セックスの哲学」カテゴリーアーカイブ

セックス経済論 (7) セックスに対する態度の性差、特にポルノと売買春

  • Baumeister, R. F., & Vohs, K. D. (2004). Sexual Economics: Sex as Female Resource for Social Exchange in Heterosexual Interactions: Personality and Social Psychology Review, 8(4), 339–363.

セックスに対する態度の性差

セックスを商品とした男女の交易、っていう観点からすると、男女の間にはセックスに対する態度の差があるはずだ。まあこれもほとんど自明というか常識なわけですが、バウ先生たちはあれやこれや態度の差をあげていきます。セックスの値段が安いと男性が得、高くなると女性が得なので、それぞれそういう態度をとっているだろう、っていうのが理論からの予測になります。んでそういう証拠はたくさんある。

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セックス経済論 (6) 性暴力/男性不足

  • Baumeister, R. F., & Vohs, K. D. (2004). Sexual Economics: Sex as Female Resource for Social Exchange in Heterosexual Interactions: Personality and Social Psychology Review: An Official Journal of the Society for Personality and Social Psychology, Inc, 8(4), 339–363.

性暴力

セックス経済論だと、セックスは財である、って考えかたなので、レイプとか痴漢とかっていうのは強盗やスリに似た犯罪ってことになってしまい、これはおそらく被害者の被害感情とかにそぐわないので不快に思う人はいると思いますね。

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セックス経済論 (5) 結婚と交際

  • Baumeister, R. F., & Vohs, K. D. (2004). Sexual Economics: Sex as Female Resource for Social Exchange in Heterosexual Interactions: Personality and Social Psychology Review: An Official Journal of the Society for Personality and Social Psychology, Inc, 8(4), 339–363.

売買春以外のお金とセックスのやりとり

もちろん売買春以外にも男女のあいだでお金とセックスのやりとりは(偽装された形で)頻繁におこなわれている。そしてここは以前の「男らしさと支配」のシリーズであつかったところそのまんまですね。

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セックス経済論 (4) 証拠とされるものを見てみよう、まず売買春

  • Baumeister, R. F., & Vohs, K. D. (2004). Sexual Economics: Sex as Female Resource for Social Exchange in Heterosexual Interactions: Personality and Social Psychology Review: An Official Journal of the Society for Personality and Social Psychology, Inc, 8(4), 339–363.

というわけで、バウマイスター&ヴォース(フォースかも)先生たちのセックス経済理論は、女はセックスという資源を売り男がそれを買う、ていうだけのごく単純な理論なんですが、こういう「理論」っていうののおもしろさっていうのは、(少なくとも素人には)その理論が「ほう、そうですかー!」とかってもんじゃないんですよね。むしろ、どういう統計や実験的事実や観察を自分たちの理論を裏づける証拠としてもちだしているかとか、どういうふうにして他の理論をやっつけに行ってるかとか、そういうのがおもしろい。あと、理論に一見合致してないように見える事実をどう説明するかとか、その理論から予測を立てて、どういう実験や調査をやればいいだろう、みたいなのも興味深い。

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セックス経済論 (3) しかし値段は簡単には決まらない

モノやサービスの値段というのはどうやって決まるかというと、高校でも習う需要と供給のバランスによる。漠然とした話ではありますが、供給が少なく需要が多い(強い)と値段は上がるし、その逆だと値段が下がる。

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セックス経済論 (1)「男性による女性の支配」とは別の考え方はどうだろう

このブログ、ここ最近「文化のセクシャル化/セクシー化」の話と、「男らしさと支配」の話を平行してつぶやいてるのですが(もうブログもツイッタも同じようなもの)、「男性が女性を支配しているのだ」っていう信念は非常に一般的ですが、他の考え方ないっすかね。私どうもこの「支配」ってやつ信じられなくて。

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男らしさへの旅 (6) 「吹きあがる男性を冷却」は気になるが、男は黙って話を聞くべきだ

(前からのつづき)というわけで、だいたい男性学がどういうのので、どういうふうであるべきと考えられているのかっていうのはそこそこ納得はしているのですが、気になるところもあるんですよね。次のは澁谷知美先生の文章(澁谷知美 (2019)「ここが信頼できない日本の男性学」、『国際ジェンダー学会誌』第17号)。

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男らしさへの旅 (5)「支配のコスト」

「支配」のコスト

まあというわけで、私は実は「男性が女性を支配しているのだ!女性は支配されているのだ!」っていうのをかなり疑問に思っていて、とりあえずそれは、「現代社会においては職業や社会的地位において男性の方が有利な場面がけっこうある」ぐらいの話だと理解させてもらいます。

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性的モノ化とセクシー化 (9) セクシー化/セクシャル化/自己モノ化への対抗手段

セクシャル化への対抗手段

というわけで、APA 女子のセクシー化タスクフォースの報告書ですが、とにかくメディアの女子のモノ化と、その影響による女子の自己モノ化には心理学的な悪影響がありそうだということになっている。実際にあるでしょうな。

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性的モノ化とセクシー化 (8) マクネーア先生の批判とAPA報告書をチェック

マクネーア先生の批判

Brian MaNair先生という政治学・メディア研究のひとがいて、この人猛烈なポルノ賛成派(プロポルノ)で、世界を平和にするために爆弾じゃなくてポルノ落とそうぜ、みたいなことを言うひとなんですが、APAの報告書を批判しているですわ。基本的に、APAの報告書は学問的に厳密で客観的な証拠を提示しているフリをしているが、実は単に委員たちの主観的な願望的思考と、チェリーピッキング的でミスリーディング(誤解を誘う)証拠を提示しているだけだ、みたいな批判です。ちょっと見てみましょう。

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性的モノ化とセクシー化 (7) セクシー化問題の成立史

「セクシー化」sexualizationっていう問題がどういうふうに形成されたのか、ってのは次のものが勉強になります。ほんのちょっとだけ紹介。

  • Duschinsky, Robbie (2013) The Emergence of Sexualization as a Social Problem: 1981-2010. Social Politics: International Studies in Gender, State & Society, 20 (1). pp. 137-156. ISSN 1072-4745

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男らしさへの旅 (3) 「支配」と「優位」と「有利」

「支配」は単なる強制と服従ではない(はずなのだが)

とにかく私は主流派フェミニズムや男性学での「支配」がわからない。なぜ「支配/服従」という形で社会や人間関係を考えようとするのだろうか。前にも書いたように、小手川〜澁谷〜平山と遡って、多賀太先生の『男子問題の時代?』でやっと答らしきものを見つけました。

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男らしさへの旅 (2) 「男らしさ」と「男性性」

「男らしさ」と「男性性」

小手川先生や彼が参照する男性学の系統の先生たちでは、「男らしさ」は「家父長制」と強く結びつけられて考えられていて、そこでは、男性は「支配者、稼ぎ手、威厳ある父」(小手川 2020 p.62)である、ってことになっているみたい。なんかずいぶん違和感ありますね。ここらへんはいろいろむずかしい。

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男らしさへの旅 (1) ジェンダー論や男性学も勉強しないと

セックスのことばっかり考えてないで、ジェンダー論や男性学も勉強しないと

子供のころから、注意散漫でわがままで泣き虫で人とうまくやってけなくて、自分の「男らしさ」に不安や疑問や不満をかかえつづけている高齢者男性としては、ジェンダー論とか男性学というやつは気にはなりますねえ。1月末ぐらいから少し余裕があって、数冊本や論文めくってみて論じられている「男らしさ」というものについて少し考えてみたので、読んだ順番で紹介してみたいですね。

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性的モノ化とセクシー化 (5) 「セクシー化」の方が使いやすいのはなぜ?

「性的モノ化/客体化/物象化」より「セクシー化」の方が議論に使いやすい、というか有用だってな意味のことを書いたんですが、私がなぜそう考えるのかちゃんと理由書いてませんでした。

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性的モノ化とセクシー化 (4) セクシー化/セクシー文化の実例

ちょっと息ぬきに、セクシー化ってどんなものが想定されているかっていうのは確認する必要がありますよね。ポルノだのなんだの話をしているときに、多くの論者は、そのポルノ自体を名指しすることがないことが多くて、「どういうポルノ考えてるの?」とか言いたくなる場合があります。

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性的モノ化とセクシー化 (3) 女子の「セクシー化」の方が広い概念で使いやすいかもしれない

女子のセクシー化という問題

その後、2000年ぐらいを境にして、「モノ化」とか「自己モノ化」っていうのはかならずしもセクシーな含意がないので、男性や社会が女性にセクシーであることを求めたり、女子自身がセクシーであろうとするのが問題なのだ、という立場の人々は、「自己モノ化」じゃなくて「セクシー化」sexualizationという概念を使うようになります。「性的モノ化」の「モノ化」よりは「セクシャル」の方を重視するわけですね。

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性的モノ化とセクシー化 (2) 心理学分野での「性的モノ化」と「自己モノ化」

心理学分野での「性的モノ化」と「自己モノ化」

80年代か90年代にかけて、アメリカでは(日本でも)思春期から若い成人女性の摂食障害がものすごい増えて、社会問題になり、その原因はなんじゃいな、ということが議論された。現在、精神科医たちは、摂食障害は、おそらく心理学的な要因に加え、生物学的な要因の問題もあるようだ、って考えてるようですが、この時期はやはりテレビや雑誌などのメディアで、痩せた女性が登場してその体を自慢し、それを見た少女たちがファッションモデルや芸能人のようなボディーシェイプを目指してダイエットするために摂食障害を発症するのだろう、と考えられたわけです。まあそういうのはいまだに問題になっていますね。実際に、そうしたメディアの影響がなにもない、というのは考えにくいし。

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性的モノ化とセクシー化 (1) 「性的モノ化」の議論のむずかしさ

「性的モノ化」は自発性や同意があればそんな悪くない

ポルノやソフトな表現での「性的モノ化」(客体化、物象化)の問題については、ごく簡単な論文もどきも書いたし、もう飽きてる感じではあるんですが、時々ツイッター検索とかをかけると、いまだに時々この概念が使われてるようですね。

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『宇崎ちゃん』ポスターは「女性のモノ化」だったのか?

現代ビジネスオンライン https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68733 に載せたものをorg2blogのテストとしてこっそり転載しとこう。1年以上経過したし、転載してもかまわんだろう。(お金くれるって言われた気がするけどもらってないし)

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トランスジェンダーについての基礎知識

めくってみているDavid C. Geary (2021) Male, Female: The Evolution of Human Sex Difference, 3rd ed.っていうのにトランスジェンダーの人々についての基礎知識があったので、Emacsのorg2blogってのでwordpressを書くテストをかねてメモあげてみます。

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翻訳ゲリラ:Rathus先生たちの「ジェンダーアイデンティティ」解説

2005年の教科書記述で、すでにちょっと古くなってしまっているのですが、Spencer A. Rathus, Jeffrey S. Nevid & Leis Fichner-Rathus, Human Sexuality in a World of Diversity, 6th ed., 2005のp.175からの項目を江口聡 eguchi.satoshi@gmail.com が勝手に訳したもの。著作権クリアしておりません。版も古いです。だれかいっしょに訳出しませんかね。出版社はどこに相談したらいいかなあ。医学系のところじゃないとだめだわね。新しい版はずいぶん変わってる。

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堀あきこ先生の「メディアの女性表現とネット炎上」はフェミニスト的メディア批判をうまく説明しているので勉強しよう

堀あきこ先生のインタビュー記事についてツイッタでいろいろ失礼なことを書いてしまって、反省して論文も読んでみました。学者のインタビューだけ読んで論文読まないほど失礼なことはないですからね。 続きを読む

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2020/3/21 (土) セックス哲学懇話会やります

コロナでなにも予定がなくなって暇だという声があるので、ヒマならごろごろしてりゃいいわけですが、ゴロゴロついでに3/21に京都でセックス哲学懇話会を開こうと思っています。単にその分野に興味ある人間が集まってネタをしゃべってみるだけ、というものです。今年度の自分たちのセックスと哲学について反省し(「自分たちの」は「セックスと哲学」にかかります)、来年に向けて計画したりもします。希望者は twitterのeguchi2020 か eguchi.satoshi@gmail.com に連絡してください。場所はおそらく京都女子大S校舎のどこか、2時から5時ぐらいの予定。いまのところの予定話題は

  • ながと先生の「ロバートソロモン先生のセックス快楽の話はステキだ」という話。Robert Solomon, “Sexual Pradigms”の話かな?
  • あいざわ先生のウーマンリブと中絶あたりの話
  • 江口の「応哲で性的な表現の話することになってるけどどうしたらいいだろう」という相談。宇崎ちゃんとかあそこらからんでしまってあれだった、という話も?Mari Mikkola先生の議論はどうなんですか、Haslanger先生はこわすぎませんか。
  • 江口の「ことしは生涯学習講座でルソー・ウルストンクラフト・ヒューム・カント・ショーペンハウエル・ミル」ってやったけど、これは許されるだろうか、専門家から非難されたときどうお詫びするべきか」
  • 翻訳や出版の企画ってどうするんだろう?
  • セックスの哲学を学部生にどう教えるか問題のつづき

などです。

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ミル先生にお願いしてショーペンハウアー先生に説教してもらおう

んで、ろくでなし哲学者列伝のメインはショーペンハウアー先生に決めてたのですが(キェルケゴールも列伝にいれたかった)、ショーペンハウアーとキェルケゴールで終わってしまうと味が悪すぎるので、あんまりろくでなしじゃないミル先生にお説教してもらうことにしました。

アルトゥール君、いいですか、後輩の言うことを聞きなさい。 続きを読む

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