ファンク入門(3) スライのファンク


では次に、スライ&ファミリー・ストーンのファンクです。

このかっこよさを見よ。バンドが男女、黒人白人入りまじっていて、カラフルですよね。JBの「黒人です」てのとはちょっと違うロック風味も入っている。

音楽的には「一発もの」と呼ばれるものです。Sex Machineはコード2個だったけど、2個でできるなら1個でもできるんではないか。E7 1個でいいのではないか、というわけです。もうなんにも進行しないでおなじところでずっとじりじりやる。さすがに途中でギタだけになるブリッジは挟んでますが、まあずっとE7。(あれ、オリジナルはE7なんですがこの演奏はホーンのソロとか入ってるからかF7でやってますね。いや、曲の部分はやっぱりE7。)

もうコード進行とか西洋文明はいらんのではないか、1発でアフリカにもどろうではないか、みたいなそういう思想があるのかもしれんです。

リズム的にはJBのものよりさらに細分化されて16分音符が意識されている。日本では16ビートとか言われてるけどなんかおかしくて、16th feelといいます。ドラムはエイトビート(8th feel)、ベースは16thフィール、ホーンやギターやキーボードやタンバリンは16thだったり8だったり。4分音符中心、8分音符中心、16音符中心の感覚が重なっていてどろどろしたファンクになる。JBの比較的シンプルな単純なのとはちょっと違ってきます。JBのよりこっちのやりかたのほうがいろいろ簡単でおもしろいものができるので主流になります。マイルスデイヴィスがこれ聞いて自分のバンドをこう感じにした話は有名ですよね。
こういうの聞くと私は足と腰と肩とか体の各部分が別々に動いてぎくしゃくした感じになって猛烈に気持ちいです。
あとベースが人差し指や中指で弦をはじくんじゃなくて、親指で弦をひっぱたく「スラップ」ってのが使われてます。この演奏法はこの曲から有名になった。
アンソロジー
アンソロジー

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ファンク入門 (2) JBファンクの和声的側面

James Brownファンクのリズム的側面の次は、コード進行について考えてみましょう。
JB先生の一番有名な曲 Sex Machine です。
この曲はたった二つのコードでできてます。Ab7とEb7。
最初のダッダッダッダッダッダッダッダッの8発がAb7で、そのあと延々Eb7が続き、「ブリッジに行っていいか?いいか?ブリッジ行っていいのか?いいのか?いいのか?ほんとにいくぞ?いくぞ?」ってやったあとにAb7に行って猛烈な解放感がある。もう延々なんか我慢してたものを放出する感じっすわね。これはAb7に対してEb7がドミナントという関係にあるからなんですが、コード進行の詳しい話はまたあとでやります。
ふつうの曲は最低3つはコードを使います。トニック(主和音)=I(1度)、ドミナント(属和音)=V(5度)、サブドミナント(副属和音)=IV(4度)かIIm(2度)。ブルースのような単純な形式でもIとIVとVと3つある。これが西洋古典音楽の基本です。でもこの曲はたった2つしかない。これがミソです。
まあとにかくこのEb7のところのジリジリした感じと、「ブリッジ」の部分の解放感を味わうのがこの曲のキモです。ファンクっていうのは元気いっぱい、猛烈、全力の叫びみたいな印象をもたれることがありますが、それはファンクではないです。ファンクはあくまで抑制されコントロールされている。JBはたしかに雄叫びがあげますが、本当に叫んでいるのはほんどなくて、つねにコントロールされてます。いつも全力にはならずになにか残っているところがある。先に進まないで同じところでジリジリする。ブリッジの部分の解放感も一瞬で、すぐにもどる。ブルースやファンクといった黒人音楽はそういう抑制がなによりもキーなのです。白人のオーケストラ音楽、あるいはヘビメタみたいに、「ドッカーンジャーン」ってやって「きもちいー」なんてのはない。
コードの話にもどると、最初にAb7とEb7と書きましたが、これは実際出されている音はAb(9)とかAb9、Eb(9)とかEb9とか表現されることもある形です。ふつうの単純なロックやソウルだと7thコードはG7(ソシレファ)のような形で使われるんですが、JBはさらにその上に1音エクステンション(テンション)足してG7(9) (ソシレファ*ラ*)の形でつかう。この9th(9度)の音もファンクな感じです。
ちなみにこういう9thとか13thの音とかは(V7のようなドミナントの場合)緊張感があるので日本ではテンション tension って呼ばれることがあるけど、実は必ずしも緊張感をもたらすものではなくて和音を拡張して豊かな音にしているので、エクステンション extensionで呼ばれます。まあ濁った感じになる。
さて、コードが二つしかないというのはどういうことか?実は2個だけだと、その曲のキーが確定しないのですわ。ふつうの西洋音楽だと、 I – IIm7 – V7 – I (C – Dm7 – G7 – C)のようにしてCメジャーの曲だ、とわかるわけだけど、2個しかないと I7とIV7なのか、V7とI7の曲なのかがわからない。メロディー(?)ラインからも判断がつかない。そこでこの曲はずっと解決しないままで最後までいってしまします。最後に「クィットするぜ!」ってやってダッダッダッダッダッダッダッダッってやっても解決した感じがしないっしょ?下品な言いかたになるけど残尿感みたいなのがある。こういうの、クラシックやロック、あるいはジャズとかとは根本的に違う考え方でできているわけです。
その次のSuper Badも同じようなもんで、Dmと G7の二つのたったコードでできてますね(ちゃんと確認してないけど)。この二つのコードからすればCメジャーとかが連想されるんだけどそれが実際に弾かれることはないのでやっぱり宙吊り。


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ファンク入門(1) JBのファンク

ファンクというジャンルは、ソウルブラザーNo.1のジェームズ・ブラウン(JB)先生が開発したということになっております。音楽的な特徴は16分音符フィール(16th feel)とか、ちょっとハネてるとか、4拍子と8thと16thがまざってるポリリズムだとかってのがあるんですが、とにかく1拍目を強調することっすね。あとはどうでもいいっちゃーどうでもいい。

まずはJB先生の代名詞ともなった名曲”Sex Machine”のころのバンドメンバーで、のちにP-Funk一派をひっぱることになったブーチー・コリンズ先生のレクチャーを見ましょう。

ユーノウ、1拍目さえ出してりゃいいわけです。ユーノウ、これがファンク。ロックは2拍4拍が大事で、「ちっちっダっちっちっちっダっち」「ダダダダズダダダ」だけどファンクは「ドンちっちっちっち」。

これがよくわかる音源があって、どうもyoutubeとかにないみたいだからあれだけど上げちゃいましょうか。

名曲”Cold Sweat”のリハとボツテイクの最初です。最初はメリハリがなかったバンドが、JB先生が「ブン!ばっばっばっ」て指示するとバッチリになるのがわかります。あのサウンドはJB先生の身体感覚そのまんまなのですよね。これがファンクだ!

ではJB先生の体の動きに注目しながら鑑賞してください。体全体は4つを刻んでいて特に1拍目を強くダウンで感じてます。しかし体の各部分はその半分の8つでチキチキ感じてるところがある。これがあの独特のフィールになるわけです。これ以降のファンクはもっと複雑になるんですけどね。

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Bootsy Collins

Ultra Wave

Ultra Wave

仕事しながら鯖監視中。

とにかくファンクが何であるかを知りたかったら、このアルバムの “F Encounter”を聞け。忙しくなって仕事に疲れると私はこの曲を聞く。”I’m working man, need a job!”

Stretchin Out in Ahh the Name Is Bootsy Baby ブーチー・コリンズといえばダンサブルなブリブリファンクベースと言われているが、私は実はセンチなスローナンバーのサウンド設計やボーカルワークの方がうまいと思う。単なるダンス用Funkだともっと好きな(シンプルな)P-Funkベーシストがいる。しかしここらへんの少年少女向けおセンチファンク”What’s a tellephone bill?”とか”Love Vibes”、”Physical Love”とかもうたまらん。ここらへん聞かないで人生終わるのはもったいないと思う。

ファンクだよ全員集合!! あとこのアルバムの”Groove Eternal” (プリンス風)とかよく聴いている。

Chuck Brown and the Soul Searchers

Chuck Brown and the Soul Searchers。日本ではあんまり知られていない人かもしれないけど超名盤。最初っから最後までGo Go (ハネた16のダンスビート)の一本のリズムの上でダミ声のオヤジが”It don’t men a thing”とか”Harlem Nocturene”とか”Stormy Monday”とか”Take the A Train”とか歌いまくるというものすごいもの。このビート感がマイルス・デイビスを感動させてしまい、マイルスはバックバンドSoul Searchersのドラマー(Ricky Wellman)を引きぬいて自分のバンドに入れた、と。おそらくニュージャックスイングもこの人の影響下でできたんじゃないかな。

このビートは真似してみたいんだけど、打ち込みではなかなか雰囲気がでない。