ポップ音楽でリテラシー(2) : 仮にリストを作ってみた

昨日の記事につづいて、んじゃ楽曲をよく聞くってどういうことだろうか、って考えて、とりあえずチェックしてみる項目を列挙してみました。もっとあると思うけど、とりあえず思いつくものだけ。★つけたのは比較的高級な内容で、知識が必要になるので、学生様には説明が必要な場合があるだろう。

基本情報

  1. アーティスト名
  2. 曲名
  3. 楽器編成
  4. ジャンル
  5. リズム・パターン
  6. テンポ

アーティスト情報

  1. シンガー・バンドの年代性別
  2. シンガー・バンドの印象、服装、ライフスタイル
  3. 想定されている楽曲リスナー、購買層、そのライフスタイル

歌詞

  1. 語り手のアイデンティティ/どういう人物か/年代性別等
  2. 語り手とは別に主人公がいる場合はそのアイデンティティ
  3. 語りかけられている聞き手のアイデンティティ、年代性別等、ライフスタイル等
  4. 歌っている場面はいつ
  5. どこで語られているか
  6. いつのことについて語られているか
  7. 語り手と聞き手はどういう関係?
  8. 語り手はどんな状況
  9. 聞き手はどんな状況?
  10. 1コーラス目と2個ラース目の関係はどうか?時間は経過しているか?語りの内容や語り手の態度に変化があるか?間奏のあとは前と同じか、それともなにか違っているか?
  11. どんなストーリーか
  12. 語り手から聞き手へのメッセージは?
  13. ★他のアーティストの作品で似ている内容を歌っているものはないか?同じ態度の楽曲はないか?歌詞の引用はないか?
  14. ★「修辞技法」をチェックせよ。
  15. ★比喩はどうつかわれているか、擬音は使われているか?
  16. ★対句、縁語、かけことば、枕詞、句切れ、本歌取り、引歌、倒置、体言止め、見立て、擬人法、命令、呼びかけ、折り句、もののな、押韻、反復など、和歌や俳句で使われる技法は使われてないか?
  17.  ★母音、子音の使い方に特徴はないか?
  18.  ★内容や状況に疑問を感じる部分、違和感がある表現はないか?

メロディー、音楽、サウンド

  1. ★形式(AABB、AABBCCなど)
  2. ★コードやその進行は単純か複雑か
  3.  ボーカルの声質と唱法はホット?ウォーム?クール?
  4. 歌詞のないボーカル、掛け声等使ってるか
  5. コーラスの使用、性別等
  6. コールアンドレスポンスの使用
  7. ★「フック」、特徴的な音楽的工夫
  8. 前奏・イントロ
  9. ★オブリガート、フィルイン等
  10. 間奏
  11. エンディング
  12. ギター
  13. ドラム
  14. ★ベースライン
  15. ★その他アレンジの特徴
  16. メロディーの形。メロディーラインは上向き?下向き?
  17. メロディーラインの最高音はどこにある?それは歌詞とどうむすびついている?
  18. 全体のサウンドで感じられるエネルギーの頂点は?逆にエネルギーが弱いところは?それは歌詞と同関係がある?
  19. ★他の楽曲の引用はないか?影響を感じるアーティストや楽曲はないか?
  20. ★同じジャンルの10年前、20年前の楽曲との違いはなにか?
  21. ★録音サウンドに特徴はないか?
  22. カバーの場合、原曲とどうちがうか?変更にはどんな効果があるか?なぜその曲をカバーしたか。リスペクトかパロディーか。時代的背景・音楽的背景の違い。

効果、メッセージ

  1. 語り手が感じていると思われる感情
  2.  ボーカルスタイル、サウンドと歌詞はマッチしているか?
  3. 歌詞の語りの聞き手に引き起こされると期待されている感情
  4. 楽曲のリスナーに引き起こされると期待されている感情
  5. 性的な含み
  6. ★ダブルミーニング
  7.  ★政治的・宗教的メッセージはあるか?
  8. 言葉遊び
  9.  皮肉、からかい、ユーモアは含まれるか?
  10.  調子は高い?低い?
  11.  シンガーと語り手の価値観を推測できるか?
  12.  語り手はなにを求めているか?
  13.  語り手は聞き手/リスナーにどの程度自分の言うことを理解してほしいと思っているか?
  14. 解決されない謎、邪推等
  15. 作詞作曲者・シンガーからリスナーへの直接のメッセージ
  16. 作詞作曲者・シンガーからリスナーへの間接的なメッセージ


実はこれはビートルズの初期曲を聞きながら、私はなにを聞いているかを考え見たんですわ。表にするとしたPDFのようになる。これ、私自信も確認しておどろいたんですが、Love me do → Please Please me → She loves you → I want to hold your handっていう最初期の4局はそれ自体が一連の流れの上にあるんですね。そう指摘されれば当然だと思うと思うんですが、でも私自身がそれはぼんやりとしか理解してなかった。表の威力はすごいです。

ちょっと面倒で音楽特有のおもしろさは、作詞・作曲・シンガーと語り手とその語り手の相手とリスナー、といろんな立場から楽曲をみないとならんところですね。特に(a)語られてるひとと(b)歌を聞いてるひとの区別はどういう表現使えばいいのかもうちょっと考えたい。

ポップ音楽でリテラシー(1) 本を読んで

学生様と話をしていて、好きな音楽の話なんかを聞きたいわけですが、うまく説明できる人はそれほど多くないですね。「よい」「好きです」ぐらいで、なにがどうよいのか、どこがどう好きかを説明できる人はあんまりいない。というか、歌詞や曲をよく聞いてないというわけでもないと思うんですが、分析的に聞いたり説明したりすることはなかなか難しいものです。

とかって考えて、そういうので卒論を書きたいという学生様もいたりするので(うちはそういう学部)、ポップ音楽の鑑賞法とか分析法についての本を探しているのですが、日本語ではなかなかないもんですね。英語ならあるかなってんで探しているうちに、Practical Media Literacyって本をKindleでめくってみる機会がありました。

これは中学や高校ぐらいのクラスルームで、各種のメディアをクリティカルに見る方法を考えながら教えようっていうクリシンの本ですわ。Musicの項目を見てみると、下のような感じ。ちょっといろいろおもしろいと思いました。

まずポップ音楽ってのが特定のリスナーをターゲットにした産業のプロダクションである、って説明するんね。たしかに楽曲の作成からマーケティングまで考え抜かれている業界ではある。単に楽曲だけじゃなくPVや売り方まで含めた商品なのだ。

んで次にジャンルの説明をする。ジャンルっていうのは特定のターゲット層に向けて、その期待にそうようにわけられてるんですよ、と。たとえばハードなギターロックだったら学校に退屈しているミドルクラスのティーネイジャーとか、ボーカルも典型的には白人男性である、と。ヒップホップだったら社会に困難な若者で典型的には黒人巨体ラッパーとDJとか、まあそういうことね。うんうん。ジャンルっていうのは、その顧客であるリスナーが「こういう音だよな、こういう感じを与えてくれるだろう」ってんで手にとるように、その期待に会うようにできてる。

あとちょっとだけサウンドについて触れて、とりあえず実践しましょう、ってな方向にすすむ。んでクラスルームでやるのは、1曲好きなヒット曲を聞いて、練習問題を考えましょう、みたいなの。

1. ジャンル(カテゴリー)を考える。
どの要素によってそのジャンルに分類したか。楽器、ボイスの感じ、曲の長さ、テンポ。人種、年齢、性が違うと別のジャンルになるか?選んだ曲の何が自分にアピールしたか。

2. 歌詞を考える
曲を聞き歌詞を読んでどういう感情になるか。ハッピーか、悲しいか、怒りか。歌詞とシンガーの歌い方はマッチしているか。音楽は歌詞や歌い方とフィットしているか(悲しい歌詞なのにアップテンポということもあることを指摘)。メッセージを聞いてどういう感じになるか。歌詞によって語られているストーリーに共感するか。リスナーにアピールするためにどう書かれているか。反対の意味になる歌詞を自分で書いてみよう。

3. 楽器法や曲の構成を考える
使われている楽器、全体の感じ。曲の構造をメモする。印象に残る「フック」があるか。繰り返しのセクションがどういう感じをもたらすか。頭にこびりつく感じがあるか。ダンスしたくなるか眠りたくなるか。ハッピーにするか悲しくするか。同じジャンルの20〜30年前の曲と比べるとどうか。プロダクションのスタイル、楽器用法、アレンジは変わっているか。なぜ、どのように変わっているか。

4. ターゲットのリスナーを考える
誰がターゲットか。アーティストのルックス、ファッション、態度は歌の感じに影響を与えているか。年齢、人種、性が違っていると違う感じになるだろうか。別の人はその曲を違ったふうに解釈するだろうか。メッセージはポジティブなものかネガティブなものか。

5. マーケティングを考える
架空のアルバムのカバーを考えてみる。ジャンルやターゲットリスナーのライフスタイルを考える。

とかそういう感じ。なるほど、おもしろいですね。われわれポップ音楽好きはこういうのは言われなくてもいろいろ考えるわけですが、中高生、あるいは学部生ぐらいだと、こうやって明示的に質問された方がわかりやすいし、意識的に聞くってことに自覚的になるでしょうね。リストや表の形にしておくんですね。いろんなのが作れそうだ。

んで、いろいろ考えたこととか発表したりディスカッションしたりするんでしょうね。これは中高向けかもしれないけど、いずれ私の1〜2回生ゼミの学生様にもやってみてもらおうかという気がします。もうちょっと突っ込んだ問いを設定したいけど、最初はうえみたいな感じかなあ。

上の本全体は、インターネット(Web/SNS)、テレビ、映画、ストリーミング、音楽、ニュースメディア、ヴィデオゲーム、ラジオとオーディオ関連、写真と主要メディアについての簡単な説明と練習問題があって、最後は広告なのね。なるほど、そいうことか、これぞクリシンだ!みたいな。

ちょっとおもしろい鉱脈がここらへんにありそうな気がしています。

℃-ute「Danceでバコーン!」も名曲

学生様から「Danceでバコーン」を教えてもらってのですが、これなかなかの名曲、っていうかダンスまで含めてすばらしいプロダクションですね。

最初聞いたときは、E7一発な感じからいきなり歌謡曲になるのでとまどったのですが、歌詞の内容とかをふまえるとなるほどってな感じで、私が見聞きしたことを書いてみようと思います。

まず歌詞と構成はこんな感じね。

コーラス1コーラス2
(a)ファンキー男子
旅立つ時間だ
ファンキー姉ちゃん
ときめく時間だ
ファンキー幹事
宴も酣だ
ファンキー委員長
始業の号令だ
E7(#9)一発
メロディーラインはださい。
(b)諦めやしない
私の未来
誰のものでもない
もちろん玉の輿
そりゃ乗りたい
毎日が勝負パンツ
輝くしかない
うちらの時代
誰にも任せない
もちろん馬鹿じゃいかん
時代を読んで
レバレッジきかせてこう
E7(#9)一発
おなじくダサい。
(c)ジャッジャッジャージャッジャッジャーギタフリマネ
(d)AH- やだー
またちょっと太った
もうやだー
手柄取り上げないでー
AH- やだー
また上司怒ってる
もうやだー
人のせいにしないで
A | E | B | E |
A | E | F | E |
このF→Eで無理やり転調する。
(e)ダンスでバコーン
なんか全部忘れたい
ダンスでバコーン
涙がとまらないよ
ダンスでバコーン
今日は全部わすれるよ
ダンスでバコーン
慰めはいらないわ
こっからコードが月並みに激しく動く歌謡曲。
A | A | F#m | D/ E |
A | A | C# | C# |
キーはA。
(f)こんなにすごく切ないの
どうしてかわかんない
今までためたストレスと
今夜でおさらばさ
心がずいぶん軽くなる
お腹が減ってきたわ
帰りにうどんたべてくわ
明日が待ってるもん
ここがよい。アゲ。テンポが半分に聞こえる。
Bm E A F#m D E F#
とか

イントロからいわゆる「Aメロ」の(a)と(b)までを支配しているのはギターのE7(#9)っていうコードで、ジミヘンが有名曲で愛用したのでジミヘンコードとか呼ばれることもあるやつです。E7にb3度が入っているのですごい不協和音で、濁ったブルースっぽい感じになる。このE7(#9)一発でコードには動きがなくて、抑圧された感じになります。前にファンクとか黒人音楽の特徴は抑制だ、っていうこと書いたおぼえがあるのですが、まあそういう感じ。

ただしこの曲は黒人ダンス音楽ではない。まずテンポが速すぎる。ふつうのダンス音楽というのはだいたい120BPM(1分間に4分音符120拍)ぐらいにするものです。フォーチュンクッキーとかが125、ハイテンションは130,フライングゲットは132ぐらい。ここらへんもダンスとしてはちょっと速いかんじですね。このバコーンは150あって、快適に体を揺らすことができるテンポではなく、むしろ、痙攣とまでは言わないにして「踊る」っていうテンポではないです。(ヘビーローテーションは180BPMあってすごく速いんですが、あれは歌のメロディーはゆったり倍の長さになっててむしろゆったり半分のテンポに感じられる、実は90BPM)それにダンスや黒人音楽ではギター使わないんすよ。ジャジャジャーとかやらない。そういうのは、白人ロックの民が使う。ここらへんがまず前提となる基礎知識。

さて、私学生様と音楽の話をしようってときは、(楽器やらない人に楽理の話をしてもわからないから)まず歌詞をちゃんと味わおうって提案するわけです。そのために必要なのはまず、誰が何を歌っているのか、いつ、どこで、どんな状況でかを考えろっていうわけです。5W1Hっていうやつですか。これはいつでも大事ね。

ではこの曲は誰がいつどんな状況でなにを歌っているのか?

最初このPV見たときは、当然10代女子の歌かと思ってましたが、違いますね。OLさん、それも2、3年目ぐらいか。「ファンキー姉ちゃん」とかそう呼ばれちゃう感じで、すでに会社にもそれなりになれてるので20代なかば。

いつか?会社おわって男子も姉ちゃんも「旅立つ時間、ときめく時間」。7時はちょっと早いかな。ちょっと残業して7時半ぐらいっすか。これから会社の男子女子いっしょに遊びにいくんですね。

どこに行くんだろう?これが最大のポイントです。ファンキー男子と姉ちゃんなのでディスコだろうか?違う。なぜならディスコではギタージャッジャッジャーなんてダサい音楽は鳴らないからだ。考えられるのは、(1) V系ロックのバンドのライブ、(2) カラオケボックス、の二つぐらいで、男子が一緒にいくのだからロックのライブではない。広めのカラオケボックスなのです。驚きましたね。

ちょっと太っていやだとか、手柄取り上げられるとかもまあOLさんの世界ね。OLさんに手柄があるってのは単なる事務職ではないかもしれない。あとで「レバレッジ」とか出てくるから、証券会社の営業さんとか製薬会社のMRくらいで考えとけばいいのではないかと思う。

この曲のよさの一つは、1コーラス目から2コーラス目への時間の経過と気分の変化がはっきりしているところですね。上で対比してみたけど、2コーラス目になると、ファンキー男子はファンキー「幹事」になり、ファンキー姉ちゃんはファンキー「委員長」に昇格していて、まあカラオケボックスはもりあがってる感じですね。

ここでダンスについても言及すれば、上の区分の(a)の部分の股開く動作や(b)の勝負パンツ見せる動作とかはあんまりセクシーじゃなくて、むしろ下品。「あたし毎日勝負パンツ履いてんのにぜんぜんだめだわ、がはは」。ここで「ファンキー」というのは「陽気な」「おどけた」「品のない」ぐらいの意味で理解されてると思う。

対比したのでわかりやすいと思いますが、1番から2番に移行すると、「全部忘れたい」→「全部忘れるよ」、「涙が止まらない」→「慰めはいらない」、こんなにすごく切ない」→「心がずいぶん軽くなる、おなかがへった」、って感じでポジティブになってる。お腹が減ったはとてもよくて、それまで飯を食う気にさえなれない軽い鬱だったのがなおって欲求が回復したわけですわね。エクササイズと食事と睡眠は大事です。

まあ歌詞はこういう感じ。つまり、私が読むところによれば、証券会社勤続2、3年めの女子が、男子といっしょにカラオケに行って、ロックで適当におどけて歌って踊って元気になって、少し元気になってうどん食って帰る、というそういう歌なわけです。平日夜なのか、金曜の夜かはわからん。

音楽的には上の表の(a)と(b)のところはさっきも述べたE7(#9)。これは「ミ」と「ミ♭」の音が一緒に鳴っているので、ギャーンという感じの一番きつい不協和な感じの音です。ずっとそれに支配されている。そのあとの(c)のところでコード進行が| A | E | B | E | ってな感じの進行があって、これがカデンツ(ケーデンス)ってやつです。キーがEのときに、AやBのコード(特にドミナントコードと呼ばれるB)を鳴らすと、キーが「確定」するんですわ。キー(調性)はやはりEだ、イントロから続いているE7の厳しい感じを強調する感じになってます。「うちらはなにをしてもEなのだ!これからもずっとあのイライラしたE7(#9)なのだ!」って言われる感じね。

ところが、そのあと無理やり| F | E |とやってキーをAに転調するんですわ。ここが一回目のききどころですね。E F# G G# (ミファソソ#)って盛り上がっていくところです。Eの圧力に対抗して、無理やり歌って踊って盛り上げてる感じ。

そのあとの(e)からのキーはA。これでさっきから(a)(b)(c)のパートでずっとなってたE7は、Aで解放されるためのドミナントでした、いままでずっと続くと思っていたEは、実はAで解放されるための前フリにすぎなかったのだ!、人生のスパイス程度のものなのだ、ってのがはっきりするわけです。これは快感。

このE (ドミナント、属和音)→A(トニック、主和音、主調)に転調、あるいは解決するっていう快感はもちろん定番で、これがないと西洋音楽はなにもできないってくらい定番ですが、単純にやるとものすごい効果がある。

サビの(e)ではダンスでバコーンで| A |F#m | D | E | これもケーデンス、ただし「いや、キーはEではなくAなのだ!」と強く主調している。さらにサビ(f)でももっと強くAが中心なのだ、われわれはAなのだ、と主張するわけです。ここは本当にきもちがいい。

特に(f)の「こころが少し軽くなる」のところでは、音楽では2拍4拍を強調し、ダンスでも2と4で腕を上にアゲアゲにして一番からだが大きくみせて、さらに女子が横向いているので乳や脇を見せつけて、腰も浮いて非常にセクシーになってる。最初の方で、もううちら全然だめで芸もないから、ウケるにはファンキーに股開いたりケツとパンツ見せたりするしかないわあ、みたいな下品で低級な(?)女になってたところが、ここではきちっと上を向いてそこそこ上品なセクシーさを出して踊れるようになってるわけです。さらにリズム的にもうるさいごちゃごちゃがなくなって、聴感ではテンポが半分になってゆったりアゲいるように聞こえると思う。

(f)のところのダンスは、「こころが少し軽くなる」のところの横向いて手を上げるのもいいんですが、そのあとの「帰りにうどん食べてくわ」のところの「わ」のところの小さいジャンプもものすごく効いてますね。あの小さいジャンプがないと、心が軽くなってるところがわからない、あれが最大のキモだと思います。イラついたOLもカラオケで元気になれば小学生のようにちょんと飛べるようになるのだ。

2コーラスめ歌ったあともイライラしたE7(#9)のギターは再び攻めてきますが、それにつづく間奏はもう一発ではなく、歌謡曲的なホーンの勝利のラッパがなって 1)これを本物のホーンを使わずにキーボードのチープな音にしているのもよい。 、2番のサビの歌詞を繰り返しておわる。最後にイントロのリズムがもどってきますが、最初の(#9)のトゲは抜かれている。これは名曲・名ダンスです。

まあ、この曲の主人公の女子たちは正直いって安い。安いというのは、お金もないし、趣味もそれほどよくないかもしれないし、芸もあんまりないかもしれないし、勝負パンツは履いてるのに彼氏もいないし、仕事もうまくいかずに上司から怒られたりで不満だらけだし、ダイエットもうまくいかないまま年をとりつつある。不安だらけ。六本木でR&BやEDMで踊っているようなセクシーな姉さんたちにはダサいとバカにされてるかもしれない。でもカラオケでみんなで歌って騒いで踊って楽しくやれば、明日を生きることはできるのです。大衆向けの曲というのはこういうふうにできてないとならん。

私、震災のあとに「フォーチュンクッキー」を聞いて音楽やダンスの力を感じて、アイドル曲のプロダクションのよさがやっとわかるようになったんですが、このバコーンはその前で、曲の造りや腕をぐるぐる回すダンスなんかに影響が見えてる気もしますね。音楽とダンスにはストレスから解放してとりあえずうどん食いたくならせるような力があるわけです 2)というか、「フォーチュンクッキー」が「バコーン」へのオマージュでありアンサーソングであった、という可能性は十分あると思う。

どうもこのユニットはおとなになって解散したようですが、この曲の主人公たちの年齢になったところで解散というわけですね。その成長とかも、まあライブで(f)で「ん・オー・ん・オー」ってライト振り回して応援しているオタ兄さんたちにはよかったでしょうな。


あと、音楽の話で、E7(#9)の音ってのはジミヘンのこんな感じ。

ジャジャジャーはいろいろあるけどこれ。正直、ジャッジャッジャーのリズムはものすごくダサい。つんく先生はださすぎないようにいろいろ工夫してます。なにを工夫しているかはよく聞いて考えてください。

一番大事な、一発もので5度下に進行して快感があるってのはこの曲。E7でじりじりしていて、「おれ、もうブリッジいっていいか?いっていいか?ブリッジいっていいか?」ってやってAに落ちるのが気持ちいい(実際にはEbとAb)。2:00〜2:30ぐらい。単純にやればこれでも気持ちいいんですが、大衆にはわからんからつんく先生みたいにする必要がある。

まあこの曲の主人公がカラオケのあと発展してセックスマシーンだったということはないとおもいます。


→ 歌詞を考える

References[ + ]

1. これを本物のホーンを使わずにキーボードのチープな音にしているのもよい。
2. というか、「フォーチュンクッキー」が「バコーン」へのオマージュでありアンサーソングであった、という可能性は十分あると思う。

欅坂の「月曜日の朝、スカートを切られた」も名曲

「月曜の朝、スカートを切られた」も名曲。

なんかこんな感じで秋元康先生の作詞した曲が非難されていました。まあ先生について好き嫌いはあっても才能がないってことはないだろう、ってんでPVで聞いてみたんですが、拙者、一発で打ちのめされましたグホぉ。これは一流の職人さんたちによる最高級の作品ではないですか。歌詞はこっち。 作曲は饗庭純先生。

イントロはDのペダル(持続する低音)のうえでDm – C – Bb – C ってやるよくあるやつ、でもこのDmを中心にしたペダルって、いろいろ因縁があって、一番有名なのはオーネット・コールマン先生のLonely Womanですね。Dのペダルってんで、そこそこ詳しい人は誰でも連想するんちゃうかな。あ、もっと有名なのがあった。ドアーズのジ・エンド。でもまあDの上にDm C Bb Cってトライアド(三和音)のせるのはよくつかうやつです。この進行だと不穏なDmは強く感じるけど、まだそれが主調なのかどうかはよくわからない 1)あとDmつまりニ短調で有名なのはモーツァルトのピアノ協奏曲20番とか、『ドンジョヴァンニ』の序曲と地獄堕ちとか。。こう、デモーニッシュっていうか暗くて情熱的な調性だと意識されてる感じ。

んで、Aメロの歌詞はごくふつうの中二病ね。

「どうして学校へいかなきゃいけない〜」とかまあベタな感じ。拙者はアイドルグループうといのですが、AKBとかにくらべて坂の方はネガティブで抑圧された曲が多く、歌詞も男子一人称が基本だと思ってて、そういうつもりで聞いてました。

コード進行はDm Bb F Cを4回繰り返していて、よくあるパターン。こういうののキーがなんであるのかは拙者いまだによくわかってません。VIm-IV-I-Vなんかな。6415。基本的にはFがキーだと思うんだけど、Dmにも思える。2拍ずつコードが進行していて、あるエネルギーというか活発さがある。イライラというネガティブなエネルギーだけどね。

Bメロはすごくよくて、わたしそこでいかれました。

歌詞は「反抗したいほど熱いものものもなくうけいれてしまうほど従順でもなくあと何年だろうここから出るには……大人になるため嘘になれろ!」いいじゃないっすか。

コード進行は Bb C Am Dm Bb Am Gm A(A7)だけど、各コードがAメロの倍の長さになってる。AmやGmていうそれまで出てこなかったコードが出てきて、やっとキーがFだっていうのがはっきりする。語り手のある覚悟みたいなのが出てくる感じね。ところが最後でA7が鳴ることによって実は本当のキーはDmなのだ、って宣言されるところがこの曲のミソですわね。ベタだけど拙者は感動しますね。そして、でもA7からDmへの自然な落下という予定調和、というより宿命は、最後まで拒否されるのです。どんなにA7が強力でも、Dmに落ちちゃうことは受け入れないのだ。

ここまででもう主人公は言うべきことをすべて言っていて、2コーラス目の「月曜の朝スカート切られた」ってのはもう実はなんでもいい。

本当は、「月曜の朝トイレにとじこめられた」でも「同級生にカツアゲされた」でも「いやがってるのにコブラツイストきめられた」でも、気の弱い男子があいそうな災難だったらなんでもいいわけだけど、それじゃ情けなすぎて歌にならんしょ。「実は女子の歌でした」ってな感じにしてなんとか歌としての形をたもってると拙者は聞きましたね。

「トゥシューズに画鋲いれられた」でもよかったのかもしれないけど、それだと女子どうしのあれな関係を考えちゃうから 2)そしてそれを連想すると、んじゃこのグループはどうなっているのか、とか考えちゃうし。 、まあわかりやすい卑劣な犯罪ってのでスカート切りぐらい使うのは選択として悪くないと思う。「学校のおばちゃん先生からスカート丈についてぐちぐち説教された」ではやはり歌にならんし。スカート切りぐらいわかりやすい邪悪な存在じゃないとね。だれもスカート切りを擁護しようなんてこと考えないっしょ。

まあ、われわれが出会う理不尽な出来事だったらなんでもよい。そして、われわれはそれには慣れているのです。悲鳴なんかあげてる場合ではないです(もちろんここで主調のDmへ導くA7が鳴る)。どうしても生き延びるのです。だってこれから先も、満員電車みたいな教室や職場でどうしても生き延びなきゃならんのですから。こんなクソみたいな場所は、生き延びれば勝ちなのですからね。

この歌詞はものすごくベタで、実際にこの世界を生きている人間は、こうしたベタな思考さえがいまではネットでも解体されて中二病と名付けられていることを知っているわけです。真実がネットで見つかるわけがないのもわかってる。こんなぐだぐだ定型の反抗をすることさえ、いまの若者たちはできないんじゃないかな。「いじめられても悲鳴はあげません」みたいな誇りでさえぐしゃぐしゃにされている。でもだからこそこういう歌が訴えるところがあるわけでね。

何回か聴き直すと、Bメロは(若手の?)男性ボーカルがうっすら残っていて、これはあえて残してますわね。男子の叫びでもあるわけよ。でも今はもうそれじゃ歌にならない。いまどき、男子が「大人も社会もクソだ、僕はいじめられても負けない」とか歌ってたって馬鹿じゃん?女子アイドルならまだいける。最後のリバーブとか切って生々しくした「あんたは私の何を知る?」っていう叫びみたいなのでさえ、もうわれわれは素では歌えないでしょ。

悲鳴はあげない。でも「悲鳴はあげない」ってしか言ってないってことに気づいてましたか?もちろん、この場合はスカート切られてしまってるわけだから、悲鳴あげたってしょうがない。悲鳴ってのは、パニくって、他人からの援助をもとめることだからね。こんな嘘だらけのクソな世界で生きていくには、悲鳴なんかあげたってしょうがないのだ。そのまま我慢することもあるだろうし、警察に行くこともあるだろうし、他のもっと直接的な対応を考えることもあるかもしれない。でも悲鳴なんかあげないのだ。そういう歌っしょ。痴漢にあってるその時点の歌じゃないよ。

こんな名曲、才能がないとかいったいなに聞いてるんですか。

まあでも私「坂」の演出とかはあんまり好きではないです。そういや、「君の名は希望」とかについて昔書きました

References[ + ]

1. あとDmつまりニ短調で有名なのはモーツァルトのピアノ協奏曲20番とか、『ドンジョヴァンニ』の序曲と地獄堕ちとか。。こう、デモーニッシュっていうか暗くて情熱的な調性だと意識されてる感じ。
2. そしてそれを連想すると、んじゃこのグループはどうなっているのか、とか考えちゃうし。

スージー鈴木先生の名著『1984年の歌謡曲』の一覧

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スージー鈴木先生の『1984年の歌謡曲』の曲。これも名著。

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スージー鈴木先生の名著『1979年の歌謡曲』で論じられている音源の一部

↓はyoutubeのリンクがどんどん切れちゃって使いものになりませんね。Spotifyにするべきだった。面倒なので張り直しませんが、このプレイリストが参考になると思います。作った人えらい。(2018/06/23追記)

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スージー鈴木先生の名著『1979の歌謡曲』で論じられている1979年歌謡曲音源の一部。作成途中。先生の趣味と自分の趣味がかけ離れているのに驚いたり。

1979年の歌謡曲 (フィギュール彩)
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  1.  布施明 「君は薔薇より美しい」。オリジナル音源のバックがいい、特にベースがと思ったら、これゴダイゴなのか。スティーブ先生。鈴木先生はゴダイゴの評価がすごく高くて、ちょっとわからんと思ってたけどこの曲まで実はゴダイゴとなるとなるほど。
  2.  桑江知子 「私のハートはストップモーション」。この曲もベースがよい。もっとバック大きめにしてもいいのにね。サビ意外のところは印象に残らないね。このひとおもしろいな。 http://orikarapoponta.blog.so-net.ne.jp/2012-05-23
  3.  沢田研二 「カサブランカ・ダンディー」。
  4.  八神純子 「思い出のスクリーン」。みずいろの雨は好きで、最初期に買ったLPの1枚。でも中2のころには誰かに渡してしまったな。
  5.  西城秀樹 「Young Man」。流行りましたよ。っていうかまあビレッジピープルの方で。
  6.  ジュディ・オング 「エーゲ海のテーマ 魅せられて」。このストリングスとかのアレンジの感じがザ・筒美京平先生よね。
  7. 桜田淳子 「サンタモニカの風」。
  8. 山口百恵 「美・サイレント」。歌謡曲のこういうギミックっていうか仕掛けっていうか、そういうのが嫌いだったんよね。スパニッシュ風のギターかっこいいな。
  9. ピンク・レディー 「ジパング
  10. 岸田智史 「きみの朝」。
  11. 松山千春 「窓」
  12.  サザンオールスターズ 「いとしのエリー」。サザンは音源がネットにまったく存在しない。ここまでしなくてもいいんじゃないかと思うんだどなあ。
  13.  ゴダイゴ 「ビューティフル・ネーム」。あんまり。
  14.  ツイスト 「燃えろいい女」。イントロカッコ悪い。世良先生の声は好きだったな。この当時のAMラジオにかじりついてたの思い出す。オールナイトニッポンとかねえ。
  15.  アリス 「夢去りし街角」。アリスは私の中学1年生ごろのポップ音楽への目覚めにかかわっている。今聞くとちょっとベタにクサイ感じだけど、谷村先生ってそういう人よね。ボーカル二人の声質が似ていてハーモニーがすごく効果的。
  16. 水谷豊「カリフォルニア・コネクション」。知らなかった、というかたしかに聞いたことあるけど意識したことがなかった。よく聞くとバックの音ものすごくいいな。とプロイデューサーが鈴木茂先生。
  17. ピンク・レディー「ピンク・タイフーン」。まあこの時期のピンクレディーはなにもない。
  18. 甲斐バンド「感触(タッチ)」。あれ、HEROじゃないのか。
  19. サーカス「アメリカン・フィーリング」。あんまり。ミスタサマタイム〜は好き。
  20. 八代亜紀「舟歌」。これは猛烈な名曲ね。
  21. 沢田研二 「Oh!ギャル」。これ有名な曲なのか。ぜんぜん意識してなかったような。
  22. ゴダイゴ 「銀河鉄道999」。この曲はあんまり好きじゃなかった。英語うますぎたっていうか。
  23. 松坂慶子「愛の水中花」 https://www.youtube.com/watch?v=CaS5V6VVPLE
  24. ピンク・レディー「波乗りパイレーツ」
  25. チューリップ「虹とスニーカーの頃」。名曲。
  26. さだまさし「関白宣言」。これは芸。私はさだ先生はほとんど関係なかった。
  27. 桑名正博「セクシャルバイオレットNo.1」。松本先生がこのタイトル歌わせるのいやだったとかって話だけど、かっこいいではないか。
  28. 八神純子「ポーラー・スター」
  29. サザンオールスターズ「思い過ごしも恋のうち」。
  30. 柳ジョージ&レイニーウッド「微笑みの法則」
  31. 山口百恵「しなやかに歌って」。これはよい。ドラムはポンタ先生かなあ。ベース大きめだけど、ちょっと重い気がする。オリジナル音源はなんか尺が長く感じる。テンポが遅い?
  32. 岩崎宏美「万華鏡」。あんまり印象に残らない曲よね。ベースがこの時代のコンテンポラリーな感じだけど、もうひとひねりできると思う。
  33. ばんばひろふみ「Sachiko」。べたすぎると思う。
  34. 郷ひろみ「マイレディー」。これも知らなかった。
  35. 久保田早紀「異邦人」。これは文句なしの名曲。
  36. ゴダイゴ「ホリー&ブライト」。あんまりわからん。この年、「ガンダーラ」もヒットしたと思うんだけど、この曲はものすごくよいと思う。あ、1年前の1978年か。
  37. 甲斐バンド「安奈」。この曲はあんまり時代感がない。
  38. さだまさし「親父の一番長い日」。関係ない。
  39. パル「夜明けのマイウェイ」。
  40. サザンオールスターズ「C調言葉にご用心」
  41. 海援隊「贈る言葉」。当時からあんまり。
  42. クリスタルキング「大都会」。ツェッペリン。
  43. オフコース「さよなら」。文句なしの名曲。
  44. シーナ&ザ・ロケット「ユー・メイ・ドリーム」
  45. アリス「秋止符」。歌詞が新しい世界に入ってるよね。  http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=36509
  46. 財津和夫「WakeUp」。オフコースがいなければねえ。

なかなか難しい。オリジナル音源ほしいなあ。Apple MusicやSpotifyの方がいいか。

「木綿のハンカチーフ」も名曲だから歌詞を鑑賞しよう

松本隆先生という作詞家の先生がいて、まあ天才というかなんというか、80〜90年代の日本の音楽を作った巨人ですわね。この先生の作品を集めたCDを聞いてて、「松本先生は本当にすばらしいな」とか言ってたんですよ。

まあいろいろあって、社会学とか美学とか専門だったら「松本隆と日本のセクシュアリティ」とかって論文が書けるんかないかと思うくらい。そういうのはぼちぼち解説します。その手始めとして今日はウルトラスーパー超名曲「木綿のハンカチーフ」について、ちょっとだけ解説してみたい。

1975年の曲でいろいろあったみたいね。 https://goo.gl/OW6Kkb 実際、松本先生の歌詞では、80年代でも男性が高校卒業とともに都会に出て、女性が田舎で待つ、っていう形のがけっこうあって、これがふつうだったんよね。まあそれはよい。

歌詞はこっちね。 http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=35600

んで、まあこの曲を実際に聞くと、まず気づくのは、男性と女声が交互に話をしているってことね。あたりまえだけど。手紙の文面。それを女性ボーカルが交互に歌っていて、太田裕美先生は歌うまくてすばらしい。コード進行はふつう、メロディーは自然でおぼえやすく筒美京平先生もえらい。

音楽的な聞きどころは、男性の方(Aメロ)のコード進行は

I- VIm – IIIm – IV -IIIm -IIm – V – I – VIm – IIIm – IIm – V  – I

みたいな堂々としたメジャー進行、特に最後の「君への贈り物を探すつもりだ」がIIm− V – Iというベートーベンみたいな進行なのがよいです。この男は自信があるのだ。

女性の方(Bメロ)は

VIm – IIIm – IIm – V – I – I7  – IV – IIIm -VI7 – IIm – IV – I

というはっきりマイナーな進行。特に最後の「染まらないで帰って、染まらないで帰って」の最後がIV- Iといういわゆる女性進行、フェミニンエンディングになってるのがおもしろいですね。(あら、女性終止じゃなくてアーメン終止でした)なんというか、「お勉強してつくりました」っていうのがはっきりしている。

2コーラス目、「流行りの指輪」を送るわけですが、ここで変だと思うべきだと思うですよ。流行りの指輪ってほんとにある?流行りのバッグやネックレスならわかりますよ。指輪に流行りすたりそんなありますかね。あるとしても、それって今なら7000円とか8000円とかの話なんちゃうかな。だからこの指輪は安い。お金がない。でも、半年たってなんとか送るのだ。

この次の歌詞がものすごくいいですね。松本先生の天才。「いいえ、星のダイヤも海に眠る真珠も、きっとあなたのキスほどきらめくはずないもの」。天才。こんな歌詞書けるやつはめったにいない。いやもちろん、この歌詞を見たあとなら、誰だって陳腐だっていえますよ。でも「星のダイヤ」「海に眠る真珠」ってほんとにおもいつきますか?これは天才の作品なのです。私これ聞いてたとき、「いいえ、欲しいの、ダイヤも」ってきこえてて、へんだなっておもってました。星のダイヤなのです。

そして、あなたのキスほどよくない、ってのは、このカップルはすでにいなかでニャンニャンワンワン楽しんでるわけですわね。まあそれはよいです。青年はそれを置いて都会に出てるし、女子もそれも理解しているわけです。そんな純な関係じゃないよ。

3コーラス目はひどい。「よー、お前まだ化粧もしねーの?口紅ぐらいぬったらどうよ、都会の女はきれいだよ」ですよ。いくら田舎だって口紅ぐらい塗りますわよ。彼は都会で化粧うまい人々と遊んでます、ってことよね。もう田舎の化粧ちゃんとできない女なんかどうでもいい。何年たったかしらんけど、スーツも買えるようになりました。いまだったら学生さんでも入学式その他のためのスーツ1着ぐらいもってるでしょうけど、1975年、上下そろえるだけでもたいへんだったんですね。

見間違うようなスーツを着た僕の写真を見てくれ。初登場は1970.

これに対する女子の答えがよくて、「木枯らしのビル街で体に気をつけろよ」ですよ。この青年が、学歴その他各種の資源をもってなくて厳しい状況で上京したのは誰でもわかってるわけです。でも彼は向上心があって、スーツを来て、お化粧した女性と遊ぶことができるようになった。でもそれって、この世代ではそれほどかんたんなことではないし、下手すると体を張っている仕事をしてるかもしれませんね。スーツを着て体を張る仕事といえば、あれですね。私の好きな蒲郡風太郎 1)ジョージ秋山先生の『銭ゲバ』の主人公。 や毒薬仁太郎先生 2)同じくジョージ秋山先生の作品の複数に登場する重要脇役。 の世界。彼女の「都会は厳しいけど体に気をつけて」っていうのは、そういうのを暗黙のうちに理解しての話なわけです。もうあんたとは遠くなったけど、死なないでね。

4コーラス目。彼氏は、街角で毎日愉快に暮らしているけど、田舎には帰れない。なぜだろう。ちょっとぐらい帰省すればいいのに。正月とかお盆とか帰るものです。でも帰れない。帰りの旅費もないのかもしれないし、帰る面目もないのかもしれない。つらい。私もそういう時期がありました。田舎を出てからもう帰れなくなる人々っていうのがいるんですよ。これ1975年なので、最悪の場合、映画「仁義なき戦い」みたいな抗争に巻き込まれて帰れなくなるっていうこともありえます。作詞としてはそれ狙ってるでしょうね。

オリのスーツ姿もいいだろうがよ

女子の答えはもちろん、最後に一つだけのおねだり、涙をふくハンカチちょうだい。いいですね。でもこれって、ふつう女性の発想じゃないですわ。むしろ母親とかの発想よね。謙虚とか献身とかっていうのは女性の美徳とされてるけど、本気でカップル相手としての男にそういう態度示す女なんかめったにいないんじゃないですかね。ふつうに考えれば、この女子も、彼が上京したあとは田舎で別の男子といろいろあったでしょう。だからこそあんまりおねだりせずにいられたわけでね。この件についてはそのうちジョージマイケル先生の歌詞を検討するときにもう一度確認します。とにかく、この女子はふつうの女子ではない。

恋人ではなく、母親である、というのは十分ありえる。そうでなければ、彼氏の頭のなかの妄想で、それが、この曲の女子の部分の特別な音響効果を説明する。よく聞くとわかるんですが、男子のセリフのところはエコーとかがない素(す)の発音で、女子のセリフ部分はディレイがかかってて声がダブルになってるのがわかると思う。当時よくある技術ですが、現実感を薄めてくれるわけね。男子のほうが現実の男子だとしても、女子の方は現実のものではない。

でもまあそれがいいわけですよ。男子はみんな都会に出て苦労して、そんなかっこよく生きることができず、そんなときに田舎にいる彼女が自分をずっと応援してくれてると思いたい。あるいはママみたいな存在がずっと自分を応援してくれててほしい。都会で働いたりしていると悔しいことばっかりで死にそうだから、だれか自分を応援してくれててもいいじゃないか。すごくやばくて、もう田舎に帰ることさえできなくなったときに、誰か泣いてくれる子がいてもいいじゃないか、そういう歌なわけだよ。遠距離カップルが破綻するとかそういう歌じゃないわけですわ。

有川浩先生という人がこの曲の歌詞について書いてたのをみたんですが、ぜんぜんだめだと思いますね。http://www.sankei.com/west/news/140816/wst1408160004-n1.html


(1/5追記)

この曲、さらに研究したんですが、やっぱりすごい曲よね。他に書き漏らしている点も上げておきます。
太田裕美先生の声質と唱法は非常に重要。声のキャラクターってのは大事で、太田先生の声は明るいというかものすごく外向的ですよね。それにビブラートとかも美しい。おそらくオペラ歌手とかだとモーツァルトとかでいうと、「スーブレット」って呼ばれる、気の利く賢い小間使い役みたいなのに合う声とされるんじゃないかと思います。モーツァルトでいうと、『フィガロの結婚』のスザンナ、『コジファントゥッテ』のデスピーナ、『ドン・ジョヴァンニ』のツェルリーナとかそういう感じ。なんでもよくわかっていて男心を手玉にとって操ります、って声よね。自衛官の女性が歌っている動画がすごく印象的なんですが、この人もすごいよねえ。なんかこのタイプの声の人は、こういうルックスでもある。ビブラートうまい人は化粧もうまい。

あ、クラシック女声の声質の分類はこの動画がわかりやすいわ。まあポップ音楽はまた別の分類があるはずだけど、声質によるキャラクターというのは重要よね。

男子は最初っから贈り物贈り物、って物のことばっかり言ってるけど、よく考えると、これって最初からこういう人のはずがないよね。人間の動機づけみたいなのは報酬があって成立するわけで、この男子が女子に、なんか物をあげたら喜んでくれたので、それが強化されている。おそらく心理学でいうところのオペラント条件づけですわ。どうしたら女子が喜ぶのかわからないなとおもってたらお金やものあげたら喜んでくれたので、もっと喜ばせたいのでお金を稼ぎます。

2コーラス目、「きっとあなたのキスほどきらめくはずない」ですが、これ、キスしかさせてない可能性があることに気づきました。さらには、それさえもさせてない可能性もある。きっとあなたのキスはとてもいいでしょうね、したことないしこれからもしませんが。

3コーラス目、女子が化粧してないのはこの男子の前でだけね。そういう女子がすきなのがわかってるから化粧しないふりしているのか、面倒だからわざわざ化粧しないのか。あと、草に寝転ぶ男子が好きなのは、犬とか牛とかと同じカテゴリーなのではないか。

4コーラス目、「最後のわがまま贈り物をねだるわ」っていうんですが、これ、ふつうの人は「この女子の*はじめての*おねだりが木綿のハンカチなのだな、なんて質素でいい子なんだ」って思うわけですが、それまでわがまま言ってないとか、それまでなにももらってないとかってことは言われてないですよね。そもそも2コーラス目で指輪もらってるし、もっとたくさんいろいろもらってるはずだ。お前牛みたいなやつなのに自分のスーツなんか買ってないで贈り物よこせ、とか、なんだもう金が続かないのか、んじゃ最後の金でハンカチも買ってよこせ。いわゆるケツの毛まで抜かれている状態なのかもしれない。

というか、聞き所の一つは、男子の「恋人よ」って呼びかけかけに対して、女子が3回「いいえ」で答えてることですね。これはやばい。大昔に、「押し付けに抵抗する」というエントリを書いたんですが、他人の言うことを聞かないひとというのはおそろしい。まあこれは男子も女子も両方ね。この件に関しては、椎名林檎先生のカバー音源の最後がそれを強調したおもしろい解釈をしてますね

とか考えてたらおそろしくなりました。ははは。


2017/12/7追記。

最近また聞き直したんですが、やっぱり太田先生が女性側を歌うときのビブラートが素敵すぎますね。あれで田舎でまじめに暮らしている化粧もできないダサい女子、というのはないと思う。本当に音楽っていいですね。

あと、あんまり意識してなかったけどこの曲ところどころ女性コーラスがはいってるんですよね。どこに入ってるか聞いてみてください。基本的に「アー」とか「ハー」とかそういう歌詞のないコーラスは、言いたいけど言わない別のことを表現している、ってかんがえていいんじゃないかと思います。女性の方にくっついてますね。

そしてなにより最後の「はーあ↓」みたいな感じのコーラスが最高で、これは語り手の男性でも女性でもなく、ずっとそのやりとりを聞いていたリスナーの声だと思います。「あーあ、そうなるよなあ」って声。ペーソス。

References[ + ]

1. ジョージ秋山先生の『銭ゲバ』の主人公。
2. 同じくジョージ秋山先生の作品の複数に登場する重要脇役。

ワム!の「ラストクリスマス」は失恋の歌ではない

ジョージ・マイケル先生(Wham! )は私ものすごく好きで、デビューアルバムのラブマシーンあたりから死ぬほど聞いて、Last ChristmasやCareless Whisperもリアルタイムで楽しみました。クリスマスには必ずLast Christmasが流れるし、テイラースイフト先生とか多くの人がカバーしているけど、この曲の歌詞、ちゃんと理解されてないのではないかという気がします。

一般的な和訳・解釈 → http://ryugaku-kuchikomi.com/blog/last-christmas http://xn--tfrt83ip2e.biz/1056

まあシンプルな英語だし、訳はこんな感じでいいと思うんだけど、ちゃんと注目すべきところがある。

Last Christmas
I gave you my heart
But the very next day you gave it away.
This year
To save me from tears
I’ll give it to someone special.

去年のクリスマスに一発やったけど次の日にはもう他人、というワンチャン・ワンナイトの歌なのははっきりしてますよね。そんで、今年はやり逃げされて泣きたくないから、「特別な人」とセックスするつもりです、という歌です。

しかしここでひっかかるべきなんすよ。someone specialってどういうことよ。「今年は誰か特別なひととしますよ」って、なんじゃないな。今年は「大好きな彼女/彼氏としますよ」ならわかるのに、「誰か」とするっていうのは、つまり、スペシャルなひとはまだいないわけですわ。

Once bitten and twice shy
I keep my distance
But you still catch my eye.
Tell me, baby,
Do you recognize me?
Well,
It’s been a year,
It doesn’t surprise me
(Merry Christmas)

一回ひどい目にあったから、今年は遠巻きにしておいります、でも君はやっぱりイケメンか美人かで僕の目をひくなあ。んで、「君、僕のことわかる?」ですよ。こんな異常なセリフを言う機会っていうのはあんまりないですよね。20年ぶりの同窓会とかであって、「僕のことわかる?」ってのだったらありですわ。でも去年のクリスマスにセックスしてるのに「僕のことおぼえてますか?まあ覚えてなくても、1年前だからしょうがないねえ」っていう関係って、どういう関係なんすか。

I wrapped it up and sent it
With a note saying, “I love you,”
I meant it
Now I know what a fool I’ve been.
But if you kissed me now
I know you’d fool me again.

なんかカードみたいなに「アイラブユー」って書いて渡すとセックスできるわけです。そういうのやって、去年はひどいめにあったけど、もしいま僕にキスしてくれたら、君はまた僕をひどい目にあわせることができるよ。つまり、いまちゅーしてくれたら、今年もセックスお願いするですよ、という歌です。

A crowded room,
Friends with tired eyes.
I’m hiding from you
And your soul of ice.
My god I thought you were someone to rely on.
Me? I guess I was a shoulder to cry on.

その場所はたくさんの人がいるパーティールーム、みんなお友達だけどコカインとかマリファナとかやばい薬とかもやっててみんなやばい目をしている。君は氷のように冷たい奴だ。去年は信頼できる人だと思ってセックスしたけど、君は僕を単なる寂しさをまぎらわせるセックスオブジェクトとしてつかいましたね。許しません。

A face on a lover with a fire in his heart.
A man under cover but you tore me apart, ooh-hoo.

ここはちょっとむずかしい。a man under coverは相手のことだろうと思う。業界でいういわゆる「クローゼット」かな。いやちがうな。

Now I’ve found a real love, you’ll never fool me again.

ここが一番のポイントでむずかしい。

一つの解釈は、「もうほんとうの恋人見つけたから、君にひどいめにあわされることはないよ」。でもあとで出てくるように、その恋人とは今年のクリスマスはセックスしないのです。

もう一つの解釈は、ここで見つけた「本当の恋人」っていうのは、実はこのyouなんよ。去年は遊びだったけど、今年は本気でセックスしようじゃないか、と解釈することもできると思う。あるいは強がりか。

Maybe next year I’ll give it to someone
I’ll give it to someone special.

ここを見逃してはいかん!いつのまにか、まあ来年は特別な人とするわ、になってるじゃないの!つまり、今年はけっきょく去年と同じように誰だかわからない君とチューしてセックスしてしますしますぜひやりましょう、特別な人は来年の話ということにして、今年はやっぱり君とカジュアルセックスセックスイエース、ワンナイで。

もうちょっと好意的に解釈して、去年は君は特別な人じゃなかった、今年もまだ特別な人じゃない、でも今日セックスして、来年までおつきあい続けて特別な人になってくれたらいいね、ぐらい。

まあつまりこの曲は、非常に華やかで性的に乱脈とされるようなパーティーで一発やることを歌っているわけです。まあ80年代ってそういう時代だったんよね。それがエイズ問題とかにつながるわけです。

ちなみにマイケル先生はワム解散して某事件をきっかけにゲイのカミングアウトする前に、自伝みたいなの出してるんですが、「ぼくらワムの頃はもててもててしょうがなくて、そういうのも好きだったんで目の前を動くものはなんでもf**kしてたよ」みたいなことを語っています。そんなロマンチックな人ではないのです。

自伝 裸のジョージ・マイケル
ジョージ マイケル トニー パーソンズ
CBS・ソニー出版
売り上げランキング: 182,876

ジョージ・マイケル先生はあとで(1996)、Fastloveっていう超名曲作ってるけど、そっちはもっとはっきりとそういう世界を描いてますわね。


その後、この本(良書!)でこの「ラストクリスマス」紹介されているのを発見しました。

英詞を味わう 洋楽名曲クロニクル
泉山 真奈美
三省堂
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ストーリー:1年前のクリスマスに、ずっと好意をよせていた女性の熱い思いを打ち明けた純粋で誠実な一人の男(=僕)、ところが彼女は、その日は僕に向っておもわせぶりな態度だったのに、翌日にはあっさりと僕の気持ちを拒絶してしまった。その時に被った心の傷を引きずりながら、1年後のクリスマスに僕は彼女と再会し、「もう君に未練はない」といいたげに強が手見せるのだが、それでも心は揺れ動く。僕にとって、クリスマスは苦い思い出の日にほかならないのさ。 (p.332)
っていう泉山先生の解釈なんですが、ちょっとちがうと思いますね。でも読んでみてください。

テイラー・スウィフト先生は好みではない(ファンのひとはごめんなさい)

ask.fmでカミーユ・パーリア先生がテイラー・スイフト先生をディスっているという話を教えてもらい、3曲ほど聞いてみました。たしかにこの方はちょっとあれねえ。

最初に聞いたのはI shake it off。他人がなんと言おうが関係ないわ、私は好きに踊り続けるわ、ってな曲。

その主張自体はよい。我々は人にかまわず踊り続けるべきだ。踊りましょう。音楽的には、歌詞のshke shake shakeとかの繰り返しがおもしろいね。でも歌詞は凶悪で、世界は私と悪者(いつまでも同じままのヘイターやハートブレイカーやフェイカーたち)によって構成されています、みたいなのってちょっと受け付けられない。

バレリーナのシーンとかとかスタント使ってるわねえ。っていうか踊れないなら踊れないでかまわんし、むしろ最後のシーンのように「私はちゃんと踊れないけど、それでもOK」ってのなら、スタント使う必要ないのではないか。あと、いつまでも「I」shake if offであって、途中でcome onとか呼びかけてるのに最後も一人だけってのが気に入らない。

次に見たのがWe are never ever getting back。これは私淑する細馬宏通先生がコメントしているってんで、それ読む前に聞いた。

これもいかん。こっちは音楽的にはあんまりおもしろいところはなくて、イントロのギター、単にミュートするんじゃなくて機械的に切ってるのが耳を引いたけど、それくらいか。

歌詞の内容は私には最悪に思える。まあ細馬先生の聞き込みは大筋で正しいと思う 1)We will rock youは聞き取れないし、すぐあとで書くようにこんなものがガールたちのアンセムではありえないけどね。ビヨンセのRun the Worldの堂々とした勝利の響きとくらべてほしい。 。この曲は別れの歌ではない。そもそも、本気で別れるつもりのときに「絶対ぜったいぜったいヨリもどさないからね」とかって言うはずがない。「我々は終わってます、ピリオド」でなければならない。ネバーは1回でよろしい。「ぜったいぜったいぜったいぜったいより戻しません」って増やせば増やすほど説得力がなくなる。もし2回いうとしてもネバーエヴァーじゃなくてネヴァネヴァネヴァネヴァでしょ。

こんな歌、けっきょく女の「ノー」どころか「ネバー」でさえネバーじゃなくて「イエス」やむしろ「カモン」だ、って言う歌じゃん。それでいいんかね。

男子がなに気に触ることしたのか知らんけど、スペースを必要とする人がいるのは確かなことだし、なんか言っただけで「私が正しいの!」って叫ばれたら、ヘッドホンして好きな音楽聞くくらいしかないじゃんよ。わめく女は殴ればいいって話じゃないでしょ。

You talk to your friend talk to my friend talk to me、のところも(詞の作りはおもしろいけど)よくわからなくて、男子って元カノのことを友達にそんなしゃべるかな。もし仮に「ヨリを戻したいから口きいて」ってのがあるなら(ないと思うけど)こういうんじゃなくて女子の友達に直接頼むだろうし、悪口であればまあしょうがない気がするけど男子は女子ほどそういう話はしない気がする。まあせいぜい「ひでー女だったからね」ぐらい。女子はいろいろ事細かに話す傾向もがあるかもしれないけど。なんかおかしい、っていうか男子の行動を理解してない気がする。まあでもいろいろあるんだろう。わからん。さっきの「あんたがケンカ売ってきて」you picking fightsのところと同じように、自己中心的な感じがする。

「あんたとは別れました」とか言ったそのだらしないパジャマ姿のままで、友達に「あのひとまだ私のこと好きなんだって、でもうんざりしてるの」とかノロケなのかなんなんだかわからんこと喋ってるのも許せん。これが21世紀のエンパワされたガールなのか。

最後見たのはBad Bloodで、これもひどい。

最初っから(理由なく?)腕折ったりしていて、ものすごくネガティブになる。このPV見て好意的な評価をするのはものすごく難しい。なんで殴り合ってるのわからんし、歌詞も憎悪に満ちている。女性が物理的に戦ういろんな映画のパクリだらけだけど、それに対するオマージュみたいなのが感じられないよ。せめてテレビ1台出して、最初は自信なかったけど、映画に出てくる強く戦う女性たちからエンパワしてもらいました、ぐらいの敬意は表してほしい。もっと練習して格闘シーンはそれらしく見せてほしい。これじゃ女の子の演芸会かキャットファイトやアマチュア泥レスリングじゃん。それに映画のヒロインたちはだいたい憎悪以外のちゃんとした理由があって戦ってるけど、これは単なる個人的な憎悪だけに見える。ケンドリック・ラマー先生もなんでこんなPVにからんでるんだ。がっかりしました。これやばいっしょ。いくら嫌いだって、ライバルや論敵を「bad blood」呼ばわりするとか、そらパーリア先生怒るわよ 2)ナチを引き合いに出したのはどうかと思うけど。bad bloodの意味はこうか

前エントリのビヨンセの、最新の3)あれは南アフリカあたりのダンスなのね。 鍛え上げられた踊りや、自己を主張する覚悟や、考え抜かれた戦術や、他の女性との連帯感みたいなのと比較したら、たしかに退行的だって思います。こういうのがガールの理想であってほしくない。

でも好意的に解釈すれば、右派左派に分かれてしまったと言われているアメリカについて悲しみ歌ってる曲ってことになるかなあ。でももっと希望あっていいじゃんよ。ファレル先生のハッピーみたいなとはいわないまでもよ。

前2曲も好意的に解釈すれば、とにかく私は私の我を通します、ってんで、それはそれで敬意に値するかもしれない。でもそう聞くのはなかなか私には難しいです。PVもう少し上手く作ってくれたらちがったかもしれない。


んで、パーリア先生オススメのレスリー・ゴーア先生のIt’s my party聞いてみましょう。

ははは。いいじゃないっすか。歌詞と簡単な解説はこちら。私のパーティーなのに、私のジョニーは馬鹿のジュディーとこっそり外出ていってエッチなことをしている、私のパーティーなのに許せない、私泣いちゃうわ。私大声で泣くわよ私のパーティーなんだから。あなただってそういうときには大声で泣いていいのよ。

パーリア先生が、この歌には社会的主張とガールの心理についての、より深い洞察が含まれていると主張するのも理解できますなあ。


まあこのエントリ、私自身ちょっとネガティブになりすぎましたね。だって理由なく腕折るんだもん。あれでOKなんてないわよ。

References[ + ]

1. We will rock youは聞き取れないし、すぐあとで書くようにこんなものがガールたちのアンセムではありえないけどね。ビヨンセのRun the Worldの堂々とした勝利の響きとくらべてほしい。
2. ナチを引き合いに出したのはどうかと思うけど。
3. あれは南アフリカあたりのダンスなのね。

サロメさんのダンスいろいろ

以下R18。某授業でサロメさんのダンスを見せられるか検討。

ヘロデ王が軍服でいかにもエロそうでエロ点数高い。最後があれで授業では使えない気がする。

これは衣装とか演出とかまあそれらしくてトップレスまではいかんからこれくらいなら許されるのかどうか。無理か。

これも大丈夫か。

リヒャルトシュトラウス先生にこだわらないとケンラッセル先生のやつが好きなんだけど、まああれね。

まあやめといた方がよさそう、という結論。

まあこの曲、音楽的にすごくいいか、っていうとリヒャルトシュトラウス先生のとしてはそれほどすばらしくよいというわけでもない微妙な感じだし、あんまり価値ないかなあ。

しかしまあオペラとかその手のものっていうのはどれもこれもエロくて、学生様にはフィガロの結婚やドンジョヴァンニでさえ、その標準的な解釈を教えただけでびっくりするみたいね。昨日は「カタログの歌」「シャンパンの歌」「お手をどうぞ」の3曲セット。みんなまじめそうな顔をしてそんなものを見てるのか!みたいな。そこで西洋文化ってのはそういうもんです、とダメ押す。

まあそれは教養科目とかって名前ついてたりするわけで、教養っていったいなんだろうね、それとエロ知識はどう違うのか、とか思ったり。実はあんまりちがわんのではないか。ははは。