「愛と性の西洋思想史」読書案内

最初にブラックバーン先生の『哲人たちはいかにして色欲と闘ってきたのか』読むとよいと思う。

古代ギリシア・ローマ

サッフォーの恋愛詩は岩波文庫の呉茂一訳『ギリシア・ローマ抒情詩選』にはいってます。

プラトンは『饗宴』だけでなく『パイドロス』も読みましょう。どちらも岩波文庫にあります。

アリストテレスの『ニコマコス倫理学』は京都大学出版会の朴先生の訳で読んだ方がよい。ちょっとむずかしい。

ディオゲネス・ラエルティオスの『哲学者列伝』は古代ギリシアの哲学者たちの言動の記録、ゴシップも多くて楽しめる。哲学者たちの性生活もかいま見える。とくに享楽的な生活を送っていたとされるアリスティッポスに注意。

オウィディウスの『アルス・アマトリア』はぜひ読みましょう。いくつか邦訳がありますが、とりあえず岩波文庫の沓掛先生の『恋愛指南』で。古代ローマ人たちの愛欲生活は木村凌二先生の『愛欲のローマ史』がおもしろい。アルベルト・アンジェラっていう先生の『古代ローマ人の愛と性』もよい。

アウグスティヌスの『神の国』で、神様「知恵の木の実を食べてはならん」って言ってんのにアダムとイブが食べちゃったせいで、セックスについて知り性欲に悩まされてつ生殖するようになったのだ、みたいな話がある。『告白』もおもしろいので読みたい。最初の告白文学。「性欲に困った僕は、神様に「性欲をなくしてください」とお願いしたんですが、「でもいますぐじゃなくて」ってつけ足しちゃいました」みたいな。ははは。

(告白文学というくくりはおもしろくて、ピコ・デラミランデラの『告白』、ルソーの『告白』、トルストイの『懺悔』も読みたい。)

中世

中世はよくわからない。カペルラーヌスの『宮廷風恋愛の技法』ぐらい。

トリスタンとイゾルデ神話については、ドニ・ド・ルージュモンの『愛について』が名著とされているけどどうなのか。

哲学者のアベラールとその愛人エロイーズの話が中世的な熱烈な恋愛の話として有名なんですが、これってどうなんかな、みたいな。岩波文庫の『アベラールとエロイーズ 愛の往復書簡』読んでみてください。私はアベラール先生はだめな奴だと思うです。

近世

モンテーニュの『エセー』の第3巻第5章の恋愛・セックス論「ウェルギリウスの詩句について」は岩波文庫の5巻本のやつか、最近出た白水社の宮下志郎先生の訳でないと読めません。腐女子傾向のある人は第1巻28章『友情について』も読みましょう。

哲学でも思想でもなんでもないけど『サミュエル・ピープスの日記』おもしろいので読みましょう。ニュートン先生ともつきあいのあった公務員の性的生活。でもいきなりは読めないので、とりあえず臼田先生の『ピープス氏の秘められた日記』(岩波新書)で。

ルソーは『エミール』『告白』。『新エロイーズ』は入手困難。

カントの女性論・男性論は『人間学』にあります。『倫理学講義』(『コリンズ道徳哲学』)には性的関係についての考察が含まれています。婚外交渉や売買春だけでなくマスターベーションもたいへんな悪徳らしいです。

「サドマゾ」の語源のマルキ・ド・サド。『悪徳の栄え』など。岩波文庫に『美徳の不幸』入ってますが、エッチというよりは哲学的です。カントあたりの哲学とすごく関係があるんですわね。

ウルストンクラフトの『女性の権利の擁護』は女子教育運動や女性解放運動の原点ですので必ず読みましょう。

スタンダールの『恋愛論』は読みにくいですが、非常に有名なので「結晶作用」のところだけは読みましょう。

キェルケゴールの『あれか/これか』。「誘惑者の日記」だけでまあいいでしょう。ドンファン論とかもおもしろいんですけどね。一般読者がキェルケゴールを読むのは無理でです。

エンゲルの『家族、私有財産、国家の起源』はそれ以降の女性解放運動などにも影響を与えています。ただし中身の歴史的事実に関する話はほとんどぜんぶ間違いということになっています。

20世紀になると

フロイトの『性欲論』とラッセルの『結婚論』は影響力があったのでぜひ読みましょう。

古典小説

ラファイエット夫人『クレーブの奥方』。ラクロ『危険な関係』。ゲーテ『若きウェルテルの悩み』、スタンダール『赤と黒』『感情教育』、ジェーン・オースティン『高慢と偏見』、トルストイ『アンナ・カレーニナ』、シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』、エミリー・ブロンテ『嵐が丘』、D.H.ロレンス『チャタレー夫人の恋人』。

こうした小説の案内は木原武一『恋愛小説を愉しむ』(PHP新書)など。

社会心理学、進化心理学

最近の心理学研究は、とりあえず麻生一枝『科学でわかる男と女の心と脳』と金政他『史上最強図解 よくわかる恋愛心理学』あたり。斉藤勇先生とかもたくさん出してますが、ちょっと古いし一般向けすぎます。松井豊『恋ごころの科学』は立派な本でしたが、もう20年前なので情報が古いです。

進化心理学ではデヴィッド・バスがとにかく大物です。『女と男のだましあい』『一度なら許してしまう女 一度でも許せない男』は重複するネタが多いですが必読。ミラーの『恋人選びの心』あたりまでいけばだいたい恋愛とかそういうのについて進化心理学がどういうことを考えているのかがわかる。

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