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ブックガイド:性暴力に関するフェミニスト文献古典

某授業用ブックガイド。作成中。


とりあえず若い女性・男性には以下の2冊読んでおいてほしい。

デートレイプってなに?―知りあいからの性的暴力 (10代のセルフケア)
アンドレア パロット
大月書店
売り上げランキング: 698,085
女子のための「性犯罪」講義―その現実と法律知識 (Social Compass Series)
吉川 真美子
世織書房
売り上げランキング: 461,735

下は「強姦神話」というアイディアを展開した本で非常に大きな影響力があった。内容は40年もたった今ではさすがに古いと思う。

レイプ《強姦》―異常社会の研究 (1976年)
ジーン・マックウェラー
現代史出版会
売り上げランキング: 1,407,051

下も同じころにさらによく読まれ、フェミニズト的な性暴力理解の基本。いまでも手に入りやすい古典。マスト。1970年代から90年代ぐらいの主流の考え方。

レイプ・踏みにじられた意思
スーザン ブラウンミラー
勁草書房
売り上げランキング: 197,601
性と法律――変わったこと、変えたいこと (岩波新書)
角田 由紀子
岩波書店
売り上げランキング: 104,142

↓非常に重要な文献で、ブラウンミラーらの解釈を批判している。これを読まないと議論できない。マスト。女性のみならず、男性こそ絶対に読むべきだ。

人はなぜレイプするのか―進化生物学が解き明かす
ランディ・ソーンヒル クレイグ・パーマー
青灯社
売り上げランキング: 560,178

男性も女性の不快さを理解していないだろう

前のエントリのピンカー先生の「求めてもいない突然のセックスを見知らぬ他人とすることになるのは魅力的どころか不快なことであるという心理を、想像することができない男性の視野の狭さ」(ピンカー 下巻p.58)っていうのは重要で、私の根拠のない推測によれば、こういう不快さがまわりまわってポルノやセクハラに敏感で批判的な女性の多くのバックにあるんじゃないかと思われます。

ピンカー先生や、その解釈のもとになってるバス先生やソーンヒル&パーマー先生組なんかの進化心理学者の解釈によれば、女性にとっての大きな課題の一つは望ましくない相手とセックスしてしまわわないことで、特に暴力とかそういうの使われてセックスされて妊娠させられてしまうのを避ける心理メカニズムが発達しているはずだ、と。

twitterとか見てるとけっこう頻繁にポルノや萌え系アニメ・ゲームとかの話題になるのですが、そういうときに男性の側はそういうのがわかってないんじゃないかと思うときはありますね。

「酒の席でちょっとぐらい下ネタの話してもかわまんだろう」「風俗行くのぐらい普通だから職場の雑談のなかでそういうのが出てもしょうがない」「エロマンガぐらい自由に見てもいいだろう」「なにカリカリしてんだお前らみたいな女のことはそういう対象にもなっとらんわ」とかっていうタイプの意見もあるかもしれませんが、そういう相手の見境のないimpersonalなセックスを求める男性的な性欲のあり方それ自体に女性は警戒するようになってる可能性がある。実際、職場関係者から強制的に性的にアクセスされたりレイプされることもあるわけだし、そこまでいかなくてもしつこくされたりストーカーその他面倒なことになるとかっていうのは非常によくあることなわけだから、女性にとってそういう性欲のあり方をおおぴらに公言したりする人々ってのは脅威であるだろうと思いますね。抽象的に「男性とはそういうものだ」みたいなことを理解しているつもりでも、実際に目の前の男が性欲まるだしだったらやっぱり警戒せざるをえない。「私は家でこれこれこういうポルノを好んで見ておりまして、あれはよいものですな」とかっていってるオヤジがいたらやっぱり警戒せざるをえない。そういうのって不快でしょうなあ。

まあそういうんで、ツイッタとかで大学関係者が「おっぱい、おっぱい」とかやってるのを見るとちょっと気になりますわね。ああいうの読む女子学生様とか不快になってるんちゃうかな、みたいな。

「女性だって家帰ったら薄い本とか読んでんだから」とか言う人もいるかもしれないけど、そりゃ女性向けにある理想化をされたポルノであって、職場や学校でうろうろしているダメな男たちの性欲について知りたいとも思わんだろう。気を許しているとヤラれてしまうし。女性たちが「なんで年柄年中まわりの男たちの性欲がどういう状態にあるか気にしてなきゃならんのか」と思うのはまあ当然のことだろうなあ、みたいな。腐女子と呼ばれている人々が「自重!」とかってやってんのも、彼女たちの性的なファンタジーと性欲の存在が男性に知られると集団として性的にアクセスしやすいと勘違いされる可能性があって、そこらに対する防衛なのかもしれんな、とか。まあそういう性的欲望(とその逆の性的嫌悪)に関してはいろいろ謎が多いですなあ。

 

 

人はなぜレイプするのか―進化生物学が解き明かす
ランディ・ソーンヒル クレイグ・パーマー
青灯社
売り上げランキング: 484,484

 

女と男のだましあい―ヒトの性行動の進化
デヴィッド・M. バス
草思社
売り上げランキング: 412,304

 

一度なら許してしまう女 一度でも許せない男―嫉妬と性行動の進化論
デヴィッド・M. バス
PHP研究所
売り上げランキング: 649,002

 

 


犯罪被害を避ける(2) 押しつけに抵抗する

まあ女子大生とか立っていようが座っていようが、息を吸ってるだけで犯罪のターゲットになるような存在でたいへんだと思います。もっと安全な社会が来るとよいとは誰もが願っているわけですが、いまのところまだ人類はそんなに安全な社会を作り出すことに成功していません。日本なんか治安って点ではまちがいなく世界トップのはずですが、それでもいろいろたいへんですよね。

安全な社会を作り犯罪被害を避けるのが難しいのは、被害者になる可能性のある人々が用心するのに合わせて犯罪者予備軍の方々も知恵しぼってパワーアップしてきているからで、ここらへん軍拡競争みたいなところがあります。対策してもその対策を上回ったり逆手にとるようなワザを使われちゃったりする。犯罪被害を避けるってことは、他の人を被害者にして自分は逃げるみたいなところがあるのでなんかあんまり自分の身を守ることだけを考えちゃうもどうかみたいな感じもします。

よく使う好きな話にこういうのがある。

二人の男が森を探検していると、熊に出会った。それに気づいた一人は、靴をスニーカーに履きかえはじめた。「おい、そんなことしてどうなるんだよ、熊より早く走ることなんかできないよ」「なあに、君より早く走ればいいのさ」

まあ熊から逃げることを考えるより熊のいない社会を作ることを考えた方がいいのかもしれませんが、そうもいってられません。人間の集団にはどうしてもやばい奴が一定数入りこんでいるし、ふだんはまともな人でも金とかセックスとかからむとヤバくなっちゃったりするし。つかまえた熊は当局ができるかぎり処分してくれているわけですが、熊が熊だとわかるまえに食べられちゃう人がどうしてもでてきちゃうし難しいところです。

性暴力についてはずいぶん前に「性暴力を避ける」てのを書いたことがあります。こういうのはどうも「被害者非難」とかっていって批判されちゃうか心配でしたが、まあそれほど批判はされなかったみたい。でもまあそう言われてもしょうがないところが若干あるかもしれないのでいろいろ用心はしてます。まあ私はどっちかっていうと加害者予備軍だしねえ。羊の皮を被った狼とか言われてみたいとは思っております。ウルフ教授とか呼ばれてみたい。

 

さて、まあ暴力的犯罪を避けるってんでおすすめの本となると、

暴力から逃れるための15章
ギャヴィン ディー‐ベッカー
新潮社
売り上げランキング: 833,569

このディーベッカー先生の『暴力から逃れるための15章』ってのはおもしろかったです。

基本的なメッセージは、「自分のカンを信じろ」につきます。やばそうな気がしたら実際にやばい。人間どうしてもいろいろ考えちゃってそういう自分の危険や不安の感覚を無視してしまうわけですが、それが一番危険だみたいな話になります。

ディーベッカー先生よれば、「自然がつくった最高傑作とも言うべき人間の脳は、その持ち主が危機に直面したときに、もっとも有能に働く」そうで、まあ危険を避けるには直感を信頼するのが一番よい、みたいな。危険信号には私たちはけっこう敏感なんですよね。それが入学直後とか夏の海とかはじめてのダンスクラブとか海外とか、そういう新しい人間関係ができる場所とか、刺激的な場面では、「この危険信号はまちがいなんじゃないか」とか疑っちゃってひどいめにあっちゃったりするそうな。不安を感じるときってのはやっぱりそれなりに不安を感じる理由があるわけですから、スリルを求めているのでなければ、そういうところに無理してつっこんでいく必要はない。

んでまあ犯罪者の方は犯罪をうまくやるために、被害者に危険信号に気づかれないようにいろいろしているわけです。でもそれ自体が一つの危険信号になるからそういうのにあらかじめ備えておこう、みたいな話をディーベッカー先生は上の本の第4章でしてます。ちょっとだけ紹介してみる。

仲間意識の押しつけ
「あなたとわたし」を「わたしたち」にしちゃうテクニックですね。同じ境遇にいることを強調して仲間だと思わせる。「困りましたねー私も~なんですよー」っ言われるとなんか仲間な感じしますからね。こうされてから「~してもらえませんか」とか「いっしょに~しませんか」って言われると断われなくなる。ディーベカー先生はそういう場合に無作法に思えても断わってかまわんと言ってます。「一般的に言って、親密な関係を築こうとする行為は好感がもたれる。だがその行為の裏にあるのは、たいていは利己的な動機だ」(p.63)ってことらしいです。
魅力と親切
魅力も能力。人を騙す人は最初は親切そうなんすよね。それに魅力的な様子やふるまいをとることも修得している。それにそもそもイケメン・美人は好感をもたれやすく、他人を支配する力をもってます。私なんかなに言っても言うこと聞いてくれる人がいない。ははは。これもまあ対策は難しいけど「きっぱり拒絶しなさい」ってことらしいです。
余計なことをしゃべる
だまそうとする人は余計なことをべらべらしゃべるらしいです。「ウソをつくときは、その話がどんなにもっともらしいものでも、話している当人にはもっともらしく聞こえないのから、余計なことをしゃべるのである」(p.65)らしいです。なんかこれありますよね。私も自信のないことしゃべってるときはいろいろ言葉が増える。
レッテルを貼る
「批判的な表現を使って女性にレッテルを貼り、それに反発するように仕向ける作戦である」(p.66)。うまいですね。「君は恐いんだろう」「まあ僕なんかキモオタは君には不釣り合いだろうからね」みたいな感じですかね。これナンパのテクニックの本でも見ました。
高利貸し
親切にしてそれ以上のものを返してもらうんですね。セールスとかの基本テクニックですよね。ロバート・チャルディーニ先生の『影響力の武器』は1回は読んでおきましょう。
頼みもしない約束
勝手に約束する。「プロ野球ニュース見たら帰るから」 1)昔はプロ野球ニュースという超人気番組があって、絶妙な時間にはじまるのでいろいろ利用されたようです。 とかってやつですね 2)もっとひどい例文を先に思いついたんですが、書くと人格を疑われるのでやめました。「先っち」からはじまります。 。こういう約束はなにも担保がない。ディーベッカー先生は、相手が約束すると言ってきたら「なぜこの人は、わたしを納得させる必要があるのだろうか?」と自問してみようと言ってます。
ノーの無視
私はこれが一番興味深いと思いました。やばい人は相手の「ノー」を気にとめなかったり無視したりする傾向があります。「荷物もってあげますよ」「ノー」「いや、もってあげますよ。ほらほら」みたいな感じね。「「ノー」に耳を貸そうとしない相手はあなたをコントロールしようとしている人間なのだ」そうです。話聞いてるように見せて、実はぜんぜん聞いてない人っていますよね。こういうひとは男どうしの関係でもけっこういるし、女性はそういう人にからまれやすいかもしれません。

これにどう対応するかが難しい。ノーって言っても無視されるんだから「いやほんとにけっこうですから、この荷物軽いし私けっこう力あるし」とか説明する必要はない。どうしてもそういうこと言いたくなりますけどね。

恥ずかしそうにおずおず「どうも。でもけっこうです(「Thank you, but~」かな?)、一人でできます」みたいに答える女性は被害者になりやすく、近よってくる男をまっすぐ見て手で相手を静止しながら「いえ、結構です(NO, thank youだろう)と答える女性は犠牲になりにくい」(p.70)そうな。先生によれば、とにかくもう「ノー」で完結した答でありそれで終りなのだと自信をもってことらしいです。あとは完全無視でかまわん。どうしても「ノー」のあとには相手の気分を害さなかったかと気になっていろいろ言い訳したり、なだめたりしたくなるものですが、そういうよい人であろうとする努力が危険を呼んじゃう。さっさと立ち去ってかまわない。

断わり方練習しときましょう。映画であのかっこいい女性が手のヒラを見せて「ノ!さんきゅ」って言ってるやつね。映画見ないひとは勝間和代先生の本の表紙でもいいです 3)本の中身は読んでないので知りませんし、このポーズと表情でいいのかどうか……まあおそらくこの気合いなら大丈夫でしょう 。練習しましょう。

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか
ロバート・B・チャルディーニ
誠信書房
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断る力 (文春新書)

断る力 (文春新書)

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勝間 和代
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第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい
マルコム・グラッドウェル
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まあしかし

しかしまあこういう防衛的なことばっかり考えてると、行動が制約されちゃって、新しい人間関係を作りにくくなったり、人間の親切や人情に触れたりって経験をするチャンスを失なってしまうことになります。旅行行ったりできなくなっちゃう。人生に楽しみも潤いがない。人を疑ってかかるのもいやな感じ。なにより自由じゃなくなる感じ、不自由な感じってのはもういやなもんです。

山岸俊男先生という偉い社会心理学者の先生によれば、はじめっから防衛的になる「安心」を求めすぎる人はそういうわけであんまり成功しない。山岸先生は、狭い人間関係で「安心」を求めるだけじゃなくて、知らない人もとりあえずは「信頼」して協力していった方がうまく生きていくことができるだろう、みたいなことを提唱しています。ただしそういうのでうまくやってる人は、誰でもかれでも信頼してしまうんじゃなくて、相手が信頼できる人かどうかのシグナルに「安心」を求める人々よりも敏感であって、信頼できないとわかればさっさと縁を切る傾向があるそうな。まあ人を見るのはなにごとも基本。ある程度ケガしない程度の痛い目にあいつつ人々を見る目を養うのも一つの方針だと思います。

安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)
山岸 俊男
中央公論新社
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ベッカー先生の本はタイトル変えて出し直されたようですね。おすすめ。
暴力を知らせる直感の力 ──悲劇を回避する15の知恵 (フェニックスシリーズ)
ギャヴィン・ディー・ベッカー
パンローリング株式会社 (2017-05-14)
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References   [ + ]

1. 昔はプロ野球ニュースという超人気番組があって、絶妙な時間にはじまるのでいろいろ利用されたようです。
2. もっとひどい例文を先に思いついたんですが、書くと人格を疑われるのでやめました。「先っち」からはじまります。
3. 本の中身は読んでないので知りませんし、このポーズと表情でいいのかどうか……まあおそらくこの気合いなら大丈夫でしょう

性暴力の被害を避ける:レイプ・デートレイプ編

はじめに

大学で性教育って(おそらくふつうは)やらないし、中高でもどうだったか私は記憶がありません。某女子大では春先の新入生オリエンテーションでちょっとだけ話があるようですが、どういう内容か知りません 1)どうも武道の紹介とかしているそうな。  。まあ私は男性なので性暴力の被害がどういうものかよくわかっていないのですが、なんか対策は必要なんじゃないかなとか思います。

正直なところ、私のような典型的な中年男が女子学生にアドバイスすることがあるのか疑問ですし、また、そういうアドバイスすることと、「被害者を責めるblaming the victims」とか結びつくと考えられることが多いので 2)これは学問的にも政治的にも非常に難しく興味深い問題なのですが、ここでは詳しく触れることができません。 気後れするところがありました。

最近、 Rathus, Nevid and Fichner-Rathus, Human Sexuality: In a World of Diversity: Allyn and Bacon, 2005 (6th ed.) 3)非常によくできてます。しかしとてつもなく高いので学生さんには手が出ないかもしれません。もし図書館にあったら目を通してみましょう。  という米国の大学生向け性科学の教科書を読んでいると、非常にプラクティカルなアドバイスが書いてありました。興味深いのでこれを紹介する形で私が考えていることを書いてみたいと思います。以下は正確な訳ではありませんが、上述の本のpp.618-619 あたりの記述をもとにしています 4)そしてその記述は The New Our Bodies, Ourselves (Boston Women’s
Health Book Collective, 1992)という本の内容に沿ったもののようです。
 。

Human Sexuality in a World of Diversity
Spencer A. Rathus Jeffrey S. Nevid Lois Fichner-Rathus
Pearson
売り上げランキング: 460,751

レイプ被害を避ける

性暴力の被害者になるのを避けるために、この本の著者たちは以下のことを勧めています。

  • 付近に住んでいる女性と合図を決めておく。

いきなりこれが出てきてすぐには何のことかわかりませんでしたが、なんか起こったらすぐに連絡できるように、ってことですね。レイプの多くは野外ではなく、室内で起きます。京都市内でもマンションに忍びこむタイプのけっこう起こっているようです。

壁をドンドンドンと叩いたら「うるさーいっ」って意味じゃなくて「助けて」なのよ、とかそういう感じで話をしておこうってことかな。携帯のワンプッシュでマンションの隣の人にかかるようになってるとか。一人暮らしでは近隣の女性どうしの連絡は非常に重要なわけです。とにかくなんか様子が変だったらお互いに連絡する、ってことをあらかじめ打ち合わせておくべきでしょう。もし、そういう打ち合わせをしていなくても、隣の部屋でへんな物音とか叫び声がしたら、チャイム鳴らしてあげるとか、電話してあげるとか、場合によっては警察110に電話するぐらいのことはしたいところです 5)私が学生のころに住んでいたワンルームマンションで、ある夜(深夜3時ごろ)、別の階の部屋のチャイムが何度も鳴らされていることがありました(たぶん女性の部屋)。鳴らしているのは若い男で、なんかいろいろ部屋のなかに話しかけていました。いかにもいわゆる「痴話喧嘩」。今思えば、そういうときに私がちゃんと出ていって、「何してんの?迷惑だから帰れ」とか言いにいくとか、せめて警察に電話ぐらいするべきだったと思います。他人のプライベートなことに口を出すのはどうも、というのがあるので、なかなかそういうことはしにくいのですが、おそらくあえてそうするべきときもあるのです。 。

  • 郵便受けやドアには苗字しか書かない。
  • デッドボルト錠を使う。

この「デッドボルト錠」がどういうものかわかりませんがバネ式じゃないドアの鍵ってことらしい。ふつうのマンションのドアでもちょっと前にピッキング泥棒とかはやりましたから注意!いつもチェーンロックもかけておきましょう。

  • 窓は鍵をかける。1階の窓には格子を入れる。
  • 通路には電灯をつけて明るくしておく。
  • 危険なアパートには住まない。
  • 見知らぬ人を部屋に入れない。セールスとか宅配便とかもちゃんと確認してから6)宅配便業者を装おった犯人とかもいました。 。チェーンは確認するまではずさないこと。

ここらへんはアパート選びのときに参考になりますね。特に通路の電灯のようなのは昼間に部屋探ししてもわからないので、目ぼしい物件は夜にも行ってみることをおすすめします。

  • 車に乗るため近づくときは、鍵を手にもって。
  • 車のウィンドウは閉めてドアはロックする。
  • ヒッチハイカーを乗せない(女でも!) 7)

    「男の子はヒッチハイクとかで冒険できるのに、なぜ女はできないのだ!」と不満を感じるのは理解できます。 。

  • 車に乗る前にバックシートに誰か潜んでないか覗きこむ。

車社会のアメリカらしいアドバイスですね。暗い駐車場の車の前で、ハンドバッグごそごそやっているときにどっかに引きずりこまれたり、車を乗っ取られたりすることを警戒しているわけだ。

  • 夜道を一人で歩かない。
  • 人気のないところに行かない。
  • 道端で知らない人と話をしない。

こういうアドバイスってのは色々考えてしまいます。「なんで女だからって行動を制約されるの?悪いのは性犯罪者だ!」はその通り。しかし、紹介している本を書いている人々はこう言っています。

情報を提供することと、被害を受けた人を責めるのことではありません。性犯罪については **常に**犯罪者に責任があるのです。

  • 助けを呼ぶときは「痴漢!」ではなくて「火事だ!」と叫ぶ。

これはどうなんでしょうね。この国の社会と女性の場合、とにかく声を出すのがまず先決だろうと思います。若い女性の多くは大きな声を出すことに慣れていないので、まずその練習をしておくべきだろうと思います。「ギャーっ」「助けてー!」とかちゃんと叫べますか?カラオケとかで叫ぶ訓練しておいてください 8)最近、女性が電車のなかでレイプされたのに、誰も助けなかった、という事件がありました。もし女性が一言でも叫ぶことができれば、話はぜんぜん違っていたのではないかと思います。人びとが動き出すにはなにかのキュー(合図)が必要なのです。 。

http://www.pref.kyoto.jp/fukei/anzen/seiki_t/jyosei_manyual/index.html ← このページにあるPDFも読んでおきましょう。

2007年3月に中京区富小路通四条上ルあたりで女性が車に乗せられて拉致される事件が起きたようです。何度も書くように、車に乗せられると最悪の事態が予想されます。なにがあろうが絶対に車には乗せられないこと。大声で叫ぶこと。

デートレイプ対策

しかし上のようないかにも「犯罪」ってのに気をつけるスベは、女性なら誰でもだいたいわかってるんじゃないかと思います。

でも実際にはレイプの大半は、知らない人が暗闇から襲ってくるとかではなく、むしろ、あなたの友達や知り合いとデートしたりドライブしたりしているときに起こるのだと言われています。そのための対策が必要なわけです。

  • デート相手に、あなたが許せるリミットをちゃんと伝える。

これは難しいんじゃないかと思いますが、どうなんでしょうね。

たとえば、あなたの相手が、あなたが不愉快だと思うようなことをはじめたら、こう言いましょう。「そこは触らないでちょうだい。あなたのことは好きよ。でもまだあんまりよく知らないからそんななことまではしないでいたいわ。 “I’d prefer if you didn’t touch me there. I really like you, but I prefer not to get so intimate at this point in our relationship.”

まあ日本語では別の表現もあると思いますが、正直なところわたしにはよくわかりません。少なくとも上のじゃだめなような気がする。よく考えておいてください。

  • はじめてのデートは人のいる場所で。喫茶店とか映画館とか。いきなりドライブはだめ。
  • あまりよく知らない人やグループとドライブはしない。

グループだから安心と思ってはいけません。デートレイプの多くの事例では、グループだと思ってたのに、暴行の直前には他の人たちが消えていた、ってのも多いそうです。「おーよー、あの子たち連れこんでやっちゃおうぜ。あそこで別々になってよ」とかいうやつですね。危険。

まあ、知らない人の車に乗ったらまずアウトだと思っていいんじゃないかな。「友達の友達」なんてのも、信頼できる友達の本当の友達なら大丈夫でしょうが、実は知り合いの(これまた)タダの知り合いなんてことも多いようなので、ぜんぜん信用ならんのではないかと思います。わかりません。私は怖がりなので、なんとも言えないところです。

  • はっきりと拒絶する。まっすぐ相手の目を見て口に出して返事する。よりはっきり返事をすれば、誤解される可能性が少なくなる。

「うーん、でもー」とかやってるといつまでたっても終りません。相手は誘惑しようとしたり攻撃しようとしているのだから、弱味を見せればつけこんでくる。目を見て「本気だ」というところを見せつける必要がある。こりゃたいへん。

  • 自分の「恐れ」に注意する。相手の気分を害するかもしれないっていう恐れが、はっきりしない態度につながってしまうかもしれないことに注意。もし相手があなたにちゃんと敬意を払ってくれれば、あなたは恐怖や恐れを感じる必要はない。

相手があなたに敬意を払ってくれないのなら、すでにその時点でかなり危険なので、その場できっぱりとサヨナラしてしまう方がよい。ドライブはこれができないので危険なのよね。

  • 自分の「感じvibes」に注意を払え。自分の生理的な感覚(gut-level feeling)を信用しろ。

これ、個人的には非常によいアドバイスだと思います。そういう生理的な感覚ってのは、我々の頭より信用になる場合が多い。「デートレイプの多くの被害者は、事後になって、相手の男性に対して奇妙な感覚を感じたが、それに注意を払わなかったと報告しています」ということらしいです。

まあどんなときでも自分の感覚を信じれば大丈夫なんてことは絶対にありませんが、男女関係についてだけはそういうことありそうな気がするなあ。「なんかヘンだな」と思ったらだいたいその相手はヘンなのです。「ヤバいかな?」と思ったら実際にヤバい。

  • 新しい環境(大学に入学したとか、新しい友達ができたとか、外国旅行しているとか)では特に注意すること。

そうですね。よく知っている環境ではなにが危ないか知っているわけですが、新しい環境とか知らない場所、知らない人々では、自分の感覚が信用できなくなっちゃうからね。

  • 好きじゃないひと、好きになれないひとと関係を切ったら、そのひとを自分の部屋に入れないこと。多くのデートレイプは元彼・元夫によってなされています。

そうなんだろうなあ。つまり(1)もと彼、(2)知りあったばかりの人、が危ない。でも危いひとは他にもいるぞ。「別れ話は電話か喫茶店で」とかってアドバイスも目にしたことがあります。

どうやって逃げるか

しかし実際にそういう奴に遭ってしまったらどうするか、ってのは非常に難しい問題のようです。逃げるか、抵抗するか、泣くか、お願いだから許してと頼むか、冷静に説得するか。とりあげている本でもはっきりした答は出してません。つまりそういう危険な状況に置かれたときに、どうすりゃ助かるかはわからんのですね。いやな話です。とにかく、

  • 叫ぶのは効果がある場合が多い。
  • 相手が一人の時には走って逃げるのもよい、でも相手が複数の時はまずだめ。
  • 力ずくで抵抗するのも時にレイプ自体を避けるのには有効、でもある種の犯人をよけいに興奮させてケガする危険がある。

ってことらしい。

私が見た他の研究 9)Buss, David M. (2003) The Evolution of Desire: Strategies of Human Mating: Basic Books, revised edition. では、

  • レイピストの多くは肉体的な抵抗に会うとあきらめることが多い
  • レイピストが被害者の生命を奪うことは少ない。

という結果があるらしいのですが、あまり自信がありません。少なくとも車に乗せられたらどっかに埋められるなんてことまで心配しなければなりません。以前に米国の女性雑誌を読んでいたら、

  • ピストルで車に乗るよう脅迫されたときは、ジグザグに走って逃げるのが一番生存する確率が高い。

とかって記事を見つけて、実践的すぎて驚いたことがあります。ジグザグに走らないと後から撃たれる可能性があるからですね。ひどい社会だ。まあ日本でも、おそらく、

  • ナイフなどをちらつかせられて「車に乗れ」と脅された場合、乗ってしまった方が乗らないよりひどい結果になる

は言えそうな気がします。

とりあえず、A. パロット, 『デートレイプってなに?:知りあいからの性的暴力』,大月書店.冨永星訳, 2005 は一読しておく価値があると思います。

デートレイプってなに?―知りあいからの性的暴力 (10代のセルフケア)
アンドレア パロット
大月書店
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セクハラについてはまた今度。

 


References   [ + ]

1. どうも武道の紹介とかしているそうな。
2. これは学問的にも政治的にも非常に難しく興味深い問題なのですが、ここでは詳しく触れることができません。
3. 非常によくできてます。しかしとてつもなく高いので学生さんには手が出ないかもしれません。もし図書館にあったら目を通してみましょう。
4. そしてその記述は The New Our Bodies, Ourselves (Boston Women’s
Health Book Collective, 1992)という本の内容に沿ったもののようです。
5. 私が学生のころに住んでいたワンルームマンションで、ある夜(深夜3時ごろ)、別の階の部屋のチャイムが何度も鳴らされていることがありました(たぶん女性の部屋)。鳴らしているのは若い男で、なんかいろいろ部屋のなかに話しかけていました。いかにもいわゆる「痴話喧嘩」。今思えば、そういうときに私がちゃんと出ていって、「何してんの?迷惑だから帰れ」とか言いにいくとか、せめて警察に電話ぐらいするべきだったと思います。他人のプライベートなことに口を出すのはどうも、というのがあるので、なかなかそういうことはしにくいのですが、おそらくあえてそうするべきときもあるのです。
6. 宅配便業者を装おった犯人とかもいました。
7.

「男の子はヒッチハイクとかで冒険できるのに、なぜ女はできないのだ!」と不満を感じるのは理解できます。

8. 最近、女性が電車のなかでレイプされたのに、誰も助けなかった、という事件がありました。もし女性が一言でも叫ぶことができれば、話はぜんぜん違っていたのではないかと思います。人びとが動き出すにはなにかのキュー(合図)が必要なのです。
9. Buss, David M. (2003) The Evolution of Desire: Strategies of Human Mating: Basic Books, revised edition.

角田由紀子先生の強姦事件判決批判

性差別と暴力―続・性の法律学 (有斐閣選書)

性差別と暴力―続・性の法律学 (有斐閣選書)

これはよい本だなあ、と思っていたのだが。

次に詳しく紹介する1994年の東京地方裁判所の判決は、強姦罪の被害者になりうるには、貞操観念が強固であることを求めているといってよい。「被害者資格」と呼んでもよい。(p.189)

判決は無罪の理由の一つに被害者の証言が信用できないことをあげている。信用できない理由の一つとして、この女性に大きな落ち度があったこと、「貞操観念」に乏しいことを指摘した。(p.190)

A子のように、「淑女ぶって」いながら、実は性的に奔放で慎しやかでないと烙印を押された女性の被害はなかなか信用されないことを、この判決は示している。(p.193)

こういうのを読んで、先週まで私は「90年代になっても法曹関係者はだめな人ばっかりなのだなあ」と思っていた。のだが。

でも判例時報 1562号「強姦致傷事件、東京地裁平5(合わ)167号、平成6・12・16刑八部判決、無罪(確定)」ってやつ読むとずいぶん印象違うよ。困ってしまう。これで有罪にするのは無理だろう。

うーん、比べて読んでほしいのだが、裁判所の判例データベースhttp://www.courts.go.jp/search/jhsp0010?action_id=first&hanreiSrchKbn=01
は使えん。だめか。

とりあえず角田先生が引用している判決の一部再掲。

(A子は)「甲野[ディスコ]で声を掛けられた初対面の被告らと「乙山[スナック]」で夜中の3時過ぎまで飲み、その際には
ゲーム[エロ系王様ゲーム]をしてセックスの話をしたり、
A子自身は野球拳で負けてパンストまで脱ぎ、同店を出るときには一緒にいたD子、E子と別れて被告人の車に一人で乗ったというのであるから、その後被告人から強姦されたことが真実であったとしても、A子に大きな落ち度があったことは明らかである。(角田p.190。[]内はkalliklesの補。)

A子については、慎重で貞操観念があるという人物像は似つかわしくないし、その証言には虚偽・誇張が含まれていると疑うべき兆候がある。(角田p.193)

たしかにここだけ読めば「これはひどい」だよなあ。この本読んでから5年近くずっとそう思ってた。なぜ被害者の「落ち度」や「貞操観念」や(面倒だから引用しないけど)過去の職業歴が強姦致傷の裁判で問題にされる必要があるのだ!男権主義的司法制度粉砕!ってのが正しい態度だろう。

しかし(面倒なので今日はやめ。続く。)