルスはあえて相手に選ぶ。こう、なんか、こういうのだと自分も鼻歌で参加できる気がするっしょ。ジャズは一部の楽器の巨匠たちのものではなくなった。誰でも参加できます。歌心が勝負っす。下手でもいいんす。なんなら楽器なしで鼻歌で参加してもかまわんす。

偉い。えらすぎる。このロセンで「ハードバップ」というのが成立します。元気にタルくぱっぱらーって曲と、悲しかったりあたたかかったりするバラード。パーカー先生よりずっとわかりやすい。ここらへんでジャズが市民権を得るわけです。
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ジャズ入門(8) クールとウェストコースト

とにかくパーカー先生はすごくて、40年代後半はああいうのじゃないとプロのジャズじゃない、みたいな感じだったんだろうと思う。もちろんダンス用のバンドはあるものの、プロどうしはジャムセッションで腕を比べるのである。

こういうときに白人ミュージシャンがなにをしてたかというのはけっこうおもしろい話。やっぱりジャズってのは基本的に黒人音楽を根にしていて、白人とかぜんぜんだめだし。でも「好きだからやりたい!」ってやつらはいるわけだ。そこでどうしたか。

アルヘイグ先生みたいにパーカーやマイルスのとりまきになって顔に墨塗って南部を旅した人もいた。まあずいぶんいじめられたでしょうなあ。マイルス先生はビルエヴァンスでさえ白人だっていっていじめたんだから。パーカーとかもうなにしても不思議ではない。でもまあ好きなものはしょうがないよね。

白人の人々はああいう競争的なのがあんまり好きじゃない、っていうかやっぱり過度に競争的なのは黒人文化の一部であって、もっと全体としてアートしているのをやりたいと思ってた人々が、マイルスとか組んでクールジャズとか立ちあげたわけですな。かなりアレンジされていて全体としてアート。マリガンとかデイヴ・ブルーベックとか。同時期のアメリカ現代音楽(グローフェとかコープランドとかバーンスタインとか)みたいなのにも注意している感じ。

どうも親玉としてレニー・トリスターノ先生っていうのがいて、このひとおもしろいんだけど初心者には向かないのでその弟子のリーコニッツ先生。マイルスのBirth of Coolでも非常に重要な役割を果たしてます。まあ最高のジャズインプロバイザーの一人だわね。

スムース。

西海岸はニューヨーク中心とはまた違った文化があって、チェットベイカーとかアートペッパーとかイケメン白人ジャズミュージシャンという文化があった感じなんじゃないっすかね。ジェリーマリガンももともとは西の人。ここらへんの東と西の雰囲気の違いはわたしらにはわかりませんね。

アートペッパー先生とか、黒人ミュージシャン雇ってツアーしたたら、どうも自分がソロをしているときに後で黒人たちが自分のことをせせら笑うような素振りをしていて死にたくなった、みたいな自伝を残しております。

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まあ雰囲気なんかわかるよね。イジメ。ペッパー先生偉大なのに。でもやっぱり黒人的じゃないのです。

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ジャズ入門(7) クールジャズ

まあジャズ批評家っていうのはあんまり信用できなくて、よくないCDとかもよいっていってすすめたりするわけです。

ビバップの名盤と呼ばれてるパーカー&ガレスピーとかどうなんすかね。歴史的には意義があるんだけど、音楽的にどうなんかな。

私にはもうアルトとペットが早口で怒鳴り合ってるように聞えてそんな好きじゃない。まあとにかく競争してるんですわ。すごいスピードで。

で、まあこういうのしんどいし、音楽ってそんな大声でやるもんでもないだろう、みたいな人々が出てくるのは当然のことであります。

マイルスデイヴィス先生は1947年ぐらいからパーカーのバンドに2年ぐらいいて、前に紹介したダイアルレコードの名盤の隠れプロデューサーみたいな役目を果たしていた。同じ傾向のガレスピーとだとこういううるさい感じになるけど、パーカーとマイルスだと対象的でいい感じなんすよね。

パーカーがマイルスの音楽性を好きだったからバンドに入れてたのかどうかはわからない。っていうかパーカー先生は人格破綻者だったので自分が好きなこと吹いてればあとはどうでもよかったんちゃうかな。マイルス先生はいいとこのボンボンなので仕送りがあってアパート借りてたので、そこに転がりこんでいろいろパシリとして使うのに便利だからマイルス使ってたんだろう。まあとにかくおそらくパーカー先生は誰も自分と同じ人間だと思ってない。サイコパス。

マイルス先生はいろいろ気をつかったり音楽的な全体のことを考える人なので、アレンジ考えたり、(彼が無能だとみなしていた)ピアノのデューク・ジョーダンを首にしようとしたりしてた。

マイルス先生はそんなアドリブとかうまくない。ダイアル盤のテイクとか聞いても、どのテイクも同じような演奏していて、家でいろいろ考えてきてるのがわかる。パーカーは1回ごとにぜんぜん違ってたり。そういうでもコンプレックス感じさせられてつらい。そんな毎回違うことやらなきゃならんもんだろうか?

で、さすがにパーカー先生が金とか女とかいろいろ汚いのでいやんになって飛びだしたはいいものの、ああいう演奏はできない。んじゃどうするか、ってのがクールジャズ。ギルエヴァンスとかリーコニッツとかジェリーマリガンとかインテリ白人といっしょにインテリなことをする。基本的にマイルスはインテリが好きなんですわ。白人インテリを自分勝手に使うと自尊心が高まる。んで、「きっちりアレンジしてるよ」ってことになればアドリブそんな新しいことしなくていいし。

んで、テクニックとかスピードとかじゃなくてアレンジでせまる。無理して高い音とかピロピロとか出さなくても音楽はできるよ、ってな感じで、私はBirth of Cool好きですね。愛聴してます。

まあパーカーが死ぬまでまわりのミュージシャンはパーカーが怖くてしょうがなかった。もう同じステージに立ったら一発でやっつけられるのわかってんだもん。マイルスは違うスタイルだったからいっしょにやれた。パーカーが死んだ53年の次の年あたりからジャズが栄えるのは偶然ではなく、あれと同じことをしなくてもいいんだ、っていう呪縛が解けたってことだって思っていいと思う。

名盤。

Birth of the Cool

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ジャズ入門(6) パーカー先生はすばらしいのだ

まあパーカーは録音が改善される前に死んでしまっているので、それほど聞くべきものはないんですわ。前のエントリで紹介した「ダイアル」レコードのやつとサヴォイのやつ、Now the TimeってのとSwedish Snapsってやつぐらい。

これだけはぜひライブラリに加えてほしいってのが Charlie Parker with Strings。これはすばらしい。愛聴盤です。

聞きどころはやっぱりスピード。なめらかさ。歌心。そして突然のピロピロ。「バード」って呼ばれてた理由がわかります。オケの編曲もけっこういいんだ。

長生きしたら音楽の歴史が変わってただろうにね。なんか30才近くなってから本気で作曲勉強したいとかでヴァレーズに習おうとしたとか。薬とか駄目な生活態度はいかんです。
Charlie Parker With Strings: The Master Takes

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ジャズ入門(5) ビバップはスピード勝負

んでまあまた鑑賞に戻りますが、そういうことを考えてミュージシャンはいろいろやっているのです。考えてると時間がかかるわけですが、それをどう時間かけずに速く弾くか、ってのを競ってるわけですなあ。スピードキングはもちろんパーカー先生。

前のエントリでアートブレイキーの54年のを聞いてもらいましたが、これは1946。トランペットはガレスピー、のはず。あれ、マイルスに聞こえるなあ。まあ調べます。マイルスみたいっすね。テーマのあとに、バンプ(くりかえし)があって、そのあとのパーカーのブレイク(大見得)が聞きどころ。ピロピロピロピロー。

これは前の和声の話でやったコードの分解みたいなのをやってるんですな。もっと有名なのがあるけどな。youtubeにあるかな。

お、あるある。これはすごいよ。どっかで失敗した未完成のトラックみたいだけど、パーカー先生のピロピロがすごすぎるのでそれだけで売られてるという。

Ornithologyって曲も入ってるしよいですね。アルト、トランペット、テナーの3人が腕を競っております。とにかくどれだけ速く弾くかが勝負。聞く方も音の粒々に集中してききたいです。

まあ音あんまりよくないからあれなんですが、これと比べると、54年のブレイキーのはたるいというか勢いは感じるけど繊細さやスピードの点で劣ってる。あれのルー・ドナルドソン先生ももちろんこのパーカーの演奏は何十回も聞いて知ってるわけですが、こうはできないので悔しい思いをしているわけです。この曲はこのブレイクの部分でなにをやるのか、っていうのが聞きどころになる。まあパーカーと勝負しようって人はいないわけで、どうやってこの演奏を思いうかべながらあれするか、みたいな。

実は55年ぐらいからのハードバップっていうのは、パーカーとかのこういう高度な技術と知識と感覚にささえられたビバップはたいへんすぎるので、もっと楽しくやろうじゃないか、みたいな運動だったんす。そんな一生懸命やらなくたって楽しく美しい音楽はできるよ、みたいな。ちょっと志が低い感じもするけど、まあパーカーとは勝負できない。

というわけでパーカーのような純粋ビバップという様式は45年ぐらいから50年ぐらいまででおしまい。誰もそのスピードに耐えられなかったんすわ。精神は残るわけですけどね。

(まあここだけの話、どう考えてもこの40年代後半から50年代前半の超スピードの音楽は薬物の影響を感じるんですよ。戦中〜戦後のドサクサといえばあの頭がすっきりして興奮するという薬物が思いうかびますよね。日本でもあれしたあの薬。いまでもあれしているあの薬。ジャズミュージシャン、特にパーカーというとヘロインって話になるわけですが、こういうタイプの音楽はダウン系の薬物やってたらできないんじゃないのかな。他のミュージシャンにもそういう影響を感じることがあるです。ハンプトンホーズのAll Night Sessionっていう有名盤があるんですが、あれもおかしい。やっぱりあれキメてたんでしょう。やっちゃだめですよ!)

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ビバップの和声的側面(3) コードの修飾

んじゃ具体的にどういうことをしているのか。実はもうなにやってもかまわんのですが、いくつかよく使われる手段がある。

実は前に「コード進行を複雑にする」とかってのがそのまんまなんすよ。
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ビバップの和声的側面(1) 前置き

ビバップはリズムも非常に特徴があるのですが、和声的にもいろいろなことをしていて、これ解説するのは猛烈にたいへん。うまく解説するとお金が発生するくらいたいへんなのではないかと思うです。でもネットでうまい解説を見たことないので、ちと書いてみたい気はある。 続きを読む

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ジャズ入門(4) ビバップのリズム的側面について語るよ

んで、40年代前半〜なかばは戦争もあったし、ミュージシャン組合とレコード会社がなんかあったとかであんまり録音が残されてないんですが、このころにジャズに革命が起こるわけです。

チャーリー・パーカーとかディジー・ガレスピーとかケニー・クラークとかセロニアス・モンクとかって天才たちが夜中にジャムセッションとかして腕比べしているうちに、スイングよりもっと自由で過激な芸術様式が生まれた。もう踊るための音楽ではなく、ミュージシャンがその場で適当な素材で腕競べし、客はそれを聞くというアートです。ビバップ。

50年代の演奏ですが、まあとりあえずパーカーのConfirmation。この曲好きでねえ。(ちなみにこの画像は左右逆だよね。おかしすぎる)

もうスイングとはぜんぜん違う音楽で、どこがどう違うかリストアップしていくだけでたいへんなんですが、まずはやはりリズム的側面からいきますか。

スイングはドラムがバスドラをドンドンドンドン4つ踏んでたんですが、それだと重くてダサいのでかわりにシンバルで4つ叩きます。チーチキチーチキ。バスドラはときどき裏でドンとアクセントに使われる。左手のスネアも右手でチーチキやりながらタタスタ、タ、タタッとか適当にあいの手やってる。これはとても難しいです。左足は2拍4拍でハイハット踏んでるし、両手両足バラバラに動かせないとできない。

ベースはスイングのときは同じ音を4つブンブンやることが多かったのですが、どんどん動く。音階を上下動いていくのでウォーキングベース。もちろん決まったことをやってるんじゃなくてその場でコード進行とスケール考えて、うまく合うようにそれを弾いてる。

ピアノは拍の頭で弾くことがなくなって、拍子のちょっと前で弾く。これもまあその場で適当にやってる。イントロとかピアノで出してますが、ああいうのもその場で考えられないとかっこ悪い。同じことを2回目やるときは1回目と違うことやらないとバカにされてしまう。これから何度も言うことになると思いますが、ジャズというのは競争的な音楽で、自分が優れていることを他の奴にアピールするのが主な目的です。自分が弾く部分を楽譜とか書いていくとバカにされてしまう。

それから、上の楽器(パーカーのアルトサックス)はあんまりハネない。スイングのを聞きなおしてもらうとわかるのですが、スイング時代にはドンドンドンドンチッチチッチチッチチッチと4拍子が8分三連でハネてる感じなんです。一応ジャズはこういうハネた3連符の感じ基本で、まあこの時期もいちおうベースとかはちょっとハネた感じに弾いてる。

ところがこの演奏のアルトはそのベースやドラムのリズムのハネに気をつかわず、平たく8分音符中心で演奏してます。だから演奏は12/8と8/8が重なってるポリリズムになっている。これがスイングとの決定的な差です。

どの程度ハネて演奏するかはそのプレイヤーの自由ですし、ハネたりハネなかったりしてもいいが、とりあえずドラムやベースと同じビートになることはあえて避ける!

実はこれがロックミュージシャンとかがジャズのまねとかしてもジャズにならない理由なんですわ。どうしても「バックに合わせる」ていう意識があるからドラムがハネてたらそれに合わせてハネちゃうんだけど、合わせないのがジャズだ、みたいな。これはすごい発想ですよ。

自分のソロのなかでも同じことが続くのを嫌って、8分音符と3連音符を交互につかったりしているのがわかると思います。そうすることでイーブン(8分)とハネ(3連)のポリリズムを強調するのです。

あとフレーズが小節の頭からはじまらなかったり、へんなところにアクセントがあったり、メロディックだなと思うといきなりピロピロはじめたり。こういう意外性を追求しまくったのがビバップです。

ちなみにパーカーのこのピロピロ速いよねえ。現代のギタリストもこんな速く弾けるひとはめったにいない。サックスの方がキーとか可動部分あって物理的に難しいと思うんですけどね。音もすごいでかかったらしく、この録音ではそういうもわかりますね。ピロピロもまあまえもって練習はしてるんだけど、いつそれを使うかってのは完全にその場のアドリブだし。天才。

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ジャズ入門(3) スイング時代

ジャズってのは基本的にはダンス音楽で、30〜40年代ごろにはビッグバンドが主な演奏形態だったといっていいんと思います。まあマイクとスピーカーとかなかった時代にナイトクラブで踊るための音楽を提供する。

そういうわけで音楽的には4拍子でズンズンズンズンというビートを基本にする。ドラムはスドラ4つ踏んでます。その上に乗ってるホーン群も基本的にこのズンズンズンズンの乗っった形で演奏しているし、アドリブになってもそれは同じです。このノリ、スィングする感じからスィングジャズ。なんのひねりもないですね。

サックスセクションの分厚い和音とかいいですよね。こう、みんな違う高さで同じようなメロディーを吹いてるのがジャズらしい。これのアレンジの仕方もいろいろおもしろいです。

カウントベイシーのバンドのApril in Paris。ギターのザクザクザクザクってのがこのバンドのかっこいいところです。

これは踊れますよね。とにかく楽しい。

あとデューク・エリントのTake the A Train。ベイシーのバンドよりカラフルで洗練された曲が多いですね。デュークエリトン先生はもう20世紀の天才音楽家の一人なのはまちがいがない。デューク(公爵)とカウント(伯爵)だとデュークの方が偉い、と覚えておきましょう。いやベイシーのも楽しいんですが、やっぱり芸術性でいうと差がある。この曲はまあ楽しいところを狙ってますが、ラヴェルとかそこらへんのクラシック作曲家とも闘える曲も書いてます。

ところが鬼畜国家からパールハーバーとかやられて戦争になっちゃって、こういう楽しい音楽をやってる余裕がなくなるわけですね。戦争行かなきゃならんないし。楽器吹ける人もみんな軍楽隊とかに行く。お金もないので大人数で音楽するのが難しい。

戦争に行かずにすんでいるミュージシャンはやっぱりナイトクラブで稼ぐわけですが、20人もいる大きなバンドできないので(お客さんも少なくなるから人数多いと取り分が減るし)、6人とかでやる。「コンボ」です。

まあせっかくだからもう1曲エリントン。こう、黒人音楽独特の暗くて湿った感じがなんともいえんですなあ。

エリントンで好きな曲について語りはじめるとそれだけで1エントリ必要になっちゃう。

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ジャズ入門(2) ジャズがジャズらしいのは1955〜1965の10年間

まあ前エントリのマイルスみたいなスタイルってのはマイルスが作ったわけですが、そのちょっと前の時期のアートブレイキーバンドのチュニジアの夜という有名曲。マイルスバンドにくらべると勢いがあって荒っぽいけどこういうのも人気ありますね。いわゆる「ハードバップ」です。ビバップがハードになったもの。ビバップがなんであるか、ハードバップがどう違うかはあとで。

ま、これも当然テーマの進行の上でどんな新しいメロディーを作れるかを競っているわけです。ジャズの本質には即興があります。即興演奏しないのはジャズじゃない、と言ってもまあOK。黒人音楽をルーツにした即興演奏する器楽中心の音楽がジャズだ、ぐらいの定義だとだいたいみんな納得するんちゃいますかね。

いま「競っている」と書きましたが、ジャズというのは本質的に競争的な音楽なんすよね。この演奏はアルトサックスとトランペットの二人がソロイストだけど、どっちが速くて印象的な演奏をするかを本気で競ってます。同じ楽器が二人いたりするともう本気のやっつけあいになります。「カッティング」っていうんですけどね。お互いの喉を切りあう感じ。

マイルスバンドは対照的になるように考えていて、ああいうのはマイルスのスタイルであって一般的ではなかった。アルトはルードナルドソン、トランペットはクリフォードブラウンで、ブラウンの勝ちに聞こえますね。ハイトーンばしばし決めてかっこいい。まあブラウン先生は最強のトランペッターなので、しょうがないです。ピアノのホレスシルヴァーは個性的で、二人の喧嘩からちょっと距離をとってる感じですな。

ジャズのおもしろいところは、あとバックの3人(ドラム、ベース、ピアノ)、または2人(ベースとドラム)が適当な茶々みたいなのを入れるわけですね。反応のいいバンドはそれが連鎖する。このバンドはブレイキーのドラムがいろいろバチバチあおってますが、マイルスバンドの3人の連携とかすごいもんです。これもあとでもっと詳しく分析してみましょう。

これが1954年の演奏で、これから10年ぐらいがモダンジャズの黄金時代という感じですね。いわゆる名盤のほとんどはこの時期に生産されている。

(ちなみに、まあ正直この盤は世間的には名盤ってことになってるけど、それほど音楽的な価値があるかってのは私はあんまり自信がないです。歴史的にジャズ黄金時代のはじまりをつげる作品ではあるわけですが。)

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ジャズ入門(1) ジャズとはマイルスデイヴィスの音楽である

ジャズっていうのはなんであるのか、というのはまあ難しいというか無意味な問題かもしれんですね。こういうのはジャンルの哲学とか分類の哲学とかそいう問題になっちゃう。

私はジャズってのはマイルスデイヴィスの音楽を中心に、彼に強い影響を与えた人々と彼から強い影響を受けた人々の音楽である、ぐらいでいいのではないか、なんておもってたりして。まあマイルス本人は自分の音楽を「ジャズ」って呼ばれるのいやがってたみたいですから、まあこの定義はだめです。 続きを読む

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ジャズライブの楽しみ方レクチャー

えー、こんばんは。今日は久しぶりにジャズのライブハウスに来ましたので、yonosuke流ジャズライブの楽しみ方を超初心者向けにレクチャーしながら皆様といっしょに楽しんでみたいと思います。

箱は京都としては中ぐらいの大きさの~です。このお店は毎日ライブをしていて雰囲気もいいのでデートで使うのもいいですね。ただ食べものがあんまりないので、早めにご飯してからここでゆっくり酒を飲む、のようなコースにするとよいと思います。私も回転寿司食ってから来ました。

演奏者は今日は二人ですね。ピアノとベース。ピアノの~さんは何度か聞いているのですが、ベースの~さんははじめてです。どういう演奏になるのか楽しみですね。

開演は7:30ということになってますが、この手の店で時間通りはじまることは滅多にありません。適当にお客さんが集まってから注文とか一段落したところではじまる、ってのが普通ですね。それにしてもお客さんいませんね。こういうお店はいつも集客に苦労しています。

皆さんもご存知だと思いますが、ふつうのジャズの演奏はまあまずもとのメロディーというかテーマ(通は「ヘッド」とか言いますが)を演奏して、そのテーマのコード進行に従って勝手なメロディーをその場で作って演奏するアドリブが続き、最後にもう一度テーマを演奏して終ります。ハーモニーはそのままで、テーマとは違うメロディーをその場で作曲して披露しているわけです。

聞く側のポイントは、アドリブのもとになるテーマのメロディーとハーモニーの雰囲気と長さをおぼえておくことですね。少なくとも、どこが「頭」か、つまりコーラス/歌1回分の始まりの部分であるかを意識しておくのが重要です。だいたいの曲は8小節ごとのA+A+B+AとかA + A + Bとかの構造になっているので、これをその場で記憶します。超初心者は実際に数を数えてもいい*1

自分で作ったイントロやエンディングを加えることも多いですね。アドリブする順番は管楽器→ギター→ピアノ→ベース→ドラムの順ってことになってます。管楽器が複数いる場合は、一応トランペット→サックス→その他ということになりますが、実質的に偉い順ということになります。リーダーが最初に「この曲はこんなふうにやるのじゃ」と宣言して、子分たちはそれを参考にしたり真似したり反抗したりする、ってのがまあ正統ですな。このアドリブの上手下手を聞くのがライブの一番の楽しみ、ということになります。しかし今日は二人だけの演奏なので、そういうアドリブのキレとかよりは、二人の演奏がどういうふうに噛みあったりすれちがったりするかが聞きどころになります。

さて、始まりますね。

1曲目

簡単なMCのあとに最初の曲は、Bouncing with Budのようですね。バドパウエルという40~50年代に活躍した名ピアニストが作ったジャズスタンダート曲、ということになります。Bud Powell, _The Amazing Bud Powell Vol. 1_ という名盤に入ってます。アップテンポで典型的なビバップ様式ですね。こうメロディーが8分音符中心で細かくて分散和音とスケールでできている。

さて、ライブの楽しみの一つは、どういう曲をどんな風に演奏するか、ってことですわね。このBouncing~は超有名な曲なので、プロのジャズピアニストは必ず弾けるのですが、バップの曲のなかでもちょっと凝っているコード進行で、難曲とは言わないまでも、そんな簡単な方ではありません。基本的にはAA’BA形式の曲ですが、キメが入っているのでそこらへんも事前に相談しておかなきゃならなくて面倒なので、まあ普通はジャムセッションとかではやらない。まあ硬派を主張する曲なわけです。

こういう曲を1曲目に演奏することによって、今日のリーダーであるピアニストは元気よくはじめると同時に、「今日は正統派バップ~ハードバップでやるわよ、でも私はそこらへんのラウンジピアニストとはちょっと違うわよ」ということをアピールしているわけですな。演奏自体も完全にバップそのまんま、というわけじゃないところでさらに個性を主張しているわけですね。ベースの人のアドリブも流麗でなかなか楽しめそうです。

聞くときの楽しみは、どの程度ビバップの様式を消化しているかってことと、AABA形式の転調Bのところをどの程度はっきり印象的に弾くか、ってところでしょうか。

2曲目

MC(司会)が入りますね。へえ、MCって Master of Ceremoniesから来てるんですね。知りませんでした。まあ小さめの箱ではどういうMCをするかってのもその演奏者の個性が楽しめてよいものです。このピアニストの~さんはそんな話がうまい方ではないですね。まあジャズミュージシャンでMCおもしろいってのは聞いたことがない。ふつうは曲の紹介とか歌物スタンダードなら歌詞の内容の説明とかそういうのしますね。

次は Along Came Betty。1950~1960年代前半のハードバップ時代に活躍したベニー・ゴルソンというサックス奏者の曲ですね。Art Blakeyの _Moanin’_ に収録されているのが決定版。独特のやわらかくて暗い感じがする名曲ですね。コード進行が非常に複雑で、ハードバップという様式が爛熟している感じ。前のBouncing~とは複雑さがぜんぜん違ってて、15年ぐらいでジャズという音楽がこれくらい進んだ、とかそういうことを感じさせる曲でもあります。特に |A | Ab7 | G | Gb7 |半音ずつ下ってったりするところとか魅力的です。まあアドリブ初心者とかは弾けない。上級とはいわないまでも中の上以上の力が必要。この曲をやることによって、今日の方針が完全に決定されたわけですね。「難しい曲やるわよ」。まあそういうんで私はこのピアニストが好きなんですけどね。あとこの曲を聞くと誰でもブレイキーバンドの演奏を思い出すので、そこからどのような距離をとるか、みたいなところが聞きどころです。あとこういう難しい曲だと、さすがに演奏者もアドリブの途中で「うー」っとなることがある。そのときに伴奏者がそっちの顔見ていろいろコミュニケーションしたりする。助けあいしてるんですね。今日は二人とも達者なのでそういうとこはあんまりありませんでしたが。「へえ、そんな風に弾きますか」みたいな顔することもあるし。そういうのもライブの楽しみです。ベースの人のアドリブがすごくメロディアスで感心しますね。ボサノバにしてたのも印象的でした。

3曲目

ふたたびMC。このピアニストは最近CDを出してます。けっこうオリジナル曲を書く作曲家でもあります。作曲家というものはやはり自作曲がかわいいものなので、いろいろ語りたいことがあるわけですね。どんなところからインスピレーションを受けたか、みたいなのとか、自分というのはどういう人間なのか、みたいなことを語ってます。この曲は Enrico Pieranunzi というピアニストのCDのジャケットからインスピレーションを受けた、みたいなことを語ってます。イタリアの人ですね。なんかおシャレなCDジャケつけるひとなんで、なるほど、とか。それからそういうことを話すことによって、彼女自身の音楽的な好みとか出自も同時に語ってるわけですね。

曲はなかなか複雑で曖昧で、そのピエヌランツィとかブラッドメルドーとか90年代のジャズの音がします。理論とかどういうことを考えてこういう音になるのかは、私ぐらいの人間にはわからんですね。まあジャズも70年代からはアカデミックに勉強するものになって、二階建・三階建な感じ。パウエル→ゴルソン→自作曲、という順番でジャズの進化と深化みたいなのを聞かせてる感じなんでしょうね。

4曲目

1セット目最後の曲です。ふつうのライブハウスでは40分ぐらいの「セット」を休憩をはさんで2回か3回やるのが普通ですね。入れ替えはふつうありません。

Have You Met Miss Jones。リチャード・ロジャースというミュージカル作曲家による1937年の曲です。ふつうはリラックスしてスィングする感じでやりますか。難しいオリジナルをやったので、皆がよく知っているスタンダードで楽しい雰囲気で1セット目を終りたい、ということですね。でもスタンダードとしてはちょっと変わっているところがあって、AABAのAの部分はふつうなんですがBの「サビ」の進行が異常なんですね。 |Bb | Abm7 / Db7 | Gb | Em7 / A7 | D | Abm7 / Db7 | Gb | Gm7 / C7 | 。こうめぐるましく転調する感じがおもしろい。コルトレーンの演奏のアイディアになったとかいろいろいわくがある。そこをあんまり意識させずにさらっとやるか、意識させて目がまわる感じにするかとかそこらへんを楽しむ曲ですか。

この4曲で、一応演奏者たちは自己紹介を終えたわけですね。まあなんにしても「俺らは難しいことが大好きなプロフェッショナルミュージシャンだ」ですね。

休憩

休憩のときはミュージシャンもバーで酒飲んだりします。お金のあるオジさんはミュージシャンの人に「一杯どうぞ」とかやることも多いですね。ちょっとお話する権利を獲得することができます。音楽はできなくても「俺は音楽に理解がある」みたいなパトロン気分を味わうことができるのですね。私は滅多にしません*2

おや、へんなオジさんが来店。声がでかい。っていうか一人で喋りまくってます。ご機嫌。でもなんかやばい感じもします。ミュージシャンを捕まえてからんでいます。ミュージシャンは内向的な人が多いから外向的なオジさんにからまれるとたいへん。

まあこういうのって飲み屋さんではなかなか難しいですね。ふつうのバーとかでも、ナンパしたり隣の人に喧嘩売ったりする人いるしねえ。私は苦手です。でもそういうのも夜遊びの醍醐味ですよね。

2セット1曲目

いきなり大スタンダードのFly Me to the Moonでした。2セット目はわかりやすく楽しくやりますよ、という意思表示ですね。このピアニストの人はこういう曲を5拍子にしたりして遊んだりすることがあるのですが、今日はまあ普通にやってます。やっぱりベースの人のアドリブはわかりやすいメロディーで歌心があって素敵ですね。ベースでこういうソロをとる人はあんまりいない。やりやすい曲なので、いろいろインタープレイしてます。お互いに反応したり相手のフレーズを模倣したり。この二人はあんまり共演歴はないみたいだけど、だいぶんリラックスしてきた感じですね。

なんかオジさんは演奏中にもいろいろ叫んだりしていてちょっとあれです。まあでも演奏中にいろんな掛け声かけたりするのは基本的にはOKです。そこまでコミでジャズ。お客さんに人数が多いときは、一人のアドリブが終ったところで拍手したりして演奏に対する評価を表したりすることもあります。「イェー」とか叫ぶ人もいますね。でもまあこれもうまくやらないと邪魔だったり馬鹿にされたりする。

2セット2曲目

Like Someone in Love。これも大スタンダードですね。3拍子にしてる。途中で倍テンポにしたりいろいろ楽しませてくれます。

バース(Bars)とかもやってます。ふつうのアドリブはコーラス(AABAの歌詞一回りぶん)を何回かやるわけですが、それを細かく4小節とか2小節とかに区切って短いアドリブを交換するわけです。相手のフレーズにどう答えるか、模倣するかぜんぜん違うのやるか、まあ早い話が直接的に腕を競うわけです。なかなかの丁々発止。

非常に重要なことですが、ジャズというのは非常に競争的な音楽です。というかこの競争こそがジャズの中心にあります。他のミュージシャンよりもうまいアドリブをとる、より速く弾く、より高い音、より美しいフレーズ、より大きい音、より面白いリズムのバリエーション、より斬新な音を出し、フレーズの引用などによって多くの音楽的知識を見せる。バンド内で常に競争が行なわれているのです。

オジさんはさらにご機嫌に立ち上がったり演奏者の前に行って踊ろうとしたりしてます。演奏者たいへん。でもあんまり実害はない感じかな。

2セット3曲目

Polka Dot and Moonbeams。さらに大スタンダードバラード。もうこのセットは誰にでもわかる曲しかやらないよ、ということですね。オジさんはもっとアップテンポな奴をどんどんやってほしかったのかなんか不満げでもありますが、演奏自体はよいです。

2セット4曲目

こうなるともう季節的にも枯葉しかないですね。ちょっと凝ったイントロつけてます。この曲は基本的にマイルスデイビス(Cannonball Addaleyの _Something Else_ )やビルエバンスの有名な演奏とどれくらい距離をとるか、ってのがききどころになります。初心者から上級者まで誰でも弾ける曲だけど、新鮮に演奏するのは意外に難しい、っていう感じ。アップテンポにして快適でスリリングな感じになってます。両者ともに当然やりなれた曲なので、いろんな交流が見られます。かなり圧倒的な演奏で、もうオジさんが邪魔する余地はないですね。とてもよかったです。

休憩

オジさんの妨害にもめげずによくがんばったので一息ですな。ここでお客さんどんどん帰ってしまいます。まあここで10時ぐらい、女性たちなのでこんなもんでしょうか。オジさんに危険を感じたのもあるかもしれません。

これ難しいんですよね。基本的に、夜遊びしていて様子のおかしいお客さん、危険なお客さんがいる場合、さっさと帰るべきです。どんなトラブルに巻きこまれないとも限りません。

吉野家ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。

Uの字テーブルの向かいに座った奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、

刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。女子供は、すっこんでろ。

まあこういうのは酒場も同じですな。まきこまれないのが一番。君子危うきに近よらず。女の子だけだったり、女の子づれだったりしたらちょっとでも危険やトラブルの匂いを感じたらさっさと帰りましょう。

でもまあ私の若い頃にスナックのママから教えてもらったことがあります。「男の子がお客の少ない店で一人で飲んでいるとき、様子のおかしいお客さんが来たら、帰ってはいけません。」そのお店は基本的に女の子だけでやってる店だったし、小さなスナックとかでは時々強盗とかがあるんですね。80年代には木屋町で一人でお店しているママが殺された事件とかがあって、そういう店でよく飲んでいる男の子の仕事の一つは用心棒なんですね。まあ人数がいればへんなことにはならんし。

しかし私とオジさん以外のお客さんがぜんぶ帰ってしまいました。ピアニストがお愛想に来てくれたので一杯出しておきます。

この店はマスターがいるので帰ってもよかったのですが、まあもうちょっと聞くことにしましょう。

あれ、オジさんも休憩中に帰ってしまいましたよ。しかし、どんな箱でも最少開催人数1人ということになってるので中止はありません。ライブ続行です。(お客がいなってしまった店でどんなことが行なわれているかは知りません。どうすんでしょね。)

3セット1曲目

Billie’s Bounce。チャーリーパーカーのスタンダードなビバップブルース曲ですね。まあジャズミュージシャンは1晩に1回はブルース演奏しなきゃならんことになっているのだと思います。しかしブルースでもどの曲を選択するか、ってのが問題なわけで、同じパーカーでもNow’s the Timeとかだとダサい。モンクのStraight, No Chaserとかだと個性的で、ウェインショーターのFootprintsとかだとキレてる感じ*3。Billie’s Bounceはまあ「ブルースやろうか」ってなったときのふつうのファーストチョイス。ジャズマンなら必ずできるけど、初心者だとたいへん、これができるとジャムセッションに参加する資格を得られます、ぐらい。今回は二人でブルース腕競べしましょう、とかそういう感じ。

まああとブルースもどういうふうに演奏するかってのが問われるわけで、今回は最初はレニートリスターノ風に片手で中低音でニョロニョロしたフレーズを弾いたりして、「ふつうにはやりません」をアピールしてましたね。

3セット2曲目

オリジナル曲。ダークマターだそうです。もとのタイトルはAgonyって曲なのよっ、でもアルバムに入れるとき暗い印象を与えるから名前変えましたとかアピールしてました。まあなんかイライラすることとか苦しいことがあるんかもしれないですね。曲の構成とか複雑な現代風の曲で、まあやっぱりアドリブの腕を見せる他に、作曲で自分の美意識を見せる、ってのがジャズマンのもう一つの顔であるわけです。最初の方はエリントンのPrelude to a Kissに影響を受けたようなメロディーラインで、なんか関係あるのかもしれない。こういうジャズチューンの作曲ってのがどれくらい時間のかかるものなのかとか、どういうこと考えて作るのかとはあんまり想像つかないのでいずれ質問してみたい。ロックの曲なんかと違って、ちゃんとコンポジションって感じの作業なんだろうって気はする。せめて楽譜がどういう風に書かれているのか知りたい気がするな。自分作曲したものを他のプレイヤーに演奏してもらうのはうれしいもんでしょうなあ。

3セット3曲目

スタンダードでIt could Happen to You。これも大スタンダードっすね。ふつうは快適なミドルテンポでやる。プレイヤーの息も合ってる感じです。言いたいことは言ったので、ほんわか楽しくなって終りましょう、ということです。でもそれなりのプレイの応酬があります。

3セット4曲目

あれ、おしまいだと思ったのにこれで終らず Body and Soul。最後に大物バラードもってきますか。驚きました。

スタンダードバラードにもいくつか種類があって、こう単に「ロマンチックねえ」みたいなやつ(2セット目のポルカドットみたいなの)と、このBody and Soulみたいな重量級のがあるわけです。まあ歌詞の内容とかジャズミュージシャンの歴史上の名演みたいなのによってそういうのが決まってる。「涙なしには聞けない」みたいにしないとならん曲、きちんと気合入れないと弾いてはいけない曲ってのがいくつかある。これで終ろう、ってのはまあかなり意欲と勇気がないとできないはず。プレイヤー間でも必ず腕競べになるそういう曲。バドパウエルの名演でも有名で、他のスタンダードもパウエル関連のが多いわけなので、今日はバドパウエル先生への敬意を全面に披露した、という感じです。

まあ期待通り気合いの入ったすばらしい演奏っすね。

まあ全体として非常にハッピーでしたね。3セット聞くのはしんどいので、ふつうの人は1~2セット、ツウは2~3セットぐらいを聞くようになってるわけです。終ったあともっと飲むのも楽しいですが、私はだいたいそのころには酔っ払いなのでさっさと帰ります。ビール3杯、ウィスキー2杯ぐらい飲んでチャージ(演奏者に行く分)入れて5000円ぐらい。

ピアニストは笹井真紀子先生、ベーシストは荒玉哲郎先生、お店はLe Club Jazzでした。それでは皆様も楽しい音楽生活を送ってください。

*1:ところが実際のミュージシャンは、AABAの曲をAABAでひとかたまりで演奏すると単純でつまらないのでAAB|AAAB|AA|ABA|みたいな雰囲気にずらしたり、もっといろんなことをするわけですが。

*2:でもこのピアニストの人を初めてバンドで聞いたときはあまりに新鮮な気分だったのでバンドの人々におごったような。

*3:まあブルースやろうっていってFootprintsやる人はいませんが。

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