ブックガイド:表現の自由と「わいせつ」

某授業用ブックガイド。作成中。


表現の自由一般については以下の2冊。

「表現の自由」入門

「表現の自由」入門

posted with amazlet at 16.07.19
ナイジェル・ウォーバートン
岩波書店
売り上げランキング: 436,653
表現の自由を脅すもの (角川選書)
ジョナサン ローチ
角川書店
売り上げランキング: 825,185

国内の「わいせつ」表現については以下のものが簡便でわかりやすい。

エロスと「わいせつ」のあいだ 表現と規制の戦後攻防史 (朝日新書)
園田 寿 臺 宏士
朝日新聞出版 (2016-02-12)
売り上げランキング: 83,614

ブックガイド:性暴力に関するフェミニスト文献古典

某授業用ブックガイド。作成中。


とりあえず若い女性・男性には以下の2冊読んでおいてほしい。

デートレイプってなに?―知りあいからの性的暴力 (10代のセルフケア)
アンドレア パロット
大月書店
売り上げランキング: 698,085
女子のための「性犯罪」講義―その現実と法律知識 (Social Compass Series)
吉川 真美子
世織書房
売り上げランキング: 461,735

下は「強姦神話」というアイディアを展開した本で非常に大きな影響力があった。内容は40年もたった今ではさすがに古いと思う。

レイプ《強姦》―異常社会の研究 (1976年)
ジーン・マックウェラー
現代史出版会
売り上げランキング: 1,407,051

下も同じころにさらによく読まれ、フェミニズト的な性暴力理解の基本。いまでも手に入りやすい古典。マスト。1970年代から90年代ぐらいの主流の考え方。

レイプ・踏みにじられた意思
スーザン ブラウンミラー
勁草書房
売り上げランキング: 197,601
性と法律――変わったこと、変えたいこと (岩波新書)
角田 由紀子
岩波書店
売り上げランキング: 104,142

↓非常に重要な文献で、ブラウンミラーらの解釈を批判している。これを読まないと議論できない。マスト。女性のみならず、男性こそ絶対に読むべきだ。

人はなぜレイプするのか―進化生物学が解き明かす
ランディ・ソーンヒル クレイグ・パーマー
青灯社
売り上げランキング: 560,178

ブックガイド:フェミニスト的ポルノグラフィ批判

某授業用の日本語文献紹介。作成中。


フェミニスト論争の概説

中立的な概説としては次のものがよい。

1冊で知る ポルノ(「1冊で知る」シリーズ)
デビー・ネイサン
原書房
売り上げランキング: 920,954
争点・フェミニズム

争点・フェミニズム

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ヴァレリー・ブライソン 江原 由美子
勁草書房
売り上げランキング: 1,135,870

ポルノグラフィを問題視する立場

とにかく下を読むとよいだろう。解説も充実している。

ポルノグラフィと性差別

ポルノグラフィと性差別

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キャサリン マッキノン アンドレア ドウォーキン
青木書店
売り上げランキング: 1,024,943
AV神話―アダルトビデオをまねてはいけない
杉田 聡
大月書店
売り上げランキング: 209,482

マッキノンらの反ポルノに対する批判

リベラルフェミニズムの立場。表現の自由を重視する。

ポルノグラフィ防衛論 アメリカのセクハラ攻撃・ポルノ規制の危険性
ナディーン・ストロッセン
ポット出版
売り上げランキング: 896,692

ブックガイド:性風俗産業の実態に関する書籍

某授業用のブックガイド。作成中。


現在の性風俗産業の実態をおそらくかなり正確に描いているのはおそらく中村敦彦。ただしかなりクセのあるジャーナリストではあるので注意も必要か。数が多いが、どれか1冊読めばよいだろう。

図解 日本の性風俗

図解 日本の性風俗

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中村 淳彦
メディアックス
売り上げランキング: 36,830

日本の風俗嬢 (新潮新書 581)
中村淳彦
新潮社
売り上げランキング: 7,578

女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル (朝日新書)
中村淳彦
朝日新聞出版 (2015-10-13)
売り上げランキング: 19,337

職業としての風俗嬢 (宝島社新書)
中村 淳彦 勅使河原 守
宝島社
売り上げランキング: 19,029

風俗嬢自身、元風俗嬢によるものも多い。水嶋かおりんによるものは志が高く洞察も深いと思われる。

風俗で働いたら人生変わったwww (コア新書)
水嶋 かおりん
コアマガジン
売り上げランキング: 4,251

学術的な意識調査としては、若干古いが、次のものが優れていると思われる。

風俗嬢意識調査―126人の職業意識
要 友紀子 水島 希
ポット出版
売り上げランキング: 629,948

ポット出版からの次の2冊は、セックスワーカーの立場からの発言集で高い価値がある。

売る売らないはワタシが決める―売春肯定宣言
要 友紀子 小林 のん 滝波 リサ 国江 響子 佐藤 悟志 松沢 呉一
ポット出版
売り上げランキング: 539,980
ワタシが決めた

ワタシが決めた

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ポット出版
売り上げランキング: 881,975

ワタシが決めた〈2〉

ワタシが決めた〈2〉

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ポット出版
売り上げランキング: 1,056,827

性風俗・性産業の歴史は

性風俗史年表 昭和戦後編―1945-1989
下川 耿史
河出書房新社
売り上げランキング: 356,199

ナカニシヤ出版「愛・性・結婚の哲学」を読みましょう (2)

愛 (愛・性・家族の哲学 第1巻)
藤田尚志 宮野真生子
ナカニシヤ出版
売り上げランキング: 352,993

福島知己「恋愛の常識と非常識:シャルル・フーリエの場合」

実は刊行前に目次出たときから一番楽しみにしてたのがこの論文で、フーリエの『愛の新世界』っていう奇怪な大著の翻訳者本人のよる解説っていうか部分的紹介。

増補新版 愛の新世界

増補新版 愛の新世界

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シャルル・フーリエ
作品社
売り上げランキング: 116,712

フーリエ先生の『愛の新世界』って本はほんとうに奇怪な本で、図書館には入れてもらったもののどうにも読めない。用語法が異常だし話の展開も異常だし。フーリエ先生は「幻視者」みたいに言われることがあるけど、ほんとうに想像力豊かで、ほとんど妄想に近いものを書きつけている感じ。翻訳もたいへんだったと思う。でもフーリエのその幻視かもしれないヴィジョンっていうのはすごく重要だとは思うわけです。セックスや結婚とかに関して、その後の性的に解放されたコミューン形成とかにもかなり影響与えてるんでしょうね。まあとにかくぶっとんでいる。

福島先生が紹介しているのは、「聖英雄ファクマ」さんのお話。もちろんフィクション。福島先生の紹介の最初のところ書き写すだけでそのぶっとびかたがわかると思う。

「世界的に調和世代が訪れた未来、遍歴騎士団に属して世界各地を転戦して回る人々の一人、美しき偉丈婦ファクマが、小アジアの都市ニニドスに捕虜として捉えられた。彼女が属する黄水仙群団・隊団はおよそ千人の冒険者からなり(地名2行半省略)を経由して、西ヨーロッパに抜ける予定だった。

前哨としてクニドス周辺を探索中のファクマたちを「チェス・ゲームに比すべき陣取り合戦の結果」として捕虜にしたバッコス巫女たちは、「恋愛に関して捕虜たちを所有する権利の一切」をこの後二十四時間にわたってもつが、早く攻撃方に戻りたいので、権利の譲渡を宣言した。捕虜が主人を変えるたびに捕囚期間は常に半分に減額される。捕虜と恋愛する権利を得るため恋愛法廷が開廷されることになった」

すごいっしょ。『シドニアの騎士』みたいっすね。「奇居子(ガウナ)」とか「衆合船(シュガフせん)」とか出てきそう。これでも福島先生がまだかなり抑えてくれた記述になってる。フーリエ先生の本文は読むドラッグみたいな感じ。

福島先生自身もこの世界のとりこまれているふうがあって、この「恋愛法廷」ってのは、「半日間の恋人を決める集団見合いである。街コンであり、出会い系である」って表現している。いやそうじゃないっしょ。奴隷とセックスする権利をどうするか、ってはなしっしょ。奴隷市場じゃないっすか。

ファクマさんは捕虜っていうか奴隷になってしまって、半日だれかの「恋愛」の相手をしなければならないわけだけど、官能愛=唯物愛はいやで、心情愛ならする、なぜなら1ヶ月肉欲の日々を送ったので疲れているから、みたいな。わけわからんです。求愛者っていうかそういうのが8人いて、しょうがないから8人じゃなくて1人なら相手してやるっていう。でも8人の男の話がまとまらないので、んじゃ誰にもやらせませんし恋愛もしません、って宣言する。すると一人がショックで失神してしまう。ファクマさんはそれをかわいそうに思ってうめあわせとして恋愛してあげようと思う。しかし他の男たちからそれはずるいと責められて、人々を苦しめたという掟に反する罪を犯したので、その償いに54人と唯物愛=セックスすることになる。

わけわからんです。いやすごい世界。哲学はたいへんです。

まあこういうフーリエ先生の奇怪なヴィジョンの背景にあるのは、19世紀ヨーロッパでの結婚制度や売春なんかのいろんな問題なんでしょうけどねえ。福島先生の解説もなかなか難しくて、なんとも論評しにくい。

最終節「幸福の条件」を見てみると、福島先生の読みではフーリエは恋愛を政治的に考えて一種の公共事項とみなすべきだと考えていると。まあ世の中なかの不幸の大きな部分はモテないとかセックスできないとか結婚できないとか、そういうのによっているので、恋愛を公共事業にしてしまえばそうした不幸が減る。これがフーリエ先生的な計画セックスですわね。

まあ実際そういう考え方によって、共産村を作ってセックスの相手を計画して毎日変える、みたいなのは19世紀におこなわれていて、あんまりうらやましくないけど話はおもしろいです。フーリエ先生と福島先生のこれを読む前に、下の本読んでおくとこうしたぶっとんだ話が、現実とどう関係しているかがわかって、そのおもしろさがわかるんちゃうかなと思います。

ユートピアと性 オナイダ・コミュニティの複合婚実験 (中公文庫)
中央公論新社 (2015-04-24)
売り上げランキング: 139,145

あと蛇足だけど、「ブックガイド」で映画『ドッグヴィル』について「結末の惨劇には戦慄せざるをえない」っていうのもものすごく違和感がある。そこじゃないでしょ、ってな感じ。全体にこういうずれた感じがあって、興味深い。

(追記)

ちなみに、p.125で論じられているキェルケゴールの『恐れとおののき』でのアガメムノンやエフタは、「共同体から後世称賛され、栄光を得られると考えているため」に自分の子供を犠牲にするのではない。彼らは共同体の命運をかけた闘いの場で神に帰って最初に戸口から出てきた人間を生贄に捧げるという個人的というよりは民族共同体としての誓いを立てて敵に打ち勝ったために、出てきた娘を犠牲にしなければならなかったわけだけど、それは彼らが(やむをえず?)誓いを立ててしまったからであって、個人としてみんなから称賛されるためではない。

(さらに追記)

功利主義の理解もちょっと問題があって、p.124の「8人の求婚者たちは……自分の幸福を追求しているだけであり、このような要求を経なければ最大幸福の計量もできないわけだから、その意味では功利主義原理にしたがっていないわけではない」もわかりにくい。もちろん欲求や選好を表明しないと功利計算できないってことなのだろうけど、それ自体は功利の原理とは関係がない。「(多数の利益に仕えるという)統一の掟も八人の利己主義者の行動も原理的には同じ」になるというのは意味がわからない。

またベンサムが同性愛を刑罰で禁じることに反対したわけだけど、「その理由はそれが私的な問題であって、法律の対象になじまないから」ではないはず(これはちゃんとした自信がないけど)。こっそりやられている同性愛を法的に罰する利益がなく、不利益は大きいからのはず。快楽はどんな快楽でもそれ自体として価値がある。さらにベンサムは同性愛などが人口抑制などに有益だとかって話もしているはず。

ちなみにベンサム先生はフーリエ先生と同じようにぶっとんでるし言語感覚が異常な感じがあるけど(どちらも新しい制度の設計や、造語・新語が好き)、そんな奇怪な空想はしないわねえ。タイプが違うんだな。

品川哲彦『倫理学の話』書評

(『週刊読書人』第3124号 2016年1月22日掲載の草稿)

倫理学の話

倫理学の話

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品川 哲彦
ナカニシヤ出版
売り上げランキング: 209,026

本書は、読みやすい倫理学概論および学説史である。叙述は歴史的順序には従わず、著者独自の観点からの配列となっているが、しっかりした索引、注および相互参照が付記されているため、事典的に読むことも可能である。

全体の四分の三は、近年の英語圏の標準的なテキストで頻繁に扱われている諸倫理学説の紹介と検討である。第一部でまず、倫理学は、他人を教導しようとする「倫理」ではなく、むしろ自分自身の倫理観を反省する哲学であるとする筆者の立場が明確にされる。第二部では倫理の基礎づけとして、倫理を自己利益にもとづいて説明しようとするプラトンとホッブズ、人々との共感を重視するヒューム、理性にもとづいた義務と尊厳を説くカント、社会全体の幸福の促進を目指す功利主義者たちの理論が説明される。第三部は、特に「正義」をめぐって、ロックの社会契約説、ロールズのリベラリズム、ノージックのリバタリアニズム、サンデルらの共同体主義およびその源流としてのアリストテレスとヘーゲルがとりあげられる。

紹介と解説は総じて平明であり、どの章でも初学者が疑問を感じやすい箇所、誤解しやすい箇所に対して相当の配慮がなされていることは特筆に値する。たとえば、功利主義の考え方を論じる上で、「功利主義は多数の人々の幸福のためならば、少数の罪のない人を殺すことを認めてしまう」といった安直な批判に対しては、ヘアの「道徳的思考のレベル」の区別を紹介し、そうした批判は安直な思考実験と道徳的な直観にもとづいたものであって、現代のエレガントな形の功利主義に対しては十分な批判にはならないという考え方を紹介している。こうした細心な叙述は随所に見られ、基本的学説の正確な理解を必要としている読者に有用なはずである。

「正義」に関する議論の後半部分では、ケアの倫理、ヨナスの責任論、レオポルドの土地倫理、レヴィナスの他者論やデリダの正義の脱構築といった、伝統的な正義論の枠組み自体を疑い問いなおそうとする思想の概略とその魅力が紹介されており、これが本書の特徴的な部分となっている。もちろん、こうした思想群にはわかりにくい部分がある。たとえば、ギリガンらによる「ケアの倫理」は、男女の心理学的な発達に関する事実的主張にすぎないのか、あるいはそれを越えて規範的主張としての説得力を持つのか、ヨナスらが主張する「将来世代に対する責任」の根拠は何か、レヴィナスの言う「他者の無条件な歓待」はどのような内容をもつのか、デリダによって脱構築された「正義」観念は我々の道徳的生活にどのような関係をもつのか等々、読者は多くの疑問を抱くことになるだろう。

しかし、こうした思想を紹介することで「正義」を問いなおそうとする著者の試みは理解できないものではない。我々は往々にして、自分のふるまいや考え方は正しく、自分たちは正義にかなっていると思いこみがちである。歴史的に見てこうした思いこみは、「我々」と見なされる人々以外の存在者に対する政治的抑圧や暴力につなってしまう。アカデミックな倫理学研究でさえ、独善的な取組みをすればそうした側面をもちえる。筆者が「正義」についての標準的とされる倫理学説の検討にとどまらず、上述のような思想家たちの紹介によって「正義とは異なる基礎」や「正義概念の脱構築」の可能性を探るのは、そうした政治的意識の反映でもある。

「あと書き」では、ユダヤ人芸術家メナシェ・カディシュマンのインスタレーションが発する「ノイズ」を聞き「自分は苦しんでいる人々の呼び声もあたかもたんなるノイズのように聞き流してしまっているのではないか?」と自問する筆者の姿が描かれる。多彩な倫理学的な立場それぞれの見解に耳を傾けつつ「じっくり考えなくてはならない問題」について誠実に「ゆっくり話す」という手法は、倫理学という営みへ誘いとして適切な方法であることはまちがいがない。

2015年に読んだ本ベスト10

ちょっと早いけど今年印象に残った本10冊程度。今年はあんまり本読まなかったっぽい。読書生活も終りに近づいている。

2014 http://yonosuke.net/eguchi/archives/1056
2013 http://yonosuke.net/eguchi/archives/1082
2012 http://yonosuke.net/eguchi/archives/1105
2011 http://yonosuke.net/eguchi/archives/1043


今年一番影響を受けたのは、なんといってもやっぱりマクゴニガル様の最新疑似宗教ゲーム『スーパーベターになろう』ですか。もうプラシボだろうがなんだろうが、それでいい。とにかく不活発で思いどおりに機能しない、いつも小雨が降ってる気がする、みたいな人は必ず読むべきだ。

基本的には、まあ人生をゲームとして見る。ほんのちょっとしたことでいいから自分の意志でなにかをする、ちょっとした快感や楽しみ、充足感を意識する、とかで自己効力感を高め、パワーアップして、毎日なにかちょっとしたことにチャレンジする(クエスト)、仲間をつくっていっしょに活動する(アライ)、自分の障害になっている内外の敵を見つけて、そいつを倒す(悪玉とのバトル)。そういうゲームの主人公として自分の人生を見ると、考え方が変わるってうまく機能するようになるよ、と。自分で実験してみてます。

スーパーベターになろう!
ジェイン マクゴニガル
早川書房
売り上げランキング: 9,624

『認知行動療法に基づいた気分改善ツールキット』も、これまでの認知行動療法系統の気分気分操作を網羅的に整理してくれていて悪くなかったけど、『スーパーベター』を読んでから見ると堅すぎるか。やっぱり実践可能な形にするにはマクゴニガル先生のような工夫が必要。


気分とからめてずっと興味をもっている幸福感とか選択とかの問題についてはドーラン先生の『幸せな選択、不幸な選択』。

幸せな選択、不幸な選択――行動科学で最高の人生をデザインする
ポール・ドーラン
早川書房
売り上げランキング: 8,221

この分野もだいぶ進んだな、みたいな感じがある。幸福/幸福感についての心理学と哲学の両方にめをくばっている。あと行動経済学を援用した自己啓発本そのものはなに読んでも同じ話ばっかりで飽きつつあったけど、『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』はわりとおもしろかった。


まじめな方では、ピンカー先生の『暴力の人類史』は思想史とか考える上でも重要。

暴力の人類史 上

暴力の人類史 上

posted with amazlet at 15.12.26
スティーブン・ピンカー
青土社
売り上げランキング: 21,932

逆の方向だけど、『戦争の科学:古代投石器からハイテク・軍事革命にいたる兵器と戦争の歴史』もおもしろかった。科学の歴史は戦争の歴史だ。勉強的には『モラル・トライブズ――共存の道徳哲学へ』が重要なんだけど、まあ一般向けではないと思う。


自分の幸福の他に、動物倫理その他の関係で、食べ物のことはいつも考えてる。前に『雑食動物のジレンマ』でいろいろ考えさせてくれたポーラ先生の『人間は料理をする』は前作にもましておもしろい。すばらしい上下巻。とにかく上巻の「焼く」だけでも読むべし。パリパリの豚の皮がうまそうだ(食ったことないけど)。

人間は料理をする・上: 火と水
マイケル・ポーラン
エヌティティ出版
売り上げランキング: 37,657
人間は料理をする・下: 空気と土
マイケル・ポーラン
エヌティティ出版
売り上げランキング: 86,352

マンガは一番印象的だったのは阿部先生ねえ。ちょっとシリアスすぎるけど。新しい表現はいつもある。

空が灰色だから 1 (少年チャンピオン・コミックス)
阿部 共実
秋田書店 (2012-03-08)
売り上げランキング: 21,960

あと、みなもと太郎先生にも今年もお世話になった。

挑戦者たち グループ・ゼロ
グループ・ゼロ (2014-05-27)

古いマンガだけど、『アップ・セット・ボーイズ: 明日葉高校将棋物語』を読んでなつかしかった。名作青春マンガ。


そういや、なんといっても池田暁子先生のも衝撃を受けた。これはすごかった。とにかく表現がふつうではない。ADHDとかその手の人のみじめさがよく描かれている。まあこれ読んでなんとか片づけられるようになりつつある。みじめなのいくない。

片づけられない女のためのこんどこそ!片づける技術
池田 暁子
文藝春秋
売り上げランキング: 6,786

『必要なものがスグに!とり出せる整理術! 』も読みましょう。


音楽関係だと細馬先生の『うたのしくみ』が新鮮な知性を感じた。

うたのしくみ

うたのしくみ

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細馬 宏通
ぴあ
売り上げランキング: 62,542

あと、勉強っぽいところでは森本先生の『反知性主義』は18〜19世紀について考えるヒントを与えてくれた。私も反知性主義、っていうか反インテリには共感するところあり。

反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)
森本 あんり
新潮社
売り上げランキング: 13,857

苦手な美術関係も少し読んでいて、こういう解説書はいいものだな、みたいな。

エロティック美術の読み方
フラヴィオ・フェブラロ
創元社
売り上げランキング: 529,426

他はまあ http://mediamarker.net/u/yonosuke/ でも見てください。

2014年に読んだ本ベスト10

実は今年はここ20年ぐらいで一番本読まなかったんじゃないですかね。なんか気があせって余計な本とか読む余裕がなかったです。まあしょうがない。

でもまあとりあえず印象に残った本を。


ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法
冨田 恵一
DU BOOKS
売り上げランキング: 21,869

現役トップアレンジャー/プロデューサーが音楽(と音)の聞き方を教えてくれるというすばらしい本。音楽はたくさん聞くより何回も聞くものだと教えてもらいました。実践してないけどそうだと思う。


すごいジャズには理由(ワケ)がある──音楽学者とジャズ・ピアニストの対話
岡田暁生 フィリップ・ストレンジ
アルテスパブリッシング
売り上げランキング: 24,694

音楽本だとこれもおもしろかった。岡田先生はクラシック観賞/演奏から回心してジャズピ習いにいって、その先生からいろいろレクチャーを受ける。ストレンジ先生もいろいろ言うべきことをもった知的な方ですばらしい。

あとビートルズ関係のムックとか2、3冊読んだけど最近の研究はすごいね。
ザ・ビートルズ全曲バイブル 公式録音全213曲完全ガイド
ザ・ビートルズ アルバム・バイブル (日経BPムック)
まあ我々か、ちょっと上の世代向けなのね。


ドット・コム・ラヴァーズ―ネットで出会うアメリカの女と男 (中公新書)
吉原 真里
中央公論新社
売り上げランキング: 385,343

これは異常におもしろかったですね。こんな世界があるなんてなあ、な感じ。ぶちゃけていて、ふつうの人には書けない。実はインターネット(net news)にはじめて触れたときに、alt.personel.adsとかっていうニュースグループ(掲示板)があることに気づいたんよね。いわゆる「出会い系」なんだけど、そのころはそういう言葉はなかった。どのポストにも「私は〜才のSWMです(straight, white, maleだったかな?)。知的でユーモアのセンスがあり、音楽と読書を好みます。ニューヨークで〜才ごろまでの魅力的な女性を探しています」とかっていうのがたくさん流れていて、「これなんだろう? こんなのが実際に機能するのかな?」とか思ってたんよね。あれはけっこう本気で、最近はそうなっているのね、みたいな。


百姓から見た戦国大名 (ちくま新書)
黒田 基樹
筑摩書房
売り上げランキング: 73,064

新書だとこれもよかった。歴史学もずいぶん変わった。っていうかそりゃ「悪い殿様が農民を一方的に支配してました」とかってんじゃないわよね。あ、新書だとあと『女のからだ――フェミニズム以後 (岩波新書)』が情報量多くて優れてると思った。


一万年の進化爆発

一万年の進化爆発

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グレゴリー・コクラン ヘンリー・ハーペンディング
日経BP社
売り上げランキング: 190,281

進化もの一般書だとここらへんか。ついこのまえまで「我々は20万年前と同じ体と心だ」みたいなのが一般的だったんじゃないかと思うけど、そのあともけっこう淘汰かかってますよ、みたいな話だと理解した。『5万年前―このとき人類の壮大な旅が始まった』も同じ感じ。


心理学ものだとサブリミナル。

しらずしらず――あなたの9割を支配する「無意識」を科学する
レナード・ムロディナウ
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 11,534

クルツバン先生の『だれもが偽善者になる本当の理由』を読んでればこれが一番だったけど、まだ積読状態。『錯覚の科学』もそこそこおもしろかった。


社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学
ジョナサン・ハイト
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 18,902

まあハイト先生のは挙げとかないとね。


近代科学を築いた人々〈上〉科学への夢/原子/電子/力学
長田 好弘
新日本出版社
売り上げランキング: 1,150,213

19世紀の科学史みたいなのちょっとあれして読んだけどよかった。19世紀はすごい時代だ。


もう一つのヴィクトリア時代―性と享楽の英国裏面史 (中公文庫)
スティーヴン・マーカス
中央公論社
売り上げランキング: 701,328

しかし裏はこんな感じ。有名な『我が秘密の生涯』とかを中心にした19世紀ロンドンあたりの話。おもしろいのは『秘密の生涯』がおもしろいからかもしれん。


あれ、1冊足りない。これで。

「幸せ」の決まり方 主観的厚生の経済学
小塩 隆士
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 264,237

一般向けでもちゃんとしていて偉い。経済学だと『ひたすら読むエコノミクス』が超入門だけどキーワードの説明とかすごくわかりやすくて感心しました。

大学での学習・研究の基礎体力をつけよう

(もうすぐ出る某新入生向けテキストの1章。字数の問題でコンピューター・ネット関係削られてしまいました。)

大学は、人類が築きあげてきた学問の成果を学ぶとともに、社会や生活を改善するための知的な活動の方法を学ぶ場所です。ここではまず大学での学習のための心がまえと各種の基本的な知識について確認します。

大学生活の目的と心がまえ

皆さんは、企業に就職する、大学院に進学し学問的真理を追求する、社会に貢献する仕事をする、あるいは企業する、政治家になるなど、それぞれ様々な目標をもって入学してきたと思います。高校までは大学入学試験を通過するために画一的な教科を学ぶことが中心だったでしょう。しかし大学は違います。大学では、お仕着せの教科から進んで、社会学、政治学、経済学といった各種の本格的な学問を学ぶと同時に、社会人として、市民として本格的な知的な活動する訓練をおこないます。

「大人」になるとは、なにより、他人にまかせずに自分で的確に判断できるようになるということです。日本の法律では、二十歳を越えれば誰でも、大金のかかった契約や結婚などを、すべて自分の判断でおこなうことができる大人になります。また、近代社会における民主主義は、そうした啓蒙によって、つまり教育と学習によって、自分で判断し行動できるようになった「市民」が、さまざまな意見を寄せあい批判しあい議論するなかで立法・行政活動がおこなわれることを前提としています。

「大人」や「市民」になるためには、もちろんこれから大学で学ぶような幅広く深い知識を身につけることが重要なのですが、実は、大学で学ぶ知識そのものよりは、むしろこれから一生を通じて自発的に学習し行動する能力を高めることの方がはるかに重要です。高校までは勉強の目的は、とにかく試験問題に正しく答えることだったかもしれません。しかし、今後あなたが大人として、市民として答を出さなければならない問題に「正しい」答があるかどうかはわかりません。あなたがどういう人生を選択するかという問題を正誤問題にして採点してくれる人はいません。また、原発を再稼働するべきかどうか、人種差別的発言を法的に規制すべきかといった現在議論されている社会問題をマークシート問題にしてくれる人もいないのです。

たった4年間の大学生活で学べる知識はたかが知れています。また、大学で学んだ知識の少なからぬ部分は、学んだ時点では最新のものであったとしても、10年、20年経つうちには、たちまち古い知識、役に立たない知識、場合によってはまちがった知識になってしまいます。重要なのは知識そのものというよりは、正しく信頼できる知識を求め続け発展していく「学問」(科学)という営みの基本的な態度と、新しい知識を収集し整理し活用する力、そうした知識を常にアップデートしつづける力、そして自発的に学びつづけようとする習慣です。

実際のところ、大学卒業後に社会人がおこなう知的活動は、企業活動であれ、市民活動であれ、個人的・家庭的活動であれ、大学で行うこととまった同じ構造になっているのです。ある目標を定め、レクチャーを受け、アイディアを練り、データや資料を集め信頼性を検討し、計画や企画書を作り、会合で自分のアイディアをプレゼン(提示)し、仲間や論敵と話しあってアイディアや計画を改善し、決断し計画を実行し、その結果を評価し、次の活動につなげます。現在企業が求めている人材も、まさにそうした能力をもっている人々です。企業への就職活動で、あなたはまず自分の責任で企業の資料を収集し就職活動の見込みのある計画を立てねばなりません。課せられる「面接」はあなた自身のプレゼンの場所であり、「グループディスカッション」は、あなたが積極的に他の人と議論をして全体に貢献できるかどうかを判断するためのものです。

こうしたさまざまな活動のための知的な訓練は、おそらく自発的なものでなければ効果がありません。知的な活動の能力は、自分で考えて考え、自分で選択してみることによってしか身につけることができないのです。

まずは大学ガイドブックから

そこでまず心がけてほしいのは、常に自発的に情報を探しつづける習慣をつけることです。世の中にはさまざまな情報があり、よい情報を入手することができればそれだけうまく活動しうまく生きることができるようになります。

私が大学入学の時点で読む習慣をつけることをお勧めしたいのは、実践的なガイドブックです。

なにをするにもうまい方法があり、そのためのガイドがあります。ガイド情報へのガイドもあります。地図をもたずに登山すれば運が悪ければ遭難するでしょう。健康と美容のためにダイエットしたいと考えたときに、いきなり1ヶ月で5キロ痩せようと思いつきで決め、食事を抜けば痩せるはずだ、と考えて無理なダイエットを実行しても必ず失敗し、一見成功したように見えてもすぐにリバウンドするでしょう。しかし最新のダイエットのガイドブックを見れば、無理のない適正な体重を目指した計画を立て、食事と体重の記録をつけ、筋肉をつけるエクササイズをするべきであること、その実現のための詳しいノウハウやティプス 1)「ティプス」tipsは「ちょっとしたコツ、秘訣」です。 を知ることができます。

同じように、大学に入学はしたもののなにをしたらいいかわからない、時間割の組み方がわからない、勉強の仕方がわからないといった壁にぶつかったときには、とりあえず数冊ガイドブックを読んでみればよいのです。サークル活動や人間関係で悩んだときも、就職活動をはじめるときも、まずはガイドブックで基本的な考え方をおさえてから活動すれば苦労が減ります。もちろんガイドブックを読んでその通りに行動しても自動的にうまくいくことはありませんが、本当に自分で考えるための参考にはなります。

最近は、大学での勉強法についてのよいガイドが数多く出版されています。そのほとんどが、講義の聞き方、ノートの取り方、レポートの書き方、図書館の使い方、よいプレゼンテーションの方法など、大学生活に必要なことを事細かに説明してくれています。ガイドブックを読むコツは、同じ種類のものを複数冊目を通すことです。1冊だけだと、もしかしたらその本は偏った本かもしれませんし、オリジナルすぎる考え方をしているかもしれません。3冊程度目を通せば、おそらくどの本でもだいたい同じようなことが強調されているでしょう。それはおそらくその分野についての非常に基本的な知識です。そこを押えれば、あとは必要ならば気にいったものを購入し、自分の新しいアイディアで試行錯誤すればよいでしょう。

具体的に推薦できる書籍を章末のブックガイドにあげておきました。こうした本は大学図書館に数多く収録されていますので、早めに目を通しておくのがよいでしょう。インターネットにも多数のガイドがあります。特に「名古屋大学新入生のためのスタディティプス」(http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/stips/)は定評がありますので一見の価値があります 2)同じ名古屋大学の「成長するティプス先生」(http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/tips/)は大学教員のためのティプスですが、学生とは逆の教員の側から大学を見てみるのも興味深いでしょう。

この文章を読んでいる人が、そうした本を自発的に手にとってくれれば、実はこの文章の目的は完了しています。以下はポイントだけを述べておくことにします。

大学教員という人々

ここで、大学教員という人々について簡単に説明しておきます。大学教員は大学における教育者であり「先生」です。しかし多くの大学教員はむしろ、その専門分野の「研究者」「学者」を自認しています。専門分野の研究者・学者として、大学教員は、より新しい知識、より信頼できる知識、より優れた意見を生産することが求められています。大学教員は各専門分野の研究のプロフェッショナルですが、中学・高校の先生たちとは異なり、実はほとんどの教員は、専門的な「教育」の訓練は受けていません 3)もちろん最近ではFD(ファカルティ・デベロップメント)として大学教育の改善のための取り組みがおこなわれ、多くの教員がとりくんでいます。 。また、高校の教師は教育委員会や先輩教師から授業内容や指導法などを細かく指導されているでしょうが、大学教員は基本的にはすべて自分の責任で、授業内容から授業方法、成績評価をとりしきります。したがって、同じような科目名の授業でも、内容は担当する教員によって千差万別になります。

高校の授業で学んだことは、多くの人々によって承認された基本的な知識でした。大学ではもっと新鮮な知見、現在発見されつつある知見、あるいは新しい問題に対する検討や解決策を紹介し、授業のなかで検討することが期待されています。学生に教えるべきことが定まっていた高校とは違い、大学の講義内容は原則的にその教員に完全に任されており、必然的にその教員の専門的な研究と研究上の立場を反映したものになります。「○○学入門」のような科目名の授業でも、教員は常に新しい知見を取り入れ紹介していきます。大学教員は、授業をおこないながら同時に自分の最新の研究をおこなっているのであり、授業のなかで新しい知見を検討し試行錯誤しながら、自分の研究を磨いているのだと理解してください。

そうした新しい知識や見解は日々更新されるものであり、また常に批判され議論されているものでもあります。A教員が賞賛していた見解をB教員が否定する、C教員がけなしていた本をD教員が推薦する、ということを見ることもあるかもしれません。これは当然のことなのです。大学の教員はまずはその分野の「研究者」であり、現在の最新の研究成果にもとづいて意見を戦わせて、可能なかぎり真理に近いものや信頼できる意見を探しもとめています。高校生の勉強はすでにできあがった知識の体系を学ぶこと(そしてその達成度を大学入学試験などでテストすること)を目標にしていたわけですが、大学生になるということは、そうした知識と学問が刷新され磨きあげられていく場に居合せ、いっしょに研究することだと考えてください。したがって、大学教員の言うことをすべて正しいと考える必要はありません。むしろ批判的にいっしょに考えるという態度をもってほしい、一方的に学ぶだけの「生徒」から、若い「研究仲間」に成長してほしいと教員は願っています。

講義の聞き方

大学では、講義形式の大人数授業も数多く受けることになります。講義は教員のレクチャーを通して、本を読むだけでは知ることのできない知識を獲得することができます。生身のトークによるレクチャーは、本を読むよりもインパクトがあり記憶に残りやすいものです。また、意外な豆知識、裏話、教員自身の考え方などを知ることができるのも魅力です。

また、講義では知識を吸収するだけでなく、各分野の研究者としての教員を観察してください。教員の上手でわかりやすいプレゼンテーション(プレゼン)のコツ、教材(レジュメ)の作り方、発音・抑揚・間の取り方などの話し方、力点の置き方、教壇での姿勢、板書する姿勢等を観察しておけば、いずれ自分がゼミなどでプレゼンするときの参考になるでしょう。

講義で聞いた知らない単語、理解できない専門用語などを放っておかないようにしてください。もしわからない言葉があったら、辞書をひく、教科書(テキスト)をチェックしなおす、各種の事典などを参照するなど工夫して、理解できないことをそのままにしない、という癖をつけてください。

授業中の約束事

ごくあたりまえのことですが、授業には約束事があります。常識で考えればいちいち列挙する必要はないでしょうが、あえていくつか挙げておきます。

  • どの授業でも、私語は厳禁です。私語は他の人の集中を妨害します。遅刻・途中退席も原則的に禁止です。一部には、講義をしている人が、テレビのなかで話をして自分たちの行動とまったく関係のないかのように行動する人がいますが、そうしたことは許されません。
  • トイレや体調不良のときは教員に軽く会釈するなど、それらしき合図して退席してください。再度入ってくるときも邪魔にならぬように。
  • 授業中の飲み物については、いまだに意見が分かれていますので、教員に個別にOKかどうか確認してください。ガムなどで口をもぐもぐ動かすのはみっともないのでやめましょう。机につっぷしての居眠りなども子どもっぽく醜いものです。
  • スマートフォンなどは授業中にも辞書やメモ等に使えて便利なことがありますし、積極的に使用を促す授業もあるようですが、気が散ることを気にする教員が大半です。特に許可のないかぎり、基本的には電源を切りカバンに入れてください。
  • イヤホンで音楽聞く、雑誌や旅行パンフを読むなどはもってのほかです。雑誌を読み音楽を聞くなら、教室よりももっとよい場所があるでしょう。
  • 一番の基本的なことは、自分を透明人間だと思わないことです。人数の多いに授業に出席していると、つい自分は誰にも気にされない透明人間だと思いこんでしまいます。しかし、どんな場所でもあなたの行動や表情は他の人に見え、影響を与えていることを意識してください。

メモとノート

メモやノートをとることは知的活動の一番の基本技術です。基本的に将来のための職業訓練だと思ってください。人間の記憶力などというものはまったく信頼できないものです。研究者であれ、ビジネスパーソンであれ、ジャーナリストであれ、秘密探偵であれ、なにをするにしてもメモをとる癖がついていなければなにもできません。

しかし実際には、メモの取り方・ノートの取り方といったことはあまりにもその人の知的活動の核心部分に近く、プライベートなものでもあるため、実際に書いたものを見せてもらうことは少ないものです。職業上の秘密、秘訣に近いものなので、赤の他人には簡単には教えられないのです。私自身、他の研究者がどういった研究ノート・アイディアメモをとっているかを見たことはありませんし、見せたこともありません。またその手法も非常に多様で、このやり方が一番だ、と言えるものがあるのかどうかもわかりません。知的活動をおこなっている人々は、常によいメモの方法を探索しているといってよいと思われます。

とりあえず言えることは、講義にかぎらず、ノート・メモをとる目標は、話の基本的な組立を再現できるようにすることだ、ということです。大学教員は高校までのように学生がノートを取りやすいように板書してくれたりすることはありません。多くの教員にとって黒板はただのメモ帳です。現在話していることのキーワードを殴り書きするだけの教員も少なくないでしょう。あまりほめられたことではないでしょうが、教員が黒板に書いたことよりも、黒板に書くことを忘れて夢中になって話している内容の方が重要なこともしばしばです。こうしたタイプの講義で、板書されたキーワードだけをノートに写してもなんの意味もありません。また、大学以降の社会で話を聞くことになる人々は、必ずしも話をしなれた人ばかりではありません。要点がわかりにくい話のなかから要点や事実を探しだすことが必要になることも多いものです。そうした場合には、なにが「重要な点」であるかということは自分で判断するしかありません。

したがって、知的訓練として、できるかぎり教員の説明を自分で文章にしてノートにする習慣をつけるべきです。また、板書せずに口頭で説明されたこともできるかぎりノートしてください。余裕があれば、特に重要だと思われることや疑問も簡単でいいのでメモしておきましょう。また、話の内容をコンパクトにまとめた文章を作ってみてください。こうした地道な自発的学習のつみかさねが知的な能力の向上につながります。

典型的なノートの取り方の詳しい手ほどきは、ブックガイドにあげた書籍を参照してください。とにかく最初は「なんでも書きつける」という態度で1時間集中して書いてみればよいでしょう。思考錯誤して自分なりの方法を見つけてください。この章のブックガイドにあげている書籍でもノートの取り方をそれぞれの方法で説明しています。さまざまな流儀があることがわかるでしょう。

またペンやノートの文具は基本的な装備なので書きやすいものを探してこだわりましょう。

ゼミ・少人数授業では積極的に発言する

少人数授業や「ゼミ」こそが、大学教育の核です。自分で調べ、考え、プレゼンし、議論することを学ぶには、やはり少人数の方が効果的です。

一番大事なのはなんらかのしかたで「みんなと協力する」という態度です。積極的に発言しましょう。教員や他の受講者の言うことがわからなかったら、すぐに疑問をぶつけ、また話題を提供しましょう。若いうちは人前で話すことがはずかしいと思ったり、「私がだめだからよくわからないのだ」「私のアイディアや疑問なんか価値がない」と思ってしまって黙りこんでしまったりすることがありますが、そうした思いを捨ててしまいましょう。実社会でのミーティングや会合では、単にその場にいて話を聞くだけでなく、アイディアを出し、疑問を明らかにして、その場にいる全員がなにかをしっかり理解すること、新しいアイディアや知識を身につけること、協力してなにかを発見することが期待されているのです。単に誰かの話を聞いてその通りに行動するだけなら、少人数での会議やミーティングの必要はないのです。アイディアや疑問を共有することこそが学問や共同作業の中心部分であり、ゼミや少人数授業はその技術を学ぶ最善の機会なのです。ポイントを簡単にあげておきます。

    • 必ずなにか発言することを心がけること。なにも発言しないということは、その会合のテーマや、その場にいる人びとに対して関心がないということを意味してしまいます。
    • 人の話を聞く態度や話をする態度や姿勢は非常に重要です。他の人が話しているときはその人の表情や口調、姿勢、その他に注目し観察すること。
    • 自分は内容がよくわかったので質問すべきことがないと思ったときでも、「質問はないです」ではなく「〜ということですね」と確認する。意外に自分が理解したと思っていたことは正確でなかったり、重要なポイントが違ったりするものです。

「本」には気をつけよう

いつの時代も、信頼できる情報を与えてくれるのは書籍・論文です。図書館にも書店にも書籍は大量にあります。しかしすべてがよい本であるとは限りません。なかには、政治的に極端な意見や、明らかにまちがった「科学」情報をどうどうと掲載している本や雑誌もあり、政治や人々の健康などに与える影響が懸念されています。また、ゼミなどで課題を出すと、時々いわゆる「トンデモ本」を参考にしてレポートを書いてしまう人がいます。そうした学生さんに、「その情報はどこから手に入れたの?」と聞くと「本に載っていた」という答えをよく耳にします。本はたしかに知識を与えてくれますが、本もさまざまでああって本として書店で売られているからいるからといって信用できるというわけではありません。

まず、その「本」は誰が書いたものかを常に意識してください。文章は必ず誰かが書いたものです。その「誰か」が信用できる人なのかどうかを確かめながら読まなければなりません。そのために役に立つのが、本の奥付(最終ページ)にある筆者の経歴や業績です。なにが専門分野なのかどんな学歴や職歴なのかを確認してください。たとえば、経歴や職業が医学や保健学となにも関係がない人が書いたダイエット本は、単なる筆者の個人的な経験にもとづいたものでしかない場合があります。そうしたダイエット法は、むしろ不合理で危険なものかもしれません。この『現代社会を読み解く』に掲載されている論文の参考文献を読んでもわかるように、学術的な書籍・論文に付けられる必ず筆者が先頭に表示されます。これは学問の世界では「誰の意見か、誰のデータか」ということが最も重要な情報だからです。先の「その情報はどこから?」という質問に対して教員としては、「○○学者の××が書いた『〜』という本を読んだ」と答えてほしいわけです。そしてその筆者が人びとからどんな評価を受けているのかも意識してほしい。

出版社にも注意してください。当然のことながら、しっかりした出版社はしっかりした本を出す傾向があり 4)世間的に有名でない出版社の本の質が低いということではありません。 、しっかりしたシリーズはしっかりしたシリーズ編集をおこなっていてしっかりした本が収録されている傾向があります  5)私見では、たとえば新書ならば中公新書は非常に高い評価を得ています。また岩波ジュニア新書は非常に良質でどれも読む価値があります。ただしこうした評価も年とともに変わりますし、先に述べたように書籍やシリーズや評価について研究者の意見が食い違うことは多々あります。 。また、一般向け雑誌や学術雑誌にも格付けが存在しています。学問の世界では、一流の学会が発行している雑誌に掲載されている論文は、「査読」という批判的な目にさらされ評価されたものなので、最も信頼がおけるとされています。こうした出版社や雑誌に関する知識は一度には身につきません。どの出版社がしっかりした出版社であるか、といったことは常に情報を集めつづけなければわかりません。

また出版年にも注意してください。新しければよいというわけではありませんが、学術的な情報は常に刷新されているので、たいていの学問領域では20年前の書籍・論文は20年前の時点での知識や意見として受けとめねばなりません。

脚注や後注、書籍の後ろにある参考文献リストや索引がしっかりしている本は内容もしっかりしていることが多いもので、一応の目安になります。

一番簡単なのは、専門の教員に推薦や評価を求めることでしょう。大学教員は研究のプロですので、自分の専門分野について勧める本は基本的に信頼してかまいません。どの本がよい本であるかということは、大学教員たちの一番の関心事であり、専門分野については常に情報交換し評価づけをおこなっています。また、オンライン書店や書評サイトの記事は玉石混交ですが、参考にはなります 6)しかしたとえばAmazonブックストアでぜんぶ最高評価、という本は私ならばあまりに評価が高すぎて関係者や「信者」による「自作自演」を疑います。

図書館を利用しよう

教員と学生にとって、大学施設で最も重要なのは図書館です。大学生と高校生との一番大きな違いは、なんといっても自由な空き時間があることでしょう。読まねばならない本、読みたい本やDVDを自分で購入するのはたいへんな負担ですので、ぜひ図書館を有効に利用してください。学生生活のはじめのうちに、場所を確認し、書架や雑誌室をひとまわりして、どこにどんな本があるかざっと見ておくとよいでしょう。

大学図書館には高校とは比べものにならない大量の本が収蔵されており、その大半は直接本を眺めることのできない閉架書架や学外書庫に納められています。そのため、実際にはOPAC(オンライン蔵書検索)等で検索して利用することになります。使い方は大学の「利用の手引き」等で確認してください。章末の図書ガイドでも図書館の利用方法について詳しい説明が掲載されています。

大学図書館は視聴覚資料も充実しています。また、府立図書館や市立図書館など公共図書館の場所もチェックしておきましょう。一般向けの軽い小説、一般生活のハウツー本などはそうした図書館の方が充実しています。また大学図書館も公共図書館も、「購入希望」「リクエスト」等を受けつけています。あなたが他の人にも有益であろうと判断した本については、積極的にそうした要望を提出してください 7)もちろんその図書館にふさわしい書籍でなければなりません。

また、必要な図書を探すために図書館カウンターの「リファレンスサービス」を利用することもできます。ある程度自分で調べてわからないことがあったり、どうすれば情報を見つけることができるか見当がつかなかった場合には、専門家が本探しを手伝ってくれたり、探し方をアドバイスしてくれるはずです。教員もしばしばお世話になっていますので利用してください。しかしなにも調べずに相談するのは避けてください。まず図書館の「利用の手引き」を熟読して、何を探したいのか、自分はどこまで調べたのかなど、しっかり質問すべきことを考えてからから訪問しましょう。

また、図書館の各種のルールは守ってください。基本的に講義と同様に私語は厳禁です。

インターネットの利用

メールの書き方

大学生になると、メールを送る相手は親しい友人だけではなくなります ので、マナーに注意してください。特に携帯電話・スマートフォンからのメールは失礼になりやすいものなので注意してください。携帯などではメール相手の友人をアドレス帳に登録しているために相手が誰かすぐにわかりますが、友人以外はあなたが誰だかわからないことがほとんどです。基本的に友人以外には携帯・スマホでのメール連絡は避けた方が無難です。

細かいマナーについては、現在、「メールの書き方」等でサーチエンジンで検索すれば適切なマナーや例文が上位に表示されているようですので参照してください。大学教員に対するメールでは、(1)自分の氏名を正しく設定する、(2)必ず「件名」をつける、(3)学部・学籍番号等を明示する、等に注意してください。

検索エンジン・Wikipedia

Google検索 (http://www.google.co.jp/)などの検索エンジンは便利なもので、多くの人が使っているでしょう。Google Scholar (http://scholar.google.com)はネットに大量にある情報のなかから、論文などアカデミックな形になったものだけを収集したものでGoogle本体より効率よく学術情報を探すことができます。日本国内の論文についてはCiNii Articles (http://ci.nii.ac.jp/)も使いやすいでしょう。

Google等の検索エンジンで検索した場合に、上位に表示されるのは一般に、人々が好んで見ているページであるとされています。その表示順番の決定の方法は、一般には明らかにされていません。また、そのページが本当に正しい情報を含んでいるのか、学問的・政治的に見て偏りがないものか、ということはまったく保証されていないことは常に意識してください。まずは書籍と同じように、誰が書いた文章なのかを意識することが最も重要です。匿名の筆者による情報、詳細がわからない企業による情報などは、基本的に信頼することができません。

Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/)もすでにほとんどの人が利用していることと思います。私自身も非常に頻繁に利用します。ただし記事の品質はさまざまですし、誤情報も少なくないので注意してください。くりかえしますが、情報の質を判断する一つの基準は、その出典(ソース)がしっかりしたものかどうかを確認することです。出典のない記事 8)Wikipediaでは出典がない記事は「独自研究」として批判されます。 は信用することができませんし、出典がついていた場合にも、その出典自体がどの程度信頼できるものかを考える必要があります。

ネットでの情報の信頼性をどう扱うかということは、現代の我々に課せられた大きな課題です。デマや誤情報、偏った意見などに惑わされることなく、情報を批判的に吟味することを学んでください。

SNS、ウェブサービス

他に、ネットではさまざま便利なサービスが提供されています。現代の大学生はそうしたサービスを効果的に利用することも意識しておかねばならないでしょう。私自身が頻繁に利用しているものを簡単に紹介してみましょう。

2014年現在、私はMediaMarkerという蔵書管理サービスを使っています 9)「ブクログ」や「読書メーター」といった類似のサービスも多くあります。 。これはオンライン書店のAmazonの情報を登録し、感想コメントや読書メモなどを記録しておくことができるサービスです。他の人々のコメントを参考にすることもできますし、同じような本を読んでいる人を「フォロー」すれば、近い関心をもっている人がどんな本をどう読んでいるかがわかり興味深いものです。興味をもった本は「ウィッシュリスト」に登録しておいて、あとで図書館に蔵書があるか探したり、まとめて発注したりしてします。もちろんAmazon自体も書籍の検索や評価を知るために頻繁に利用しています。

近い分野の研究者、ブログではおもしろい時事評論を書く人、優れた書評記事を書く人々などのブログ、ウェブニュースサイトなども研究の参考になることが多いもので、50〜100件程度、RSSリーダー(Feedly)を使って巡回しています。

各種のメモや思い付き、参考になるウェブサイトの記事の保存などは、Evernoteというサービスを利用しています。また大学と自宅のPCのファイルを同一のものにするためには、DropboxGoogleドライブというサービスを利用しています。

TwitterやFacebookなどの SNSでも近い分野の研究者どうしでフォローしあい、研究に必要な文献の情報やテキストの解釈などをカジュアルに議論することも少なくありません。独り言をつぶやき、日常的な些事について話しあうのも楽しいものです。しかし、SNSなどで発言することは、自分のプライバシーを公開することにつながります。また反社会的な言動などがネットで話題にされ「炎上」することも少なくありません。仲間うちでのネットでのいじめも社会的な問題になっています。ネットは便利であると同時にさまざまな危険もあります 10)江口聡 (2010)「ウェブ炎上・匿名・プライバシー」(加茂直樹・初瀬龍平・南野佳代・西尾久美子編,『現代社会研究入門』、晃洋書房)を参照してください。  。

こうしたネットやPCについての情報や知識、ノウハウもすぐに古いものになるものですから、自分の使う道具やサービスについての情報は常に集め判断し工夫しつづけなければならいわけです。

おわりに

これまで書いてきたような「お説教」のほとんどは、大学に入学したてのときはありがちなお説教として聞き、強制的に読まされても実は身につくものではないでしょう。結局私たちは、自分がなりたいものにしかなることができないのです。大学での勉強や研究も、もしあなたがそれを望まなければなんの役にも立たないでしょう。

しかしもしあなたが自発的になにかをし、何者かになろうとしているならば、大学が提供できることはたくさんあります。あなたによって有意義であると思われる4年間を過ごせるように、常に情報にアンテナをはり、試行錯誤を繰り返してくれることを願っています。

ブックガイド

    • A. W. コーンハウザー (1995) 『大学で勉強する方法』、玉川大学出版部。アメリカの大学向けですが、大学生の心がまえの本として定評があります。薄くて読みやすい。
    • 筒井美紀 (2014) 『大学選びより100倍大切なこと』、ジャマンパシニスト社。これも大学生のこころがまえについての本です。高校での勉強はプールで泳ぐようなものであり、大学からは海で泳ぐようなものです。
    • 佐藤望(編)(2012)『アカデミック・スキルズ』、第2版、慶應義塾大学出版会。ノートの取り方、レポートの書き方、図書館での調査などがコンパクトにまとめられています。
    • 学習技術研究会 (2011) 『知へのステップ』、第3版、くろしお出版。内容は上の『アカデミック・スキルズ』と同様ですが、ノートの取り方等はより詳しく説明されていて参考になるでしょう。
    • 田中共子(編)(2010) 『よくわかる学びの技法』、第2版、ミネルヴァ書房。これも事細かにノート、図書館、ネットでの調査などを解説しています。

References[ + ]

1. 「ティプス」tipsは「ちょっとしたコツ、秘訣」です。
2. 同じ名古屋大学の「成長するティプス先生」(http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/tips/)は大学教員のためのティプスですが、学生とは逆の教員の側から大学を見てみるのも興味深いでしょう。
3. もちろん最近ではFD(ファカルティ・デベロップメント)として大学教育の改善のための取り組みがおこなわれ、多くの教員がとりくんでいます。
4. 世間的に有名でない出版社の本の質が低いということではありません。
5. 私見では、たとえば新書ならば中公新書は非常に高い評価を得ています。また岩波ジュニア新書は非常に良質でどれも読む価値があります。ただしこうした評価も年とともに変わりますし、先に述べたように書籍やシリーズや評価について研究者の意見が食い違うことは多々あります。
6. しかしたとえばAmazonブックストアでぜんぶ最高評価、という本は私ならばあまりに評価が高すぎて関係者や「信者」による「自作自演」を疑います。
7. もちろんその図書館にふさわしい書籍でなければなりません。
8. Wikipediaでは出典がない記事は「独自研究」として批判されます。
9. 「ブクログ」や「読書メーター」といった類似のサービスも多くあります。
10. 江口聡 (2010)「ウェブ炎上・匿名・プライバシー」(加茂直樹・初瀬龍平・南野佳代・西尾久美子編,『現代社会研究入門』、晃洋書房)を参照してください。

「愛と性の西洋思想史」読書案内

最初にブラックバーン先生の『哲人たちはいかにして色欲と闘ってきたのか』読むとよいと思う。

古代ギリシア・ローマ

サッフォーの恋愛詩は岩波文庫の呉茂一訳『ギリシア・ローマ抒情詩選』にはいってます。

プラトンは『饗宴』だけでなく『パイドロス』も読みましょう。どちらも岩波文庫にあります。

アリストテレスの『ニコマコス倫理学』は京都大学出版会の朴先生の訳で読んだ方がよい。ちょっとむずかしい。

ディオゲネス・ラエルティオスの『哲学者列伝』は古代ギリシアの哲学者たちの言動の記録、ゴシップも多くて楽しめる。哲学者たちの性生活もかいま見える。とくに享楽的な生活を送っていたとされるアリスティッポスに注意。

オウィディウスの『アルス・アマトリア』はぜひ読みましょう。いくつか邦訳がありますが、とりあえず岩波文庫の沓掛先生の『恋愛指南』で。古代ローマ人たちの愛欲生活は木村凌二先生の『愛欲のローマ史』がおもしろい。アルベルト・アンジェラっていう先生の『古代ローマ人の愛と性』もよい。

アウグスティヌスの『神の国』で、神様「知恵の木の実を食べてはならん」って言ってんのにアダムとイブが食べちゃったせいで、セックスについて知り性欲に悩まされてつ生殖するようになったのだ、みたいな話がある。『告白』もおもしろいので読みたい。最初の告白文学。「性欲に困った僕は、神様に「性欲をなくしてください」とお願いしたんですが、「でもいますぐじゃなくて」ってつけ足しちゃいました」みたいな。ははは。

(告白文学というくくりはおもしろくて、ピコ・デラミランデラの『告白』、ルソーの『告白』、トルストイの『懺悔』も読みたい。)

中世

中世はよくわからない。カペルラーヌスの『宮廷風恋愛の技法』ぐらい。

トリスタンとイゾルデ神話については、ドニ・ド・ルージュモンの『愛について』が名著とされているけどどうなのか。

哲学者のアベラールとその愛人エロイーズの話が中世的な熱烈な恋愛の話として有名なんですが、これってどうなんかな、みたいな。岩波文庫の『アベラールとエロイーズ 愛の往復書簡』読んでみてください。私はアベラール先生はだめな奴だと思うです。

近世

モンテーニュの『エセー』の第3巻第5章の恋愛・セックス論「ウェルギリウスの詩句について」は岩波文庫の5巻本のやつか、最近出た白水社の宮下志郎先生の訳でないと読めません。腐女子傾向のある人は第1巻28章『友情について』も読みましょう。

哲学でも思想でもなんでもないけど『サミュエル・ピープスの日記』おもしろいので読みましょう。ニュートン先生ともつきあいのあった公務員の性的生活。でもいきなりは読めないので、とりあえず臼田先生の『ピープス氏の秘められた日記』(岩波新書)で。

ルソーは『エミール』『告白』。『新エロイーズ』は入手困難。

カントの女性論・男性論は『人間学』にあります。『倫理学講義』(『コリンズ道徳哲学』)には性的関係についての考察が含まれています。婚外交渉や売買春だけでなくマスターベーションもたいへんな悪徳らしいです。

「サドマゾ」の語源のマルキ・ド・サド。『悪徳の栄え』など。岩波文庫に『美徳の不幸』入ってますが、エッチというよりは哲学的です。カントあたりの哲学とすごく関係があるんですわね。

ウルストンクラフトの『女性の権利の擁護』は女子教育運動や女性解放運動の原点ですので必ず読みましょう。

スタンダールの『恋愛論』は読みにくいですが、非常に有名なので「結晶作用」のところだけは読みましょう。

キェルケゴールの『あれか/これか』。「誘惑者の日記」だけでまあいいでしょう。ドンファン論とかもおもしろいんですけどね。一般読者がキェルケゴールを読むのは無理でです。

エンゲルの『家族、私有財産、国家の起源』はそれ以降の女性解放運動などにも影響を与えています。ただし中身の歴史的事実に関する話はほとんどぜんぶ間違いということになっています。

20世紀になると

フロイトの『性欲論』とラッセルの『結婚論』は影響力があったのでぜひ読みましょう。

古典小説

ラファイエット夫人『クレーブの奥方』。ラクロ『危険な関係』。ゲーテ『若きウェルテルの悩み』、スタンダール『赤と黒』『感情教育』、ジェーン・オースティン『高慢と偏見』、トルストイ『アンナ・カレーニナ』、シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』、エミリー・ブロンテ『嵐が丘』、D.H.ロレンス『チャタレー夫人の恋人』。

こうした小説の案内は木原武一『恋愛小説を愉しむ』(PHP新書)など。

社会心理学、進化心理学

最近の心理学研究は、とりあえず麻生一枝『科学でわかる男と女の心と脳』と金政他『史上最強図解 よくわかる恋愛心理学』あたり。斉藤勇先生とかもたくさん出してますが、ちょっと古いし一般向けすぎます。松井豊『恋ごころの科学』は立派な本でしたが、もう20年前なので情報が古いです。

進化心理学ではデヴィッド・バスがとにかく大物です。『女と男のだましあい』『一度なら許してしまう女 一度でも許せない男』は重複するネタが多いですが必読。ミラーの『恋人選びの心』あたりまでいけばだいたい恋愛とかそういうのについて進化心理学がどういうことを考えているのかがわかる。