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授業準備(2) そもそも授業の目標とかも考えないとならんのだが

順番逆になったけど、まあ授業するときにいったいなにを目指すのか、っていうのは、これは難しいっすよね。特に哲学系の1、2回生向けの一般教養的な授業とかってのはもうなにやればいいのかさっぱりわからない。実は非常勤で仕事はじめて20年たっても、いまだにわかってない。

これ考えはじめると頭痛くなるわけです。「哲学や倫理学を大学で教える意義はなにか」みたいな抽象的な話は苦手だし。まあ今考えてるのはこんな感じ。

倫理学。ふつうの教え方はどうなんすかね。歴史的・学説史的にやるならソクラテス→プラトン→アリストテレス、ホッブズ、ロック、ルソーと社会契約説やって、ヒュームやってカントやって、功利主義やって、実存主義っぽいのに触れて、あとロールズとかそこらやってみたいな?

まあそういうのはあまりに古くておもしろくしにくい。ちょっと前の私はレイチェルズ先生の使って、(1)ソクラテスやって導入して、(2)相対主義やって主観主義やって利己主義やって、まあ道徳は完全に主観的なものでもないし利他性がポイントだよね、ってやって、(3)功利主義やって、(4)功利主義に不満な人もいるよってカントやって、(5)この功利主義とカント主義の対立みたいなのに最近はケアや徳倫理が注目されてる、って感じにして、(6)道徳的である理由はあるか、みたいなので終る、ぐらい。

これはわりと標準的でまあ別に悪くはないんだけど、学生様がピンと来ているのかどうかなんか不安なところがある。最近考えてるのは、むしろそういう「〜主義」とか歴史的な説明よりは、「幸福」とか「義務」とか「権利」とか「自由」とかそういうキーワードを中心にして具体的な話とからめてやった方がいいんだろうな、みたいな感じですわね。そもそも私、現在の標準的な倫理学の授業とかが、社会とか権利や義務といった堅苦しい概念が中心になってるのが不満で、ふつうの大学生には義務の話はまだ早い、みたいな感じがある。もっと個人的な幸福とかそういうのについて考えて、そっから協力とか権利とか義務とかにつなげたいと思ってるです。まあそういう感じでやろうってんで考えてはいる。

もう一つ担当している「応用倫理」ってのはこれはもうその年に関心あることを適当にやらせてもらってる感じ。定番はネットのプライバシー、知的所有権、中絶、動物、死刑、言論の自由とポルノ、性の商品化、貧困援助あたり。あと年によって2個ぐらい入れる感じ。浅いけどそれでいいと思ってる。

今年は他に「生命倫理」があって、これは完全に「教養」科目だし、児玉聡先生のマンガテキスト使わせてもらって楽しくかつ暗くやるつもり。

 

現実をみつめる道徳哲学―安楽死からフェミニズムまで
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マンガで学ぶ生命倫理: わたしたちに課せられた「いのち」の宿題
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まだある。

1回生向けの「社会思想」ってのから名前が変わった「現代社会入門I」っていうのは、さっき資料作ってるって書いたやつなんですが、まあこれは本当に大学授業全般のイントロダクショみたいなもので、高校の「現代社会」や「倫理」の一部を復習する感じですわね。意図としては、今の国家なり社会なりがなんでこういう形になってるかっていうのをいわゆる「思想」の方から紹介するっていうもの。「今こういう社会になってるのは偉い人々がいろいろ考えたからです」みたいな。もちろん世界は思想によってできてるというよりは歴史によってできてるわけだけど、高校「世界史」に対応するやつは別に新設してもらった。まあ18世紀以前の「思想」はすごく遠い感じだけど、19世紀は20世紀・21世紀と地続きでおもしろいですね。

あとなんかな。後期のことはまだ考えてないけど教養科目で「恋愛の西洋思想史」みたいなのもやる予定で、これはまあ教養っぽい話。これは3回目ぐらいで、これも資料プリントするのたいへんだから今年は夏休みにまとめて印刷してしまおう。

非常勤で衣笠でやるのは英語読むやつだから、いろいろ読んでみんなで訳文つくってみたい。どれくらいできるかやってみないとわからん。もし成果が出れば、なんかの形で公開できるようにできないだろうか。

御所大学でやるのは3回生向けだしかなり特殊なものだから完全に好きなことやるつもり。わりと楽しみ。特殊講義というのは内容も教員も特殊です、特殊芸人とか特殊マンガ家とかと同じ、とか。ははは。あれで告発されないように十分気をつけないと。

自分がやる講義関係はそういう感じかな。演習っぽいやつはもうやりながら考えるしかない。

 

 


「愛と性の西洋思想史」読書案内

最初にブラックバーン先生の『哲人たちはいかにして色欲と闘ってきたのか』読むとよいと思う。

古代ギリシア・ローマ

サッフォーの恋愛詩は岩波文庫の呉茂一訳『ギリシア・ローマ抒情詩選』にはいってます。

プラトンは『饗宴』だけでなく『パイドロス』も読みましょう。どちらも岩波文庫にあります。

アリストテレスの『ニコマコス倫理学』は京都大学出版会の朴先生の訳で読んだ方がよい。ちょっとむずかしい。

ディオゲネス・ラエルティオスの『哲学者列伝』は古代ギリシアの哲学者たちの言動の記録、ゴシップも多くて楽しめる。哲学者たちの性生活もかいま見える。とくに享楽的な生活を送っていたとされるアリスティッポスに注意。

オウィディウスの『アルス・アマトリア』はぜひ読みましょう。いくつか邦訳がありますが、とりあえず岩波文庫の沓掛先生の『恋愛指南』で。古代ローマ人たちの愛欲生活は木村凌二先生の『愛欲のローマ史』がおもしろい。アルベルト・アンジェラっていう先生の『古代ローマ人の愛と性』もよい。

アウグスティヌスの『神の国』で、神様「知恵の木の実を食べてはならん」って言ってんのにアダムとイブが食べちゃったせいで、セックスについて知り性欲に悩まされてつ生殖するようになったのだ、みたいな話がある。『告白』もおもしろいので読みたい。最初の告白文学。「性欲に困った僕は、神様に「性欲をなくしてください」とお願いしたんですが、「でもいますぐじゃなくて」ってつけ足しちゃいました」みたいな。ははは。

(告白文学というくくりはおもしろくて、ピコ・デラミランデラの『告白』、ルソーの『告白』、トルストイの『懺悔』も読みたい。)

中世

中世はよくわからない。カペルラーヌスの『宮廷風恋愛の技法』ぐらい。

トリスタンとイゾルデ神話については、ドニ・ド・ルージュモンの『愛について』が名著とされているけどどうなのか。

哲学者のアベラールとその愛人エロイーズの話が中世的な熱烈な恋愛の話として有名なんですが、これってどうなんかな、みたいな。岩波文庫の『アベラールとエロイーズ 愛の往復書簡』読んでみてください。私はアベラール先生はだめな奴だと思うです。

近世

モンテーニュの『エセー』の第3巻第5章の恋愛・セックス論「ウェルギリウスの詩句について」は岩波文庫の5巻本のやつか、最近出た白水社の宮下志郎先生の訳でないと読めません。腐女子傾向のある人は第1巻28章『友情について』も読みましょう。

哲学でも思想でもなんでもないけど『サミュエル・ピープスの日記』おもしろいので読みましょう。ニュートン先生ともつきあいのあった公務員の性的生活。でもいきなりは読めないので、とりあえず臼田先生の『ピープス氏の秘められた日記』(岩波新書)で。

ルソーは『エミール』『告白』。『新エロイーズ』は入手困難。

カントの女性論・男性論は『人間学』にあります。『倫理学講義』(『コリンズ道徳哲学』)には性的関係についての考察が含まれています。婚外交渉や売買春だけでなくマスターベーションもたいへんな悪徳らしいです。

「サドマゾ」の語源のマルキ・ド・サド。『悪徳の栄え』など。岩波文庫に『美徳の不幸』入ってますが、エッチというよりは哲学的です。カントあたりの哲学とすごく関係があるんですわね。

ウルストンクラフトの『女性の権利の擁護』は女子教育運動や女性解放運動の原点ですので必ず読みましょう。

スタンダールの『恋愛論』は読みにくいですが、非常に有名なので「結晶作用」のところだけは読みましょう。

キェルケゴールの『あれか/これか』。「誘惑者の日記」だけでまあいいでしょう。ドンファン論とかもおもしろいんですけどね。一般読者がキェルケゴールを読むのは無理でです。

エンゲルの『家族、私有財産、国家の起源』はそれ以降の女性解放運動などにも影響を与えています。ただし中身の歴史的事実に関する話はほとんどぜんぶ間違いということになっています。

 

20世紀になると

フロイトの『性欲論』とラッセルの『結婚論』は影響力があったのでぜひ読みましょう。

古典小説

ラファイエット夫人『クレーブの奥方』。ラクロ『危険な関係』。ゲーテ『若きウェルテルの悩み』、スタンダール『赤と黒』『感情教育』、ジェーン・オースティン『高慢と偏見』、トルストイ『アンナ・カレーニナ』、シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』、エミリー・ブロンテ『嵐が丘』、D.H.ロレンス『チャタレー夫人の恋人』。

こうした小説の案内は木原武一『恋愛小説を愉しむ』(PHP新書)など。

社会心理学、進化心理学

最近の心理学研究は、とりあえず麻生一枝『科学でわかる男と女の心と脳』と金政他『史上最強図解 よくわかる恋愛心理学』あたり。斉藤勇先生とかもたくさん出してますが、ちょっと古いし一般向けすぎます。松井豊『恋ごころの科学』は立派な本でしたが、もう20年前なので情報が古いです。

進化心理学ではデヴィッド・バスがとにかく大物です。『女と男のだましあい』『一度なら許してしまう女 一度でも許せない男』は重複するネタが多いですが必読。ミラーの『恋人選びの心』あたりまでいけばだいたい恋愛とかそういうのについて進化心理学がどういうことを考えているのかがわかる。