セックスの哲学と私 (4)

国内に目を向けると、セックスと哲学ってのは実はあんまり議論されていない、っていうかほとんど文献とかないんちゃうかな。「愛」とかそういう形ではあるんだけど、露骨なのがないから目に入らない。まあ婉曲表現だったりするんだろうけどなんかねえ。

大学院生の頃にマックス・シェーラーの授業があって、愛と秘奥人格とかなんとかそういう話があって、なんかわからんなーとか。あれはそういう話だとわかったのはアンソロジーやRoger Scruton先生のSexual Desireって本読んでから。まあ基本的には文学の世界の話だわよね。

直接になにかそういうのに近いことをしていると意識していたのは森岡正博先生と小谷野敦先生の二人かな。ここらへんは私の他のネット活動を知っている人はやけにカラんでいるなと思ってると思う。ははは。

まあ小谷野先生は本でしか知らないけど、森岡先生はいろいろあるのでちょっと書いておくかね。

私が大学院生(D)のころは、いろいろ粛清とかあって研究室の人数が少ないせいであんまりうまく研究会活動なんかがうまくいかなくて、あっちこっちの研究会を覗かせてもらっていた。学部生向けの授業に出たり他学部のに出たり、読書会とかも他の研究室の人や他学部の人と(短期間だけど)やったりして。とにかくなんか教えてくれたり議論してくれる人が欲しかったんよね。

当時森岡先生は日文研にいって、単著もあって生命倫理学の有名人というか中心人物だったわけだ。そんでまあ彼が研究会をやっているというので覗かせてもらった。なんの話をしているのか忘れた。おそらくフェミニズムまわりだったんじゃないかな。阪急に乗って桂でバスに乗っていくとなんかきれいな建物があってね。

人数は20人ぐらいだったんじゃないかと思うけど、哲学の人だけじゃなくて社会学やら人類学やら理系やら、単著もあるような華やかな人々が集って、なんか華やかな感じで議論していてなんかもう別世界。宮地尚子先生とか上田紀行先生とか、これから伸びようとしている25〜35才ぐらいの優秀な人々。女性が多かったのもあれだよな。もうなんかいたたまれない感じだったねえ。もうなんていうか自信がぜんぜん違う感じでねえ。ネチネチ暗い百万遍文学部の雰囲気とはまったく違ってた。まあなんというか異邦人な感じ。

そこでやってるフェミニズムとかの議論ってのはもう私にはさっぱりわからなかったけど(まだ勉強する前だった)、なんか話はかみあってる感じだったので、そういうのが流行なのだなあ、みたいな。まあとにかく自信がうらやましかった。こっちは生きてるだけでせいいっぱいだったし、みんな就職してたり研究費もらったりしていて人種が違う感じ。

その後も森岡先生は『脳死の人』とか『生命学の〜』とか出版して、生命倫理でもかなりの影響力をもった、と思う。私はなんかおかしいとは思ったけど、とにかく説得力があるし、影響力もある。オリジナルな人だ。注目せざるをえない。

2005年ぐらいになると森岡先生はなんかセックスというか恋愛ネタで『感じない男』とか『草食系男子』とかいろいろ書いてて、まあぜんぜん共感はもてないもののやっぱりうらやましい。

そういうなかで学会でめずらしく森岡先生がシンポジウムとか出てきて話をして、タイトルはリプロダクティブ・ライツとかだったけど膣外射精がどうのこうの、という話。2007年か。これはひどい話だった、というかもうシンポジウム自体がだめ。その後もいろいろあって現在に至る。

実際に話するのをゆっくり聞いてみたりすると、かなり変わった人で私の若いころの羨望みたいなのは必ずしも適切ではないんだと思うが、書いたものに感じる独特の感じはなんとも言えない。とにかくオリジナルで彼の言ってることは一回考えみる価値がありそうだ。まあそういうんで「森岡先生はフリーダムでいいなあ」みたいななんともいえない感じはもっている。まあ正直うらやましい。相手にされてないけどこれからもからみます。

もう一人注目している小谷野先生は『もてない男』の前からネットでの評判とかで見ていて、変わった人だなあ、みたいな。ほぼ同世代なんで、上の世代の森岡先生とは見方が違う。『男の恋』と『男であることの困難』のどっちを先に読んだか忘れた。あれ、この人は同じような読書をして同じような経験をしているなあ(私生活は違うけど、見方は同じようなもの)、みたいな感じで注目している。なんというかあまりにも正直ですごいんよね。私はああいう生活はできないし、ああいうふうには書けない。まあ小谷野先生だったら、上に書いたような私の森岡先生にたいする妬みみたいなものを理解してくれるだろう、そんな感じ。実証とか、へんなポストモダンやフェミニズム的定説みたいなのに反抗的なのも好き。正直や誠実は美徳だ。あと小谷野先生は恋愛だの愛だのって言ってるけど考えていることはセックスな感じで、そこらへんもおもしろい。こっちは遠まきにウォッチして勉強させてもらう予定。

あとは2000年ぐらいから売買春とかポルノとかでいろんな人がいろんなことを言ってるわね。もちろん杉田聡先生と中里見博は注目している。杉田先生はちゃんとした哲学者な感じがする。社会学系統だと加藤秀一先生とかもかっこいい感じであれだわね。でも議論はわからない。あれ、まだまだ言及すべき人々がいるな。フェミニストもでてきてないし。ここらへんはまた別稿で。

 

 

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