いい人、ナンパ師、アリストテレス (1) モテとナンパ

オウィディウス先生からのあれですが、まあナンパとかそいうの縁がなかったし、バーとかは好きだけど、(男女問わず)隣に座った人やよく知らないお店の人と話をしたりするのもすごい苦手であんまり関係ないんですが、ナンパ業界というのはおもしろいなと思ってちょっと本読んでみたことがありました。

きっかけはPhilosophy for EveryoneシリーズのDating: Flirting with Big Ideasっていう本をめくったことかしら。このシリーズはその本のテーマにそった哲学的エッセイ集みたいな感じでおもしろい。私はゴリゴリの哲学本道より、そういうのが好きなんですね。このなかにRichard Paul Hamilton先生っていう人の”Hitting the Bars with Aristotle: Dating in a Time of Uncertainty” 「アリストテレス先生と飲みに行こう!」っていうのが収録されていたのです。

話の筋は、まあよくある男性の視点から見た恋愛に関する哲学風味の分析。

現代社会では恋愛が大事だっていわれていて、女性に相手の選択権があるから、まあ男性はとにかくモテようとする。少なくとも女性に嫌われないようにいろいろ勉強している。女性も男性にいろんなことを要求するし。んでまじめな男性は、ママやお姉さんや女友達や女性ブロガーが言うことをちゃんと聞いて、それを実行しようとする。ちゃんと女性を尊敬しなさい、平等にあつかいなさい、マナーを守りなさい、話をしっかり聞きなさい、真面目におつきあいしなさい、相手のことを考えなさい、家事をしなさい、とにかくきちんとしなさい、そうすればあなたは女性から愛されるでしょう。

でもそういう女性の言いつけを守る人は「いい人・ナイスガイ」にはなるけどモテないんですよね。日本でも「草食系男子」っていうのは話題になりましたが、あんまりもてない感じがする。国内のブログの世界でもそういう話はもうずっとつづけられているみたいですね。

まわりを観察してみれば、実は女性はいい人より、「ジャーク」、自分勝手なダメ男に集まっている。『だめんずウォーカー』とかってエッセイマンガがあったようですが、まあとにかくどう見てもダメな男の方がもてている。

この前どこかの大学のサークルが酒飲みとかで事件になってましたが、そういう不真面目なところにも(あらかじめそれがある程度わかっているのに)女の子はたくさん集まる。わけわかんないイベントサークルとかね。いわゆる「リア充」の世界。そこにいる人びとは、女性を尊敬しようなんて思ってなくて、とにかく酒飲ませて暴れよう、みたいに思ってるのに、実際には女性はそういうのに参加して、それなりに楽しくやっている。少なくとも「いいひと」とお茶飲んだりするよりずっとおもしろいのだろう。

ネットの世界を見ても、女性が推薦する真面目で誠実でおだやかでやさしい人より、とにかく自分勝手なことを書きちらす人の方が注目を浴びてるし、おそらくモテている。私自身、学生様がコンパとかでコイバナとかしているのをこっそり聞いたりしていると、なんでそんなんとつきあうのだろうか、みたいに思ったりすることが多いです。真面目でいい人はとにかくもてない。ここにパートナーを探している若い男性にとっての大きな問題があるし、女性に対する不信の根っこみたいなのがある。

まあ正直なところ、男性から見ても「いい人」っていうのはそんな魅力がないですよね。ブログとか読んでも、ああでもない、こうでもない、僕はどうしたらいいんだろう、みたいなの見てると、自分もそうなのに、「好きにしたらいいだろう」ぐらいで通りすぎたくなってしまう。とにかく他人の顔色うかがっておどおどしているのは魅力がないのは間違いがない。

1990年代後半にアメリカでネットの世界が爆発したときに(net news)、ナンパ師のコミュニティみたいなのができたんですね。彼らは自分たちをPick-up Artist (PUA)と呼ぶ。ナンパ pick-upはアートだ、それは習得できる技術でもある、と。ふつうの「いいやつ」は彼らに言わせれば、AFC、Average Frustrated Chump、よくいる欲求不満のマヌケでしかない。女の子に好かれようと女性自身による馬鹿なアドバイスをまにうけて、毎日けっきょくなにもできずに家でAV見てマスターベーションするくらいのことしかできない。それに比べてピックアップアーティストは覚醒した人びとであって、ネットでナンパのハウツーを交換し、それを実行することで人間関係とセックスを手に入れる。んでうまくいくとそのハウツーを講習会みたいなので売ったりもする。2000年代後半にはそういう関係のテレビ番組みたいなのも制作されたり、アメリカのトレンディドラマにも必ずそういう登場人物が出てくるようになったみたいですね。日本でも同じころからそういうのはやってるみたい。

ここらへんの事情があることを上にあげたハミルトン先生のエッセイで見て、実際それ読んでみた。ネットの情報をまとめた『レイガイド』(確実にオンナをオトす法則)っていうのが最初に有名なった本のようですが、それより、そこらへんの業界の裏事情まで解説したナイル・シュトラウスの『ザ・ゲーム』っていう本の方がすごくおもしろかったですね。インテリで仕事(音楽ライター)でもけっこうな成功を収めてるのに、チビでハゲでモテない平均的な欲求不満のマヌケである主人公が、ナンパ師のコミュニティに関心をもって取材しているうちにナンパの世界にはまっていく、という筋。ある手の青春小説であり、ピカレスクロマンであるような物語になっている。

→いい人・ナンパ師・アリストテレス (2) なぜ「いい人」は魅力がないのか

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